もしも雪の日の邂逅がなかったら?

4

 翌日の放課後、部活にて梅子、
「そうだ、遼太郎。部活始める前に。勉強、教えてくれてありがとう。ほんとに百番台になった。自信ついたよ」
 あの梅子のセリフとは思えない。
「そうか。ま・教えた俺様がいいからな。今度は二桁だ。お前、高卒で就職するとか言っていたが、このままなら大学入れるぞ。それは考えていないのか?」
「大学? うーん、そこまでは……うち、貧乏なんだ。だから、地道にがんばる方向で行きたい」
「そうか。だったらな、今から公務員試験の勉強を始めろ。本屋に売っている筈だその手の書物は。今始めれば、ものすごいアドバンテージになる。プログラムの勉強もいいが、そっちもやっとけ」
「……」
「なんだ」
「高校って、いいとこだなと思って」
「なんだよ、いきなり」
「だって高校になったら誰もわたしの名前で笑わないし、いじめないし、友達は出来るしいいこと言ってくれるひと何人も……なんでだろ。どうしてだろ」
「お前が積極的になったからだろ」
「え?」
「お前は今まで、誰かがアクションを起こしてくれるのをただ待っていただけなんだ。お前から行ったから、リアクションがいい具合に来た。それだけのことだろ」
「それだけ……」
「ひとの好意はありがたく受け取っとくんだな。で、なにかの形でお前らしく返せ。それでいいだろ?」
「……うん!」
 梅子、教えてくれる遼太郎の為に、公務員試験とプログラムの勉強は絶対両立させてやる、と意気込む。

 さて時は流れて七月。高校サッカー県大会一回戦。日付は土曜。
 梅子は、井上とは選択授業の時しか喋らなかった。なぜなら井上は朝練・昼練・部活と忙しいからだ。あと、梅子は回りからへんな目で見られたくなかったので、自分から井上の机に寄る事は避けていた。その代わり、美術では言葉を交わした。
 で、球技場で。
「マコ……おそいな」
 待ち合わせにマコが来ない。ケータイは留守電、メールを入れてもうんともすんとも返事が来ない。
「しょうがない、もう球技場入んなくちゃ……」
 もちろんマコは気を遣ったのです。当然よね。
 梅子、なるべく席をピッチ近くに取り、観戦。サッカー部くんの背番号は十四、クライフです。
 サッカー部くんは、広い客席のどこに梅子がいるのか、一目で分かっていただきましょう。
 ──あそこにいる。
 そしてサッカー部くんは宣言通りゴールを決め、梅子に向かってガッツポーズをとるのでした。
 試合はA高の勝利。A高はサッカーは県下有力校なので一回戦くらいは突破出来るのです。すごいすごいと思った梅子、さっそくメールでお祝い。
 お祝いと言えば、井上君に誕生日プレゼントとか上げたらどう? と思い立つ梅子。
“誕生日、いつ?”
 そうメールを打つと、すぐ返事が返って来ました。
“その日はチョコくれ”
 つまりはヴァレンタイン・デー。
“斉藤はいつだ? なにか贈るよ”
“八月、三十一日”

 翌日、日曜。梅子はまたしてもマコから呼び出され、ここ店に来ていた。
「で? どこまで行った? C?」
「あのねえ!」
 梅子、顔を真っ赤にさせて怒る。
「せっかく気を遣ってやったんだから、行くとこまで行きなよ」
「だから! もう、昨日わざと来なかったのね!?」
「トーゼンじゃん。なんであたしがあんたらカップルの間に入んなくちゃなんないわけ?」
「カップルじゃないって!」
「あのね? ウメコ。君の為にゴールを決める、なんて気のないオトコがオンナに言うと思う?」
「う……」
 それは、梅子といえど薄々気付いていた。
「あんた西川とくっつくもんだと思ってたけどあっちは難敵がいっぱいいそうだから、井上にしとけば?」
「だから! もう……」

 さて、期末試験の時期となりました。部室に梅子を引きずった遼太郎、生き生きとしてこう言います。
「さーあ梅の字スパルタだ。生きてガッコから帰れると思うなよ」
 梅子は学校のあり方そのものをふかくのろった……

 遼太郎の御陰で成績は二桁になることが出来た梅子。二桁と行っても九十番台だが、それでもすごい。梅子は遼太郎の言う通り、もうすでに公務員試験の準備を開始していた。部活は夏休み、ないからだ。
 その夏休み、梅子は遼太郎にこう言われていた。
「というわけで、俺様は長の休みは管内を出る。お前にもしもピンチが訪れた場合、スーパーマンじゃないんだからして助けにゃ行けん。どう過ごしてもいいとは思うが、外泊とかはする場合、気をつけろよ。俺様は違うが、フツーこの年頃の野郎なんつーもんは女とセックスする事しか考えていないんだからな」
 梅子、そんな言葉をはっきり言われ返す言葉がありません。
「お前は現在に至るも家から携帯所持を認められてないんだろ? その上妊娠しましたなんざ言ってみろ、勘当だな」
「そっ、……そんな事ないもん!」
「お前、俺様の情報網をナメてるな」
 やばい、と咄嗟に思う梅子。
「俺様ほどじゃないがモテるサッカー部の某男子と付き合っているんじゃなかという話を耳にした」
 な、なんて噂の回りの早い地域だ。そう思う梅子。
「聞いた所に寄ると、サッカー部の観戦をしているそうだな、ガッコが休みのときは全部」
 もはや梅子、返す言葉がありません。
「全国大会の切符を見事手に入れたサッカー部と帯同して、家にナイショで都会に行って、試合に負けた腹いせにラブホに連れ込まれてヤられて妊娠して帰って来ました、ってのが関の山だアホ」
「……井上君はそんなひとじゃない」
「ふーん。井上か」
「え?」
「俺様は某男子と言っただけで、お前の本命の男が誰だかなんざ知らん。噂でも名前までは上がっていない」
 このー……と梅子は思うのであった。
「そうか、井上か。俺のラ……は」
「は? 今なんて言ったの?」
「いや別に。とにかく、全国大会に行くのは止めとけ。ケータイ所持を認められていない家から旅費なんか出るかこのビンボー娘」
「うっ」
「大人しく家で試験勉強でもしていろ。分かったな!」
 しかし梅子は、新幹線とホテル(シングル)の切符を井上からプレゼントされていたとは言わないのであった。
 梅子、外泊はマコとした、という口裏をマコと合わせます。不良娘道真っしぐらの梅子。さあ、ヤられてしまうのか梅子!

 サッカー部は一回戦突破します。何年ぶりかというくらいの勢いで。
 次の試合まで日がある井上、梅子をホテルの部屋から呼び出してロビーでお話していただきましょう。ふっふっふ、さあ梅子はヤられるのか!?
「良かったね井上君! 初戦突破だよ!」
「ああ。斉藤の御陰だ」
 珈琲を傾ける二人。
「やっぱり、井上君の」
「あのさ」
「?」
「俺、フルネームいのうえともはるってんだが」
「そうなんだ? 初めて知った」
「斉藤は?」
「?」
「フルネーム」
「えっと……梅子、です」
「じゃ、梅子。……で、いいか」
「あー……うん。いい、です」
「じゃあ俺は?」
「えっと……」
「君付けなんかしなくていいぜ」
「……っと……とも、はる」
「ん、それでいい。それで……梅子。俺のなんだって?」
「えっと……知治の淹れた珈琲が一番、美味しいです」
 すると井上は持っていたカップをかちゃりと置く。思わずそれにならう梅子。井上は、そんな梅子の両手をあったかく握りしめるのであった。
 そして井上は、梅子の手を握ったまま立ち上がる。そのまま会計をして、エレベーターに乗って上に。
 どこに行くのか。なにをするのか。梅子だって女だ、大体分かる。でもこんな時に? まだキモチも整っていないのに?
“男はセックスのことしか考えていない”
 ──ほんとにそうなの?
 チーンと音がしてエレベーターが梅子の部屋のある階に辿り着く。そして部屋の扉の前にいたのは、勿論我らが遼太郎。
「よ。不良娘とセックス男」
 ここで初めて、井上は梅子の手を離します。
「梅子。悪いがさっきのロビーに戻ってくれ」井上。
「梅子!? ウメコねえ! そーかそーか、そういう仲か」遼太郎。
「……戻れ、梅子」井上。
 こんな低い声を、梅子は聞いた事がありませんでした。
「そうしな、梅の字。俺はちょっとコイツと平和的な会話を致しますんで?」遼太郎。
 梅子、怖くなってエレベータに走る。
「さ……観客がいなくなった所で。
 ストリートファイト。始めよか?」遼太郎。
「……望む所だ」井上。

 梅子は、怖くなって怖くなって、エレベーターのなかで必死にメールを打っていた。手がふるえる、指が思う通りに動いてくれない。マコに助けを求めた。
 するとマコはメールではいけない話とすぐに察知、電話をする。
「ウメコ、今どこ!?」
「ホテルのロビー」
「ホテルぅう!? もうヤられちゃったの!?」
「そっそれはまだ」
「まだぁあ!? じゃヤられる寸前!?」
「えっと、ええっと……多分、そう」
「ちょぉ待て待て、ケータイ切るなよ! このまま! あたし女史に言う! いいよな!!」
「う、うん」
 梅子、半べそかきながらさっきの椅子に座る。
「ウメコ、今から言う住所にタクシーで行きな! 料金はそこのひとが払う、あんたはとにかくそこを出ろ!」
 和子ん家は裕福なので、別荘が都会にもあるのです。そこに逃げ込め、とマコは言うのです。
「わ、分かった。ありがとうマコ」
「おう! いったん切るけど、なにかあったらすぐ掛けな!」
 そして梅子は泊まる予定だったホテル名を吐かされ、その日のうちに管内・森下邸へ強制送還されたのでした。

 翌日・森下邸にて。
「これで分かった……? オトコなんて、オンナを組み敷こうとしか考えていないのよ……」
 梅子、泣きながら。和子の淹れた紅茶を飲んでいます。トイメンにはマコ。
「それで、あの二人の喧嘩の結果だけど……井上君は、負けはしなかったようね」
 井上の名前に、ぴくりとする梅子。
「連絡を入れて探ってみたの……あの後、チームにきちんと合流したそうよ、五体満足で。でも……」
「でも? なに、女史?」マコ。
「井上君と遼太郎は共に空手二段よ。ただし、遼太郎はその他の格闘技でもたくさん黒帯を持っている……はっきり遼太郎の負け、と言えるかどうか……」
 梅子、怖くてあの二人にはもう会えないと思った。
 梅子、和子の家の車で自宅まで送ってもらう。とぼとぼと帰る梅子。
「ただいま……」
「おう、お帰り」
 そう快活に言ったのは、遼太郎そのひとであった。
「りょ、りょうた……」
 梅子、絶句。
「おう帰ったか梅子。遼君にな、家の手伝いしてもらったぞ」斉藤父。
「ええ!? なにそれ」
「聞いたぞ梅子、遼君の御陰で学校の成績上がったってな。ちゃんとお礼をしなければ駄目だぞー」斉藤父。
 お礼はしたし、するなら普通はこっちから向こうへ訪れるものじゃない? と思う梅子、空いた口が塞がらない(用法間違い)
「玄関に突っ立ってないで入りなさい、梅子」斉藤母。
 仕方なく梅子は帰宅するのであった。
 この二人の間でなにかあったと察知する斉藤父母。時間差で居間から出てゆく。で、二人きりとなって。
 遼太郎の様子は変わらない。のんきに茶なぞすすっている。見た目、殴られた雰囲気はないし、怪我しているわけでもない。
 そう思って見られているとは、遼太郎も分かる訳で。
「礼は?」遼太郎。
「……」梅子。
「お前の貴重なバージンを守って上げたお礼」
「……あれから、どうなったの」
「殴り合いでもすると思ったか? バーカ。有段者同士だ、口答で済ませて実戦は回避するもんだ」
「……そうなんだ」
 どんな“口答”だったものやら……。
「ただし。これだけは分かっただろ、やつはセックスしか頭にない野郎だってな。まさか梅の字、あの場に連れて行かれた意味がそうだと分からない訳じゃあるまい?」
「……」
 梅子はうつむくしかなかった。
「全く。俺様はスーパーマンじゃないと言ったろ。お前、もう管内を出るな。行き先はせいぜい店、あるいは森下邸だけにしとけ。お前の為に言っている、傷物になりたくなかったらな」
「……」
「それとも、俺は単にお邪魔虫だったか?」
 ここで初めて梅子、顔を上げます。
「ナマエで親しく呼び合っていたな。お前はあいつが好きなのか?」
「……わたしは……」
「うん」
「恋愛なんてやったことなくて……」
「うん」
「ひとから、好意を受ける事に慣れてなくて……」
「うん」
「だから、好意を受けたら応えなくちゃ、って思って……」
「うん」
「それで……」
「それで流された、ってか。訊くが、好きだと言われたか」
「! ……ううん」
「それすらまだなのに部屋に連れ込まれそうになったのか」
「……」
 梅子、またしても顔を上げられません。
「正直、俺はお邪魔虫かと思わんでもなかった。だが、お前はどう見ても恋愛初心者だ。まだ段階を踏むべき時期と見た。だから邪魔した」
「……」
「俺は高校生を満喫しろと言った。だから、恋愛は結構だ。だが段階を踏め。少しずつでいいだろ? なにを焦る必要がある」
「……」
「まあ、焦ったのはこの場合、向こうだがな」
「……」
「謝罪のメールなり電話なりがあると思うが、取り敢えずほっとけ。向こうもまだ、頭に血が上っている時期だ」
「……」
「お前、好意のなんたるかも知らないんだろ。まず友達を作れ。中野だけじゃなくな。そこから始めろ」
「……うん」
 遼太郎が帰り、自室に戻ると、確かに携帯には井上から謝罪のメールおよび留守電が入っていた。
“済まない、梅子”“けど、間違ってもへんなことをしたかったわけじゃねえ、ただ二人っきりで話がしたかっただけだ”“信じてくれ”“連絡、待ってる”
 梅子は、自分一人では解決出来ない、と思った。
 ──マコと女史に相談しよう……。
 後日、女史の家に赴くと。
「なるほどね……」
 梅子は楽になりたくて、洗いざらい吐く。森下女史は相槌を打った。
「でも、部屋に連れ込まれそうになったのは事実……私は相対する二人の意見、遼太郎に軍配が上がると思うわ……?」
 するとマコも同意する。
「あたしもそう思う。なんでそんなに急いだんだろ、井上のやつ。なにかあったんじゃない?」
「連絡……入れるべきだと思う?」
 と梅子が言うと、マコ・女史、顔を見合わせ、
「しばらく……一人になりたい。と、入れてはどう? ……斉藤さん。怖い思いをしたのはあなたなのだから」
「……分かりました……」
 夏休みももうすぐおわり。梅子のケータイに、時を同じくしてメールが入った。一通目、遼太郎。
“お前の誕生日パーティーをしてやるよ。女史の家に来な。俺に中野、慶も来るぞ”
 二通目、井上。
“誕生日を祝いたい。俺の家に来てくれないか”
 こんなメールに、梅子は一人で対応出来ません。マコに相談。
「でさあ……あんた一体、どっちが好きなの?」
 梅子、応えられません。
「それによって、じゃない? ようはあんたの気持ちだよ」
「わたし……」
「うんうん」
「と……井上、君は、その……そういうことを考えたんじゃなくて、単にお話ししたかっただけって、言う方を、信じてる」
「それで?」
「でも、遼太郎はわたしにいろいろよくしてくれて……だから、遼太郎の言葉に嘘はないと思う」
「それで?」
「だからどっちにも行けない……」
「そ。っか」
「うん」
「じゃ、そうしな?」
「……え?」
「それがウメコの、嘘偽りないキモチなんだろ? じゃ、そうしなって」
「……」
「そうしな! 連絡はあたしが入れてあげる」
「……」
 しかし、梅子は学校が始まったらクラスで井上に、部活で遼太郎に会うのだ。
「でも……わたし、学校で二人に会うし……」
「いいからいいから!」
 本編の梅子なら、間違いなく自力で解決するだろう。だがそれは、中三の、凄絶ないじめに遭ってもそれに立ち向かって行ってはじめて身に付いたものだ、この話でそんな度胸はない。梅子、マコにおまかせすることに。
 その頃、西川家に客が訪れていた。いや、客というにはあまりにその家に馴染んでいる男、成田斉志。
「なにぃ、来ない? なんでキミがそれをボクに言うのかね?」
 遼太郎、家にいることをいいことに、酒瓶を水のごとく飲みながら。
「そんなの察しなよ西川。じゃ、伝えたからね!」
 マコ、ガンと電話を切ります。
「どうした遼。誰か来るのか?」斉志。
「ああ、ちょっとな。俺のしょーもねえ弟子がよ、とある野郎にヤられかかったんだ」
「下らん」
 ふふふ……斉志君? キミぃ、そんなこと言ってられなくなりますよ?
「ところで斉。お前ナニ、大都会に出たのにまだ童貞?」
「……」
 斉志、遼太郎に突っ込まれて返答出来ないのはどの話でも同じ。
「金をやるから筆下ろししとけ」
「……」←視線で“余計な世話だ”と言っている。
「なにしに来たんだよ」
 斉志はこんな田舎、もういやだと言って出て行っているのです。それが、どうしてまた舞い戻ったのか?
「おじさんの様子を見に、だ。また病院からの薬が増えているだろ」
「ああ……ま、そうだけどな。オヤジも歳だ、ある程度はしゃあねえ」
「お前はどうだ」
「俺様? セーシュン満喫中」
「そうか」
 斉志は、遼太郎が女断ちした理由を知っています。出来ればいい彼女をつくって青春を謳歌して欲しいとは思っているものの、自分がそういった分野に関心がなく、うといので、口で上手く言えません。
「お前は大都会に出て正解だよ。こんな田舎にかかずる必要はない」
「ああ」
 さてマコは井上にも電話します。
「というわけだから。あたしが伝えたって意味、よく考えな」
「おい待てよ!」
「待たないよ。あんたがどう思ったかなんてどうでもいい、なんで部屋に連れ込もうとした!? それがどういう意味かなんて、言われなくても分かるだろ!!?」
「だから、ただ単に二人っきりで!」
「そんなのホテルのロビーでも出来るだろ! 焦んなっつってんだよこのガッツキ男!」
 マコ、思いっきりがちゃんと電話を切ります。
「……でも、誕生会自体はやりたいな。ウメコに電話~、っと」
 さて、夏休み最終日・八月三十一日。森下邸にて。
「誕生日おめでとう~ウ・メ・コ! これ、あたしと慶からプレゼント!」
 梅子、でかーい熊のぬいぐるみを頂きます。
「わー……うれしい、ありがとうマコ、慶ちゃん!」
「う~~、おめでと~~」
「おめでとう、斉藤さん。わたしからもお贈りさせてもらうわ……?」
 和子からのプレゼントは、一見華奢なつくりの腕時計であった。
「ありがとうございます!」
 そうして場は和んだのですが……
 ほんわかとした場は、突然の訪問者によって破られました。そう、あの三人の登場です!
「よーお梅の字、俺達をのけ者にしようなんざ百年早いんだよ」
 そこには遼太郎、井上、そして斉志が。
「こいつ成田の斉っていうんだ、俺の相棒。今回は仲裁役っちゅーかレフェリーで連れて来た、俺と井上のバトルの抑え役にな」
 井上、いつもの、やさしい瞳で梅子を見ます。梅子、ついきゅんとなってしまいます。
「さあ、今度こそ遠慮なしだ。井上、来い!」
 しかし斉志はすでに、野郎二人なんざ見ていません。梅子に釘付け。
「うめ……の、じ?」斉志。
 遼太郎、斉志がいままで見た事のない表情で梅子をガン見しているので、解説して上げました。
「ああ、あのトロ女? 梅子って言うんだ、斉藤、俺の不肖の弟子。こいつがまた……」
 斉志、すでに遼太郎の言葉なんざ聞いていません。さあ、野郎三人対梅子一人、バトルの行く末はいかに!!