梅子

 白電話の音がする。
「はい、成田です。斉志好き。信じてます」
「……ああ」
「いま、ロフトでお弁当です。お茶しばいてまーす」
「……ああ」←帰ったらどうなるか分かっているんだろうな梅子
「それで? 斉志、工事の時他に何しようって考えた?」
「……いや」←なんでバレた
「どの床歩いてるか分かるセンサーとか」
「……いや」←以下同文
「あ、それで体温とか計ろうって思ったんだ」
「……いや」←それだけじゃないが
「うん、そういうのはいいの」
「……ああ」←ほっとしている
「ひょっとして、わたしが電蓄のお部屋とか、書斎とかで本とかCDとかに熱中し過ぎたり、八時過ぎても寝室以外に体温があったら自動的におしりぺんぺんな機能持たせようとしたとか」
「……いや」←なんでバレた
「よく今までそれしなかったねってわたしが言うなんて、思ってないでしょう斉志」
「……ああ」←あ、ついポロっと言っちゃった
「わたし、うーーーんとおこってるって分かってるでしょう斉志」
「……ああ」←どっかの野郎バリにイヤな予感がしている
「斉志。おうち帰ったらおしりぺんぺんが待ってるから」
「……じゃあ」
 斉志の周りには同級生さん以外の方がいっぱいいらしたそうです。職に就く準備だそうです。そうですか。お仕事に勤しんでるんだなあ、わたしのこの星一番のぼんくら亭主さん。えらい。
 おかえりなさい斉志って言ったら、もう斉志泣いてて、ただいま梅子俺だって泣くのは後にも先にも梅子に関することだけだ、泣きたいときしか泣いてない信じて梅子、ぺんぺんなんて絶対厭だ。
 だそうです。
 ハイ、分かりました。区別つかないことしません、言いません。斉志が厭がることしません、言いません。誓います。
 でも、こうも言いました。
 きっと斉志は他の機能も持たせようと思っていたに違いありません。その内容を全部白状しろなんて躯に言わせないであげるから、設置していいのはわたしに見えるようなカメラだけとします、お白州。

斉志

 俺は全容を白状しなかっただけマシと思わなくてはならんのか? そもそもこれは白状がどうのという話じゃなかったんだが? 俺、このまま行けば墓に入っても負け続け。そういえば慶の野郎がどこで知恵を付けたのか、俺~~女房の尻に敷かれているんだ~~、なんぞしゃらくさいことを珍しく意味を分かって言っていたが……。
 尻?
 ペンペン?
 このままだと俺、ブチ込む前に叩かれそうだ。
 いや?
 敷かれているぞ、俺。
 ……。

梅子

「せーいじ」
「うん。俺、亭主関白」
「うん、斉志、亭主関白。すき」
「うん。俺、ペンペン厭だ」
「うん。しない。次、おなべ」
「うん。俺、工事する」
「そっち、あと一分くらい」
「うん、梅子、いい?」
「斉志はなにか、これが食べたいとか、ある?」
「梅子食べたい。カメラいっぱい付ける」
「うん、わたしも斉志たべたい。工事は駄目。いっぱいも駄目」
「うん。いっぱい食って。工事する。いっぱい付ける」
「うん。いっぱい食べようね。じゃあお皿投げ付ける」
「うん。……」

斉志

 梅子がエプロンは取るが服を脱がず俺に乗り、箸を持ってはい・あ~ん。
「ずるい梅子」
「はい・あ~ん」
「むぐ……ずるい梅子」
「はい・あ~ん」
「むぐ……聞いているのか梅子」
「はい・あ~ん」
「むぐ……工事する」
「じゃあ機能を全部言って。はい・あ~ん」
「むぐ……厭だ」
「そう。はい・あ~ん」
「むぐ……梅子も食え」
「うん。食べる。はい・あ~ん」
「むぐ……そんなに怒るな」
「食事中はおこりません。はい・あ~ん」
「むぐ……言っただろ、ぷりぷり即怒れって……」
「食事中はおこりません。はい・あ~ん」
「むぐ……今怒れ。後回しにするな」
「じゃ、食べおわったら。はい・あ~ん」
「むぐ……今怒れと言ったろ」
「じゃ、怒ります」
「うん」
「斉志のばか。以上」
「……」
「はい・あ~ん」
「むぐ……また抱えやがったな」
「うん。はい・あ~ん」
「むぐ……そんなこと言うな……」
「いま、厭がることされてます。はい・あ~ん」
「むぐ……ごめん……」
「飯時は反省なし。この件はこれで以上」
「駄目だ!!」
「どうして?」
「ちゃんと晒してからだ! ……ご、ごめん。俺が悪い。カメラは梅子の前でつける。だから、……し、……心配だから工事しようとしたんだ!! 時計と指輪と歯だけじゃ足りないんだ!! 床と壁には体温とか計るセンサーだけにする、だから、……頼む梅子、頼む……」
「……」
「梅子が俺のこと信じてて、スキスキで俺待ってるのは分かっている、だからだ、だから工事させて梅子、こわいことするな、言うな、頼む、……でないと俺職に就けないだろ!!」
「……」
「頼む……」
「どうして最初っからしなかったの?」
「梅子の許可を得てからだ」
「……」
「俺が許可を得るのは、後にも先にも梅子に関することだけだ」
「……」
「梅子。梅子は以前、許可なんか得なくていいと言ったな。だがこれは俺の判断だ。梅子が厭がると分かっていて、梅子がちゃんと納得する必要がある場合は事前に説明し許可を得る。梅子。許可をくれ。厭ならいい」
「じゃあ」
「うん」
「とにかくカメラは見えるところ、一室一個、天井にして下さい。これ以外は許可しません。生理のときがあるから、おトイレがあるお部屋には付けないで。生理のとき以外はおっきなお風呂に入るから」
「うん。分かった。梅子が見てるところで俺が付ける」
「音は厭」
「うん、分かった。しない」
「それ以外の工事は斉志の思う通りにして下さい。わたしもわれながら、階段なんかでどうのなったりしたら厭だから、取っ払っていいです。走りません。こわいことしない言わない。もの壊したりしません。……いつあんな高価な食器、落っことしちゃうかっておっかなびっくり扱ってるんだから、わざとなんてしません」
「本当か」
「うん」
「よし。信じる梅子。じゃあ工事するからな。梅子、前に実家行くと言っただろ。その時にする。実家行ったら南の島だ。前、これやっただろ。今度もそうしよう」
「……うん」
「よし。ところで梅子、卒業式を見たいと思っているな。返事はうんだ」
「う、うん」
「俺も梅子も全部晒す、遠慮無しで本音だけだ。言うぞ。梅子は俺が高校の時のは見なかった。もう見る機会はこれしかない。だがその場にはなんとか連中がうようよいて、なんとかな物言いをされる可能性がうんと高くて、なんとかな注目をされるだろうと予測は充分ついてもそれでも見たい、そうだな」
「うん……」
「俺も考えてはいたが、俺とて卒業生全員に式へ出るなとは言えん。こんな俺の女房が出るとなればまず間違いなく大注目だ。なんとかな物言いされまくりだ。黙ってこっそり変装させて、警備の連中にガードさせて出そうかとも思ったが、バレた挙げ句多勢に無勢でまたあんな下らん騒動に発展されては困るからな。出さん。いいな」
「……うん」
「その代わりと言ってはなんだが、卒業旅行だ。南の島行ったら京都。出来る時に出来ることをしよう梅子」
「うん!」
「京都なんだがな。清水の舞台は見たが、今度は他の有名どころも行こうな」
「……うん。えっと、景色と建物は、わたしの判断」
「そうだ。梅子、信じてる」
「うん!」
「場所が場所だ。実家は普段着、南の島はパジャマとすっぽんぽん、京都は着物を着よう」
「……、……、……う、うん」
「梅子、宿でお代官しような」
「ハイ……」

 向こうで宿と来ればこの人物、に電話する。厭々もいいところだが、まだ有用な人物だ。そうでなければ生かしてはいないが。
「元気か坂崎」
「ソクサイ。で?」
「そっちへ行くんでな。宿の手配を頼む」
「リョーカイ。ところであんたの相棒と連れ、もうこっちにケッコ来ているみたいだけど?」
「構わん」
「そ。ほんじゃ二名様御案内」

湘南にて

 テツの野郎が何やらどっかへ電話している。
「……ってなワケでー。葉書出しといて」
 俺んちで俺の携帯で、いつものことだ。
「何回目だっけ、会議。皆勤だろイインチョ」
 俺が聞こえる会話の場合は聞いてもいいっつーことだ。だからいいんだけどさ、もう。会議にイインチョか、元F会議だなこりゃ。皆勤? テツだってケッコ出席率高えだろうが。俺と同じだけど。
「ああ、奴? さってねー、どうも国外逃亡したらしいけど、転校後」
 おいおい……その、奴ってさ。さては左隣の奴だろ。国外逃亡? そこまでやるか。ってなんで知ってんだテツ。……知ってるか、テツだし。
「決定率は? あ、ケッコ悪くないな……ほんじゃ出るやつ、先決まったやつだけってか」
 就職決定率ってか。俺も青色吐息で決めたけどさ、ギリギリで。
 大学入試の時、こんなジゴクがあるもんかって思ったが……とんでもねえ。試験日決まってて滑り止めもあった大学。就職は試験して貰えんなら御の字、まず門前払い。履歴書は百通書け、って言われて最終的にはそれ以上書きまくった。三回生の時から既に始まったゴールのない大迷路。内定に辿り着く道すら見えないあの焦燥、内内定貰ったらその会社が倒産したなんて話はザラに聞いた。
 日頃の行いで……希望職種に引っ越しナシで辿り着けた俺は、こんなご時世じゃとてつもねえ幸運なんだろう。やっぱ今までの幸薄さっぷり、誰か見てくれてたっつーこった。
「ってなワケでー。トモの家な」
「へいへい」
 元F会議中はB市の俺んちに転がり込んで坂崎旅館じゃ片付けしたくねえとのお達しだ。いいけどさ、いつものことだ。
「和田は決めたのか?」
「Uターンだって」
「そ」
 でかい図体の栄えあるクラス委員チョ、っていつ委員長なんて決めたっけ、まあいいか、な和田はA市四中。あれでかなり口が堅く、ケッコ信用出来るやつ。それがなんで襟首引っ掴みの元凶になったかは知らねえが、まあいいさ。テツも和田とはこの通り、フツーにコンタクトを取っている。
「で、今度はなにを企んでいるんだ?」
「あヒッデーんだトモ。ほらさーみんな就職じゃーんオトナじゃーん? その前に一献、って思ってただけなのにさー」
 なにが一献だ。単に俺がこさえたメシ居間で寝っころがりながら待ってるってだけじゃねえか。しょうがねえから缶ビールを出してやった。ひとまずカンパイ、俺は台所で料理続行。
「建前は分かった」
「あヒッデーんだトモ。折角こっち呼んでさー、新歓コンパとか芸妓掻き集めてかましたろうと思っていたのにさー」
「あのさあ。確かに俺は目出度く社会人だよテツと違って四月から。だからさ、もうバイトする暇ねえんだってば。内職させるんじゃねえよ」
「だから組紹介してやるって言ったのにー。トモなら準幹部待遇スタート間違いなしだって」
「あのなあ……俺はフツーのまっとうなサラリーマンがいいんだ、とにかく内職はやらねえからな」
「クビになったらさー。今度こそ全部世話してやるからこっちに来てよ。人生パラダイスしようぜー」
「あのさあ……」
 テツのパラダイスだきゃー滑降する気はねえ。俺は絶対まっとうなサラリーマンを勤め上げる、っつったらテツの野郎、無理だと思うけど、だと。
 俺もそう思ってるフシ、確かにあるけどさ……まだ勤めてもいねえのにクビがどうたらは勘弁しろよテツ。しょうがねえから飯を出して、お互い無言でかっこんだ。
「トモ。もう一度現場を見てくんない?」
「ああ、いいぜ」
 メシ食ってごちそーさん。台所で片付けものな俺に居間でゴロ寝続行のテツ。
 坂崎旅館のデザインをテツの言う通り描いてみた。季節ごとに現場を訪れ何度も手直ししている。テツに妥協の文字はねえ。俺もやりがいあるんで、この手は毎回マジ白熱論議、絶対バイトな話も絡まねえ真剣勝負だ。
「入社したらしばらく夜なべしてくんないんだよなー」
「させんじゃねえよ」
「ほんじゃ三月」
「おし決定」
「それおわったら送迎コンパで決まりだな」
「あーーーのなあ!!」

おうち 斉志

 全てのデータは異常数値を弾き出していた。脈拍、呼吸、体温。取れたデータの全てが乱高下。当然、それだけではない。抱え込み、絶対に表に表さない梅子。その為にならどれだけの犠牲をも厭わない梅子。なにも無いと思い込み、その身ひとつで勝負する。
 たったひとつしかない自分をひたすら傷つけ削ぎ続けて。
「ただいま、梅子」
「おかえりなさい、斉志……」
 俺が持つ長い棒を見て梅子は俺に抱き着くのを止めた。これは自分が決して触れてはならないものとよく分かっている梅子。俺も、ちゅーも抱き締めもせず、まず居間のカメラを取っ払った。
「斉志? どうしたの」
 無言で作業を続ける。
「斉志、どうしたのってば、斉志ーー」
 少し離れたところから俺に声をかける梅子。こんなもんはさっさと終了、カメラと棒を手にこれまた無言で最上階を一旦出た。
 一階へそれ、置いて来て。最上階に戻る。二基のエレベーター、二つの階段。
 そんなことになったら──もう──取り返しがつかない──なにをやっている──俺だけ安心してどうする──
 扉を押し開け、戻った。
 梅子が所在無く、不安そうに、首を傾げて待っていた。どう言えばいいのかと。
「ただいま、梅子。好きだ」
「……。おかえりなさい、斉志。すき」
 あらん限り抱き締めて、あらん限りちゅーをした。貪って、欲しくてもう、耐えられなくて下剥ぎ下ろして、俺のもそうして、そこで突いた。
 イっちまった梅子と風呂へ。梅子さっさか洗ってさっさか拭いて、ショーツと俺のパジャマを着せ、ふとんにくるんで居間のソファへ横たえる。俺もさっさか風呂入って、梅子がほとんど準備しおえている飯、俺が作って居間へ並べた。
 いいにおいで気付く梅子。目、こすって、少しあくびして。可愛くて仕方ない。
 目が覚めた時がいいにおいで、俺いないのに気付いてふとんから出てすぐ立ち上がる。台所へさあ駆け寄ろうとして思いとどまり、歩いてこっち来る梅子を制した。
「梅子、いい、座ってて」
 鍋を持っている俺に抱き着くのは却下と梅子も思ったか、うん、と言ってソファで待つ。梅子俺のことぎゅってしたいって思ってる。待ってろ梅子。
 居間へ並べおわって、ソファへ座って軽い梅子を俺に乗せる。
「俺にもエプロンしろとか思ったな梅子。却下」
「えっと、もっと言うと裸エプロン姿が見たいなー、なんて」
「……もっと却下。うんと却下。絶対却下」
「わたしのすけべえな下着はあるけど、斉志のはないの? わたし、うんと誘われたい、なー」
「……誰がんなもん作らすか。食うぞ梅子。いただきます」
「うん、いただきます! せいじたべたい!」
「ヤらしい口だ。開けろ梅子。はい・あ~ん」
「むぐ……」
「なんでカメラ取っ払った、か。……あれを付けていた方が躯に悪い」
「? ???」
「見られているという緊張感でストレスが溜まる。脈拍とか、呼吸とか、全部異常数値だった。……日数が経てば収まるのは分かっている、だが数値上だけだ。センサーなんぞでは測れん心理的負担は、……増えて、増えるだけで絶対に減らん。日光浴しないより遥かに躯に悪い。
 ……俺だけの、……自己満足だった。……ごめん」
「そんなことない」
 ある。知ってるだろ梅子。トイレと風呂の部屋に入る時の数値、出た時の数値。その差を……。
 梅子は、この手を自分からは絶対に言い出さない。相手が自分の非に目を逸らさず面と向かい、自ら認めて初めて相手を許す、それが梅子。
「ごめん。梅子。俺が悪い。反省する。……ペンペンしてもいい」
「厭。斉志。お箸」
「……なんで」
「わたしのことひとりにしたらぺんぺんするって言ったもん。はい・あ~ん」
「むぐ……怒ってるだろ。今晒せ。今ぷりぷり怒れ」
「おこってないもん! はい・あ~ん」
「むぐ……嘘だ」
「本当だってば。はい・あ~ん」
「むぐ……梅子も食え。怒れ」
「食べます。斉志、美味し。わたし、おこってない。ほんと」
「むぐ……なんでおこってない。言って。ちゃんと晒せ。ちゃんと吐き出せ。でないと駄目だ、俺のことちゃんと怒れ、ちゃんと教えろ、じゃなきゃ許すな!!」
「もう、飯時はなんとか、って言ってるくせに……。はい・あ~ん。じゃあ言います」
「むぐ……言って」
「カメラ取っ払っちゃったけど、それでわたしの様子、分かるの? あのね、わたしそういうふうに、ちゃんと分かって貰えてるの、安心するんだけど……。だってその、あのー。なんとかー、になるかどうかは、事前には分からないものだし、わたしじゃどうしようもないし……」
「……様子は、……分かる。センサーだけでな。モニターカメラの映像は俺だけが見ると言っただろ。だから、……俺だけの自己満足だ。俺、……俺梅子を放って置いた。俺だけ満足して梅子を放って置いた。だから、……ペンペンしていい」
「イヤ。はい・あ~ん」
「むぐ……。……」
「そうかぁ、センサーとかで分かるものなのかー。うーん、すごいや。はい・あ~ん」
「むぐ……。……」
「じゃあおころうかな」
「むぐ……。……怒って」
 一旦箸を置く梅子。その表情。おこってない。しょうがないなあこの星一番のボンクラ亭主め、と思っている。可愛い。
「わたしはおこったーーーーー! 斉志が悪い、でーーーーーす!」
「うん、梅子。ごめん、俺がわるい」
「なんです、せいじのお声はCDにしないって言って、わたしのだけせいじ見てーーーー! ずるい!!」
「うん、ごめん。俺がわるい」
「せいじは、その時のその声をそのままで直接聞いて欲しいって思ったんでしょう! だったらわたしもだーーーー! よくもわたしのこと放って置いたなーーーーーー!!」
「うん、ごめん。俺がわるい」
「斉志のおしりひっぱたいたら最後、わたしもおしりにされるからぺんぺんしません! その代わり、反省して貰います!! 問答無用!!」
「う、……。厭だ。厭な予感がする。なにを考えた梅子」
「む。いまわたしは問答無用と言ったのですよ斉志。よくもわたしが知らない間に、携帯買いに行こうなんて話、し、してくれやがったな斉志……」
「いつの話だ。話が飛んでいるぞ梅子、あやふやだ。まあ、言いたいことは分かるしそれがいいんだがな」
「話そらすなーーーーー! さあ斉志、着けてもらいましょう、裸エプロン。透けたの。裸で」
「却下」
「む。じゃないと反省したとみなしません」
「いいのか梅子」
「え」
「俺にそんなことをしたら、どういうお返しが待っているのか分かってるだろ梅子」
「ぅ」
「反省はするけどな、お返しを考えて言って梅子。まあいい、梅子先見通さなかったんだもんな。えらい」
「……全然褒められた気分になれません」
「最近お白州破って破られっ放しだけどな、まあ俺が悪いけどな。ちゃんとお白州守る。俺も守る、梅子も守る。お白州」
「それは、いいけど……。じゃ、じゃあ斉志。どう反省すればいいか、斉志が考えて」
「うん、分かった。梅子ヤる」
「……それはいつもでしょう……もう……は、反省にそれ、つ、使わないでください! 飯時とやってる時は反省なし、お白州って言ったでしょうーーーー!!」
「反省した。梅子ヤる」
「……どう、反省したんですか……」
「俺、ちゃんと自分から取っ払っただろ」
「……ぅぅ。そういえば」
 観念する梅子。可愛い。
「だろ? だから梅子……」
「むー。……ええい、この件はこれで以上! せいじのばかーーーーーー!!」
「うん、梅子」
 ぷりぷり怒って俺を許す梅子。可愛い。
 俺が作った飯、当然今すぐ押し倒した。梅子を食って、飯をあっためて、あっためた時は忍耐でさいごまで食い切って、それから俺を食わせて寝室へ。担いで指突っ込んで梅子ぐっちゅぐちゅにして梅子をベッドに横たえて、脚おっ広げて覆い被さって突いて突いて突きまくってイかせて同時にイって風呂へ入った。
 梅子に食って貰いたくて、梅子の寝息を聞きたくてベッドサイドで鬱憤晴らし。梅子、もう絶対抱えさせないからな。必ずこれで叩き起こす。その時は飲んで貰うか? 尻ヤるか? どっちもだな。待ってろ梅子。

梅子

 朝、起きた時の安心感。
 おっきなベッドのシルクのシーツの上で、ゆるやかな日差しを浴びる、この星一番の旦那様の寝顔を見ること。
 上半身いつもはだか。それでわたしに腕枕。すー、すーって。
 ほっぺ、つんと指でつついてみた。うんと無防備。かわいい。たべちゃいたい。
 かわいい、かわいい、かわいい、せいじーーーー。
 くちにちゅー。髪にちゅー。うんとすごい躯の、おなかにちゅーして。そのしたの。
 わたしの、ぱくってたべる。
「戴き、ます」
 ちゅっちゅって食べる。お手てで上下に。舌で。歯は立てちゃ駄目です。いたいのかな。してみたいけど、そしたらわたし、這ってもベッド出られないのが日常になっちゃうからしない、の。
 わたしの安心感は、お寝むするとき斉志がうんと集中しているからだと思う。
 隣にいなくても。それが職場で、だったとしても。
 だから、安心してわたしはぬくぬくお寝む。ぐーたらです。
「こ、……の星一番の、……だろ……」
 うん。
「なにが、……なんとかだ……言うなって、……言ったろ……」
 じゃあ、ここ……。
「ぁン!! こ、……の! 上手い、んだよ梅子!!」
 だって斉志に教わったもん……。
「も、……飲めよ梅子、飲んじまえ、尻ヤるからな、ブチ込んでヤる、泣きまくって尻振りまくって俺に狂ってずっとベッドに鎖で括られてろ!!」
 も、……それでもいい……。
「……そしたら、俺、また……。いい、墓に入った後の愉しみに取って置く」
 そー、いうもの?
「そういうもんだ。なにがなんとか……」
 だって、ほんとに、なんだもん。斉志みたことないでしょう……。
「あるわけないだろ。梅子なんかな、梅子うんと可愛いんだぞ……。俺、……俺梅子が赤ん坊の頃からヤりたかった、そしたら梅子誰にも寝顔見せなかったのに……」
 あのー……。
「梅子はちゅーして、舌入れて、梅子のに。指突っ込んで、ぐっちゅぐちゅに掻き回して」
 ……。
「いま、それやったらお返しが待っていると思ったな……。俺はいい。して、梅子。ちゅーして。して……」
 ……じゃあ。
「……ぁン!! イ、きそ……」
 じゃあ、
「駄目だ梅子、するな、……イく、……尻は駄目!!」
 厭!
「するなって言ったろ、ぁン舌!! お返しするぞ梅子!!」
 むー。でも、
「……分かった、よ過ぎる、……ちゅーと舌まではいい。けどそれ以上は絶対するな。俺、イきそうだ……」
 わーい。
「いま、俺の弱点また見つけたと思ったな。……それ以上ヤったら分かってるんだろうな梅子……」
 分かってます。じゃあ、
「……ッ!! そんな、……こと!!」

斉志

 あやうくイきかけ、いや、イかされまくられかけ、梅子無理矢理剥がしてなか突いて奥に出した。
 いかん相手はあの梅子。このまま行くとこまで行ったら俺絶対イかされる。いまだってあやういんだ、梅子上手過ぎる。俺そういえば普段から真っ白舞い上がり。これで梅子にあーんなとこやこーんなとこあーんなふうにされたら俺即イかされる。
 ……。
 ……経験、開始が一緒で、……回数、一緒で、……全部一緒なら……。
 俺はそこまで梅子に敵わんのか? これでまで梅子に負けるのか? 俺、ヤる度またイかせてあげるって梅子に組み敷かれて、最悪脚のひとつもおっ広げられて? あーんなコスプレこーんなコスプレさせられて?
 ……。

梅子

 どうしてわたしは斉志の集中力を台所から感じながら、斉志が用事のある朝にソファでお茶しばいてなくちゃいけないの? 修業うんとさぼること、お白州! って言われなくちゃいけないの? ヤるの研究および修業は一切厳禁お白州! って言われなくちゃいけないの?
 そりゃわたしは斉志の思う通りだけどな……そうだけどな……。
 どうしてお食事、つくりおきたんとしてるの斉志。まるで修業を開始したばっかりの頃みたいじゃないですか斉志。どうしてお夕飯も俺がつくる、職に就いても作れる時は俺が飯作る、なんて言うんですか斉志? お時間ないんじゃなかった斉志?
「問答無用だ梅子いただきますはい・あ~ん」
「いただきます、斉志。……むぐ」
 お箸持つのだってわたしのお役目って言ったのに、なんだかもう、もう……。
「俺は梅子に、俺より慣れてるのなんざ無くていい、慣れるな出来るななんでもするなと言ったろ。はい・あ~ん」
「むぐ」
 そりゃ、そうだけどさ……。
「この星一番にぐーたらしてろ。はい・あ~ん」
「むぐ」
 そりゃ、この星一番のぐーたら女房だけどさ……。
「なんで俺修業していいって言ったんだ? はい・あ~ん」
「むぐ」
 理由、言ったのに……。
「飯か。一階を改装する。食堂つくる。梅子、修業しないで。はい・あ~ん」
「むぐ」
 理由、言ったってば……。
「厭? 却下。そうすれば梅子包丁持たなくて済むからな。なんで俺、食堂のひとつも作らないで……俺のバカ。はい・あ~ん」
 俺しか入れないからって言った……。
「むぐ」
「掃除? 俺がする。はい・あ~ん」
 ……わたしがさぼるってことは、せいじがしてるってことなのに……。
「むぐ」
「厭? 修業させろ? 却下。大体俺は結婚したらもう梅子どこへも出さない、なにもさせないって誓っていたんだ。なのに俺いつも梅子で舞い上がってうんなんて言っちまって……。梅子、駄目だぞ。なにもするな。出来るな慣れるなぐーたら寝てろ。はい・あ~ん」
「むぐ」
 せいじのためになることしたいんだもん……。
「俺の思う通りよがってればいい。いいな」
「むぐ」
「よし。許可は得た」
「むぐ」
「……食わせていないんだが」
「むぐ。むぐ。むぐむぐむぐ」
「……新手の抗議か。また梅子ひとりだけで考えて……俺を置いて考えるな」
「むぐ」
「言いがかりに近くなってるぞ? 俺もそう思わんでもない」
「むぐ」
「……何か言って」
「むぐ」
 ふん。
「食わせてないと言っただろ」
「むぐ。むぐ。むぐむぐむぐ」
 ふんふん。
「……何か言ってって言っただろ」
「斉志のばか」
「そうだ」
「あのね斉志」
「うん」
「どうしていつもおこったおこったしなくちゃいけないの?」
「いま、俺がわざと怒らせてると思ったな梅子。返事はうんだ」
「うん。うん。うんうんうん」
「……あのな」
「どうして斉志スキスキアイシテルでいつもおこる必要があるの。わざとは厭って言ったーーー」
「わざとじゃない。本音だ。全部晒して修業するなと言っているんだ。いいな梅子、返事は」「厭だ!!」
「……あのな」
「修業するーーー。さぼりは厭ーーー。誰のせいでさぼりイヤになったと思ってるのーーー」
「俺のせいに決まってるだろ全部俺が悪いと言った!! 悪かったな!!」
「そうだーーーせいじがわるいーーー全部せいじのせいーーー」
「やっと分かったか梅子! そうだ、全部俺がわるくて俺のせいだ!! 墓に入ってもずっとだ、二度と梅子のせいにするな!! お白州!!」
「うん!」
「……なんでこんな話になってるんだ。飯冷める」
「いつもです」
「……この……用事、もうすぐでヤれず出掛けなければいけないとわかればその態度か。帰ったらどうなるか、分かっているな梅子」
「分かってます。斉志をイかせます。はい・あ~ん」
「むぐ……」
「脚、がばーーーーーーーっとです。斉志、一階店舗にヤらしい斉志用の下着、揃えてて下さい。わたし補充にほっつき歩きます。はい・あ~ん」
「むぐ……」
「そういえばどんな品揃えなのか、みたことないけど。なんとか除き全部揃ってるんでしょう。えーっと。大丈夫だ斉志、安心していい。俺が着さす。破かん。はい・あ」
 その場でずどんやられちゃって、気付いたらさっぱりしててふとんにくるまってベッドでした。そうですか……。
 あったま来たから、あれ、を着ることにした。カメラないから斉志うんと驚くでしょう。ふんだ。
 そう思ってたら、白電話の音がする。そういえば時間何時かな。二時。
「はい、成田です」「ああ」
「……。すき、斉志」
「ああ」
「さっき起きたの。これからご飯」
「ああ」
「斉志、おこってる?」
「ああ。一時間後だ」
「うん、分かった。えっと、うんと濡れて待ってます」
「当然だ」
「……斉志、ひょっとしていま、まわりにひといないでしょう」
「……いや」
「うん、分かった。信じてる。斉志、好き」
「……ああ」
「これからご飯食べて、シャワー浴びてるから。待ってる、斉志」
「ああ。……じゃあ」

斉志

 ……なんでバレた。まあいい。
 打ち合わせに戻って速攻で片付ける。誰がこんなもんにチンタラ時間掛けるか。
 梅子……シャワー……早めに帰って襲ってやろう。

梅子

 一時間のうちご飯とお風呂、かあ。なんとなく、シャワー浴びてるとき斉志来そう。
 ……。
 順番変えて、ご飯をあとにした。
 斉志の作ってくれたご飯をあっためて、あれ、を着て、居間で食べていると。
 予想通り、早めにぽーんって音がした。走っちゃ駄目です。
 だから、ゆっくり立ち上がろうとすると、斉志無言であの扉を開けた。やっぱりお風呂を襲おうって思ってたなぼんくら亭主。
「誰がボンクラ亭主だ梅子、……って……」
「おかえりなさい斉志。ご飯、済んでないなら一緒に食べよう?」
 ぼけー、っとその場に突っ立ってるこの星一番のぼんくら亭主さんに、座ったままおいでぽーずしちゃった。
 ええ、分かってますとも。こーんなことすればどうなるか。
 次の日は這ってでもベッド出られないって。分かってます斉志。

 次の日中にはわたし、見ることなかったけど。
 居間の天井にカメラがあった。お手て振ってあげた。投げキッスしてあげた。すぐ、誰に習ったうめこ帰ったらどうなるか分かっているな濡れて待ってろ! と、ぶっつんお電話が来た。今度はすっぽんぽんでおしり振ってあげようっと。

斉志

 居間のカメラはすぐ取っ払った。まさか梅子、俺に鼻血を出させる気じゃあるまいな。俺は梅子に言葉だけでイかされてるんだ。その上どこで勃てと言うんだ梅子。どういう格好でなにをしているのか分かっているのか梅子。胸まで振ることないだろ。数値全然変わらないぞ……。俺梅子を庭に出すのやめようかな……。

梅子

 白電話の音がする。
「はい、成田です。斉志、好き」
「ああ」
「せーいじ。カメラ、もうないの? どこ?」
「……ああ」←なんでバレた
「この辺かなー……」←なにかを振っている
「……」←鼻を押さえている
「脱いじゃおっと」←一枚一枚ゆっくり
「……」←大股で闊歩
「あ、……引いてる。いと。どうしよう……せいじ……」
「……」←車に乗り込んでいる
「どこ行けばいいの? ベッド? お風呂? ソファ? せいじ……」
「……」←俺の運転にヘマはない←と集中しないとヘマをする
「せいじ、せいじ、なにか言って、言って、でないと、でないと」
「好きだ梅子!! ベッドで待ってろ!!」
「……うん……」
 それからその、……わたしの腕枕です。ぷにぷにです。きもちいい……。
「せいじ……」
「うん……」
「せいじ……」
「うん……」
「せいじ……」
「うん、……分かった。カメラは全部、……外す。俺、……処構わず勃っちまう、……梅子魅力あり過ぎるって言ったろ、……どういう格好で何してるのか分かっているのか梅子……俺、このままだと梅子庭に出せない……」
「せいじ……」
「……うん?」
「お庭で……」
「うん……」
「パジャマ、干したい、なー……」
「……」
「おふとん、干して、おひさまのにおいの……駄目?」
「……そりゃいいけどな。……ちゃんと外出着でだぞ、寝惚けてと、……とんでもない格好で出るなよ、その……ちゃんとボタン掛けるんだぞ、スカートなんて駄目だからな、夏、……ちゃんと長袖の上着ろよ、間違ってもあんな……暑いからってカットジーンズなんか駄目だからな、そういう服どこにも置かないからな、揃えろって言われたって却下だからな、梅子、……あ、……歩いて、でさえ、……だったら俺どうしよう……」
「せーいじ」
「……分かっている。考え出せばキリがない、だろ。……俺もそう思わんでもないけどな、その……梅子、そ、……そんな格好で、……絶対出るなよ……」
「出られないんでしょう?」
「誰が出すか!」
「せーいじ」
「……。うん」

 白電話の音がする。
「はい、成田、です。斉志、すき」
「うん、梅子。好きだ。いま、……どういう格好でどこでなにをしている」
「むー。信用ないんだわたしって。そりゃわたしはこんなんだけどなー。えっと、斉志が着せてくれた部屋着です。だから上下ちゃんと着てます、ボタンの掛け違えはありません。中、ちゃんとシルクのブラとショーツです。すけたのに穿き替えたりしてません。お掃除おわって、居間にいます。お茶いれようと思いました」
「……お湯、……熱いから気をつけろ」
「……ハイ」
「こぼすなよ。居間へ持って行くのは電話きってからだ。電話しながら何かするな」
「……。……ハイ」
「梅子。風呂、入念にはいるのはいいけどな、あんまり長湯するな。湯当たりは却下。湯船で寝るな。出たらすぐ躯拭いて。髪、ちゃんと乾かすんだぞ。さむくするなよ」
「……。……。ハイ」
「ちゃんと水分取れよ、牛乳飲むのはいいけどな、ちゃんと嚼んで、つめたいのそのままごっくんするな。……な?」
「……。……。ハイ」
「……冷蔵庫の扉で、手とか……は、……はさむなよ、……梅子、梅子すぐボタン押して、手とか、……い、……とかで押せなくてもすぐ分かるからな、こ、……声出せなかったり、……とかでもセンサーで分かるからな! 俺ちゃんと工事したから梅子心配しないで」
「ハイ」
「……本、……揃えたけどな、……。全部重いもんばっかりだからな、書斎の下の方に置いといたけどな、……お、……重くて持てないって思ったら無理して引っ張り出すなよ、居間まで持って行っちゃ駄目だ、そこで見て」
「ハイ」
「だからその……CDも揃えたけどな。……、……、……梅子、それにばっかり掛かりっきりになっちゃ駄目だ」
「ハイ」
「電話着信したらCDプレイヤー止まるから。白電話電蓄部屋にも置いたから。電話出て。梅子」
「ハイ」
「ただ、台所には白電話置かないからな。……火、とか……使ってるときは俺、……電話しない」
「ハイ。斉志」
「うん?」
「お時間、なのでは……」
「心配するなと言っているだろう!」
「ハイ」
「夜八時になっても体温、寝室になかったらどうなるか分かっているだろうな梅子」
「ハイ」
「プレイヤーは五分前に止まるからな」
「ハイ」
「書斎の電灯、五分前になったら点滅するからな。そしたら本、仕舞わなくていいから、そのままでいいから、走らず寝室へ行って。部屋着で寝るなよ、ちゃんと俺のパジャマに着替えて」
「ハイ」
「すぐ寝て。この星一番にぐーたら寝て」
「ハイ」
「俺、……帰れない日続いたら梅子、……だろうけどな、……だからって……なんてするなよ!!」
「……ハイ……」
「掃除、……梅子掃除、……手、手荒らしたりするなよ、……食器落としたら絶対触るな、片付けなくていい、寄るな触るな、すぐボタン押せ!!」
「……ハイ……」
「手の届かないとこまで無理に掃除するな、無理は駄目、絶対駄目、お白州!!」
「……ハイ……」
 その後も、……お説教をずーーーっと、……戴きまして……。
 ……。
 わたしって、……うーんとうーーーんと、……おこないわるいんだなあ……。
 カメラ、付けてもらった方がいいような気がして来た。せいじがいないときはつい思わず本音が条件反射で誘っちゃったりしないから、カメラ付けて、って言おうっと。

斉志

 許可は得た。よって梅子に、俺がうちにいない時電話以外は絶対誘うなと言い渡した。だが風呂にも脱衣所にもカメラは付けなかった。んなもん見たら俺、……。

梅子

 お手て振るのくらいは、いっかなと思って。お掃除してて、一息つくとき振った。思わず笑顔が。あ、ちょっとよそいき、だったかな。そういえばわたし……むかしはですよ、お顔がーーー、とか言ってたから、写真って苦手だった。だからカメラとか見るとつい緊張。いけない、いけない。これじゃあ数値ー、とかいうのへんになります。斉志に守られてるってことだから、いつも通りすればいいの。

 白電話の音がする。
「はい、成田です。斉志、すき」
「うん、梅子。好きだ。……そんな緊張するな梅子。なんですっぽんぽんの時は数値変わらない。なにが照れ屋だ。どこが照れ屋だ」
「ぅ」
「開き直れ梅子」
「ぅ。ぅぅ。……はい、開き直りますーーー」
「よし。ちゃんと居間で部屋着きっちり着て飯食ってるな。それでいい」
「うん」
「お茶、……手とかにこぼさなかったか」
「こぼしてません」
「ちゃんとしばいているか」
「……しばいてます」
「いま、なんかへんだなと思っただろ」
「ハイ……」
「料理の修業するのはいいけどな。分かっているだろうな。もし、……だったら……」
「斉志。過保護」
「この星一番の、だ。……それ、誰に習った」
「投げキッス? えっとね、誰っていうか、……テレビで見た、かな?」
「そうか。……誰がやっていた」
「映画の……女優さんだった、かな」←しばくつもりかな
「そうか。……名前、憶えているか」←しばいたろう
「ううん」
「本当だろうな」
「うん。横文字は、ちょっと……」
「いいか梅子。義母ちゃんと義親父さんはまだ我慢してやるが……。お白州だ。例外は二親だけ、もう俺以外から絶対に習うな!!」
「うん、斉志」←あーんなおめめでカメラ見てます
「……濡れてるだろ梅子」
「斉志とお電話する時も、いつも」←以下同文
「……、……。午後も、用事ある」
「うん。さぼっちゃ駄目です。お白州ーーー」←笑顔満点
「……」
「投げるのは駄目だけど、お電話口でちゅーはいいんでしょう?」
「うん。いい。して。いつもして」
「ちゅーちゅーちゅーちゅー」←電話口じゃなくてカメラに向かって
「……」
「ちゅーちゅーちゅーちゅー」←カメラに向かっておめめうすく瞑っている
「……」
「ちゅーちゅーちゅーちゅー」←無意識にもじもじ
「……」
「ちゅーちゅーちゅーちゅー」←振ってる
「……」←勃ってる

 どうしてお電話してるときカメラは無効とします、俺、お白州。って言うの斉志?
 でもいっか。斉志だもん。心配とかしない、の。

斉志

 職に就くまで梅子が抱えているのを全部吐き出させてやろうと思っていたが……。
 ……。
 梅子はもうなにも抱えていない。ずっと俺のことだけ考えて。そりゃいい。そうして見せる、いや、絶対にそうすると思っていた。だが。
 それで修業に集中され、……梅子最近俺のつくったことない料理を創ってる。食材を見たその場で即興で。
 ……。
 このまま行くと俺……。
 ……イかされるのが日常になる……、とか……。

梅子

 いろっぽい斉志の、上気したおかお。見るの生き甲斐なのです。最近はそういうおかお、多いです。たべてるとき、とかー。
 いろっぽい斉志の、ぬれたこえ。聞くの生き甲斐なのです。最近はうんと多いです。斉志おこえ低いけど、そういうときだけ、高くなるの。
 ぁン、って。
 あんあんあんあん。言わせたいーーー。
 あ、そうだ。

斉志

 職に就く前にイかせてあげる!
 ……と、宣言された俺の身に、……なってみろよ梅子……。
 思わずその場にボケっと突っ立った。真っ白だ。いつものごとく真っ白だ。おかえりなさい斉志イって、……って、そりゃないだろ梅子……。
 梅子にベルト外されて、ズボン落とされてパンツ剥かれて、
 ……あの扉を背に食われた。戴かれた。
 イきかけた。
 ……。
 梅子剥いで、厭々というより無理矢理剥いだ。だが。
「ぁン、……もうちょっとなのに……」
 はないだろ梅子……。俺、俺立場ない……。
 その上、
「……くち、厭々とじるから……して」
 って、……目、瞑られて、……くちがちゅーして斉志って言ってる……。
 ……した。梅子に。
 ……。
 我ながら実に情けない格好。梅子が恍惚の表情でいる間さっさか穿いて、梅子抱えて風呂場へ。ちゅーで悶絶、っておかえりのちゅーの前に食われてどうする俺。実にいいが……。
 梅子シャワーで軽く洗ってパジャマとショーツ、ふとんにくるんで居間のソファへ。飯? んなもん俺がつくるに決まっている。
 だが。
 このまま行くと俺、……うち帰った途端イかされて? シャワー浴びながらイかされて? 飯食いながらイかされて? 風呂入りながらヤられてイかされて? 歯、磨かれて、ベッドで何度もヤられまくって、おやすみなさい斉志とかちゅー、落とされて、こんじょうで目覚まして俺立場ないとか言いながらマジ泣きで鬱憤晴らしして、梅子叩き起こせなくて朝方寝て、起きたらイかされて、それで目覚ましたらおはよう斉志かわいかったとか言われて、引っ張られて風呂行って、イかされて、挙げ句目が覚めたらソファにいて、ふとんにくるまされている、とか……。
 ……。
 ……ふとん、にくるまった梅子がそのままで台所へ来る。とてとてと。ふとんの端を持って俺に抱き着く。
「せーいじ。わたし、イかせるの修業、本気でするから! うんとイかせてあげるから!」
 ……って……。
 ……あの、な。梅子。
 そりゃ、……そりゃまるで、……今まで全然、本気じゃなかったって、……言ってるようなもんだぞ……。

梅子

 これぞこの星一番ぐーたら女房の真骨頂、です。我ながらなんて素晴らしい大宣言。言ったからには待たせません。すぐに実行します。
 おふとんそのへんにぽいして斉志のずぼんおろしてぱんつ剥いておしりにちゅー。
「ぁン!!」
 そのしたの、ふとももにもちゅー。
「……ッ!!」
 とにかくちゅー。躯のうしろ、全部ちゅー。
「……ッ、……ッ、……ッ!!」
 いったかなーー……。
「……ッ、……ッ、……この!!」
 まだのようです。では、お手てを前に。
 ぎゅ。
「ぁン!! ッ、くっ!!」
 上下に。先の方を、ゆびで、こうするとですね……。
「ぁ……ぁッッ!」
 もうちょっとです。
「誰がされるかなにがまだだもうちょっとだこのスケベ!!」
 この星一番の、でーーす。
「そりゃ俺だ!!」
 じゃあイかせます。
 つつー、っと。
「……この!!」

 ──うめこ俺イかせるの修業・研究しないで下さい。ヤったら俺、職に就きません、お白州。
 ……。
 そうですか……。
 わたしの愉しみ奪うんだ斉志……。
 そうですか……。

 白電話の音がする。
「はい、成田です。斉志、すき。イって」
「……厭だ」
「カメラは?」
「電話中は全部オフだ」
「どうして」
「……電話口で、……イかされる」
「イって」
「厭だ。……あのな梅子。俺にどこでどうイけと言っているのか分かっているのか」
「ぜんぜん」
「……あのな」
「うめこはこの星一番の考えなしです。うめこさきのこと考えなくていいって斉志言ったでしょう」
「……そうか。そこまで開き直るか梅子」
「うん。あ、数値は?」
「まるで正常だ梅子」
「よかった。斉志、カメラつけて」
「厭だ」
「お電話中はうんと誘ってお白州ー、でしょう。じゃあ脱ぎます」
「……」←カメラオン
「……どう?」←振ってる
「……」←なんでバレた←鼻押さえながら
「せいじ、カメラ手の届くところに付けて、そしたらアップであーーんなとことかこーーんなとことか」
「……」←勃つのでカメラオフ
「みてる? 斉志。……、……、……くちゅん」
「!!」←キレた

 すぐ寝ろふとんにくるまれ待ってろ梅子と言われてお電話ぶっつん、です。
 どうしよう。
 いまさら、いまさら……おはながむずむずしただけですって言ったところで……信じて貰えなさそう……どうしよう、間違いなく病院のベッドの刑にされちゃう。うんと厚着されるどころじゃなくって、注射を飛び越えてしゅ、手術されちゃう、とか……。
 ……と、考えながらもとにかく寝室へ向かいました。これでこの場に立ちすくんで、それで斉志にばびゅーんって戻られて、ぼけーーっと突っ立ってるのみられでもしたら……。
 すっぽんぽんのままお寝むです。こんじょうでお寝むしなくてはなりません。むー、むー、お寝むするのだうめこーーー。
 必死にお寝むしていると、ぽーんって音がして、扉の開く音がして、どかどか大股一直線な音がおっきくなって、ふとんごと抱え上げられられました。
「梅子!! 俺を置いて行くな梅子!! 死なないで!!」
 ひっっっえー……ど、ど、どうしよう。
「俺やっぱり医大入るから、梅子専門の開業医になるから、患者梅子だけだから、だから!!」
 ぅ、ぅ、ぅ……。
「梅子、梅子、は、反応ない、……俺!!」
「せ、せいじ」
「梅子!!」
 おふとんからなんとか顔だけ出して、
「梅子、待ってて梅子、ちゃんと手術する、俺ずっと看病する!」
「ち、ちがうの、せいじ、せいじ、聞いて」
「うん分かった実に分かった梅子俺が手術する!!」
「ちがうったらーーー!!」

 白電話の音がする。
「はい。なりたです。せいじ、すき。おこってる?」
「うん」
「……そんなにおこらないで……」
「おこった。俺、おこった。梅子、言っておくが電話と飯時とヤってる時は反省なしだ」
「ぅ、……反省中、ぅぅは却下……」
「そうだ。俺、おこった」
「……。……スキせいじ……」
「うん。好きだ梅子。おこった」
「……。……。スキせいじ……」
「うん。好きだ梅子。おこった」
「……。……。……。スキせいじ……」
「うん。好きだ梅子。おこった」
「……。……。……」

 ──お白州です。俺が出掛けている時うめこがすっぽんぽんになっていいのは風呂へ入る為脱衣所にいる時と風呂に入っている時だけです問答無用。
 うちの最上階を手が届くところのみ掃除する・小物のコットン類のみ洗濯する・俺が教えた武道の手解きをその通り行う・俺の教えた料理のみその通りつくる、この時独創性は働かせない問答無用。うめこの花嫁修業はこれだけです。
 修業は一日置きでさぼるように。生理期間中はずっとさぼりましょう。大丈夫だうめこ、安心していい。運動なら俺がたっぷりイかせてヤる、俺によがってぐーたら寝てろ。
 俺がうちへ一日以上帰らなかったら、二日目から晴れの日は外出着に身を固めて時間限定でお散歩して下さい。俺が出張中は宿泊施設へ連れて行って縛り上げるので飯つくるのも含め全修業中断、ぐーたら寝て下さい。俺の休日も全修業中断、ずっとヤります。休日の前後は一日置きに拘らず修業しちゃいけません、ひたすらぐーたら寝て下さい。
 ただし飯抜きはいつでも却下です、飯は必ず三食きっちりとって下さい。
 飯と修業とすっぽんぽんに関してはうめこ開き直るの却下。
 破ったらどうなるか……分かっているだろうなうめこ……。

 白電話の音がする。
「はい、成田です。斉志、好き」
「うん、梅子、好きだ。ちゃんと居間で部屋着で飯食ってたな。それでいい。食いおわって歯を磨いたら夕方までぐーたら寝て」
「……。あのー……」
「なんだ」
「……。本とか、CDとか、は……」
「……」
「……駄目でしょうか……」
「……梅子、天体とか……よく観るみたいだから、そういうのも揃えたけどな。……梅子でかくて重い本ばっかり観るんだもんな……そんな本で、なんとかになったら俺……」
「あのー……」
「……うん。梅子、CD聞くのもいいけどな。聞きながら寝ちゃ駄目だからな。それやっていいのは俺だけだ。分かっているな」
「うん」
「念の為だ。電蓄の部屋へはパジャマで行く。ふとんにくるまれ。ただし寝るな。眠くなったらそのまま寝室へ行くこと。やむを得ずそこでぐーたら寝る場合は絶対さむくするな。間違っても尻だの腹だの出して寝るな梅子」
「……しません」
「本当だろうな」
「ハイ」
「じゃあいい。梅子、俺のこと誘って」
「……。ちゅー……」
「通話中、カメラはオフだと言っただろう。だからと言って遠慮なぞ要らん、うんと誘って梅子」
「イかせるのは……」
「今何と言った」
「……。せいじ、スキ」
「うん。もっと」
「脱ぐのは……」
「今何と言った」
「……。せいじ、スキ」
「うん。もっと」
「……。せいじ。ぎゅってしたい。いっぱい。あんなふうにいっぱい」
「……」
「いいでしょう?」
「……そりゃ、いいが……」←忍耐だ
「あ、でも、調理中はいろいろ、あぶなそうだから、抱き着くだけにしておきます」
「……俺はズドンでヤるからな」
「うん。して。やって。いっぱい……。待ってる……」
「……うん」

 ロイヤルミルクティーをつくって書斎へ行って、天体観察です。うんとおっきな写真集。迫力、です。
 決して肉眼で見られない、色とりどりの鮮やかな星達。
 ──ずっと観ていた。

 夕方、お風呂へ入念に。それから夕ご飯と朝ご飯の支度を。
 ご飯食べて、パジャマに着替えて。ちゃんと上下着ます。ぱんつはすけたのじゃありません。
 ふとんを持って電蓄のお部屋へ。時間まで、聴いていようと思った。
 白電話の音がする。
「はい、成田、です。斉志、すき」
「ああ」
「いま電蓄のお部屋、です。パジャマはちゃんと上下です。下はわたしのです。ぱんつ、ちゃんと穿いてます。ふとんにくるまっておへそもおしりも出してません」
「ああ」
「午後は書斎にいました。お夕飯と朝ご飯の支度して、ちゃんとお夕飯食べました。こぼさず残さず食べました。歯もちゃんと磨きました」
「ああ」
「しあわせ」
「……ああ」
「すき」
「……ああ」
「待ってる」
「ああ。……じゃあ」

斉志

「梅子」
「……うん……?」
「梅子は、……ぐーたら寝るの、……厭か」
「? ううん?」
「そう、か」
「うん」
「本も、いいし……CDもいいけどな。……ちゃんとぐーたら寝るんだぞ」
「うん」

梅子

 今日は修業していいの日なので、お掃除お掃除。運動になるし、躯にわるいことじゃないし。要はお皿とかカップとかがっちゃんと割らずにお手て荒らさず無理しなくちゃいいんです。おうち、きれいになるし。きれいにしていたいの。大切に、大切に。斉志とわたしのおうちだから。
 と、思っていたら白電話の音がする。いつもそう、やわらかい。
「はい、成田です。斉志、すき」
「梅子が大切にしていいのは梅子と俺だけだからな好きだ梅子」
「……。あ、のー……」
「梅子が綺麗なんだからな。うち、ちゃんとするのはいいが……うの付くのするなと言ってるだろ」
「……。あ、のー……」
「返事。して。梅子」
「……。……。うん。せいじ。格好いい」
「……」
「おへんじ。して。せいじ」
「……ああ」
「ハンサムさん。美男子」
「……」
「おへーんじ」
「……ああ」
「かぁっこいい、のーーー。バスケのね、えっと、シュート? とか、名前よく分からないけど、そういうのうんと格好よくて。猛々しくって。見惚れてるの。いつも」
「……そう、か」
「うん。かっこいい!」
「……」
「おへーんじ」
「……ああ」
「なにしてもさまになるの!」
「……」
「おへーんじ」
「……ああ」
「あのね、あのね、お勉強とか、でも。実はね、うーんとうーんと格好いいって、思ってたのです! そ、そりゃわたし、あの時は、……とかだったけど、でもでも、いつも一番上にずーーーっとで、そ、そんなのなんともないって感じで、余裕たっぷりで、そ、そういうとこも、惚れていたのです!」
「……んなもん思ったら即言え梅子。よくもなんとかし続けやがって……」
「ぅ。う、う、あ、あのでもこれからは即言います!」

「斉志。わたし、ストレッチとか腕立て伏せとか腹筋背筋、したいのです。これはしていい?」
「……」
「どうして無言……躯にいいことでしょう?」
「……」
「ちゃんと一日おきにさぼるから、わたし修業生き甲斐なの、花嫁修業なんだもん、ちゃんとするの、せいじわたしの生き甲斐とらないで……」
「……。……。……分かった。……躯にいいことは、……していい。……ただし……」
「無理も無茶もしません、ちゃんとぐーたらお寝むして斉志待ってます。いっぱい襲って、叩き起こして、うんと食べて。ちゃんとお寝むします、寝室にいるから」
「……」
「いい?」
「……。……う、ん」

 せーいじ。厭?
 って思ったら。
 わけないだろ?
 って、きこえた。
 空耳じゃなく、電話越しでもなく。
 だから今日はゆっくりお寝む。

斉志

 昼に電話ボックスへ入る前、梅子がぐーたら寝ている気配がした。
 だから、多少は遠慮してやろうかと思わんでもないが……。駄目だ。梅子は朝・昼・夕方、三食きっちりとるのが日常だ。
 電話を掛けると案の定、しばらく出なかった。
 起きて梅子、起きて……。
「……はぁぃ、なりた、です……」
「好きだ梅子。起きて。飯抜いちゃ駄目だ」
「うん……すきせいじ……おねむ……」
「起きる」
「うん……」
「梅子」
「うん……」
「飯食って歯磨いたら、すぐ寝ていい。夕方起きようと思わなくていい、俺が叩き起こす。だから、……な?」
「うん……」
「目、あんまりこするな。……な」
「うん。……おきる……。うん、起きた」
「じゃあいい。梅子、飯ちゃんと食って。ちゃんと茶しばいて。熱いだろ、ちゃんとふーふーして飲むんだぞ」
「せいじのみたい……」
「……駄目だ」
「……うん。いやいやがまんする……。たべるのでがまんする……」
「……あのな」
「せいじ。どうしていかせるの、駄目なの?」
「……開き直るなと言ったろ」
「思ったこと言ったんだもん」
「……俺はプライドが高いからだ」
「でも、そういうの、みていいのわたしだけでしょう?」
「……そりゃ、……そうだけどさ……」
「みたいけど、修業はしません。だいじょうぶだ斉志、安心していい。えっと……そのときは、お水とか持って行ってあげればいいんでしょう? あ、お風呂に入れてあげる?」

梅子

 ──うめこは俺のことだっこ・おひめさまだっこ・担ぎ上げしちゃいけません。お白州。
 ……。
 無理です。