65 記憶鮮明編 未来予想図 忠弘。
SUN, 9 NOV 2008
風邪をひいてしまった。
心配されちゃう。ふだんはこの程度なら飲まない薬をさがした。たくさんもらったというし、「効果が持続!」「強力」書いてある。早く治るに越したことはない。
やめて!!
鋭い声がした方向に……手をあてる。だって周囲には誰もいない。おなかに……子宮のうえ……に。
複数の声。男女、子どもが重なりあって……。
忠弘に伝えた。
「俺も、夢を見た」
ころころよちよちの赤ん坊。ずいぶん穏やかで。そっくりな顔の2人は男の子と女の子。
「俺は有弘と。さーやはレイアと呼んでいた」
山本家は代々、男児に弘の字をつける。
「正夢しか見ない。たぶん……」
そんな夢を見た。
「……どうして」
あんなに生々しく。
ずっとつながりあっている。目が覚めていなければ「さーや、起きて。愛している」とか致して。起きていたら「さーや、起きていた? 愛している」とか致して。
男の子はずっと見ていた。宇宙を。
女の子はずっと見ていた。傷を。
穏やかだった。とても、とても。
ねえ、もう……ここに、いる?