清子の誕生日。

98 清子の誕生日。

White Day 2019

 24歳の夜明け。すきなひとがむさぼっていた。

「……っ、あ……ぁ!」

 恥ずかしくて、大声をおさえるのでせいいっぱい。
 硬くて熱くて太いのが奥までどっがんばがん、ぎゅっと熱くて真っ白け。
 
 

 誕生日はごはん作りからはじまる。
 勝負下着と服を決めた。ひきしまるなあ……ピンヒールを履きたい! 脱衣場で。
 さあいくぞ。まずは一気に三食分を。手順・こつ、心のありよう。なにもかも教わった。

 妻の趣味全開、戦闘服の夫が、

「おはよう。きょうはとくにきれいだ」

 テーブルには赤ワイン。真っ赤な24本の薔薇の花束、ベルベットの箱が2つ。
 視線で火花が散った。

「おめでとう、さぁや。愛している」
「ありがとう」

 けさこそは。目玉焼きにおみそ汁、ごはんサラダ焼き魚。
 +牛乳・ヨーグルト・一日一個で医者を遠ざける蜜いっぱいの林檎。成分はないしょという特製専用なにやらサプリメント。

「死ぬほどうれしい。いただきます」

 儀式をかみしめるように行い、猛然と食べはじめ、おかわりを自分で盛った。
 心臓そのものの赤ワインを洗練された所作で注いでくれる。

Here's looking at you, kid!
「……おいしい」
「俺のワイングラスにくちづけて」

 ぴかぴかに磨かれたグラスにリップ音つきで紅を残した。

「ワインがうまかったのは初めてだ」
「誕生日プレゼントを初恋の君にもらえた。私、幸せ」

 箱を開けてみる。

「わあ……」

 銀色に輝く2連ティアラ。ダイヤモンドの3連イヤリング。

「きれい……」
「よかった」
「着けたところをみたいな、一緒にドレッシングルームにきて」
「うん」

 感謝のことばを。

「ありがとう。すてきなものを贈ってくれて、うれしい」
I will be with you till God do us part.
 If it's not you, it's meaningless
 
 

 お昼すぎ、キッチンでひとり。

「もう……き・て」

 座って待っていない、扉のすぐそこにいるんでしょう?

「後ろから抱きしめて、でないと料理しない」
「うん」

 愛情多過な、十日間だけ年下の夫。
 
 

 致されすぎた翌日。
 朝食後、薬を飲んだらもう。ぶっ倒れて眠った。お昼に起こされ、食後すぐに眠った。

 朝寝に昼寝、ぜいたくよね。愛の巣でひとり、

「あー、あー」

 よし、声はOK。立てるかな? ベッドを出てみる。うん、歩ける。
 長い時間夫をひとりにしてしまった。

「……さぁや」

 つぶやいて困った顔。捨てられた5歳児のほっぺにキス。

「逢えないからってすぐに落ちこまないで?」

 ひとつ屋根の下で一緒にいるのに。

「いつでも愛してあ・げ・る

 とたん喜色満面、がばり抱きしめる。うん、戻った。
 
 

 コーヒー豆がなくなっていた。
 滂沱で買いにいった忠弘がいないあいだ、家を掃除。

 りっぱすぎて大金かかりすぎている。プレゼント、家に車にもうていっぱいだよ。なんとかしてもらおう。
 
 

 夕ごはんを用意していると玄関が開いた。

「お帰りなさい」
「ただいま。やっと逢えた、うれしい」

 ドライブデートして、店で買っているときも車のなかにいればよかったな。
 手には豆のほかにもあった。白い?

「手紙だ」
「……なんだろうね」

 表の宛先はふるえた毛筆による墨書き。

山本忠弘様
山本清子様

 裏面の送り主は超大物の名前。
 切手は貼られていなかった。

「父さんからだ」
「電話でもいいのに……」

 封を切るのももったいないような和紙。中身は二枚重ね。
 ふるえた字で、

紋付袴と白無垢を見たい。

 海外でマリエことウエディングドレスとタキシード、洋風挙式なら。

「和風挙式か! あの家ならなんでもある、神社もあれば神職もいる。
 父さんの家へいこう」
「うん!」
「いや待て、心臓が停まったら困る。それとなく連絡してそれとなくいこう。いきなりきりだすなよ、いつもの得意技は出すな。せめて俺だけにしろ」
「うん、忠弘の心臓だけ停める」
「頼む」