夫婦げんか。

36 夫婦げんか。

 夜の7時、いやといっても抜かれた。
 キッチンのシンクに手をつきおしりを突きあげておねだりする。

「挿れて、抜かないで!」
「料理中は致すなといったのはさぁやだ。残念だったな、挿れてはやらん」
「そんな……!!」

 後ろに立つ忠弘が大きな手で腰を抑えている。致す体勢以外のなにものでもない。

「こんなになっているのに、……ひくひくイってるんだよ?」

 もう、形が忠弘のとおり。

「女体盛りして食って犯る。早く作れ」
「そんな……」
「だったら指くらいがまんしろ!!」
「ぁあん!」

 後ろから突き入れられた2本の、もどかしい指を中にのみこんだ。
 米を研ぎ、野菜を切る。

「……っん、……っ……」
「けがするなよ」
「……っん……だい……じょうぶ、たぶん」

 動きたい、突かれたい……作らなくては。

「……けがしそうになったら抜く」

 なにをどうしたらけがしそうか、知らないだろうに。

「たぶん、だいじょうぶ……抱きしめて」

 悠々抱きあげる腕でがっちり抱きしめてくれる。じゃがいも、にんじん、たまねぎ……肉を炒める。

「すごいものだな、指を咥えながら料理とは。さすがさぁやだ」

 まったく本当に、自画自賛した。

「こういう……のなら、なんとか……ちょっと凝ったもの作るときは、さすがに……だめ」

 本音は、いまもうだめ。おっぱいもみもみされたら、もう。

「夜起きると肌がどうのは本当か……俺は……」

 野菜を炒める。

「セックスするとお肌がつるつるになるんだって……」
「知らなかった、早く教えてくれ」
「エステ上がりのときより、忠弘と通話中にオナニーした翌朝のほうがお肌つるつるって……秘書にいわれたの」
「よけい家の外に出せん。毎日毎晩生理のときでもセックスだ。いいんだよなさぁや」
「床、よごれちゃう……」

 たぶんいま、もう。

「風呂で犯ればいいだろ」
「おなか、いたいときは……」
「……やはりか。痛いときはやめる」

 鍋に水を入れて。

「煮えるまで時間がある。欲しい、忠弘が欲しい。挿れて……」

 先週、さいごまでされなかった。
 こんな生殺し、がまんできない。耐えられない。
 よく……。

 ずる抜かれた。手に巻きついた手料理を堪能している。
 いいから、もう。
 おしりを突きあげて脚を広げた。

「ぁ、あ、ぁんっっっ!」

 望みどおり、イかされて真っ白け。
 さぁや、動いて……声が聞こえた。
 
 

 鍋が煮立っていた。

「飯」
「ん……ちょっと待ってね、仕上げる」

 もうふらふら。
 後ろから両腕で優しく抱きしめてくれた。

「ソファーに座って待っていて」

 忠弘は不満顔。せっかくの休日、少しでも離れたくないらしい。
 連れこまれた日最初に使った皿にシチューを盛った。

「いただきます」

 空腹は現実、切実だ。

「いくら忠弘でも、食べているときは致せないでしょう?」

 おなかが減ってもちょっとずつしか入らない。
 忠弘の食欲はずっと変わらず。

「確かにな。待っていろさぁや、いま食いつくす」
「味わって食べて……」
「……うん」

 ごちそうさまのあと、すぐに襲う態勢の忠弘に、

「ひとつだけ……」
「なんだ。待ったはなしだ」

 両腕を広げ迎え入れる。

「私のせいでごはんも食べられなかったとき、おなか空いたでしょう? ごめんなさい……」
「忘れた」

 忠弘がすぐに襲って乳房をもてあそび、乳首にむしゃぶりつく。
 惚れた男の髪に両手をからませた。

「さぁやとさぁやの手料理さえ食えればいい。胃に入れても意味はない」

 息するのも忘れた。
 待って、

「さっきのピザ、味……した?」
「さぁやがいつも食っていた、というものも食いたい」
「こたえて」
「しなかった。さぁや、息しろ」

 できなかった。すぐにくちびるがきて吹きこまれた。

「ほかもあったら教えてくれ。どうしても食いたい、一緒に。
 さぁや……」
「……ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい……」

 なにをしていたのだろう、いままで。

「泣くな、忘れた。さぁやも忘れろ、過去には戻らない」

 戻れるならやり直した。あのとき、

「泣くな」

 おはよう。うめあわせを。そこまで嫌われることをなにかしただろうか。
 お茶を淹れるとひとりだけ、ありがとう。

「さぁや。愛している……さぁや、言って……」
「……うん」

 朝のキス。自分のくちびるに指でふれてから番いのタグにくちづける。

「料理中もトイレ中も生理中もしない。……いってみただけ、いわせてみただけだ。
 泣くな。もう脅さない。……約束だ、今度は守る」
「……でも」
「でも?」

 甘えていい?

「指一本ふれない、は……さみしかったよ」

 許してくれる?

「ああ……」

 にが笑いしている。

「さぁやのご機嫌をとりたくて気づいたら……できるわけがない」
「抱きしめてくれて、うれしかった……」

 忠弘がおっぱいもみもみ。

「生理はいつだ。心の準備をしておく」
「ん……1週間後くらいかな。はっきりした周期がないの。きたら六日くらいかかる」
「六日間……地獄だ」

 この男、いつづけがすぎてなにかにつけては堕ちるもよう。

「くち、とか……ぱ? とかは、するよ?」
「素股もさせろ」

 なにやらな名称がどこからすらすら出てくるのか。

「できることはするよ? あ、忠弘みたい」
「……どういう意味だ」
「私のお願いを聞くのはできることだけって」
「さぁやがいつも俺を地獄に堕とすからだろ」

 否定できない。

「これからはいつも天国だよ」
「ぜひ頼む。
 引っ越しがどうのだったな。俺がでかけたら内側からは鍵を開けられないようにしてやる」
「いいよ。私、家を守るから」

 満足してくれるならなんだって。ちょっと食材も買えないけど。

「格好よく仕事してね。私、仕事ができる」

 忠弘が禍々しく、

「仕事ができる男が好きとでも? いま何人男がいる」

 心臓のあるほうの乳房をぎゅうわしづかみ。髪の毛を優しくとかしてあげた。

「いない。忠弘だけ。忠弘しか見えない。愛しているの。ずっとずっと前から。最初から。
 もし忠弘が入社式の日に迫ってくれたら、意地を張らずにすぐ挿れてって言っちゃったよ? きっと」
「……過去に戻りたい」

 本気がたまらない。

「もういいでしょう? きて、明日の朝まで眠らせないでね」

 一緒に出社する気力どころか朝ごはんを作る体力まで0ゼロになる。
 かまわない。惚れた男の望むとおりに。

「むろん。一生あえげ」
「うん!」
 
 

 何時間も激しく致されて、少し眠らせてもらえた。

「起きたか? おはようさぁや。愛している」
「ん……おはよ忠弘……愛している……」
「いま朝の5時だ。たっぷり致してシャワーを浴びて飯を食って、早めに出よう。歩いて出社しないか? より大勢に見せつけよう」
「いいよ、なんでも……そのとおりにする……」
「……俺を試すな」
「試しては……ね、すけべな下着で出迎えていいんでしょう? 慣れてね」

 忠弘が鼻をおさえて、

「……思い出すだけで鼻血だ。似合いすぎる。頼むからあんな格好で外に出るな」
「出るわけがないでしょ!」
「は、それがいい。その口の悪……」

 さ?
 さーや、じゃないよね。

「忠弘。なにか言った?」
「空耳だ。気のせいだ」

 腰の動きも、あえぎ声もとまる。

「ふうん、そう。私のこと、口の悪い女と思っていたんだ。そう」
「怒るな! 機嫌を直せ。……すまないといっているだろう」
「ほかはどう思っているの? いわないと」

 よっこいしょ。枕から顔をあげた。抜いてやる、寝室から出ていってやる。
 かな。

「脅すな!」

 腰をもっと抑えつけられた。

「約束を守れ、あー……。いわないとだめか」
「やっぱりあるんだ。ふうん。抜こうかな」

 あまりやらない腕立て伏せの要領で四つんばいになって、ちょっとだけおしりをふった。

「脅すな!!」
「ぁん!!」

 激しく奥まで突かれて、すぐ枕に顔を伏せる。
 忠弘が、ゆるりとした律動を再び開始。

「だから……頑固、だろ。意地っ張り。むこうみず。……冷たい。……こわい」

 つぶやきよりもささやいて。

「私のどこがいいの? 特段これというところ、ないよ?」
「さぁやがさぁやでいればいいんだ、さぁやでないと勃たん。……頼むから機嫌を直せ、もう一生怒るな……」
「ん、怒らない。必要ないから」
「……よかった」

 つながる後ろで心底ほっとした吐息。
 なぐさめてあげたいな。