もしも雪の日の邂逅がなかったら?

2

 さて、このマコからの質問であるが。
 マコはこの時期、こんなんばっか「友達」連中と話していた。そういうやつだからこそ、坂崎は言葉は習ってもマコを嫌っていたのだが。
 だから、この質問はマコにとってデフォルトである。それを梅子がどう思ったかは、
「ええっと……ううん、そういうのじゃない」
 と梅子が下を向いていると、
「なになに、俺様がどうだって?」
 と、遼太郎がこの二人の直脇に無理矢理入り込んできた。びっくりする二人。
「俺に惚れると火傷するぜ」
「そんなんじゃないってば。もう、どこから聞いて……」
 梅子を気にせず、遼太郎マコに訊く。
「あんた中野っていうんだよな。慶のコレ?」
 わざとらしく小指を立てちゃったりして。
「そんなんじゃないよ!」
 マコ、(この当時は)ほんとにそう思って言ったのだが、
「と、あんたはこいつに訊いた、ようなもんだぞ?」
 遼太郎、そういう質問はなしにしろと言外に。マコ、意図が分かって言葉が出ない。
「そりゃともかく、慶のバカと三人で遊べばいいじゃん」
「……やっぱりあたし、場違い?」
 マコは、最近管内有名人が一堂に会していると聞いて、そういう場に出てみたいと思っての事だった。だが発言するでなし、このまま行けば単に出歯亀根性野郎だ。
「いや、そういう訳じゃない。さっき聞いたところによると、あんたこいつと友達になってくれるんだろ?」
「もう、どこから聞いていたのよ……」
 梅子、あきれる。
「俺は耳いいんでな。そろそろこんな集まりもおひらきだ、友達って成果があってよかったじゃん。じゃ中野、こいつヨロシク」
 そう言って遼太郎はふたたびモニター付近に戻った。

 模試明けに、合同祭の組を決めるべくくじ引きをする。遼太郎、マコと同校の木村に言って、マコが何組になるか決まったらソッコーで知らせるように言っておく。梅子と同じ組になれるように。騒動がないので、遼太郎はF組へ盾の斉志がいなくとも行きやすい。マコ、桃色を引く。遼太郎、すかさず梅子を同組に。
 合同祭の話し合いも佳境を過ぎ、ふつうに部活をやる日、となる。部活中はマジ集中。六時となって、部活上がり。遼太郎・梅子、二人自転車置き場まで一緒に歩いて行く。
「俺の誕生日、近いんだ。何かよこせ」
「あのね。いきなりそれはないでしょう」
「五月二日な。GW中だが平日だから必ず気合いを入れてプレゼントを選べ」
「もう無茶苦茶言って」
 慶が遼太郎と知り合いだとは聞いている梅子、こりゃ慶に相談だな、と思う。

 四月末、GW。梅子はマコと一緒に慶の家に遊びに来ていた。
 梅子は高校になって遅く帰り、土日も毎日出ているので、家からいまだに携帯を買う事を許されていない。
「そんなんでどうすんだよお祭りの日。あたしらはぐれたら会えないぞ?」
 そういうマコこそ携帯を持っていないのだが、マコのいることころは慶は嗅覚で分かるし、その慶は携帯をマコに預けっぱなし。持っているも同然だ。
「そうなんだけど。わたし、高校になって外出とか多いし帰るのも結構遅いからなあ」
「なあ、じゃないよ。な、慶」
「う~~」
「うーじゃねえ! ウメコだ、いい加減憶えろ!」
 慶、梅子の名前を憶えない。本編ではD高に殴り込みをかけてまでマコを守ってくれたので根性で憶えたが、この話ではそうではない。
「でもさ、同じ組になれたのよかったよね」
「うん。マコは競技なんにする?」
 くじびきで組を分けただけで、まだどの競技にするのかは決めていない。騒動・殴り込みがあったわけではないので、大速攻で決めなくても良かった。
「あたしどれもピンと来ないんだよな。中学のときはテニス部だったけど控えもいいとこだったし」
「わたし、バレーにしようかなって思うんだ。全然運動駄目だけど、一応部活でやってたから」
 梅子はテニスなんてさっぱり出来ない。だから、マコがテニスをやると言っても「じゃ同じの」とは言えない。
「あたしもそうしようかな」
「マコ~~俺は~~」
 相変わらずののうてんきな慶の声。
「俺はじゃねえ! あんたは騎馬戦とリレーだろうが!」
 ここでは斉志がいないので、無理矢理同じ組になってあの五人が揃ってバスケ、なんて必要はない。遼太郎も、五人揃わなければつまらないので、慶と無理矢理同じ組にはなっていない。ちなみに慶は青組。
「ま、こんなアホはほっといて。
 ねえ、あの西川ってやつ……結構、いいやつだったね」
 慶の耳がピンと立つ。
「軟派の西川なんて、いい噂ばっかじゃなかったんだけど。いいやつじゃん。ウメコ、あんたほんとになんとも思ってないの?」
「もう、そういう話はいいってば」
「言っとくけど、狙ってる女かーなーり、いるよ? 盗られてからじゃ遅いんだからね」
「関係ない、もーんだ」
「じゃ、そういうことにして。携帯持ちなよ、ウメコ」
「うん、そうだね……」
 そんなこんなで帰るウメコとマコ。
 その日の夜、マコは家を追い出される。
 夜の十時に梅子の家の黒電話が鳴る。斉藤父母は漁業で朝早く、こんな時間に電話なんて非常識、迷惑きわまりない。
 梅子、走って電話をとる。そしたらやっぱり自分宛だった。梅子、両親に申し訳なく思い、また「だから携帯を持つ事を禁じられるんだ」とも思う。
 だが、電話の内容はシリアスだった。
「ウメコ……あたし。家、追ん出されちゃった……」
 しかし梅子はどうしたらいいか分からない。とりあえず、マコの居場所を訊いて急いでそこへ向かうとだけ言った。
 家を飛び出た梅子、ひらめいて近所の公衆電話に入る。遼太郎に電話してみたら? と思う。
 電話をすると、
「家の近所? おし、いい判断だ。よく聞け梅の字。そいつは俺がなんとかする。お前は家に戻れ」
 ──梅の字ってわたしのこと?
「聞いてんのか」
「き、聞いてますっ! けどわたしも!」
「お前が現着する頃にはそいつは追い出したやつらとやらにとっつかまっているよ。今タクシーに乗った、現場へ向かう」
 ああそうか、タクシーという手があったか。ビンボ性な梅子、そんなことすら思いつかない。
「お前には明日朝一番に報告する。早めに来て屋上、ほれ俺達が逢ったあそこ、で待っていろ。ところでひょっとして、中野からの電話、トーチャンカーチャンが寝静まった所で鳴ったな?」
 なぜそんなことまで分かるのか、梅子はびびった。
「俺のケータイを分けてやる。お前、友達付き合いしたいんだろ」
「そ、それはそうだけど」
 でも分けてもらうなんて。
「人の好意は貰っとくもんだ。じゃ明日! いいから家帰って寝ろ。大体女がこんな時間に自転車カっ飛ばしていたら、こんなご時世、お前の身にもなにかあるかも知れないんだぞ。そこをよく考えろ!」
 またも梅子、言い返せない。しょぼーんと自宅へ戻る。
 マコを助け出すシーンは本編とほぼ同じ、斉志が遼太郎になったくらいで、和子に助力を求める。
「引き取ってくれてありがたい。だがこれで、別問題が発生するな」遼太郎。
「まあ……なにかしら」和子。
 自分が引き取るのに問題が発生? と和子は思う。
「慶のバカだ。あの女がいないとなにをしでかすか分からん。陸上部に入っていない事もある」
「B高に……転校させると? でも」
「親の許可は、とかだろ。慶には明日俺から話す、あの女が転校するお前もしろってな。それでいいだろ」
「ええ……でも、中野さんにはE高に入って頂くわ」
「だな」
 理由はこうだ。慶がB高へ来る理由など陸上一点のみ、それは誰もが知っている。そんな時、マコもB高へ来てしまえば周囲にこう思われる。「マコが慶の練習・集中の邪魔しに来た」と。女は立場が弱い。いくら慶からマコに近づいたとしても、周囲はそうは取らない。だから高校を別にする。
「レベルの事もあるわ……いくらなんでも、毎回ドンケツなんて成績を中野さんに取らせるわけにはいかない……遼太郎、それでいいわね」
「ああ」
 翌朝。梅子気張って屋上へ行く。
 すると奴がいた。
「やあ。早いね」
 誰だろう、と思う梅子。
「僕は田上真木と言います。真木でいいよ」
 あのー、初対面の方にそんなことって……
 すると、遼太郎がやって来る。
「お、早いな。おお田上、おはよう」
 恐ろしい事に遼太郎にとっては田上は「席が後ろの単なる“いい”クラスメイト」なのだ……
「ああ僕、お邪魔?」
「いや、そんなんじゃないがちょっとこいつに話があってな。梅の字、来い」
 まるで田上を疑わない遼太郎。
 田上は二人について行くこともなく、屋上のフェンスの方へ。ここで自分達に割って入るようなヘマな行動を取れば遼太郎は警戒する。それは分かっていた。
「まず中野だが。お前もちょっとは知っているだろうが、B高生徒会長の森下、こいつに預けて来た。森下は金持ちで家もでかい。E高へ転校させる事にした」遼太郎。
「E高に……」梅子。
「あと、慶な。お前も知っての通り中野に大層惚れている。D高からいなくなれば騒ぎ出す。そこで今日、俺は放課後慶に会って事情を話す。かくかくしかじかB高へ転校しろってな」
「B高? E高じゃなくて?」
「お前は間近に見ていないから分からんだろうが、慶は短距離、100M走に大層才能があってな。陸上部もないD高はもともと慶の行くべき所じゃなかった。陸上が強いと言われているB高ですら勿体ない位だ。確かに高校は違うが慶には陸上に専念してもらう、同じ高校の方が都合が悪い」
「そうなんだ……」
「あとこれ、俺が予備で持っていた携帯だ、番号は誰も知らん、アドレスはお前が勝手に考えろ。持て」
「……」
「なにか遠慮する理由があるのか?」
「お金……」
「月五千円くらいだろ。気にするな」
「気にするよ!」
「俺に遠慮するのか? お前が?」
「う……そりゃ、そうだけど……」
「中野にも防犯のため携帯を持たせた。今日、放課後店に来いと言ってある。バンゴ交換でもしろ。いいもんだぞ? 友達とケータイで連絡取り合うって。お前もフツーの高校生やってみろ」
「……」
「なんだ」
「あり……がと」
「応」
 そして、まずは練習にと遼太郎、梅子に自分の携帯番号とアドレスを教えて登録させ、操作を教える。
 放課後。梅子、マコに会う。この間遼太郎は慶に会っている。
「大変だったね、マコ」
「うん。でも、西川に助けられた。あたし頭上がんないよ」
「そっか……」
 二人して、携帯の番号とアドレスを交換し合って。
「あたしも携帯持ってなかったんだ。だから、こういうのするってなんかこそばゆい」
 ああ自分もだ、梅子もそう思う。

 翌日の部活にて。
 本編と違い、部活中は普通に雑談もありになっている。
「そういやお前、お祭りの競技なんにするんだ」遼太郎。
「ん? ああ、バレーにしようかな、と」
 梅子。多分補欠で出ないだろうけど、とは言わないで。
「ふーん。じゃ俺もバレーにでもしようかね」
「まだ決めてなかったの?」
「俺様は出来ん競技がないんでな」
「ソウデスカ……」
「えり好みしていただけだ。第二体育館にずっといるから応援しろ」
「ワカリマシタ……」

 全体会合一回目。マコと梅子、B高へ。
「わー、それがE高の制服なんだ! マコ、似合ってるよ!」梅子。
「ふふん、だろ? スッゲーいいガッコなんだE高って! あんたも転校しなよ!」マコ。
 とかなんとか。

 梅子、マコと一緒に遼太郎の誕生日プレゼント選びを店でする。
「ふうん、部活が一緒」マコ。
「そうなんだ。なんか、何でも出来るひとみたいだから、どんなの贈ればいいか分からないんだよね」梅子。
「確かに何でも出来るっぽいよ。それにアタマもいいって聞いてるし」マコ。
「え、そうなの?」梅子。
「訊いてみればいいじゃん」梅子。
「そうだね。それよりまずプレゼント! なんにしようかな……」
 結局店を回ってもいいのが見つからず。いつものバーガーショップに向かおうとすると……そういえば、手前は雑貨屋だ。
「あれ、なんかこれ……」
 梅子、これはと思って買う。

 翌日、GW谷間の五月二日。部活をはじめる前に梅子、遼太郎にプレゼントを。
「おっ。何かな。今開けていいか?」
 遼太郎、本当に嬉しそうに包みを開ける。すると、
「……なんとなく……ぐい飲みに見えるんだが」
「そうだけど?」
 ちょっと、西欧と東欧の文化が入り混ざったようなデザインのそれは、どう見てもガラスで出来たぐい飲みだった。
「俺はお前に、自分が酒を飲めると言った覚えはないんだが」
「うん、訊いた覚えもない。単に、見た目で決めたの。そう、遼太郎お酒飲めるんだ」
「あっそ……じゃ、そのうち飲み会でもするか」
「全然高校生らしくない発言だと思うけど……」
「お前のセンスも高校生らしくねえよ!」

 で、全体会合一回目に話は戻る。
 遼太郎、斉志じゃあるまいしお役を放り投げるなんてしないので、今はA高で指揮を執っている。
 チーム決めをする。マコと梅子、当然同じチームに。友達を作るのがヘタな二人は、その場で友達を作ることは出来なかったが、いつもだったらこんな場だと独りでぽっつーんといなければならなかった。友達ってありがたいもんだと骨身に沁みる。
 そこへ、二人の携帯が同時に鳴った。梅子は遼太郎から、マコは慶から。
 回りも携帯で話しているので特に目立たない。というより、みんな積極的に携帯で話をしていた。
 まず梅子、
「ああ遼太郎。どうしたの?」
「お前、どんなチーム入った?」
「ああ、それがね、」
 マコ、
「へー慶、あんた自力で携帯操作出来たんだ。どうしたの?」
「誰と~~」
「ああ、あんたも知ってるウメコとだよ」
「何でB高来ねえんだ~~」
 ちなみにこれは、お祭りだけではなく普段からB高へ来いと言っている。
「あたしB高になんて行ったらドンケツだからだよ! あと、あんた青じゃん組。別だから学校も別なの!」
「逢いてえ~~マコ~~」
「分かった分かった」
 梅子の方が通話が短かった。
「ねえウメコ、慶のバカがあたしと会いたいんだって。でもB高に行っては会うなって言われてるから女史の家で、になるんだけど、あんたも来ない?」
「え、いいの?」
「いいに決まってんじゃん!」
「あ、じゃあ、遼太郎も連れてっていい?」
「へ、西川? いいよ?」
 翌日は土曜。さっそく四人で会う事に。
「どうだ慶、真面目に陸上へ取り組んでオリマスか?」
 遼太郎が、梅子からもらったぐい飲みでさっそく日本酒を飲んでいる。他の三人は和子にいれてもらった紅茶なのに、だ。
「マコ~~逢いたかった~~」
 マコがいると、慶は回りに無頓着になるのだ。
「全くこいつは……おう梅の字、なかなかいいなこれ。かわりと言っちゃあなんだが、俺もお前の誕生日になにか贈ってやるよ。なにがいい?」
 マコ、うわこいつら二人いつの間にこんな仲に、と思う。
「うーん、そうだなあ……」
「誕生日何日だ」
「夏休みが終わる日」
「八月三十一日か?」
「うん、そう」
「よし、まだ日があるな。じっくり選んでやるよ。なにかリクエストはあるか?」
「うーん、特に」
「よし分かった。なあ中野、慶。せっかく四人で集まったんだ、俺はキミタチにもなにか贈り物をしたい。リクあるか?」
 そんなことを言われるとは思わなかったマコ、驚く。
「っつーか慶のバカはもう誕生日来たけどな」
「え、そうなの?」梅子。
「ああ、こう見ても五月一日、俺様よか一日おにいちゃんだ」
「おにいちゃんって」梅子。
「中野は? いつだ誕生日」
「さんがつじゅうろくにち~~」慶。
「そうか」
 そんなのとっくの昔に知っている遼太郎、わざと訊いて。
「じゃあなんかリクあるか」
「俺が贈るんだ~~」慶。
「俺も小物のひとつ贈ったっていいだろ」
「嫌だ~~」慶。
「バカ……」マコ。

 一週間後、合同祭第二回全体会合。A高で。
 ウメコは賢明な事に、自分はへただから補欠に回るとちゃんと言った。しかし。
「そんなこと言ってぇ……実は西川君の観戦に行きたいんでしょう」
 と、同じチームになった子に言われる。とはいえ、ウメコわけ分からなくてハテナマークを浮かべる。
「今日の第二体育館、西川君目当てでかなり女の子来てるよ。あんたもそのうちの一人?」
 梅子は首を横にぶんぶん振るが、
「取り敢えずプレーを見てからよね。実は上手いんだけど遠慮して、なんて事駄目だからね!」
 彼女は、梅子のなんたるかを全く知らない人物であった……。
「フウ……分かった。斉藤さんがそういう腕前ってのは実に分かった……ね、みんな」同じチームの女の子。
『うん、そうだね……』同じチームの女の子達。
 声を揃えられた梅子はうつむき、決して顔を上げられないのであった。
 梅子、泣く泣くボール拾いを。すると隣のコートで遼太郎のチームが実地に入った。すると。
「ッキャー!」
「西川君!!」
 黄色い金切り声が第二体育館にこだまする。いよいよ始まった。
「あれ?」
 もはや女子コートで真面目にバレーをやっている者はいないが、
「あのセッターの……ひょっとして隣の人?」
 そう、なぜか遼太郎の組のチームには坂崎がいた。なぜなら、坂崎全然登場してないからです。見せ場もあったっていいよね。
「坂崎、お前さんどんなトスでも上げられるんだろ」遼太郎。
「そだね」坂崎。
「じゃ全コース上げてくれ。何でも打つ」
「そ」
 坂崎、この話では遼太郎とは単にフツーの知り合い。
 坂崎の七色のトスワークを、遼太郎全て打ち切る。見ていたバレー部関係者は、この二人を是非是非勧誘しようと思うのだった。

 部活で普通に雑談大会の時、
「遼太郎は特訓とかしないの?」梅子。
「何の特訓」遼太郎。
「バレーの」梅子。
「俺様が?」遼太郎。
「ワカリマシタ……」梅子。
 という会話があった。
「っつーか特訓が必要なのはお前の方だろ」遼太郎。
「うっ」梅子。
「まああの腕前じゃ、特訓っつーかホケツコースだろうけどな」遼太郎。
「見てたんだ……」梅子。
「お前が自分でバレーって言ってただろ。そこまで言うならと思ってチラリズムで見ただけだ。ありゃまたヒッデェのなんのって……」遼太郎。
「悪かったなー……」梅子。
 そういえば、部活には先輩二人が来ている事に本編ではなっていたが、この話では遼太郎がすでに退部させた事にして下さい。早い話が忘れてました。
「ところでお前、そろそろ試験だが勉強の方は自信あんのか」
「うっ」
「そうか」
「納得すなァ!」
「そしたら、どーだ、俺んち来て勉強会でもしないか」
「へ?」
「家にゃ親父しかいない。細かいことは気にせんでいい」
「……あのね?」
「なんだ」
「なんでそんなに……よくしてくれるのかな」
「どういう意味だ?」
「だってさ、友達作らせてくれて携帯貸してくれて、お祭りでも心配してくれて勉強まで……言ってたじゃない、美人で頭が良くて優しいひとでないと駄目だって」
「そりゃ彼女にするには、だ。お前は彼女でもなーんでもないだろ」
「……」
「お前言ったよな。腕前を盗めって。俺はそれに感心したんだ」
「それを言ったのは近所のおじさんで、わたしじゃないよ」
「お前はそれを実践しようとしてるんだろ?」
「まあ、そりゃ……」
「だから手を貸した。それだけだ。大した事をしたわけじゃない。で、来るのか来ないのか」
「……」
「言っとくが、スパルタで行くからな。お前、入試の時の成績は何番だった」
「うっ」
「言え」
「……二百番台、デス」
「おし。百番台にしてやる」