71 記憶鮮明編 淫乱キャット。
WED, 28 JAN 2009
「……さーや、か」
近寄っても逃げず隠れずひるまず。道のど真ん中に堂々と鎮座。
手をのばし、頭をなでた。
ふん。それがどうした。
首のわきをゆるゆるなでた。少しだけ気持ちよさそうにする。
おなかをさわろうと、
にゃ~!!
するどい抗議だった。しゃきんと爪がのび、猫ぱんちの前脚が手の甲をかすめる。
「すまない、つい」
動物のおなかは急所だ。そうとう親しくなければ、
「さわり……たい」
手をのばす。
「さーや……」
「こんな夢を見たの」
「逆夢だ」
万年つながり一心同体の夫婦でも、自分が見たわけでもないあいまいな夢にまで責任を負えとは。
口にだせない、どうご機嫌とりしよう。
「夢じゃない忠弘の、私の猫姿って、どう?」
「血統書つきじゃないな……」
調教したい、
「ど。動物が腹を見せるのは、……」
服従させたい、俺。
「気を許した証というの、で……」
顔に複数のひっかき傷をちょうだいし、ベッドの下であおむけになり、手を猫の前脚のようにちぢこめ、
「……にゃあと鳴けばいいだろうか」
「そのポーズ、よく見ているから。ほかの」
ないた。