話は続く。

四四 話は続く。

「まだあるわ。木下さんよ。
 入社式のとき少年の隣にいて、思わず嫉妬したのね?」
「ああ……うん」

 また話が変わった。考えを切り替える。

「情報通という渡辺君はなぜ、少年の相手が木下さんとあなたに吹聴したか。わかる?」

 お似合いの2人。

「木下さんのほうから少年に接近したのよ」
「忠弘との仲を疑われて違うって……」

 どこかで主張が食い違っている。

「その気があって接近したんじゃないの」

 受けとめよう。静かに聞いた。

「木下さんは少年の親戚なのよ」
「あっ……」

 そうか。

「木下さんと少年は顔かたちが似ていた。頭のできも似通っていた。美男美女、似合いといわれていたわね? 間違いじゃない、血がつながっているから。
 木下さんは、自分の両親があのとき少年を見捨てたと知っていた。それとなく少年に接近し、謝罪の機会をうかがっていた。それが周囲に、つきあっていると誤解されたのよ」

 忠弘と木下は課が違うものの席は近かった。社員食堂、通路。なにかしらわけありに2人で会話する美人を数回見れば、色恋沙汰に通じているあの後輩なら。

「木下さんからそれらしき、あれっと思った言動を、あなたは知っていたのでは?」

 うなずいた。

「御社へいったとき」

 わけありに近づく、めったに会話しない美人。

「どんな?」

 あのときを話す。
 なぜ、渡辺を上回る情報をあの時点で入手し、今後までも判断できたのか。
 誰も知らない糸口を見つけた忠弘。

「木下さんは少年の恋心を知っていた。それだけ注意深く彼を見ていた。それらしきことも聞いていたわね?」

 うなずいた。

「さぞ謝罪したかったでしょう。
 遅すぎる、時間はもとに戻らない。あのとき救わなければ、のちのち言ったところで侮辱にしかならない。かわりに彼を幸せにしてくれる人を探していたのよ」

 嬉々としてキスを投げた忠弘をみていただろう木下。

「親戚の件を少年に言ってはだめ。披露宴すらしたくないのだから激怒するだけよ、最悪あなたに牙を剝くわ。三日逢わなかっただけで殺されそうだったんでしょう?」

 死んだ目を思い出すだけで声も出ない。ゆっくりうなずいた。

「禁句はもうだめ。ひたすら愛しなさい」

 もう一度ゆっくりうなずいてから、

「木下さんを結婚式に呼ぼうと……」
「呼ばないで。
 少年にも洞察力がある。自分と木下さんの顔が、あれ? 程度は気づいているはずよ。
 自分はまったく相手にしないのに、懲りずに接近するのはなぜだ、とも思っているはず。調べればすぐにわかるのよ、最悪いまもう知っているわ。どう?」

 力なく否定した。

「あなたが木下さんに嫉妬したと少年に?」
「……言っちゃった」

 下をむくしかない。
 渡辺からの情報だと知られたら、忠弘がどういう行動に出るか。

「少年はあなたのこととなると許容範囲がせますぎる。
 あなたを喪いたくない、いえ、捨てられたくない一心であなたは助かっただけ。自覚しているわね?」
「……うん」
「もう恐れてはだめ。すべて受けとめて。あなたはあなたでいればいいの」
「うん、忠弘も同じことを……私が怒る、機嫌をそこねる、捨てることをなにより恐れている……」
「少年のせいいっぱいの本心よ。尊重して」
「……うん」

 たいしたことはできない。
 なでてあげよう。キスして抱きしめよう。

「私からの誘導尋問は以上ね。あとなにか、少年の言動についておかしかった、気づいたことは?
 いまいっていま答えろで悪いけど、そこまでの経緯とは知らなかったし、少年の許容範囲で私たちがあなたに会えるのはもう結婚式までないわ」

 気づかないことがこんなに多い。聞いてもらわなくては。いえるだけ、なにか……。

「結ばれた日、ひどいことをいったら。なぜ奈落の底に戻らなければいけない……」
「……よくあなた、生きているわね」

 下をむくしかなかった。

「少年を愛して。あとはなにもいらない。体力が持たなくとも愛して。愚痴を私たちにいうのはいい、でもお願い、少年にはいわないで」
「……うん」
「ほかには?」
「……私が忠弘に贈った腕時計を見せたら、同じもので女物を作ってくれ、ネックレスと同じだ、さーやとそろいの時計がしたい……」
「そう……しおり?」

 黙って聞いていた、時計店へ一緒にいったしおりが口を開く。

「山本某に贈った時計。あの店に、40年間ただ飾られていたままだったのよ」
「……え? だって、出されたばかりの新品だったよ?」
「あの店には多くの上客が訪れ、何人もが欲しがった。誰もが大金をふりかざし、立場肩書名誉家名をふりかざしてよこせと上から命令した。
 オーナーはにこやかにほほ笑みながらうそを、全員につきつづけた。

その時計は売約済みです。引き取られるまで飾っているだけです。

 なぜ清子という、一般人で一見の客に?
 気に入る理由を聞けたからよ。
 ずっと待っていた。40年前、あの時計を作った直後引退した偏屈な技師のために、あなたを。

惚れた男が贈ってくれた石と同じ色の、この時計がいい。

 日本一の宝飾店のオーナーの心を動かした。
 もしあたしが、いいえ椎名課長が、いいえ会長でさえ、欲しいとただ言ってもショーケースから出してもらえない。仮に売ってもらえたとしても天井知らずの金額を要求される。
 清子が気に入ったからよ」

 あのときは、これがいい。はいどうぞ。
 あっさりしたもの。にこやかで、安心して包んでもらった。あとはもう、忠弘の喜ぶ顔が見たかった。

「清子は自分を過小評価しすぎよ。自分を知らなすぎよ。
 山本某が家に閉じこめるのね。自分を捨てないとわかっている清子を?
 椎名課長は聞きづらいだろうからあたしが」
「やめなさい」

 仲のいい2人が言い争いを始めるかのよう。あれだけなんでも聞いてきた椎名が?

「あの、……教えてほしいの。私、本当に忠弘のためだけに生きるから、2人とまともに話すのも、ひょっとしたらこれが最後になるかもしれない……」
「だそうよ、椎名課長。いましかない、言わせてもらうわ」

 椎名に心底惚れたしおりが、

「あの老人となにを話したの?
 その前に、山本某以外の人間とは指一本ふれたくないといったそうね。あなた、あの老人が勃つわけがなくとも、おさわりくらいはされそうと思ったわね?
 そんな下衆のもとへ椎名課長がむかわせるわけがない! 一代で大会社を興せるわけがない!
 清子の度胸があたしたちを動かした! でも時と場合、相手を選びなさい!!」

 疑った。会って、ありえないと確信したのに、椎名に謝らなかった。

「判断できないのに信じられない人脈を突然動かすから山本某は出るなと言ったのよ。同情するわ、このあたしがよ!
 さあ言いなさい。なにを話したの。清子のため、ひいては山本某のためになることなのよ!」
「しおり!!」

 なぜ、椎名がしおりを叱る?

「未来のわが子がかわいくてやったんだもの。そうでしょう、椎名課長」

 わが子。もう、ひょっとしたら……。
 テーブルの下でおなかに手をあてて話した。世界一の監獄で30年間すごした老人の涙。

「初恋の味だったから帰してあげる。本当は帰したくない、でも帰してあげる、それだけが感謝のしるし。
 お茶一杯だけで約束どおり……」
「意味、わかる?」
「……わからない。教えて」
「清子はあたしたちの会長と匹敵する人脈を手に入れたのよ。
 帰したことだけが感謝? いいえ、違うわ。あの老人は、清子がいえばなんでもするわ。なんでもよ。見返りは求めない。もう一杯など決していわない超大物なのよ!
 いい、清子の人脈は山本某の人脈よ。清子は山本某のものね?」
「うん」
「そろいの時計をあたしたちに頼むようじゃ、山本某は1週間と営業一課に在籍できない。
 あの老人の人脈をもとに、さらに範囲を広げられたら? 山本某ならできる、信じているでしょう?!」
「……うん」
「椎名課長は営業一課に丸裸のまま放り投げた山本某のために人脈を用意したのよ。会長が披露宴にと招待しても世界一の邸宅から出てこなかったような人脈をね!
 もう一声いいましょうか。いいわよね、椎名課長」

 椎名が顔を背ける。

「山本某を案内している男性、誰だかわかる?
 ヒントはいったわ、椎名課長があのかたとお呼びするのよ。
 あたしたちが、椎名課長が唯一膝を折る会長ご自身よ。
 あのかたはね、夫人一筋なの。もとは一般人で、びびりな夫人のそばをかたときも離れたがらないかたなのよ。
 椎名課長が話のついでに、

初めて一本取られました。

 一言で会長は夫人をひとりおき、プライベートジェットを単身緊急発進させフランスから日本に一時帰国した。
 清子はあたしたちの会長すら動かしたのよ」
「どう答えろと?」

 わからないことまでも。

「清子は内助の功な妻ね。そのまま山本某を愛しなさいよ。
 ほやほやの新婚、大のろけが炸裂してもいいのに一切なし。山本某には同情するわよ」
「のろけたじゃない、いっぱい。もう、忠弘に逢いたいよう……まだ返事がこない」

 通知なし。さみしいな。

「さえないスーツそのほかを処分させられて採寸させられているわよ」
「さえないって……もう。あんなにセンスがいいのに」

 さらには格好よくてちょっと滂沱でかなり鼻血で。

「会長のスーツの着こなしは世界最高よ。見せつけられているのよ直接。しっぽをふってきゃんきゃんいうなりになっているわ」
「ひどいなあ、もう」

 そんなことない、あの男に限って。会長とやらはそんなにひどい男か。
 人は違うが今朝別の会長とやらに会わされた。にたりよったりだろう、偉いやつは大嫌いだ。

「ほかにはないかしら?」
「えっと」

 ささいなことでも聞いておこう。ここまで語れる機会はもうないかもしれない。

「忠弘が早朝から得意先に呼ばれたとき、平日の昼に連絡が入らなかった。
 夜にやっと、お茶の件をまったく知らない内容のメッセージが入ったの。愛情多過で仕事ができる忠弘にしてはおかしかった。早朝というのも気になった。なにか知っていることはない?」

 椎名が、

「弊社が手を打ったからよ」
「……やっぱり?」

 ありうる。

「混乱させ、社員誰もが事実を知らないあいだに攻撃しつぶす。跡形もなく瞬時に。
 大会社の体面よ、わかるわね」

 うなずいた。

「御社へ訪問する際、ある程度の事前調査をしたわ。
 非常事態がおきたとき、すぐに手を打てる人物といえば辞任した上層部ではなく、入社2年目の山本少年ただひとり。私の、補佐の評価よ。補佐が取引停止前に少年を拘束したの。
 C社の知人と少年はおたがいをまったく知らなかったはずよ。細い線とはいえ突破口を開かれた。
 完全拘束してもよかった。つまらなくてわざと電波を遮断しなかった。
 身体は完全拘束したわ、宿泊先から一歩も出さなかった」

 ルームサービスは入社2年目の人間が仕事先で頼めるものではない。

「はじめましての若造の営業トークにつきあう会社のトップはどこにもいないわ。
 少年は一から情報を収集し、まっとうな人物を探しあて接触し、即日自社に足をむかわせた。
 身体拘束からも抜けだしていた。最上階に泊めさせたのに脱出時間不明、室内外に器物破損の形跡なし。室内の備品はそのまま、きれいさっぱり片づけられていたという。一度や二度の、偶然程度の経験ではできないことよ。
 私たちも営業で食べてきた、ある程度歩いたわ。
 一瞬一秒に命をかけ、食うや食わずで眠らず眠れず、装備品ほぼなしで1000kmを踏破したことはない。おそらくあの程度はお手の物、いえ準備さえしていたでしょう。
 少年は私たちの評価以上。知人からの話を聞くことにしたの」

 椎名がワインを口にする。

「渡辺君のこともちょっとだけ話しましょう。
 小賢しい情報収集能力があることは多少知っていたわ。私たちは歯牙にもかけなかった。
 一杯のお茶事件の全容をいち早く知った、ということね。
 それがどうしたの? 少年とは正反対、知れはしたもののなんの手も打たなかった」
「違う、忠弘が」

 椎名としおりの、渡辺に対する評価はとても低い。

「いわれるまで思いつかなかったのね」
「私だって」
「少年の言葉がなければ渡辺君はどういう反応をしたかしら?」

 いやな予感がした。

「小賢しく吹聴し、全社員が浮き足立つ。上層部に対する不信を植えつけ電話応対を間違わせる。
 茶をぶっかけたやつが悪いんです。
 上層部はわれ先に逃げました。
 こんなところかしら。どんな会社も即取引停止よ、違って?」

 首を横にふった。

「少年に正しくとめられても、ほかの方法はいくらでもあるのに、やったことといえば転職活動。
 平時が有事となったとき、立ちむかって事態を打開するのではなくわれ先に逃げる。そんな者に用はないわ。
 あなたが少年に対し意地を張った理由。
 うのみにしたあなたにも非はある。でもね、耳聡いからといって直接の指導係に、はっきり確認もしない中途半端な情報を吹聴して楽しんでいるようでは、部長の椅子どころではないわ。
 大会社と世間に吹聴している私たちでもなにかがあれば、あっという間につぶれる。内情を知れば転職したくなる。こんなご時世、要領よく生きないとねえ。
 入社半年で遁走。あなたの同期に3か月で辞めた、入社試験の成績だけはいい人物がいたわね。どう思った?」
「……甘いな」
「3か月も半年も同じよ。
 転職をすすめる者は皆いう、若いうちに。
 リスクもある。履歴書に一生残る、調べればわかるのよ。
 あなたも総務を経験したのなら、履歴書をごまかしたかどうかの証明を直接その場で無料でやってくれた公共機関があると知っているわね?」

 うなずいた。

「あなたの、渡辺君に対する評価は間違っているわ」
「……私の教育が間違っていた、の間違いだよ」
「かばうのは少年だけにして。御社の元総務部長も渡辺君も、かばうべき何者でもない。
 今回はまっとうな人物が見てくれたからあなたは正当に評価された。
 御社で普通に仕事しても、利用され、見下され、つぶされるだけよ。わかっていたでしょう、返事はしなくてけっこう。
 あなたは少年だけを見て。少年だけを愛して」

 しおりが完璧な所作で椎名のグラスにワインを注いだ。

「両親をひき殺されたのに、どうして車を運転するのかしらねえ。トラウマになって、見もさわりもしないのに。
 引き取った捜査員は無口で家を空けつづけたから配偶者に逃げられ、少年にも詳しく死因を伝えなかった。調べようとすればいつでも……謎ね。
 少年が運転する車には、乗ったら寝ちゃうのよね。
 無防備な姿を、好きといわない時期から見せてくれた。さぞうれしかったでしょう。
 あなたはあなたのままでいなさい。恋に理由はいらないのだから」
「じゃ、あたしからもこれだけを」

 終わりの言葉を待っていたかのよう。

「しおり……よしなさいよ」

 なにかいわれたくないことでもあるのだろうか。

「椎名課長が最初に首席で入ったのは老人の会社だったの。そのころから営業畑だった。
 中略して、弊社に入ったときは契約社員、業務内容は営業補助。その後会長夫人を見守るため正社員庶務課主任。その後係長補佐をすっ飛ばして営業三課係長。実績もないのになぜと疑われた。
 結果」
「よしてよ……」

 椎名は照れていたようだった。

「就任3か月で営業部門史上最高の業績をたたきだした。株価は、会長が当時臨時の課長時代、社の危機的状況を立てなおしたとき以来のはねあがりをみせた。文句なしで営業一課長就任よ。会長夫妻の披露宴の際得た七百からの人脈へ当日中に多言語難解難問長文メッセージすべてに返信したんだから。
 営業一課長というポストの実態よ、山本某についてこれるかな?」
「そっか、4か月間ただいるってわけにはいかないね。勉強とか仕事とかしなくちゃいけないんでしょ?」
「ええ。十や二十は言語を操って当然、本題はそこからよ。どうかしら?」
「私、忠弘の仕事に口を出したことないんだよね。これからもしたくないし。
 寂しくなるな……」

 きっとあんなふうに、真剣に。
 コーヒーを出してあげよう。そっと見守って、ごはんを作って食べさせて、ちゃんと寝かせて。

 これから生活、するんだあ……。
 
 

「喫茶店がどうのだったわねえ。豆? 社長にでも買わせればいいのに……」

 ぐだぐだのしおりをなんとか連れだす。

「あの、私の退職と時計の件をよろしく……」
「もう手配したに決まっているじゃない!」
「いつのまに……」
「あーもう。一杯飲んだら帰るわよ。なにが悲しくてワインの次にコーヒー……あーぁあ」
「しおりはコーヒーも紅茶もうまいんだね……」
「そりゃあ秘書畑だもの。もっとも、あたしがあの部屋に飲み物を運ぶのは清子たちが最初で最後よ」
「……え?」

 しおりはにったりご機嫌。椎名は威厳たっぷり余裕の表情。

「あそこはね、もとは営業一課長室じゃないのよ。そんなのは営業一課のフロア内にちゃんとあるわ。客がきたら男たちのあいさつを見せつけるのよ、わざと」

 やっぱりか。

「十分萎縮させてのお帰りよ。
 客は全部三課が対応するわ。まれに二課で。年に一度くらいは一課の係長が。
 なのに、椎名課長のためにと用意された、あの重役室で無礼を働いた会社の人間を迎え入れる?
 仕返ししようと準備は万全だった、あたしを含め全員が反対したのよ。
 あの時点で清子は弊社を動かした」
「……どうして。かな」

 椎名が、

「C社の知人がね。

愛情多過な男性に迫られてもいうことを聞かない、内助の功の心を持ついい女性がいます。椎名課長、あなたは普通の女性の恋の味方ですね? どうです、興味がおありでしょう。

 ど~っきりよ。
 私の大切な女性がそうだった。なんとか結婚までこぎつけさせたものの、内情は後悔ばかり。知り合った4月1日のうちに結ばれればよかったのに、理屈をこねて実際は半年後。その間、いいことはなかった。
 今度もどかしい仲のふたりを見かけたら、その日のうちにくっつけてやれ。意気込んだら一本取られたのよ!
 話のついでに言ったら会長はそうかの一言で通話終了。
 少年の案内役にと補佐を呼ぼうとしたら部屋の扉が突然開いて。私の許可なしにできるのはただひとり。こられちゃってねえ。
 これで私の引退時期をもっと早くといってもあなたに許してもらえるようだ、ですって。……あーぁあ」

 後半部分がさっぱりだ。椎名でも酒が回っているらしい。つぶやきに近く、ふれずに別の質問をした。

「えーっと。日本一のすごい喫茶店とは、いったいどこに……」

 リムジンはけっこう長いあいだ走っている。

「湘南よ」
「鎌倉に近い?」

 泳ぎたくなってきた。

「そうねえ。ああ、清子の実家?」
「ふうん……よくおわかりで」
「だぁーーーれーーーに言っているのか、なぁあああ???」