50 無上の夢。
WED, 5 MAY 2010
「致すところだ」
足で扉を開けた夫に襲われました。
ないてあえいでイかされて。
がんっがん腰をふりながらいきいきと、新居がどうの説明され。
ごはんは……誰が……。
「すごいねここ」
キッチンもさすがのプロ仕様。説明返ししたくなる。
「指2本じゃたりないよな」
お姫さま抱っこからおろしてくれる、そっと。
なんだろう、いつものデリカシーのなさはどこへいった。
「広いのにほんわかして、いいなあ」
即座に背後をとり、ぎゅっと。あててくる。
「まな板をおくところが何箇所もある、余裕を持って料理ができるよ。ぴっかぴか。片づけをきちんとしないと、いままで以上に時間がかかるな。
わあよかった、前買ったジャーだ。ご飯は私がとうてい使えない本物で炊くと本当においしいんだよ。
食器が多種多彩、ずらり。いくらするかな、間違っても落とせない」
熱い。大きくて硬くて。
「調味料も調理器具もやっぱりすごい。こんなの使いこなせないよ。冷蔵庫もすごいね、こんな大きな業務用が3つ。
ワインセラーにビールだけ?」
激しく動きだす。上下に、左右に。円を描いて。
「食材がある。そっか、旧宅の食べ物を粗末にしなかったんだ。えらい!」
嫌いじゃないなあ。
「包丁もこのあいだ買ったの以外がおいてある。何種類もあったってなんとかに小判だよ」
挑発がとくに。
「聞いている?」
「うん。犯したい」
すそをめくりあげ、
「き・て」
午後、すきっ腹をかかえて書斎へ。調べてからコンビニへいこう。
座る忠弘の上に乗ってぎゅうぎゅう検索。
「コロッケとかいいなあ。油は本当に危ないからだめ、ね?
新居に引っ越し祝い、カレーにしようかな。いか大根、いいなあ。ひじきの煮物が食べたい。なめこ汁にしようっと」
この男を相手に毎日規則正しく外出、できるわけがない。
深くかしこく考えないと。なんとけわしい主婦の道。
「牛丼とかいいなあ。よく食べたでしょう、もっと盛ってあげる」
「女体盛りのお初が牛丼か、考えていなかった」
「料理のりの字も知らない男がなにか食べ物を盛ったことある?」
仲よく一緒に家を出た。
エントランスを通り、外へ。もうすぐ10月の気候は穏やかだった。
ああ、これが世間の空気……!
鍵の開け閉めも教えてくれない。たしかに悪うございました、悪すぎました。けどねえ。
なにかあったらたいへんじゃないか。
いざとなったら雲の上の上司にすがろう、あのぶんじゃかなり考えているはず。
手をつないで歩いてコンビニへ。大きなカートに入れっぱなしで運べる。
スパゲティ用のレトルトソース、カレーのルー、チャーハンの素。
必需品もおいてあった。なければ遠征するしかない、ほっとした。
「洗濯物はすべてそこのクリーニング店で。だと」
「ぜいたく! だめ、過保護すぎ」
「うん、とくに下着を出さないでくれ」
「室内干し見て欲情しないでね」
「野外プレイが……」
家に戻ってすぐ。
「挿れていいだろ」
「ちゃんと集中して作りたいな」
「俺の夢だ」
お昼ごはんもまだ。
「後ろから抱きしめてね、でないと料理しない」
「そういう脅しは実にうれしい。カレーなら前の5割増しで頼む」
「……本当ですか」
大きな鍋でいっぱいだったのに。
「いい言葉づかいだ、勃った。さ・ぁ・や」
「私、そちらさんを愛しています」
「俺は君が好きだ」
……感じちゃった。