応えた女。

32 応えた女。

 引き戸が開く。

「忠弘」

 その表情、忘れない。

「好き」

 くちびるをよせた。

 目を閉じて体をぴったりと押しつけた。いままで一度として応じてあげなかったキス。

 して。して。して。
 深く、ふかく、深く。

 角度を変えた。背が高い、下から。
 応えて。こたえて。応えて。

「ん……」

 おしりに両手が。がっしりつかまれて、力が強くて足が浮く。
 そのまま上下に。

 上の口は唾液でまみれ、下の口は愛液でまみれ。

 ベッドにあおむけにおかれた。忠弘が脱ぎだす、もどかしげに。
 閉じていた脚を広げられる。

 恥ずかし……。

 無防備な中心をリップ音つきでキスされた。ちゅく……ぴっくんはねる。ぬるり糸をひいているのがわかる。
 舌が入って、たぶん中指がきた。

「……ん」

 しばらくしていないからいきなりは。たぶんきっと。だっておっきいもの。
 入り口を確認するようにかき回された。

 もっと、欲しいよ?

 忠弘が起きあがった。やっぱり恥ずかしくて閉じた脚をぐいと広げられる。
 あてがわれて、怒張が最奥に。

「っっっーーーーーーー!!!」

 ぎりっぎり、背に爪をたてる。瞬間イった。

 忠弘がいったん引く。抜ける直前まで。すぐに押し戻す。
 くりかえす律動が早まって、ぶつかりあう。水音が激しくあがる。濡れた瞳で、

「や、っと……」

 はぁ、はぁ……。

「……や、っと……さぁや!!」

 うん……。

 力が強すぎて、下のシーツとともに枕の方向にあとずさる。及ばなくとも同じ早さでぶつけあう。

「愛している!! 愛している愛している愛している!! さぁや、言って!!」

 背に回していた手を頰にそえた。
 くちびるをよせ、舌をれろれろからませて、何度も角度を変え、激しくむさぼる。淫媚な音をわざと残す。
 上も下も、つながりあって、想いあって、銀の糸。

「愛している。忠弘」
「さぁや……!!」

 ほんの少しだけの距離、もどかしいだけの直近、もう。
 舌だけ離す。とろける糸、あふれる汗。ふれあわせるためにあるくちびる。

「さぁや、結婚して!!」
「……うん」

 やけどしそう。

「……いくぞ」
「うん、……あぁ!!」

 ぐっちゅぐちゅに乳房をもまれる。みりみりと音まで聞こえる、灼熱の怒張が奥を突きあげる。

 子宮口まで犯されて脳天を突きぬける。

 抜かれるまでも快楽、なにもかも引き抜かれる。すぐに突かれた。抜かれてもまれて突かれて弾ける。

「いい……さぁや、いい!」

 知らなかった、これはなに?
 こんなのなに!? こんなのあるの!?

「いい……いい、さぁや、愛している!」

 奥まで突かれて、もまれて抜かれて熱くて、

「すご……いっっっ!! あ! あああ!!! もう、もう!」

 指も舌もすごすぎたのに、圧倒的な灼熱。

「もう!? もうなんだ!?」
「もうとけちゃう、きもちいいっ!!」

 はぁはぁ、はぁはぁはぁはぁ、

「もっとか!?」
「もっとぉおおお!!!」

 腰で応える。前後、ぐりぐりと回され、波の最高潮に激しく奥に。
 大きな手はずっと乳房をわしづかみ。ずぶずぶ犯される、脳天からあがる嬌声まで。

 脚は宙ぶらりん、足のつま先まで整えた爪が空を切る。
 乳房をもまれてぷるんぷるん、乳首にちゅっとリップ音。

 もみながら、忠弘が乳房の谷間に顔を埋めた。

「さぁや、美乳でぶって、俺を……」

 もまれてぷるぷるなぶる。
 ぢゅぷん、じゅっ、ずぶずぶずぶずぶ。弓なりの背、あがる嬌声、ないてないてあえいであえいで、よだれまみれの上のくち。

「あ……あああああいしているぅう!!! もう、もう!!」
「まだだ……まだだぞさぁや!」

 乳首を攻められた。口を大きく開けてすぼめて楽しむかのように。舌でちろちろ、れろれろべろべろ。乳房を心臓ごともっていく。
 がくがく、ぶるぶる、びっくびく。ずちゅぐちゅぐぷぐぷ、ずぷずぷ、音までつながって、

「どこも性感帯か、一番はやはり……」
「んぁああ!!!」

 みりみり奥までひと突き。大きい灼熱の怒張で体が真っ二つ。

「最高ださぁや……天国、やっと昇れた」

 突かれて抜かれる一歩手前でこねくりまわす。激しく生で、

「ぁんっっっっ、あっっ、ああぁああ!」
「もっとだ……もっとなけ、さぁや……言えよ、いえ!!」
「すきぃいいいい!! すき、すき!! あいして、あ……あああああ!!!」

 ぢゅくぢゅくぢゅっぷん、ずぷずぷ、びくびく。
 乳首を、口を吸われる。攻められて、もまれつかまれ飲まされなかされた。

 びっくびく叫んでベッドがきしむ。愛液が飛び散って、おしりを伝ってシーツもぐっちゃぐちゃ。

「もっとだ、もっとなけ、あえげ! 聞きたい、さぁや!」

 はぁはぁ、ないて攻められて、上げ潮にあわせてもっと激しく、

「いい、いい……さぁやの膣、さぁやの膣、さぁやの膣!!」
 
 ぞくぞく、ずぷずぷ、とろとろ。奥に届く硬くて大きい、攻められる。
 忠弘が枕を持ってきて腰の下にあてた。

「!? っっぁあああ!!!」
「ほら、もっと奥まで……は、壊れるな」
「っっっっぁうううう!!! あっはぁっっだめっ!! んっっんん!! ……!!」
「声を抑えたらどうしてやろうか……」
「いぁああ! 抜いちゃやだ、抜いちゃやだぁあああ!!」
「いい、いい……! いけさぁや、いってしまえ! 愛している、あいしているあいしているあいしている!!」
「もぉいく、いくいくいっちゃぅう!!」

 はぁはぁ、嬌声ときしむ音、みだらな水音。からだとこころがぶつかる、愛の巣を満たす。

 ふたりで一緒に、

「っっっっっーーーーー!!!!」

 深い情感をたたえた甘さを吸った。ポルノキス。
 
 

 びっくんびくん射精。灼けるような快楽。惚れた女に中出し、もう最高。

「は……ぁ」

 あるだけ射精した。びっくんどっくん、ぞくりぞくぞく。

「は……あ」

 びゅるるるる。びっくん、どっぷどぷ。

「は……」

 甘ったるいあえぎ声。やっと、すべて。
 吐き出しつくして一息つく。抜けるわけがなくて、脚を広げたまま、ぐったりした新妻の美肢体を堪能して、ちゅぅとキスした。
 朝のお返し、舌つきで。

「さぁや……すき」

 お返しした。無防備なのどにも、タグにも。満足して打刻面に。人差し指で自分と清子のくちびるにふれる。

「起きてくださーい、か……」

 一笑したら、なにかが落ちた。

「……?」

 ぽたぽた落ちる。なんだろうか。
 清子の美乳とふれあうミルククラウン。

「……涙」

 ぽたぽた。

 とうに忘れた存在だった。あの日を思い出す。
 流れるままに任せた。意識すると熱かった、体温よりも。そのままにした。惚れた女に甘くしたたる。

「こんな快楽が……」

 あったのか。こんな想い、知らなかった。想像もできなかった、したくなかった。

 幸せ。未来。

 認識票が頼りない、やわらかすぎる首もとで、やわらかな息づかいとともにゆれる。

忠弘。

これはね、

死んだときに認識してもらうためのもの。

戦死時に遺体は原形をとどめない。

人が人を殺してはだめなんだ。

子孫が憶いを受け継ごう。

だから、

どうか、

こんなものがいらないほど、

きれいな体のままで……。

 首にかけられたときの守りの言霊……よく憶えていない。
 憶えている言葉は、そう……。

夕ごはん、なににする?

 どう応えただろう。

先生のいうこと、よく聞いて。

 うんと応えただろうか……。
 甘えてすがることしか知らない昔々の、あせた記憶。

 ぽたぽた。

迎えにいくからね。

 やわらかい声。やさしい声。

大っ嫌いですから。

 吐き捨てる冷たい言葉。

あたし、ただひろくんだいすき。

 子ども特有の甲高い声。

山本君って背が高く脚が長い、スーツのセンスもいい、声もよくて笑顔がすてきで端整な顔立ち、営業成績抜群。

 一度もいわれなかった。誰もほめなかった。あの日以降。

嫌いだからですよ。

 なにをしただろうか。

山本さーん、飲みにいきません? あたしぃー。

 そんなにいいか。だったらなぜあの日みな俺を捨てた。捨てつづけた。誰もが俺をみれば顔を背けた。

山本君はうちの有望な新人だよ!

 働きはじめるためにどれだけ苦労した。履歴書? なにをどう書けばいい。なにもないとでも?

どうやって生活していたんですか。

 ああ、初めて応じてもらった。とてもうれしい。

 ぽたぽた。

独りでせっせと泣いてください。

 本当に泣いたよ。泣かないと決めていた、意味はないから。すぐに凍るから、あの大地ではなにもかも。

いただきます。

 君をいただけるなら死んでもいい。

カレーはバーモントカレーって決めているんです。めんどうなときはボンカレー。

 ボンはなんだかわからないが、君をいただけるなら死んでもいい。

 初めてうまいと想ったよ。初めて熱いと想ったよ。
 こころから望んだ。味のするごはん。

お弁当を作りましたんで。

 好きという意味だと、解釈していいだろうか。

 ぽたぽた。

帰ります。

 ここに? 俺のもとにならいつでも帰って。

コーヒーを飲む習慣はありますか。

 行く先々で飲まされた。インスタント、熱いも苦いもわからない代物。毒が入っていても同じ、毎日何杯も。

 熱いんだな、知らなかった。うまいにがみ、よく聞く言葉。初めて理解した。

 ぽたぽた。

 弁当はいつ以来だ? 確かピクニック、とか……で、だったような。

 ぽたぽた。

 人前で泣いたよ。周囲が驚いて、いよいよかというから想わずほほ笑んだ、そうだと。
 帰ったらまたいなかった。あせったらいた。君は不安そうで。いつも冷たく毅然と俺を吐き捨てるから、まるで正反対の君にそそった。

 鼓動が一緒。あたたかい。

 礼は、ほっぺにキスかと想ったよ。
 引っ越すといってくれた。襲っていいと想っていいだろうか。

 ぽたぽた。

 指輪をはめてくれた。ダイヤモンドはプロの友だちが選んだ、婚約指輪はほとんどダイヤだと。
 俺はあれがよかった。君は迷わず選んでくれた。はめ続けてくれた。大事にしてくれた。
 俺そのものだと、想っていいだろうか。

 知らないだろう君は。あの日助手席で、俺の名をつぶやいてくれたことを。

 君をおいてあの地になど行きたくなかった。もう二度と、極寒の地には戻りたくなかったのに。
 踏みしめたくもない大地で、つながらない携帯電話をにらみながら三日間、夜を明かした。

 君が怖いよ。怖いんだ、ふれれば壊されるのは俺のほう。

 好きと言って、好きと。起こして、俺を。
 笑って言って。

起きて、忠弘。

 ああ、思い出した。いわれたな、毎朝。
 よく寝坊した。寝覚めが悪くて、いつもぐずって。
 あの日の夕飯はなんだった? 思い出せない。

もう動かないの?

 惚れた女はイって動かない。びっくんびくんも射精しおえたらとまった。つかの間の休息。

動かないよ。

 ぴくりとも動かない。のどをあらわに見せて。そこは急所だ、鍛えられない。決して。
 崖、谷、急流、何度も足を滑らせ落ちた。のどをやられたら即死だった。激痛もなく死ねただろうに。

だって。

もう。

 動かない。組み敷いて動かない、惚れた女。

「……さぁ、や」

あれは、

 ぽたぽた。ぽたぽた。

単なる、

「さぁ、や……」

 病院の霊安室。重なるどころか、どっちがどっちかもわからなくて、分けられなくて放置された、混濁するどす黒い2人分の物体。もつれあう鈍く光る番いの認識票。

むしりとっていたんだって、客から金。

金の亡者だって。

文字どおり死んで当然。

その息子がなぜ生きている?

 ぽたぽた。ぽたぽた。ぽたぽた。

 もとは生きた、生きて俺を迎えてくれたはずの、

「さ、ぁ、や……」

生きていないんだ。

だって、

これは。

ただの、

 動かない、

「さあやああああああ!!!!!」
 
 

 ゆうるり起きた。
 目の前には惚れた男の厚い胸板。がっしりとして、人ひとりが乗ってもびくともしない体躯。
 すべてに痛々しく刻んだ、大傷の数々。くちづけた。

 よく聞こえるように音をたてた。咥えるときのように大きく口を開けてむしゃぶりつき、すぼめる。舌でべろり、れろれろ。

「さぁや……」

 ゆっくりと顔をあげた。惚れた男の両目が赤くはれている。
 静かにほほ笑む。観音様のよう。

 キスした、よくなめて……いつも泣いて滂沱って。本当に泣いていたって、知っていたよ……。

「さぁや……」
「ん……」
「さぁや……言って? 全部……」

 どきどき、どくどく……だって、……愛の告白。
 一世一代。
 大きな手で心臓を守ってもらう。

「忠弘が好きだった、ずっと前から愛していた……」
「言って……もっと……」

 どくどく、どっくどく。つながっているところ、ふれているところ。激しく鼓動するところ、くちびるで乳首を攻めた。両方、愛しくて、熱くてもどかしい。

「一生、手料理を作ってあげる……」

 番いのタグにもキスした。よく音が聞こえるように。
 キスのたび中で脈打つ。感じて締める。淫欲な腰づかい。

「もっと……」

 髪を頰でそっと、優しくなでてくれる。隆々の胸筋をべろりとなめて顔をあげた。

「一生守って、すがって、甘えて、愛して……」
「もっと……」

 大きな両手がおしりに。がっしりつかまれた。

「はなさないで、抱きしめて、もう離れない……」
「もっと……」
「一緒に生きよう……忠弘……」
「うん……」

 くちびるをよせた。激しく猛々しくむさぼられる。
 伝えるために舌だけ離した。だらりたれる銀の糸。

「いつから眠っていないの……」
「捨てられた夜から……気がついたら何日も寝ていなかった、どうやって眠ればいいかわからなくなった。朝がきて、ああまた眠れなかった、明日こそは……何日か不眠を続けて一度だけ2・3時間、ただ重くて疲れた……」

 もうそんな思い、させないよ……。

「初めて熟睡したのはさぁやを連れこんだあの日……」
「私の夢、見た?」
「見た。初めての夢がさぁやだった。さぁやしか見ない」
「うれしい……よかった」

 忠弘の熱い両手がおしりを淫媚になぞる。美乳とほめられた乳房と乳首を忠弘のたくましい胸板に押しつける。

「……さぁや……前からきれいだが、今夜はいちだんと……眼鏡はどうした? 俺が見える?」
「見えるの……忠弘だけ見える……」
「うれしいが……そんなきれいだと、もう誰にも会わせたくない。皆さぁやで勃ってしまう……」
「そんなの知らない……忠弘、して、見えるところにいっぱい、いっぱいキスマークをつけて、私は忠弘の所有物だから……」
「さぁやは物じゃない……が、見えるところだけか……?」

 迫ってきて、頰をべろりとなめあげられる。ざらつく唾液にぞくぞくする。ほてったからだ、とけあうこころ。

「ぁん……全部……でも」
「どうした……?」

 声も優しすぎる。

「もう抜いてほしくないから……つけられる、ところ、に……」
「抜かず体位を変えればいくらでも……」

 さらに脈打つ怒張。熱くて激しい、猛々しくてもどかしげ。忠弘そのもの。

「ん……忠弘、なんでも言ってね、全部そのとおりにするから、なんでもいうこと聞くから、一生……」

 ちゅく……音をたてて。くちびるをふれあわせ、舌をれろれろからませて。言ってほしくてむさぼりあう。糸を切らさず伝えあう。

「だったら会社を辞めろ、月曜日朝に退職届を出せ。俺は嫉妬深い、誰にも引き継ぎするな、誰とも一言もしゃべらずその足で家に帰れ、俺たちの家を一生守れ」

 一言伝えるたび激しくキス。だらり伝う銀の糸。視姦しあう濡れた瞳。

「ね、それ私の上司に伝えて? 私、誰ともしゃべっちゃいけないんでしょう、ね……?」

 番いのタグがふれあって音がした。鼓動するたくましさの上にぴんと勃つ乳首のまわりに、人差し指でのの字を書いてあげる。

「ぁあ……いい……かわいいなさぁや……」
「お返し、して……?」

 すりよってキス。
 したくて、されたくて離した。上体を起こす。忠弘お気に入りの乳房がぷるんとゆれた。もまれてお返し、ほんのり桜色の乳輪を攻める。

「……そう、だな……いうことを聞かなければ大会社に、6割の話はなかったことにしろ、とでも……」
「ん……あと、なに……いうとおりにすればいい……?」

 愛しの乳首をぴんと弾く。忠弘は熱い大きな手で、怒張が圧迫する下腹部を淫媚になぞった。

「誰とも会わせたくない、もう出社しなくていい、家を出るな……」
「忠弘と一緒に出社したい……ずっと夢だった……」
「そう、だな……俺も夢だった。首筋に死ぬほどつけてやる……」
「ん、いっぱい……」

 忠弘に腰をつかまれてどがんばがん、ぐっちゃぐちゃに突かれまくった。ないてあえいでもまれてイかされた。愛している忠弘、よだれまみれで叫んでもう絶頂。真っ白け。
 
 

 射精の快楽が体中をほとばしる。びっくんびくん、のけぞってイった惚れた女のただれた絶景を堪能する。
 どれだけ犯しても満足できない、抜く気なし。

 惚れた女はぐったり、一見動かない。
 息をしている、熱い、こんなに。大丈夫。もう、

 一緒にと言ってくれたから。

 さっきの体位は美乳が押しつぶされて苦しそうだった。駅弁の横に寝た版、横笛でもするか。
 まだまだ言わせたいことがある。全身の力が抜けた清子とむかいあい、体に脚を巻きつけさせて、ねっとりキスして起こした。

「さぁや。愛している、起きて……」
「……ん……ぁ」
「まだだ……まだ……全然だ、さぁや……」

 ちゅく、ちゅっ。音をたてた。
 
 

 意識を淫媚に引き戻された。眠りこけちゃいけない、キスを返した。すぐさまむさぼりあう、脚に力をこめた。

 ちょっと動きにくいな……。

 何度も、何度も角度を変えてむさぼり、唾液を交換しあう。切れない糸まで視姦しあう。

「なにを……聞いてもいいか、全部、答えてくれるか、言ってくれるか……全部」

 くちびるをふれあわせて、

「うん、いいよ……全部……」

 忠弘の瞳が禍々しく変貌した。

「……なぜ大嫌いと言った」

 男のすごみ、怒りの声。

「ごめんなさい……」

 目をそらせない。謝らなければいけなかった、最初に。
 嫌われたかった、楽だから。

「そんな言葉は聞きたくない、理由を言え!」
「だって……」

 怒られて当然。熱なんか、早く冷めてほしかった。

「だってじゃない、言えさぁや!」

 熱く激しく、鼓動する心臓を忠弘がもっていく。

「だって……だって、忠弘は格好よすぎるから……どうして私?」

 下をむいてしまう。
 許されない。大きな手が髪をかき分け頭の後ろに回る。きつく、深く猛々しくむさぼられた。力が追いつかなくてただ受けた。

 急激に舌をとかれ怒声を浴びる。

「それで無視したのか、しつづけたのか、俺がどれだけ!!」
「ごめんなさい!!」
「聞きたくない!! 愛している以外なにも聞かん!!」
「……忠弘!!」

 言い訳でしかない哀願は、聞きいれてもらえなかった。

「なぜ呼ばなかった、名前も名字も、……そちらさんだと?! 二度と聞かん!!」
「怒らないで! 許して、私を愛して!」
「……さぁやに、……怒るなと……許して、愛してといわれれば……俺がとまるとでも? ……甘いぞさぁや」

 むさぼる舌も、においも甘かった。

「……どうすればいいの……なんでも、するから許して」

 忠弘の首に回した手に力をこめた。奥まで突かれるたび爪でひっかいた背中に指をはわせる。

「許して……愛している忠弘、お願い、許して……」

 もし許してもらえなかったら、どうすればいい?
 激しくキスされて、乳房をぐっちゅぐちゅにもまれて、激しく離され怒声を浴びた。

「なぜ大嫌いなどと言った、理由を聞いていない、質問に答えろ!!」
「っ、あの……自分でも、わからない」

 小声でしか言えなかった。

「なんだと?!」

 目をあわせていられない。ぎゅっと瞳を閉じて叫び返した。

「知らないあいだに言っちゃったの、どうして言ったかわからない、怒らないで、私を捨てないで!!」

 のどに顔を埋めた。

「誰がさぁやを捨てる!! さぁやこそ俺を捨てる気でいるくせに!!」

 顔をあげて、

「そんなことしない、できない!!」
「なぜ鍵を捨てた!! ずっと捨てる気でいたくせに!!」
「だって!! なんでそんな格好いいのに私が好きなの?!」
「理由は言った!!
 なぜ家を出ていった、いつも形跡を一切残さず荷物をきれいさっぱり片づけて!! ずっと家を出る気でいるだろう、いますぐ家を出ていく気だろう!!」
「しない! 愛している忠弘!!」

 ぎゅっと抱きしめあってむさぼりあった。音をたてて激しく舌をほどく。

「二度と出るな、一歩も出さん!!」
「一緒に出社できない……」

 なんでもしてあげたい。

「……なぜさぁやはそんなにきれいになった……もともときれいだが今夜はいきなりもっときれいだ。俺がいないあいだなにをしていた……」

 ぐいとあごをつかまれた。
 0ゼロ距離で迫られるたび、想いを告げられるたび。

「忠弘にされていると思いながらオナニーしていた、見たじゃない!!」
「……確かに。だが……異常すぎる……なにをしていた……一課長となにを話した、なにが勘弁だ、全部話せ」

 惚れた男の口からこんなとき、自分以外の存在をいわれたくない。

「忠弘とセックスしながら話せない、忠弘のことだけ考えているの!」
「……なにが営業トークできないだ、俺より口が回っていつも丸めこんで……言えさぁや。この先ずっとセックスだ、俺のことだけ考えながら言え!」

 もう怒った、

「なんで好きって言わないのかって怒られた!」
「……なんだと?」
「ひとめでわかったんだって、私と忠弘が両想いなこと、でも私だけが忠弘に好きって言っていないこと、全部知られていたの!」
「……本当か」
「私だってびっくりした! いますぐ忠弘に好きって言えって、でも言わないって言った!」
「……どう、して?」
「だって忠弘、言ったらあの場で私とセックスして仕事しないでしょう?! そんなのいや!!」
「……いいのに。よかったのに」
「だめ、ちゃんと仕事するの!!」
「……。うん」

 惚れた男がちぢこまる。

「さぁや……怒るな……」

 甘えすがる困った顔。
 ね、どれだけ愛しいかわかっている?

「怒らない!! 愛している忠弘!!」

 くちびるをよせると熱くむさぼってくれて、激しくからめると応えてくれた。
 だらり、銀の糸を切らさずに、

「休みの日に忠弘とセックスしたかったの。
 そういう意味だって、謝りにいった仕事中になにさせる気だ、わからないのかって言ってやったら、一課長黙ったの!」

 喜色満面、とろけるような笑みを浮かべた。

「さすがださぁや。最高だ、さすが俺の妻だ」
「当然っ!」

 キスして楽しく舌を離す。

「ね、結婚指輪は? 妻はずっと待っていたんだよ」

 きまりが悪そうに、

「……忘れた。さぁやとセックスすることしか考えていなかった」
「もう。よく出世できたね」

 瞳が禍々しく変貌する。

「まさかいまさら仕事ができん男は大嫌いだなど言うまいな……」
「大嫌いだよ? でも忠弘は好き」

 髪をなでてあげた。よしよし。

「順番を逆にして言ってくれ。心臓が停まったぞ」

 同じく返してくれた。喜色満面ですねて怒鳴り飛ばして、相も変わらず忙しい男。

「忠弘の心臓を停めるのは、私だけ」

 こんな男に惚れちゃった。

「こんな女に惚れたな……さぁやも営業にくるか?」
「私が営業事務していたらあんなことおきなかったのになあ。うちの人事は本当にだめだね」
「まったくだ。
 ところでなぜそんなに突然きれいになった。話をそらすな、営業トークがうますぎる」
「じゃあ、愛しの忠弘にだけ」
「ああ」

 ちゅくちゅく、ちゅうちゅう、舌をれろれろ、ふざけあう。

「一課長のところにコーヒーを運んでいた美女がいたでしょう?」
「さぁやが美女だ」

 なんとなく、相性が悪そう。

「とにかくいたの。ほら、忠弘を山本某とか呼んでいた人」
「別に」

 興味ないみたい。

「一課長を黙らせたら、一課長から一本取った人は初めて見た、おまえの人生を変えてやるって、さっきまでエステで顔も体も全部磨かれていました」
「いましただと。全部だと。俺以外に裸を見せたのか」
「この歳でなにもない、はありえない。でしょう?」

 セフレとかいきなり。あのときはびっくりした。

「……やめよう。こんな話はセックスの最中にするものじゃない。
 それで。エステとやらへいくとそこまで突然きれいになるのか」

 実にわざとらしい話題そらし。よく営業やっているな。

「なんだかねえ、今日で日本一の女にしてみせるって豪語された」
「……ひょっとして、眼鏡がなくても見えるのはコンタクトですらなく、レーシックか」
「わかるんだ」
「ほかはなかろう」
「じゃあ、えっと。一課長と美女いわく、自分たちの人脈はけっこうある、だって。日本一の店リストを送られちゃった」
「……なんだと」

 一番怒られる話はなんとか終わりにしてもらえた。もう怖いものはない。
 はず。

「忠弘の誕生日プレゼントを買ったの。もらって?」
「日本一の店で買った? そんな天井知らずな金、どこに持っていた」

 興味ないみたい。欲しくないのかな。いらないのかな。

「えっと。私がいくと、お金をとられないの。ただみたい」
「……なぜそんな人脈を総務一直線が持つ」

 また怒って。でも、こういうところもいい。

「どうして営業は総務を下にみるの? 総務のほうが偉いの!」
「……そのとおりといわされそうだ」

 絶対いわせてみせるから。

「待て、プレゼント……俺にくれるのか?」
「うん。一生、忠弘にだけ贈るから」
「うれしい……」

 よかった、喜んでくれた。ほっとしてキス、すぐに激しく返される。

「さぁや、中身はなんだ? どこにおいてあるか知らんが抜かんからな」
「えっと。腕時計」
「……なんだと」

 お怒りだ。こういうところもいいからキスしまくった。

「いやなの?」
「そうじゃない。うれしいが……俺がさぁやに買ったものより高いということじゃないか」

 そこを考えるか。困った夫だ。

「もう、へんなプライドは捨てて」
「俺からプライドと牙をとったらなにも残らん。……リスト? ……ひょっとして宝飾店もか」
「うん。ほかにもすごくいっぱいあったよ。抜かれたくないからあとで見てね」
「俺のプライドが……結婚指輪も贈れん」
「欲しい! 忠弘が欲しい!!」

 脚もぎゅっとからませた。全身つながりあったまま。熱い怒張、本当に大きすぎ硬すぎ激しすぎ。よく会話できているな。

「くれている!!!」
「ぁんっっっっっっっ!!!」

 過激に突かれた。体位が変わって組み敷かれ、がんっっがん突かれる。
 ぶじゅぶじゅ、ぐじゅぐじゅ、どっかんばがん。激しすぎて白濁は奥のまた奥。意識が飛んで真っ白け。
 
 

 目覚めたとき、むかいあってつながっていた。
 一瞬だって手放す気のない、あまりにも愛情多過な夫。

「いいかさぁや。この先一生ずっとセックスだ、わかったか。話をそらすな。……友だちに頭を下げて返品するんだぞ……」
「がんばってね
「……降参だ。さぁや、一生降参だ……」

 がっくり肩を落としてうなだれる。勝った。

「やっとわかった?」

 夫の髪の毛にキス、忠弘はすぐに顔をあげた。やはり困った顔、すねていた。

「やっとわかった……それでも愛してくれ、一生……」
「うん!」

 自信あるよ? たーっぷり。

「ね、いつ結婚するの? 月曜日朝まで抜かないんだよね、何曜日?」
「……いますぐしたい。このまま役所へいこう」
「できるわけがないでしょ!」
「……わかっている。言ってみただけだ」

 無防備な5歳児がたまらない。

「いついくの?」
「……抜きたくない」
「あの、ちょっと、……トイレとか……」
「ああ、……まあ。そのときにいこう」
「もう。あ、そうそう。忠弘に驚かれたくないから先にいうね」

 頰をべろりとなめあげた。

「……なんだその不穏当な発言は。何度俺を地獄に突き堕としたら気が済む」
「日本一のお店で服とか靴とかバッグとか大量に買わされちゃった。おくところがないでしょう? 都心一等地の大きなマンションに引っ越せって豪語されちゃった」

 がっくり肩を落とす忠弘。

「……待て。……服? 1着しか……ほかにも贈りたかったのに大量だと? ……おくところ……待て、不動産会社の息子にまで俺は頭を下げるのか」
「うん、そう」
「簡単にいうな。ここはむりを重ねて格安で紹介してもらったんだぞ。もっといいところを見つけたから引っ越すなど失礼だ。友だちの好意を無にしろとでも?」
「忠弘の人脈がその程度ってことだけど?」
「……大嫌いより傷つくぞ。頼むからこれ以上俺を地獄に突き堕とすな。なぜセックスの最中に奈落の底に戻らなければいけない……やっと結ばれたのに……」
「ね、すけべな下着の私とか見たい?」

 忠弘は困惑していた。

「……なんだそのはしたない単語は」
「見たくない?」
「見たい。死ぬほど見たい。一生セックスしよう」
「うん!」

 激しく致す外では、気の早い鳥がもう鳴いていた。
 
 

「……たぶん、夜が明ける。よく持ったなさぁや、偉いぞ。……少し寝るか?」

 いくらなんでも、もうぐったり。

「さぁや……」
「……ん?」
「いつから俺を好きになった……ずっと前からはわかっていたが……いつからだ」
「やっぱり……」
「なんだ……」
「君が好きだ、……から、かな……」
「……理由を言え」

 ずっと髪を頰でなでてくれる。おっぱいもみもみ。

「君の手料理が食べたいからいっぱいそれらしいことをいわれて、……私が好きなんだって、はっきり言ってもらうとうれしい……どっきどき、した」
「……そうか。通じてはいたんだな」

 乳房をもむ手に手をそえた。
 とけあった熱さ、ずっと一緒。

「うん。ごめんなさい……好きだった、でも意地を張りつづけて……」

 ひどいことばかり言いつづけた。しつづけた。この男でなければとうに見限った。

「俺の性欲をあおりつづけただけだ」
「ごめんなさい……」

 もし忠弘の熱が冷めたら、どれだけ失望しただろう。もう、遊び感覚の合コンもなにもかも、どこへもいかないし、なにもしなくなる。

「聞かない……謝るな、もう必要ない」

 ぎゅっと、大きくて熱い手を握った。

「いい……もう眠ろう、……もう……」

 目を閉じた。

「眠れる、さぁやとなら……ずっと」
 
 

 目覚めたとき、残念ながらずる抜けていた。息できるよう枕を整えて清子をうつぶせに。
 脚をがばりと広げて割れ目を視姦、堪能する。
 いいながめ。敏感にした箇所にキスした。
 たまらなかった。鎌首をもたげた怒張を突き挿れる。

「……ん……ぁ」
「起きたか? さぁや……おはよう。愛している」

「おは……ょ、ただ……ひろ……愛して……る……ぁ、ぁ……あっ……」

 ゆるり、ゆうるり。あふれてなく惚れた女。

「腹が減ったろ……これがおわったら、食おう……」
「……ん、でも……ん、ん……」
「しかたがない……一生抜く気はなかったが……少しだけだ、食ったら襲う……」
「……ん……はぁ……っっ」

 名残惜しくも引き抜く。あふれる手料理をすべてなめ吸いつくした。

「さぁや。起きて。朝だよ。飯、手料理を食わせて」
「ん……」

 ごはんに反応してくれる。美乳をもみつづけた。

「いま、なんじ……?」
「同感だ、さぁやのプレゼントが欲しい。どこにある?」
「……荷物の部屋」

 ロマンティックにお姫さま抱っこという発想がなくて、裸のまま一緒に。荷物の部屋を開けた。

「そのへんにおいた……」

 品の隣にあぐらで座った。清子の両脚を広げてまたがせる。首に腕を回してくれた。
 包みを開ける。バレンタインを思い出す。

 絹の風呂敷も桐の箱も、品を包む絹布も超一級品。守られた時計も超一級品。
 値段は天井知らず、ではなく、つけられない。値札は外されたのではなく、最初からない。
 この世でただひとつの品。

「さぁや、文字盤の色……」

 みたとき、プライドを忘れた。

「指輪と同じ……?」
「うん、そう……男物の時計ってどう選べばいいかわからないし、ああいうお店のは性能とか全部いいって聞いたから、たんに見た目で選んだの。これだ、って……」
「……うれしい」

 時計を左の手首にして、みせた。

「気に入った、さぁや。ありがとう」
「よかった……」
「誕生日のと聞いたが……俺の誕生日はまだ先だ、……前渡し、か」
「ううん、違う。去年の分」

 ちゅう、ちゅう、キスしてくれる。同じく返した。何度でも一生。

「……去年?」
「うん。ほら忠弘、欲しかったんでしょう。今年のは別なのを考えて贈るから。毎年ずっと一生贈るから。なにか欲しいものがあったら言ってね」
「だったら……誕生日とは関係なく……頼みがある」
「いいよ、なんでも。全部そのとおりにするから。なに?」
「これと同じので、女性用を作ってくれるよう、頼んでくれないか。さぁやとそろいの時計がしたい」

 鎖+指輪+時計、3点全部おそろい。

「……うん! すごい、すてき!」

 そろいの品を誰に作ってもらえばいいかわからない。自力でできない。
 プライドを曲げ、白旗を掲げた。

「さぁや」
「ん?」
「結婚式しよう」
「……ここで?」

 明かりもつけない物置の畳のうえ。

「ううん、……あのな」
「ん?」
「営業の知識として、結婚式に出席してほしい客に招待状を出すのは3か月前が妥当といわれる」
「うん。話したいんでしょう?」
「そうだ」
「せめてリビングでしようよ」
「このまま裏忍び居茶臼はだめか」
「もう」
「さぁやとセックスすることしか考えていない」
「もう……」

 清子を右腕に抱きしめそのまま立ちあがって、リビングへむかった。

「いま何時?」
「午前10時すぎ」
「のどがかわいた。水を飲まない?」
「うん。さぁや、腹も減ったろ」
「ん、でもお話を先にしよう。あ、水は飲みたい。忠弘もでしょう」
「うん」

 リビングのソファーに座る前に、冷蔵庫のミネラルウォーターを。
 冷蔵庫前で清子を下ろす。左腕で清子の腰を抱きしめて、右手で冷蔵庫を開ける。

「ね、忠弘。あれで飲もう」
「……?」

 2Lのペットボトルを出して冷蔵庫の扉を閉める。
 銀色のコップは、安物の薄いステンレスコップに一見似ていた。

「チタンコップっていうの。私のお気に入り」

 よりそってくれる、さらに抱きしめてシンク隣にペットボトルをおいた。

「お気に入り……」
「うん」
「やっと物をおいてくれた……」
「……あの」
「うれしい。やっと……」

 コップに水をくむ。

「さぁや、先に飲んで。間接キスしたい」
「……ん」

 清子がコップ半分を飲んで手渡してくれた。
 受け取って、くちづけた箇所、コップの縁をべろりとなめて、そこからのどを鳴らして全部飲んだ。

「……うまい」

 深くふかく息を吐き出す。かみしめた。

「よかった」
「……水がうまかったのは初めてだ」
「もっと飲む?」
「うん。もっと飲みたい……さぁやを飲みたい……」
「……ん」

 2リットルを飲みつくして、チタンコップをおく。腕を回して、同じ味の口内をむさぼりあった。
 名残惜しくも銀の糸を残し、清子を右手で抱きしめてソファーに座った。

 さっきの体勢だとつい対面座位の茶臼をやってしまいそうになるので、清子を横むきに、膝のうえにのせて話しはじめた。

「さっきの続きだ。式に招く客に招待状を出したい。
 俺には血縁者がいない。ふつうは招くだろう親類がいる披露宴はやりたくない」

 惚れた女の、めったにない表情。

「あの……」
「俺の昔は、か」
「……うん」
「忘れた」