反抗期。

74 記憶鮮明編 反抗期。

 夫の要望がこちらです。

「反抗期というものをやってみたい」
「いいよ」
「ずいぶんあっさりだな」
「だって弟がいるもの」

 4歳近く離れている。反抗期真っ盛りだった思春期早々抑え役に回った。

「具体的に、どう反抗するのだろう」

 忠弘は大学入学後、人とまじわるようになってから、誰かに反抗したのだろうか。

「たとえば、よくない言葉づかい。物を投げたり壊したり。壁とかたたいて大きな音を出す」

 忠弘の表情が曇る。

「……よくない? 営業では論外だ。
 物を投げ壊す? 得るためにどれだけ稼ぐ必要がある、求人情報は奇跡だ。
 騒音トラブルは深刻、厳禁だぞ。
 ……さぁやは俺にできないことばかりをいう」

 どんな自分でも受け入れてほしいんだよね。

「……ほかにはなにが反抗期だ」

 ご機嫌ななめ。大丈夫かなあ。

「いけないお友だちといけない道をつっぱしっちゃうとか」
「友だちは皆いいやつらばかりだ。地獄以外、いけない道などない」
「えー、っと……」

 遠慮して小声で、

「親のいうことをきかないとか……」
「できない……」

 忠弘滂沱。

「えっと、ね……」

 将来はおたがい親になる、知ってもらわなくては。

「……わかった。俺に反抗期は」
「あるよ!」
「……なにが?」
「えーっと。致すとき、私がどんなにだめとかむりとかいっても忠弘、聞いてくれないでしょう? 反抗期っていうのは」

 表情を輝かせて、

「そうか! 俺も反抗できるんだな!」

 喜ぶな。

「俺でも反抗期をやれる! さすがさぁやだ。さっそく致そう」

 結局こうなるのです……。

「いうんじゃなかった……」
「まだまだイきたりないか!」

 さんざんなかされました。

「ねえ……もう……だ、め……!」
「もっといえ!!」