梅子

 白電話の音がする。
「はい、成田、です」
「うん。いい度胸だ梅子」
「いまお弁当食べてます。斉志、いつして欲しい?」
「実にいい度胸だ梅子」
「そう。じゃあ全然思い付かないんだ」
「全くいい度胸だ梅子」
「どれ着て出迎えて誘ってあげる?」
「梅子の度胸はこの星一番だ」
「うん。どれがいい?」
「マシュマロうさぎ。うんと濡れて待ってろよ。日中はいつもふとんにくるまってずっと寝てろこの星一番のグータラ女房」
「濡れるのはいつもだけどずっと寝てばっかりは厭。ちゃんと修業するもんこの星一番のぼんくら亭主」
「そうか」
「うん」
「具合はどうだ」
「ちゃんと治った」
「そうか」
「うん」
「なら遠慮は要らんな」
「斉志が遠慮? なにそれ」
「そうか」
「うん」
「梅子」
「うん。なに?」
 ああ負けた、完敗だ、全敗だ、勝とうと思わんが絶対勝ってヤってやるだそうです。のぞむところです。でも斉志はいつもなんでも勝ってるんだけどな。この星一番の格好よくていろっぽくて無意識誘いまくりのぼんくら亭主って自覚、やっぱりないみたい。
 ところであの下着、適当に着たけど、着方あれで合ってたかなあ。だってどこになにを通せばいいか全然分からないんだもん。ひょっとしたらちょっとうんと違ってて、ひょっとしたらわたしの着方の方がうんとやーらしいのかも知れないけど、そういうことは気にしないでおこうっと。

斉志

 真っ白いうさぎ姿な梅子が俺を出迎える。おかえりなさい斉志して、と言って来た。ただいま梅子いい度胸だ脚おっ開げて俺にしがみつけと言いおいて、下を脱いでその場でヤった。梅子とぷとぷに濡れまくってて、スーツの下に染みまくり。当然んなもん構わず下の布ずらしてただ突いた。ぁンぁン猥らな声出しまくって感じまくりな梅子。喉涸らせてやろうと思って悶絶背中攻め、喘ぎまくりな梅子。それでも無理矢理意識引き戻して攻め続けた。梅子涙流して、感じまくるなんてもんじゃない、感度よ過ぎなんてもんじゃない、尻も腰もでかい胸も振り尽くしてただイった。
 風呂に入れて、そこでもヤろうと思ったが、そうなると飯抜きは必定。区別だ俺、厭々我慢。梅子さっさか洗ってスケスケパンティとスケスケブラジャーと俺のパジャマ着せてふとんにくるんでソファへ。梅子がこんじょうで起き上がる間、しょうがなく厭々ひとりで湯船に浸かる。梅子起きたかな……。

梅子

 よ、よれよれ、です。あー、あー、ただいま声のテスト中。ちょ、ちょっと声出ない。も、凄い……。
 気が付くとさっぱりしてぬくぬく。日常です……。掛けられたおふとんを寝室へ戻して台所へ。
 あんなにおっきな湯船に、斉志のんびり浸かってて欲しいな。
 ……なんて結婚後初めて思いました!!
 ぅぅ、どういうぐーたらっぷりでしょう……。
「あのね、せいじ」
「うん」
「どうしてわたしの下着、上も下もすけすけなの?」
「俺が梅子をヤるからだ」
「それはいつもでしょう」
「剥いてとは言っていない」
「じゃあどうするの?」
「こうする」
 上から乳首を弾いて下から蕾を擦るだけ。途端目をぎゅっと瞑って、ちいさな口から淫らな喘ぎ声。すぐに感じる梅子。感度よ過ぎる梅子。
「飯。ほら、食う」
「……、……」
「梅子。箸落とすな」
「……、……」
「食え」
「……、……」
「ちゃんと俺食わすから、飯もちゃんと食え。梅子は美味いぞ、梅子も梅子がつくるのも全部」
「……、……」
「ぐっちゅぐちゅだ。俺の脚にまでもう染みて来てるぞ」
「……、……」
「飯時は集中させろ? お願い? 厭だ」
「……、……」
「じゃあ飯抜きになる? ……言うな」
「……、……」
「分かった。しょうがない。厭々我慢する」
「……、……」
「ほら。手、止めてやったぞ、厭々。俺にちゃんと食わせろ梅子」
「……、……」
「半端に止めるな? 焦らしてるみたいだ? 梅子焦らされるの好きだろ。だったらちゃんと食う」
「……、……ン」
「ほら」
「……は、い。あ~、ん」
「……ん。……美味い」
「よ、……かったぁ……」
「梅子も食う」
「……う、……ン」
「じゅぶじゅぶ出てるぞ……」
「だ、ってぇ……」
「もじもじしてるな。まだだ。ベッドでうんと犯してヤる。だからちゃんと食え。……な」
「う、……ん」
「あ~ん……」

斉志

 焦らしてヤった。パンティーもブラもわざと剥ぎ取らずそのままに。俺に組み伏せられた梅子が泣きながら、そこの部分のスケスケレースだけ除けて、入れて、はやくと俺を急かす。それでもずっと見てるだけ……視姦。
「せいじ、せいじ、せいじぃ!! 来て、来て、来てぇ、お願ぁい!!」
「……厭だ」
「ど、してぇ……!!」
「梅子があんまりいい度胸だからだ……俺、負け続けだからな……焦らす時は俺、勝ってるだろ?」
「ぜ、ぜんぶ勝ってるもん!! 斉志自覚ないでしょう!? い、いつもいつも誘ってるんだから!! 来て、入れて!!」
「……それで?」
「……、……、……犯して!!」
 穿かせたまま犯した。着けたまま揉みしだいた。鏡で見せた。ヤらしく濡れまくった結合部。
「……どう、だ?」
「……、……」
「言えよ……」
「……、……」
「言わないと……抜くぞ?」
「厭!!」
「じゃあ見ろ……言えよ梅子」
「く、……くわえて、るぅ!! せい、じをぉ、わたしの、がぁ!!」
「……梅子の?」
「せ、せいじの!! こ、ここは斉志の、なの!!」
「……ここは?」
「全部斉志の!! ぁン厭!! 抜かないで!! 突いて、犯してぇええええ!!」
「梅子。いい加減、梅子が奥まで腰下ろせ。いつもそろそろ俺咥えるだろ。梅子がしろ」
「……、……う、ン」
 全体重を掛けて、梅子が俺を咥える。
 梅子のなかに俺を全部。……熱ィ。
「……締め、……」
「ちゃ、……駄目?」
「わけない、だ、……ろ」
「せいじぃ……?」
「うん……?」
「すき、いっぱい、……もっと犯して……」
「ずっと犯してヤる……墓に入ってもだ……」
「……うン、うン、なんでもして……」
「どんな……ひどいこと、でも?」
「……ぅン……」
「もう、……なんとかなんて言わない、か?」
「……ぅン……」
「……ほんとか?」
「ほんと……」
「……じゃあ、生理中はしないけどな、風呂も、……だけどな。それ以外は、……もうなんとかなんざ言うなよ」
「……ぅン……」
「……狂うからな」
「狂って……」
 お願い通り狂って犯してただヤった。イった後厭々少し寝かせた。これでまた叩き起こせば梅子日中トイレ我慢かと思って、……腕枕をした。
 いつもならすぐヤられるかと思っているだろう梅子が目を覚まして腕枕だと気付いて驚いている。どうしたのかと。
「……梅子」
「うん?」
「……俺な」
「うん」
「……梅子。逃げるなよ」
「……? どうしたの斉志」
「あのな……?」
「うん」
「俺な、……俺、写真……なんとかなんだ」
「……え?」
「俺、写真とか撮らない、残さないって、……ああ、今気付いたか?」
「……うん」
「理由がある」
「……うん?」
「俺の、……二親の分はなにひとつ遺っていない。親父が母親のを全て、ありったけ焼却処分にした。なにひとつ、一枚残らず徹底的に回収してな。……さすが俺の親だ、その手のヘマはない」
「……」
「親父とは……一緒に撮って貰えなかった。以来、写真はなんとかだ。時計はな、ねだって……やらんと言われて、……力づくで俺が奪い取った。そういう腕力がもうあったんだ、俺には。……小学校の頃の話だ。親父の左手首にはその時俺が付けた瑕が遺っていた。遺体を見た時、……ああ、俺の瑕だと思ったよ」
「……」
「俺は一度見たものは忘れんからな、確かに見ればもう、わざわざ撮らんでもいいが、……見ていないものは記憶しようがない」
「……」
「俺は、梅子のショーツだブラだは握りしめるが、……写真は持たん」
「……」
「……ごめん。取り留めない話だ……」
「せいじ」
「……うん?」
「あの……」
「うん」
「せいじの、……名前」
「うん」
「その、……」
「ああ、誰がなににちなんで付けたのか、か?」
「うん」
「梅子は義母ちゃんにちなんでだよな」
「うん。あ、せいじ」
「うん?」
「あのー……。どうして、かあちゃん、なのかな」
「ああ……義母ちゃんがそう呼べと言ったんだ。俺に。……義母ちゃんの息子は生涯ただ一人、俺だけだと……口調が丁寧過ぎる、遠慮するな、はいじゃなくてうんと言えと、義母ちゃんと呼べと、……梅子と同じように呼べと、そう言ってくれたんだ」
「……」
「俺の名前か。おふくろが斉子で親父が洋志、斉志と名付けたのはおふくろだ。女が産まれたら洋子だったそうだ。ついでにな、成田家は代々遠洋漁業で親父の“洋”はずばりそれだ。“志”は成田家の男にみな付けたと。じいさんは海志、その前は流志」
「……そう、なんだ」
「うん」
「そうかぁ……」
「うん」
「あのね」
「うん」
「わたしは、あまりその……自分の名前、すきじゃなくて」
「……なんで?」
「だって笑われたもん」
「俺は好きだ」
「……」
「そうやって、照れるところも全部好きだ、梅子。俺、こんなんだろ。だから梅子が、……まあ女は厭々我慢してやるが、なんとかな連中から梅子と呼ばれてなくてよかったと思ったよ。……おこった?」
「ううん……」
「そう、か」
「うん」
「梅子」
「うん?」
「梅子。けっこん届に署名した時使った万年筆、憶えているか」
「……」
「やっぱりな。ボールペンかなんかと思っただろ」
「……」
「そうだ、梅子の考えは最初から大体分かっていた。けど梅子凄いことするからな。それは分からん。今でもだ。だが俺はそれでいいと思っている。梅子は?」
「……わたしは……」
「うん」
「あの、ね。……全部、分かっててほしい、です」
「うん。俺も。梅子を全部知りたい。全部」
「……うん」
「万年筆はおふくろの形見だ。親父は写真は血眼で回収したらしいが、いくらなんでも使った物品全てを回収とはいかなかったらしくてな。それはこんじょうで探し出した。俺が万年筆を使ったのはけっこん届に名前を書いた時だけだ。梅子に絶対俺と同じく書いて貰うんだって、そう思ったよ」
「……うん」
「梅子に知っておいて欲しかった。それだけだ……」
「……」
「……なんだかしんみりしちまったな」
「……」
「俺、駄目だな。梅子を泣かせてばかりだ」
「……そんなことない……」
「……あるだろ」
「もう、分かってると思うけど……」
「言って」
「うん、あの……その、な、泣くと、その……すっきりするのです。気分、が」
「そうか?」
「うん。あの、……その、一度泣くと、ですね……」
「うん。……まさか癖になっているなんて言うなよ」
「どうして分かる、の……」
「全部貰ったと言ったろ」
「ぅぅ……。あのね、せいじ」
「うん?」
「わたし、全部貰われるの、安心する」
「そう、か?」
「うん。せいじは?」
「安心しているよ。俺が、……俺が初めて安心したのは梅子を全部貰った日だ」
「……」
「照れるな。いまは、か? 安心しているよ。こうして、……なにを言っても、なにをしても梅子逃げないって、……心底思っているからな」
「……よかった」
「梅子」
「うん?」
「俺、お願いがある」
「うん」
「あきれないで聞いてくれ」
「そんなことしない。わたしに出来ること、全部するもん」
「そうか」
「うん」
「……俺、梅子の髪にちゅーしてヤりたい」
「……」
「その、……そうあきれるな。……言わせるな」
「ぅー……」
「どうせ全敗だ。完敗だ。わるかったな。梅子すりすりまでやるんだもんな……。なあ梅子、……俺どうやって梅子誘えばいいんだ? ただいるだけで誘ってるってのは聞いたがな、そうじゃなくて……俺だってなにかして誘いたいんだ。梅子、俺に教えて」
「……えー……」
「えー、とはなんだ。俺は梅子に勉強教えられないけどな、梅子が俺に誘い方とか、……教えてくれたっていいだろ」
「……」
「そこまで驚くことないだろ……」
「だって……」
「こんなんな俺が教えてくれとはなにそれ、か。わるかったな。……いいから教えて」
「ぅぅ……」
「俺に教えて。梅子」
「……あの」
「うん」
「わ、わたしは、……ですね。あのその……さ、誘っているという感覚はないのです……」
「自覚が無いだけだ。言い直せ」
「ぅぅ……」
「大体な、……処女膜破られた時痛かっただろ? 血だって出てたのにあんな誘い方……。あのな梅子、いくらなんでも自覚ない言動しまくりだぞ。……だから出さないんだからな」
「ど、どーせわたしは行いわるいです、よーだ」
「ああ梅子の行いのわるさはこの星一番だ。なんで俺よりこの星一番な項目が多いんだ?」
「なんかへんな話になってる、せいじ」
「じゃあ教えて」
「ぅぅ……。あの、あの、……そ、そうしたいことを、しているだけなんだけど……」
「教えてくれんのか」
「あ、あの、だから……。あ! じゃあ」
「うん?」
「最初からちょっとづつやろう?」
「……」
「あ。せいじ。いま、俺の辞書にその時で完璧にやりこなせないものはない、とか思ったでしょう」
「……わるかったな」
「あの、ね。普通は、勉強とかは、ちょっとづつ習っていって、それで段々、難しいことが出来るものだと思うの。……なんか言ってて全然斉志に合わない……」
「合うわけないだろ」
「ぅぅ……」
「話を逸らすな梅子。……髪にちゅーして、……いい?」
「……うん」
「すりすりとか、……いい?」
「うん……して」

 翌朝、ソファで飯食いながら梅子をぐちゅぐちゅにしていると、梅子が切れ切れに誘い方があると言って来た。
「なに? 梅子、教えて」
「……、……」
「教えて梅子。ヤらしく喘ぐのもいいけどな、俺に教えながら喘いでくれ」
「……、……」
「無理だ? んなこと言うなら手を止めろ? 厭だ。大体な梅子、止めると焦らしているとか思うだろ。梅子は焦らされるの好きだが、実際焦らされるとはやくしてとか思うんだよな。だから焦らさん。ヤる」
「……、……」
「……しょうがない。飯抜きは却下だ」
 箸はどうこんじょうで頑張っても取り落とすから、味噌汁だけじゃなく飯もおかずも漬け物も全部口移しで食わせた。以前これをやったら、やろうと思ったらそれははい・あ~んじゃないだの体よく断られたが当然いまは違う。
「それで? 梅子。俺どうやって梅子を誘うんだ?」
 梅子が濡れるなら俺も勃つ。きっちり俺うんと食わせて、梅子の顔と胸を拭いて歯を磨く。もう時間も時間、スーツを着ながら梅子に質問。照れる梅子が傍にいる。
「あのね」
「うん」
「詰め襟着て」
「……??」
「ボタン、上からゆっくり、外して欲しい、なー……」
「……」
「それで、……押し倒して」
「……」
「こんなにスーツの似合う斉志がいま詰め襟で、なんて……考えただけで、……そそる、の」
「梅子」
「……駄目?」
「なんでそう……俺の想像を遥かに超えることを言う……」
「……え?」
「そんな手、……俺新しく作らせたけど、……そんな手があったなんて、俺……」
「え、あの……」
「よし分かった。うんと分かった。梅子、今日も日中グータラ昼寝だ」
「え」
「最高記録だ梅子」
「え」
「俺、帰ったら梅子うんと誘う。見てろよ梅子、間違っても明日足腰立つと思うなよ」
「……思えません……」
「昼は」
「ぬ、抜きません」
「そうだ。安心していい梅子、帰ったら抜かん」
「あ、あのー……」
「行って来る梅子。ぐーたら寝てろ、いいな!」
「……行ってらっしゃい斉志……ぐーたら寝てます……ハイ……」

 電話をした。
「はい……なりた……です……」
「うん、梅子。昼だぞ。まだ濡れてなくていいからな、ちゃんと食え」
「せいじたべたい……」
「……寝ぼけ声で……電話口で誘うなと言ったろ梅子」
「だって、……声でもう感じてるんだもん……斉志の声、やらしいんだから……」
「……あのな梅子」
「だから……お電話してる暇ないって、言ったの……。そんな声、……誰にも聞かせないで……」
「分かった。聞かせん。絶対だ。……だからそう誘うな」
「うん、分かった。誘わない……」
「電話口では、だからな」
「うん……」
 名を呼び合ったら、きる直前電話口から、……ちゅって、音……!!
「梅子!!  なんだ今の音は!!」
「はい……成田、です。いまお弁当のふた開けたところです」
「今の音はなんだと聞いているんだ! 答えろ梅子!!」
「ちゅーの音」
「何にちゅーした!? まさか受話器だ梅子の指だなんざ言う気じゃあるまいな!! そんなことをしたらどうなるか分かっているのか!?」
「えっと、お尻ぺんぺん」
「当然だ!! 何にちゅーした、言え!!」
「何にもちゅーしてないもん」
「じゃあどうやってした!?」
「えっと、その場で……なんて説明すればいいのかな」
「誰に習った!?」
「斉志に」
「……なんだと?」
「斉志の、……に、……してるつもりで、したの」
「……梅子」
「うん?」
「電話口で誘うなと言った筈だ!!」
「うん、分かった。じゃあもうお電話でちゅー、しない」
「……」
「せーいじ」
「……」
「せーいじ」
「……」
「せーいじ」
「……」
「せーいじ」
「……」
「せいじー。もうお時間でしょう? ……イこ?」
 それから大学を出るまで、俺の周りには誰もいない。これも日常。我ながらうんと爆発的大集中、誰をも近寄せず講義後さっさと車へ乗り込んだ。
 それにしても梅子……。
 ……。

梅子

 足腰立たない、でもなければ、ふつう日中そうそうずっと寝っ放し、はないと思う。だから目が覚めた。時間は三時。
 これはしていいかな、と思って、いつもの通り念入りにお風呂へ入った。
 上がった後、考えてた。どうしようかな。ぐーたらお寝むに戻るか、ソファで、……ふつうの服着て待って斉志におかえりなさいって言うか。
 うーん。うーん。
 そう思って、バスローブ姿で脱衣場をうろうろしていると、ぽーんって音がした。
 あ、あれ、いつもより早い。行かなくちゃ。
「斉志、おかえりなさい」
「ただいま梅子なんだその格好はナニをヤっていたなんで寝ていない俺の言うこと聞いてなかったななにがちゅーしないだ電話で俺食うだいい度胸だ脚開け!!」
 ……答えられません……。

斉志

 どういう格好をしているか全く自覚ないだろ梅子。そりゃ頭に血が昇って少々早く帰ったけどな、……バスローブの帯巻くの忘れて出迎えることないだろ……。全部丸見えだぞ梅子……。
 今はともかく職に就けば確かに日中の時間は無いも同然。だから庭くらいなら俺だって、ひとりで出してもいいとは思っているんだ。警備の連中にもなんのための自分達だ子供部屋の掃除と庭の手入れと食品雑貨洗濯物の入れ替えがいつ本業になったと散々言われている、どこぞの高飛車女房とて、キャリアが暇なわけ……ないわよ? と夜の夜中、鬱憤晴らしの時今が通常の帰宅時間だとわざわざ電話して来やがった。そうでなくとも梅子とて休みはなかったんだ。
 だが梅子はこんなんだ! これで出せるわけなかろうが!! どう考えてもこんな格好あんな格好で昼夜構わずフラフラ出て、間違えて腕時計を取り落とし、フラフラ壁を乗り越えて、挙げ句警備の連中をあの脚で撒くなど目に見えてる。
 よって出さん。誰が出すか。
 梅子は先の先まで事態を見通し立場を考慮出来るが、いかんせん場数を踏んでいない分野ではどう考えてもただの赤ん坊だ。いくらなんでも差が激し過ぎる。
 玄関で悶絶背中攻め、イっちまった梅子の躯をさっさか洗って俺もそうして梅子をベッドに横たえた。これは職に就いても確実に日常。
 気合いで料理、だが今日は弁当だ。夕飯も弁当とは、と梅子は思うこともないだろう。なにせ今から着る格好が格好だからな。
 俺と梅子、この星一番のバカ夫婦は着せ替えショー好きなのかもしれん。いや、コスプレ好き?
 ……。
 俺がそうした。

梅子

 気が付くと。……えっと、とにかく日常です。さっぱりしててベッドでぐーたら、日常です。斉志が職に就いてもこれ日常、確実です、確定です。
 だからそれはいい(……)のだけど。
 いつもなら、どういう服を着ているかは気にならない。そのくらい、しっくり来るくらい着慣れたパジャマでぬくぬく、が日常だから。
 でも、今。全然、着慣れてない服、です。
 ううん、正確に言うなら、何年か前に着ていた、とてもベッドでぐーたらとは行かない服を、わたしは着ていた。
 それはA高の制服、だった。高二の夏に貰ったものだとすぐ分かる。だって入院前のは着れないし、入院直後のは胸きつくなって(……)、それで……。
 だから……。
 だから、詰め襟を纏った斉志が寝室に入って来たとき。
 あのときみたいにときめいた。
 こっちに歩いて来る。大股で、格好よくて。あ、ぶつかる、そう思ったあの時。どきどき言って、ばくばく言って、あのときは力が全然どこにもなかったけど、いまは違くて、だから両手で無意識においでぽーず、してた。
 だから、だから。
 呼びたかった。

梅子と斉志

 いい?
 いいよ?

「成田くん」
「梅子」

 初めて。
 うん。

 詰め襟姿の成田くん。わたしの制服をびりびり破る。なんの遠慮もなくびりびり、びりびり。ネクタイはやさしく外されたけど、それ以外はもう遠慮ない。一旦上半身を起こされて、上着、首の、襟のところ持って両手で一気に破かれた。すご、い。ベストもこれまた簡単に破かれる。ブラウス、もうボタンが飛ぶとかじゃない。布地がばりって破かれる。あのとき邪魔者にされたスリップも簡単に破かれる。ブラ、胸の谷間のところからブチっと切られた。スカートは、これは破かれない。丈が短い。これ、あの退院後に着ていたものだ。めくられて、中のショーツ、いつもなら剥ぎ取られるのに、これすら破かれた。
 服を全部脱がれはしない。全部中途半端に躯に括り付けられてて、くつしたもそのまま。それで脚、がばーって開かれる。M字に、こんな服装で開かれる。
 それから、それから、……成田、くん、は、
 ……ゆっくり、ゆっくり、詰め襟の上から、ボタンを取る。あ、第二ボタン、欲しいなー、なんて……。
 そのなかは、……素肌。
 あの時舞台の上で見た。いろっぽい、なんて、もんじゃ、なくって、……。
 瞳が、もう、もう……誘って、ううん、

 煽情。
 梅子も。

 目を開けて、見た。かちゃかちゃ、音して、ベルト乱暴に取って、もうたまらないって感じで抜き取って、それ、……下、脱ぐ。なかは、……素肌。だから、すぐ、……みえた。

 荒々しく勃ってる、よ。
 濡れてスカート染みてる、よ。

 どうしてしてくれなかったの?
 どうしてさせてくれなかった?

 ずっと濡れてたのに。
 ずっと勃ってたんだぞ。

 いつも誘って。いろっぽいって自覚ある?
 いつも誘って。不用心って自覚あるか?

 来て。
 うん。

 制服姿の獣が二匹、ビリビリビリビリ服を破いて、濡れまくっておっ勃てまくってベッドの上で狂い続けた。
 俺と梅子、これが本性。
 教室攻撃? ……ヘン、今から思えばかわいいもんだ……。

斉志

 翌朝。足腰立つわけのない梅子を俺に乗せ、ぐちゅぐちゅ言わせてぁンぁン哭かせて朝食を。まったく飯が喉を通らない梅子。
「……、……」
「大丈夫だ梅子、安心していい。出掛ける前ちゃんと俺出さす」
「……、……」
「俺? 俺は梅子に出したからな。あとはもうひとつの方だがこれもちゃんと出した」
「……、……」
「飯時に相応しくない話をするな? ……確かにそうだ」
「……、……」
「ちゃんと食わせろ? 出掛ける前にいつも食わしてるだろ俺。……飯の方? このままだと痩せる? ……言うな」
「……、……」
「だったらちゃんと食え。口移しだ、喘ぐのもいいし濡れるのもいいがいまは飯時だ、飯を食う。返事」
「……ぅ、……ン」
「感度よ過ぎだ梅子。ほら」
「……む……ぐ」
「もっと」
「ん……ぐ」
「いっぱい」
「ぅン、ぅん……」
「俺も食う」
「ぅン……」
 腰砕けの梅子が俺に寄り掛かって俺を食う。力が足りない、躯が悲鳴を上げ過ぎている。また俺、……。
 飯のあと、ちゅーで無理矢理薬を飲ませた。顔精前、既に梅子は気を失っていた。
 さっさか梅子を洗って、ショーツ穿かせて俺のパジャマを着せ、ベッドに横たえふとんを掛け大学へ。今日は俺が帰っても夜にならんと起きん。
 梅子が月イチで出掛ける時、マッサージの最重点項目は腰だ。必ずきっちり腰を揉ませている。そうでないと、……。

梅子

 目が覚めると、……なんともう夜です! わ、七時ですよ!
 これでもいそいそベッドを出て、あ、歩ける、と思いながら、あ、着替えなきゃと思って、そうだシャワーだと思って、でもいいにおいで、
「梅子」
 居間から聞こえる斉志の声。
「あ、せいじ、ちょっと待って、顔洗うの、歯磨いて、あの、」
「いい。帰ってから俺が全部やっておいた。そのまま来て、梅子」
「あ、ぅ、……うん」
 そうです、さっぱりも日常です。パジャマの上下、ぱんつもぶらもちゃんと身に着けてますわたし。だからこれでもいそいそ、声のする居間へ向かって斉志に乗った。
「あ、あの、おかえりなさい斉志、あの」
「うん、ただいま梅子。飯つくってなくてなんとか、なんて言うなよ。ぅぅもなし。いただきます」
「……い、いただきます斉志……あれ」
「うん。いつも、は厭だけどな、たまには飯に集中する」
「た、たまに……」
「そうだ。はい・あ~ん」
「……はい・あ~ん」
 時間が短くて済んだ、とかー。美味しい斉志のお食事ちゃんと食べられてよかったなー、とかー。考えないんだ! だって、その……。……されながら食べるの、すきだもん! でもそれだとちゃんと食べおわらない、けど……。
 ちゃんと食べおわって(……)歯もちゃんとわたしが磨いて(……)片付けもして(……)。
 斉志、書斎に行ってない。でも、心配なんてしないんだ! 居間にいる。ソファに座ってる。お話があるかも知れないし、なくてもいいの。お茶持ってって、斉志に乗った。
「美味しい。梅子」
「……ヨカッタ」
「梅子。躯、……大丈夫?」
「うん! 大丈夫」
「よく寝てたな梅子」
「う、う、うん」
「ちゃんと寝る。それでいい」
「……うん」
「あのな梅子」
「うん?」
「俺、梅子に……。少し、知っておいて欲しいことがある」
「うん?」
「……梅子、……これは墓に入ったら言おうかと思ったが……梅子な、……魅力、あり過ぎるぞ」
「そ、そんなのない」
「ある。……梅子はな、……そういう自覚がなくとも、……俺以外の誰かに対しても、……いつも誘っている。そうしているという感覚が梅子になくとも、……傍目で見ているとそうだ。俺、よく梅子に学生だ社会人ださせてたなと思うよ」
「……」
「俺を誘うのはいい。うんと誘って。けどな梅子……、梅子、例外連中と会う時な。ちゃんと挨拶するのはいいが、なにを言われても右から左だぞ。無視しろよ。思ったまま言っちゃ駄目だからな。目、真っ直ぐ見るんじゃないぞ。うち帰ったら存在忘れるんだぞ。いいな?」
「……うん。……ごめんなさい……」
「梅子が謝ることじゃない。俺がわるい」
「……どうして」
「そうだと最初から分かっていて……言わなかった。言えば梅子、……じゃあ俺よりましなやつの方を」
「斉志!!」
「ごめん! ごめん、……ごめん梅子。……ごめん」
「……せいじ」
「うん……?」
「……そんなこと、ない……」
「だから自覚が無いと言っている。あのな梅子、……色気って、知ってるか」
「? うん、そのくらいは……。あ、斉志にいっぱいある」
「そうか。……梅子にはもっとある」
「……」
「全く無自覚だろ梅子。ついでにな、いつからあったかと言うとだな。……俺にとっては最初からだが、……言う気なかったけどな、なんとか連中にとっては……俺が梅子を全部貰った日から、だ」
「……」
「梅子は、……女になった日、から……色気出まくりだったんだよ」
「……」
「だから合同で宣言した。あれは、……うんと遅かった。後悔した」
「……」
「それで現在に至る、だ。どうして俺が梅子に女友達にすら会わせんのかと言うとだな。……そいつらだって分かるんだよ、梅子が、……色気たっぷりだっていうのが。そうするとだな、……いくら梅子がそいつらをいいやつらだと言っても、前に躯つきだけで嫉妬されてただろ。だから、……今となればもっと言われる。梅子そういうの厭だよな。だから会わさん。だから出さない」
「……」
「俺がそうした。梅子に色気、……いっぱい」
「……」
「……ごめん。そう言われても梅子、……どうしようもないよな」
「わたし、斉志しか視界に入れたくないって言ったもん。誰が見ますかその他なんて。ヘン、だ」
「うん。そうして梅子」
「あの……」
「うん?」
「そんなに、……ある?」
「ありまくりだ。だがんなもん誰からも言われなかった、か。俺が宣言したからだ。その間一か月はどうだったかって? ……梅子真っ青だったろ、ぶっ倒れる予兆ばんばんだっただろ。そんな時に色気なんざ余裕なかっただろ。俺の宣言で梅子を知ったやつも大勢いただろうが、俺が睨み付けていたからコソコソ退散していたんだ」
「……そ、う?」
「そうだ」
「あの、……この話はこれで終了、にして。お願い」
「……分かった」