梅子

 わたしがお料理した。ほんとに放って置いてあった。全部途中で、これはもう、最初っから作りなおした方がいいかなあと思うけど、でもいいや、とか思って。おじやにした。
 斉志にお茶のいれ方教えてってお願いした。うん、いいよって。言ってくれた。
 うれしい。
 居間へ鍋ごと持ってった。小鉢に盛って、ふーふーして、食べさせてあげた。
「いただきます、梅子」
「いただきます、斉志」
 それでその……食べさせてあげるとき、む、むねー、とか、おしりー、とか、は、やっぱりその、……食べるのに集中、しない? せいじ。
「俺はいただきます梅子と言ったんだ。その通りする」
 あのー……。
 それで、もう、もう、揉まれまくり、です。鷲掴み、です。せいじはわたしのむね、すきです。なんとか星人です。おしりも好きだから、……なになに星人?
「なんだと」
「はい、あ~ん」
「ン……。美味い」
「……ヨカッタ」
「なになに星人? 言うに事欠いて……。ぅぅ? 飯時は反省なしだ」
「言うこと全部取られてるんですけど……」
「……かわいいはないだろ」
「だって……」
「……まあ、いい」
「あの……」
「なんで寝てる時にまでも梅子の考え分かるんだ、か。気配がしたと言ったろ、かわいいと思ったあたりから」
「……」
「無言は却下」
「……ごめんなさい」
「うん」
「……ごめんなさい」
「よし。この件はこれで終了。いいな。ただし二度は無い。今度やったら鎖に繋いで毎日尻ペンペンだ」
「……ぺんぺん……」
「梅子」
「うん?」
「俺、我ながらヤることばかり確認した。梅子、俺の料理の才能がどうのと言っていたな。なんで怒ると思った? 俺はうれしいぞ、そういうこと言って貰うの初めてだ」
「……そう、なの?」
「うん。俺、梅子以外は確かに慣れていたが、中学になるまで飯なんざ適当でな、食わせて貰っていた。ただ、この大学に入るなら自炊だな、とあの歳になってようやっと思い付いた。片手間でない分野があってもいいと思って、まったく初めて作ってみた。その時の味、……梅子、どうだったと思う?」
「美味しいんでしょう?」
「なんで分かる」
「自信たっぷりって顔に書いてます」
「そうか。その通りだ。これまた片手間になっちまった。これなら困らん、それだけ考えた。けど梅子に逢ったろ。俺、食わせてやろうと思った。俺が一生梅子に食わせてやろうってな。だから、俺が初めて本気の集中力を発揮した分野は料理だ」
「……」
「応えて梅子」
「……う。うれしい。です」
「うん。それで?」
「え?」
「なんで怒ると思った?」
「……」
「こたーえて」
「……あの」
「うん」
「……その。た、例えば」
「うん」
「い、……一番取ったんだ、すごいね、って言うと。じゃあ一番以外取っちゃ駄目なのかー、って、聞こえる、と、思って」
「それで?」
「そそそれでその……」
「料理の才能もある、なんて言うと、才能ない分野を見つけたら、そんなのがあるのかと失望しているように取られる。そう思っている。そうだな。返事はうんだ」
「……うん」
「どうした梅子。梅子らしくないぞ」
「……え」
「梅子。俺の躯を逞しいと思ったな?」
「え? あ、う、うん」
「逢った頃は?」
「え、えっと……うん、逞しいと思いました」
「そうか? 七年前とそっくり同じじゃないぞ俺の躯」
「あ、うん、それは……。あ、あのときは、……瑞々しいとか、思った」
「そうか。梅子、それ、今の俺に合う言葉かな」
「……」
「梅子はここぞという場面ではその場できっちりするが、やけに躊躇う時もあるな。遠慮なしって言ったろ」
「……」
「いいか梅子。そりゃ、……歳を食えばヤれなくなるだろうがな。じゃあ、そんな先のことまで考えて、今ヤらんのか? 違うだろ」
「……」
「今出来ることを今やる。そうだろ。梅子いつもそれやって来ただろ。ただし今まではひとりでだったがもうさせん。返事は」
「うん!」
「歳を食っても一緒に寝る。風呂も一緒。俺に乗る。はい・あ~んだ。それでいい、そうだろ」
「……む、」
「……それはどうかな?」
「斉志!!」
「じゃあ食うのは?」
「……あ」
「だろ?」
「……うん」
「梅子、その時その時、言いたいことを言う。出来ることをする。それでいい、そうだろ」
「……うん」
「梅子。考えるのはいいことだが、梅子は少し考え過ぎだ。先を見通し過ぎだ。そういうことをする必要が、独身時代ありまくりだったのは分かるがな。その役目はもう俺のだ。そうだろ。返事は」
「……うん!」
「よし。じゃあ梅子、出掛けよう。その前に」
 食器、斉志が片付けてます。わたしが斉志の後ろから抱き着きながら、です。というか引っ付いて……。歯をごしごし磨かれました。トイレのふた、かぱっとです。下、ぱんつごと剥かれました。
 ぅぅ、いいです、斉志の思う通りです……。
 それからその、梅子ぐあい悪くない? 寒気しない? ってうんと確認されて、ちょっととっても厚着して。あのー、移動は車で、移動先は建物内だと思うので、ここまで着膨れしなくったって……。
 い、いいです。斉志の思う通りです。
 斉志は、今日は悶絶しないでちゃんとドライブ、って言った。珍しい……。
 おっほん。いいです、斉志の思う通りです。
 ところでどうして、わたしがショッピング好きー、なんてことになってるのかな。

斉志

 久々に梅子の意識を持たせてドライブした。
 梅子の視点が定まっていない。俺を見ず、外の景色を見るのは俺が厭だと分かっている。かといって、運転をまじまじ見ると俺の集中を削ぐと思っている。どこへ視線をやればいいのかわからなくてそわそわしてる。こうなったらちゅーで悶絶の方がいいと思っている。しかしせっかく意識を持たせて貰っているんだから、俺の運転っぷりを少しは見てから、ちゅーして斉志、そう言おうと思っている。

梅子

 斉志って運転、上手だなあ。かぁっこいい……。わたしはあ~んなだし。母ちゃん、もうお前の運転には乗らないよ、ヘン! とか言ってたし。よくわたし、無事故無違反だったなあ。
 斉志、運転の才能もある……。あ、これは言おうっと。いま初めて見たと言ってもいいくらいなんだから、今更じゃないよね。
「せいじ」
「うん?」
「運転、上手」
「そうか?」
「うん」
「どんなところが?」
「……えっと。へんな変化がないと、いいますか、きーっと止まったり、ぐわーっと急発進とか、ないなー、と」
「梅子」
「うん?」
「運転が上手になる秘訣はあるんだ」
「え!?」
「ただしこの車は梅子運転出来ないぞ。ATじゃないからな」
「あ、そ、そうか」
「秘訣というのはだな」
「うん」
「梅子が車に酔わないように、と考えることだ」
「……え?」
「急発進急ブレーキばっかりやってたら梅子酔うだろ車。だからそういうことはしない。それを心掛けていると上手くなるんだ」
「……」
「照れているな梅子。可愛い」
「……」
「可愛いっていうのは梅子のことだ。梅子が逞しい、はへんだろ」
「う、うん」
「俺がなんとかはなし。お白州」
「ぅぅ……」
「ううじゃない」
「……はい」
「うん」
「うん」
「よし。じゃあ」
 悶絶です……。走りながらちゅー、は、あぶないので、しない方がいいのでは……。

斉志

 よくも散々考えやがってと言いたいところだが、まあいい。
 思えばこの数日はずっと梅子を泣かせっ放し。猛省だ俺。一時間以内に梅子に怒られるのは分かっているが、それだけではな。
 梅子の笑顔が見たい。梅子は照れるイく泣く食う寝る怒る。それもいいが、笑顔が見たい。
 本日の店内は二階建て。螺旋階段で上と繋がっている。今日は特別に、既にあきれて待機している知り合い連中へ会話をこっそり聞かせることにしている。俺の梅子がどんな反応をするのかを。
 こういう品揃えを好む顧客は確かにいるだろう、俺と梅子以外なら。連中はもしや梅子はそういう趣味の持ち主かと思っているようだが、まあ怒鳴り声を散々聞かせてやる。
 そう思って、いつもの通り悶絶ちゅー起こしをした。

梅子

 ちゅーで起こされました。ええ、いつもです。日常です。
 目が覚めたら、どこかの店内だった。そういうのはいいです。
 ただですね。
 随分まあ、なんていうかその……。うーんとうーんと、……眩しいんですけど。
 きらきらきらーーーーーっっっ、って、言いますか。
 あの。あのですね斉志。わたしは、確か時計をこんじょうでお願いします、と言ったと思うのですよ。なのになのになーーーーんでこう、お目めに眩しいって言いますか、店内がここまできらきらっていうか、ちかちかっていうか、し、してるんでしょうか……。
 えっとですね。とにかくどこかのお店です。その入り口からちょっと歩いたかな、って感じのところにいまだっこでわたしはいます。奥には螺旋階段、床は多分大理石。天井高ーい。吹き抜け、だと思う。二階にもなにか品があるのは分かります。
 問題は一階です。いまここにいる一階です。
 真正面に、縦長の四角い箱があります。高さ一メートルくらい、横幅三十センチ、奥行き三十センチ、くらいのが床に据え置かれてまして。きっとあれは、わたしが我が儘言った腕時計がガラスの箱に納められているのでしょう。それはいいのです。
 そのまわりを取り囲む、ショーケースが問題です。
 それらが全て。す、べ、て。
 きらきらきらきらきらーーーーーって、お品そのものがきらびやーーかな光を放っているように見えるのは。
 なぜ?
 あの、そういうお品はつま先立ちしなくちゃ見えない位置にある、わけではなくて、いまここにいる地点から全望出来るのです。
 そのきらびやかな代物は、早い話が。
 色とりどりの、ほ、宝石がいーーーーっぱい鏤められた、ね、ネックレスとかティアラだとかイヤリングだとかそーゆうそーゆう、豪華絢爛アクセサリー、だったり。
 するのです。
 それが店内の壁をぐるりと取り囲む三本の何メートルもあるショーケースにぎーーーーーっしりつまっているとですね。
 あのですね。
 あのー……。
「斉志?」
「うん?」
「これはなに?」
「腕時計」
「そう?」
「うん」
「ほんとに?」
「うん」
「斉志?」
「梅子。俺の腕にはめて。時計」
 だっこからそっとおろしてもらって、一緒に時計のショーケースのガラスをかぱっと開ける。
 青紫色の上品そうな布の上に置かれたその腕時計は、よく見ると、年月を経た分だけ付いた傷さえ再現されていた。
 わたしがしているものと、本当に。全部同じだった。
「……」
「して」
「う、ん」
 この重み。それすら同じで、こういうふうに腕にされていない状態の時計は、あの時見た以来だった。
 斉志は両手利き。それでも、迷う必要なく左手首にした。
 ぶかぶか、じゃない。ぴったり。
 斉志の手首にする為にある、腕時計。あの時以来、久し振りに見た。
 腕時計をする斉志。
「どう?」
「……似合う」
「お揃い」
「うん」
「梅子とお揃い」
「うん」
「梅子」
「うん」
「俺も」
 ──外さない──決して。
「……うん」
 ──指輪と──梅子。
「……うん」
「梅子」
「斉志」
「うん?」
「だっこ」
「うん」
 だっこして貰って、おはなにちゅーした。
「すき」
「……なんで鼻」
「なんとなく」
「梅子」
「うん?」
「ショッピングしような」
「……」
「梅子」
「……」
「梅子」
「……」
「俺のこと無視する?」
「しない」
「じゃあショッピングしよう梅子」
「斉志」
「うん?」
「わたしはいつからショッピング好きになったの?」
「以前やりたかったって言ってただろ」
「いつの話……」
「七年前だ梅子」
「あのね。わたしはお出掛け、なんとか以外はしないって言ったし、お札なんか絶対触らないって言った。デパートなんか厭。もう厭。うめこが買うのはお酒だけー、とか言ったでしょう斉志。大体お酒だって一階のなんとか店舗にあるんでしょう。ずっと言わないで……」
「うん」
「あのね斉志」
「うん」
「もお分かってると思うけど」
「うん」
「というより七年前から知ってたでしょう」
「うん」
「わたし、無駄遣い、厭」
「うん」
「そう」
「うん」
「知っててこういう品揃えするんだ」
「うん」
「そう」
「うん」
「じゃあ言います」
「うん」
 おっほん、とわざとらしいポーズをとりまして。右の耳たぶ思いっきりひっぱって。耳元で叫んでやった。
「ぜーーーたくは敵、だーーーーーーーーーっっっっっっっ!!!」
 ……。
 せいじ。無反応。
 む。考え筒抜けなのに無視してるなぼんくら亭主。
 よくもよくもよくもよくも……。
「おっほん。こら、なりたせいじ。ひょぉっとして、この、うーーーんと高価そうでお値段聞いたらわたし腰抜かしそうなお品の数々。
 まさかまさか、実はぜーーーーーーんぶ購入済み。なんて言わないよね」
「言う」
「……」
「ショッピング。して。梅子」
「……」
「買った後の通帳残高、見る? 腰抜かすよ? 逃げるかもな梅子」
「……」
「知り合いの宝石店な。何軒かあるんだが、いまショーケース全部空っぽだ。全員にあきられた」
「……」
「俺、厭々例外設けただろ。だから、梅子そういう場に出す時うんと着飾りたいんだ」
「……」
「これで躯中覆い尽くして、使うの一回こっきりでも一体何回連れ出すつもりだ、か。そんなに出すわけないだろ。せいぜい年イチだ」
「……」
「だったら一体どれだけ長生きすれば全部を身に着け終わるんだ、か。梅子。宝石風呂ってのもいいと思わないか。梅子風呂好きだよな」
「……」
「話逸らすな? 逸らす以外どう会話すればいいんだ? 梅子ずっと俺のこと無視して。大体なんだそのボンクラ亭主ってのは。ちゃんとこの星一番のボンクラ亭主って言え。俺をその辺の下らんやつらと同列にするな」
「しない」
「当然だ。さ、梅子。ショッピングしよう」
「あのね斉志」
「なんだ」
「ショッピングっていうのは多分ね、わたしが好きなショッピングは、ウィンドウショッピングっていうのだと思うの。わたし無駄遣いなんて絶対しない。厭だもん。ずっとそうだもん。これからもそうだもん。斉志が何と言ってもそうだもん」
「そうか。俺は無駄遣い、梅子が何と言ってもする時はする」
「そう」
「うん」
 おっほん。ともう一度、わざとらしくポーズをとりました。
「あのね」
「うん」
 深呼吸して言いました。
「せいじのばかーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっっっ!!!」
「はーっはっはっは!!」
「なに笑ってるのーーーーーーー!!!」
「はっはっは! もっと怒れ!! 怒れ梅子!!」
「なんだとーーーーーっっっ!! 怒らすために買ったのかーーーーっっ!?」
「そうだ! はーっはっはっは!!」
「なーーーんてことするの!! いますぐ返して来なさーーーい!!」
「厭だ!!」
「なんでーーーーーー!!??」
「梅子を着飾るからに決まってるだろ! どれがいい!?」
「なにが着飾る!? どうせ例外なんてどーーでもいいなんとかさん達にわたしまじまじと見せようなんて思ってないくせにーーーーーーー!!」
「誰がまじまじなんぞ見せるか!! 連中なんざ右から左だ!! 全員無視しろよ梅子!!」
「そんなの当然、だーーーーーー!! いいからこれ返して来なさーーーーーい!!」
「厭だ!!」
「返して来ないとちゅーしてあげない!!」
「なんだと!? いい度胸だ梅子、そうか、そんなに尻ペンペン喰らいたいか!!」
「どうしてそういう話になるのーーーーーー!? お尻ぺんぺんなんて厭!!」
「だったら着飾れ!!」
「いーーーーやーーーーーーーーーーー!!」

斉志

 返して来い来い言いながら、俺の胸を両手でとことこ叩く梅子。顔真っ赤にしながらぜーはー言いながら返して来い返して来いを繰り返す。壁向こうの連中もそうださっさと返せこの野郎と思っているだろうが誰が返すか。俺は梅子を着飾りたいんだ。
 それに、買ったのはなにも石だけじゃない。時計だけでもない。
 怒った怒ったを繰り返し、俺のばかばかを繰り返し、ぜーはー肩で息をし続ける梅子。疲れて、俺に躯を預ける梅子。可愛い。
 額に軽くちゅーして、部屋奥の階段へ向かった。梅子、今日はまだまだこんなもんじゃないぞ。大体一階の品揃えだけだったら次の日即ここへ連れて来れるんだ。連中は雁首揃えて泣きっ面に鉢だろうがそんなものはどうでもいい。

梅子

 だっこからそっとおろしてもらった地点はさっきのお店の二階です。今度はきらびやか、はありません。
 ここのフロアはさっきと違って、雰囲気がでろんとしています。嘘じゃありません。でろんとしているのです。
 なんだでろん。って?
 そんなのわたしが知りたい。
 二階にはマネキンがいーーーっぱい置いてありました。躯の部分だけ、だけど。この体型……どこかでいつも見たような体型、だらけ。です。
 それに、なにやら服? 布? レース? が、くくりつけられているっていうか、マネキンさんが着ているのです。が。
 そのうちのひとつを指さして言った。
「せいじ。これなに」
「テディっていうんだ」
「そう」
 わたしの目には、うーーーーーんとやーーーーらしい……下着もどき? にしか見えません。デザインのちょっとづつ違う白、白、白。一体何着あるのー……。その全部にレースがいやみったらしいほどふりふり、ふりふり付いてて……。
「どうしてこーーーーんなところに、布。ないの」
「俺がきっちり指定した。そこは最初から切れ目を入れて裁縫しろと」
「そう」
 むねと、下……に。ないのです。本来覆い隠されるべきそこに。布どころかレースさえも。マネキンさんの、肌色なところが露出しております。
「せいじ。これなに」
「ベビードールっていうんだ」
「そう」
 早い話がネグリジェみたいなものです。全っっっ部スケスケ、白。です。何着あるの? ふりふりレース、リボン。むね、は、……覆い隠すという概念がとっぱらわれているようです。した、も……。
「下着は乳首と下を絶対に隠すなと指定した。全部丸見えにしろとな。カット形状は全て工夫を凝らせてある。ただくり抜くだけでは芸が無い」
「そう」
「破くよりいいだろ」
「そう。せいじ。これなに」
「ボンテージっていうんだ」
「そう」
 ヒモです。革です。白です。
「いろいろ全部丸見えだけど、これも下着?」
「正確に言えば、違う」
「そう。せいじ。これなに」
「チャイナドレスっていうんだ」
「そう」
 スリットっていうのくらいは知っています。けどね、それは脚まで入っているのを言うのであって、……躯の脇全部に入っている場合は、そうは言わないと思うんだけど……。
「せいじ。これなに」
「レオタードとヘッドピースとカフスと編みタイツ。付け袖、タイ。ピンヒール。しっぽ付き」
「そう。なんていうの」
「バニーガール。尻丸見え」
「そう。じゃあこの白くてふわふわしてるのは?」
「マシュマロうさぎ。尻丸見え」
「そう。じゃあ、これは?」
「体操着セット。俺の代で永久廃止したブルマーは当時そのまま、紺。ハイレグには敢えてしなかった」
「そう。じゃあこの紺の、ひょっとしてスクール水着?」
「あの下らん高校へ入る前に、プール新築話は握り潰しておいた」
「そう。じゃあ、これはひょっとしてセーラー服?」
「着ると下は丸見えの丈、上の布はスケスケの編タイプ。白と紺」
「そう。じゃあ、これはなに?」
「レースクィーン。ハイレグ、Tバック」
「そう。じゃあ、これは?」
「ピュアウェディング。披露宴の時のは肌なんざ誰にも見せられなかったからな」
「だから色は白で全部丸見えの総レースなの?」
「そうだ。これは質問しなくていいのか」
「うん、ネグリジェって分かるから。全部スケスケで全部白で全部丸見え。レースふりふり」
「裸エプロンについて、なにか質問は」
「ない。布面積もない。ちっちゃい」
「当然白。スケスケ」
「いままでのは透けてなかったと思うんだけど」
「いままでのはいままでのだ」
「そう」
「他は」
「もういい」
「そうか」
「斉志」
「なんだ」
「ばか」
「そうだ」
「買ったの」
「全部な」
「着るの」
「梅子が」
「いつ」
「帰ったらすぐ。ここでは着せん」
「着たらどうなるの」
「梅子は日中いつもぐーたら昼寝だ」
「そう」
「気に入ったか」
「気に入ると思う」
「当然だ」
「どうして」
「俺が梅子に着せて脱がすからだ。安心しろ。破かん」
「そう。わたし帰るね斉志」
「そうか」

斉志

 いつもならここでズドン一発だが連中がいるので厭々我慢。こんなの絶対着ないと言い渡し、ドカスカ螺旋階段を梅子が降りて行く。俺を置いて。
「梅子」
「なに」
「俺を置いて行く気か」
「今日は」
「そうか。なら尻ペンペンだ」
「厭」
「待て」
「厭」
「待てと言ったぞ。梅子は?」
「斉志の」
「そうだ。ほら。来る」
「……」
「梅子」
「……行く」
 くるっとこっちへ向き直し、とてとて歩いて来て、俺にぎゅっと抱き着く梅子。
「だっこ」
「うん」
 担ぎ上げては厭々我慢。
「斉志。すけべ」
「うん」
「これのどこがショッピングなの」
「どこだと思う」
「斉志」
「うん」
「わたし」
「うん」
 俺の、今度は左の耳、みゅーっと引っ張って、耳元で。
「ショッピングなんてなんとか、だーーーーーーーーーっっっっっっっ!!!」
 ……と言わせたかったんだよ、梅子。

 ショッピングと月イチ・庭以外のお出掛けと俺以外の男と例外連中とその他口にしたくもない下らん以下略をなんとか扱いにし、梅子をちゅーで悶絶。詰め所二階へ連れて行き、わざと悶絶ちゅー起こしで意識を戻し、尻へ注射させた。俺以外は誰が入れるかと思ったが、歯ブラシと注射針は厭々論外扱いだ。
 そのまま最上階へは帰らず、わざとドライブへ再び出る。すると梅子がぐずぐず泣く。
「いたい……」
「なにが病院は厭だ、薬は厭だ。注射が厭ってそれだけだろ」
「それだけ……。いたいのに……。おしりでなくったって、腕とか……」
「言うこと聞かないなら尻だ」
「聞いてるもん……」
「当然だ。梅子、今日は飯を食ったらすぐに寝る。注射した日は風呂は駄目。ヤるのもなし。うんと寝ろ」
「……」
「なんだ」
「……せいじ」
「うん?」
「ほんとに……あの宝石……」
「全部買った」
「ぜーたくはてき……。いっこくらいは、つけるけど……」
「後はもう返せ、か。厭だ」
「どうして……」
「俺は梅子を着飾りたいんだ」
「わたしは、……斉志のにおいがするパジャマがいい……」
「……」
「あったかくて、ぬくぬくして……。宝石は、違う……」
「……」
「斉志、……着飾らない、わたしでも……すき?」
「好きだ」
「だったら……」
「……」
「お願い……」
「梅子。俺はな」
「うん……」
「俺は梅子に贅沢暮しをして欲しいんだ」
「もう、……」
「もう充分贅沢でぐーたら、か。梅子、まだまだだ。こんなもんじゃないぞ」
「ぅぅ……。あの」
「分かっている。区別は付ける。やり過ぎはいかん」
「うん」
「……よし、分かった。知り合いも商品取り上げられて泣いているからな。返す。少し」
「ぅぅ……」
「なんで、うう」
「少しなんて……」
「じゃあ適度に返す。俺は絶対返さんと言ったが女房が絶対返せと言ったから女房に免じて返すとその通り言って返す」
「……むー」
「なんで、むー」
「……あの、ふく……」
「返品が利く代物だと思うか」
「ぅぅ……」
「着る」
「……」
「梅子は?」
「……斉志の。斉志の思う通り。なんでも言うこと聞く。なんでも言って。何されてもいい。なんでも、……する」
「そうだ。梅子、無言は却下。お白州」
「ぅぅ……。うん」
「そうだ」

梅子

 それで再び悶絶です。だからその、走行中にそこまで濃厚なちゅーはいろいろ問題があるのでは……。

斉志

 一服盛った雑炊を食わせ、歯を磨き、剥いて下着と俺のパジャマを着せてベッドへ横たえふとんを掛け、額にちゅーを落とした。すぐに眠る梅子。安心、ぬくぬく、いいにおい。そう全身で語りながら。
 これで朝起きて、またあんなこと考えでもしやがったらどうしてやろうかと思うが、まあいい。もう二度と考えんだろう。ああでも言わんと梅子またあんなふうに考えるからな。……だが言い過ぎた。梅子またへんに抱えないといいな……。なんで俺、あんなこと……。

梅子

 起きると朝、だった。
 靄靄の意識で、……せいじの腕枕。左腕、……だから、斉志の手首で時間を確認した。六時。
 せいじ、骨……いろっぽくて細い。か細い、ってわけじゃなくって、どこもかしこも引き締まってる。格好いい。
 おんなじ時計。お揃いの時計。そっくり同じ時計。わたしはぶかぶかだけど、斉志はぴったり。斉志細いけど骨格は違う。全然違う。荒れ狂って猛り狂って激しくてやさしくて穏やか。それが斉志。

 具合は? わるくない、大丈夫。もう治った。動ける? うん、大丈夫。
 だからもそもそベッドを出て、浴室へ。昨日お風呂入らなかったから。うん、歩ける。全快、だと思う。
 えっと、これも身だしなみ、……なので。洗いまして。躯、髪。
 パジャマの上だけ羽織ってすぐ寝室へ戻る。それから、パジャマ脱いで。その辺にぽいして。
 もそもそおふとんに潜る。脚、ちょっとひらいて、その間にすわる。
「戴き、ます」
 それから、……ちゅばちゅば食べて、手と胸で、……うんとやさしく扱いてあげてると……
「……来いよ、梅子」
 ……。
「俺、……だけ?」
 ……厭……。
 せいじ、少しだけ厭々はなして。もそもそ、……わたしを斉志に向ける。やーらしい、なー……。お尻、丸見え。自分から突き出して……ふってる。
「ヤらしいよ梅子は……」
 うん……。
「ぐっちゅぐちゅだ……かき混ぜがい、ある」
 うん……。
「ここ……」
 ぁン!
「ここ、も……」
 ゥん!
「全部……」
 ぅぅん……!
「歯、立てるなと言ったろ……」
 ゥン……。
「どれ、……着る?」
 ……も、どれでも……。
「いっぱい着せて、……いっぱい犯す」
 うん、いっぱい、……犯して……。
「出迎え、……着てろよ」
 ぅん……。
「それで、……濡れてろ。玄関で立ってヤる」
 ぅん……。
「梅子、俺……前、訊かなかった。俺いないとき……は?」
 いっぱい、……。
「電話でも、……か?」
 ぅん……。
「俺は勃つわけに……イかないんだよな」
 ぅん……。
「だから、……電話口では誘うなよ」
 ……。
「うんって言えよ……」
 厭……。
「……言う」
 ……うん。

 その後、お風呂でも、です。お風呂でするの、すっきりする。だって斉志とお風呂に入ると、出る時の記憶ないもん。いつもすっきりしてて、……そのー、で!
 気持ちよくって、気がつくとベッドとかー、ソファとかー。
 とにかく斉志でいっぱい。ひとりで入るのなんか、較べものにならない。
 うんと気持ちいい、の!
 斉志、生き甲斐って言ってた。うん、分かる。斉志とお風呂に入るの、生き甲斐です! でもその、駄目なときもあるけど……。だっていくらなんでもあれは、その。
 ふんふーんっていいながら部屋着でお料理です。朝食とお弁当。お昼もお揃いのお弁当。
 今日からはちゃんと修業再開するんだ。最近、ちょっとさぼってしまいました。ずっと泣いてたから。でももう、泣くようなことしないんだ。考えないの。
 考えることは。えっとー。
 ……。
 うん、そうしよう。

斉志

 いいにおいがして、とてとてと音がして、俺の後ろから梅子が抱き着く。これをして欲しくて鬱憤晴らし。なんていい。
 梅子俺にぎゅっと抱き着いて、でかい胸押し付けて、乳首分かって、髪にちゅーして、……さらにほっぺですりすりまでして来やがった。耳にもちゅーだ。そんな甘く噛んで……どこまで誘えば気が済むんだ梅子。
「せいじ。ごはんだよー……」
 耳元で甘く囁く。知らないだろ梅子、俺だってな……感じてるんだぞ……。
 これで厭々腕解くんだが、さらにほっぺにちゅーして来やがった。煽情の瞳で俺を覗き込む。押し倒してと書いてある……。
 我慢なんざ誰がするか、俺跨がせてズドン一発ヤってやるかと思った、……が。
「せいじ。着方、これで合ってる?」
 ……どういう格好をしているのか分かっているのか梅子、そりゃ昨日買った下着だろが、俺が着せるに決まっているだろうが!
 なんて、なんて!!
「似合い過ぎるんだよ梅子!!」
「ァアアアアアアアアア!!」
 下脱いで梅子の脚おっ広げて一気に奥まで貫いた。切れ目の部分から濡れまくりの梅子の下の口で俺食わせる。なか、形分かる。熱ィ、熱くてとける、いつも入れたその瞬間イきそうで、真っ白になって、梅子ヤらしくて、俺の目の前でくり抜いた部分からヤらしくはみ出すでかい乳房振ってて、
「俺が着せ、よう、と……よくも俺に黙って着やがったな!!」
「ぁアン!! い、厭ァ!? 駄目、ぇ!?」
「わけないだろ!!」
「じゃあ、着て、……ィイいいいい!!??」
「ィ、い、……に……!!」

 ……飯が冷めていた。シャワーを軽く浴びて、時間も時間、ズドンも湯船も厭々我慢。意識ある梅子が風呂上がりに自分で下着を、……透けていないシルクの下着を俺の目の前で着てみたいと言って来た。それだって充分俺誘ってるんだぞ梅子……。剥ぎたかったが、時間も時間。厭々眼前でそそられた。
 飯を温めて来るから、そう言って梅子が先に脱衣場を出る。部屋着の梅子。
 梅子濡れるから、濡れまくりだから、俺がスーツに着替えるのは出掛ける直前。よって俺も梅子と揃いの部屋着。ソファで梅子と飯を待つ。いいにおいの朝食が並び、梅子を乗せた。温かい梅子。ヤらしい梅子が俺にはい・あ~ん。
「着ても、そりゃいいけどな。最初は俺が着せるんだ。ずるいぞ梅子……」
「ぅぅ……。あ、めしどきは反省、なし……」
「そうだ。あのな梅子。出掛ける前と飯時は、……着るな。でないとヤる。結果飯抜き、遅刻、挙げ句さぼりは目に見えている。そうだろ梅子」
「……ァ、ん」
「だが胸揉みまくりで尻撫でまくりなら結果は同じじゃないか、か。あのな梅子。……梅子はそうしているだけで俺誘いまくりなんだ。どういう誘いっぷりだ。最近凄くなってるぞ梅子。俺、……俺梅子のことどう誘おうかってずっと考えてるのに、……これじゃ俺、全然勝ち目ないだろ……」
「どう、答えれ、ば……」
「あ~ん」
「……ん」
「美味い」
「……ヨカッタ、ぁ」
「……飯は美味いわ梅子美味いわヤるのも誘うのも食うのも上手いわ……。俺、全敗だ。俺、俺、……少しは梅子に勝ちたいのに完敗だ……」
「……あのその、た、……体力、とか……ぁン」
「そんなもので勝ったって全然嬉しくない」
「……せ、ィじ?」
「うん?」
「あの、……ァ、……」
「うん」
「ィ、……ますぐじゃなくて、……ィぃから……い、つか、叶え、て欲しい、の、……」
「なんだそれは。この俺がいますぐ叶えられんお願いがあるとでも言いたいのか」
「ァァァ!! ン、ん、ん、……わ、……たし、このあいだで、……ぅんと、落ち込んだ、ぁぁ、……の……」
「……」
「で、も、……自信、欲しぃ、……の、……ン!」
「……」
「だ、か……ら」
 梅子を誘えと言って来た。
 梅子と同じ方法では芸が無い、片手間は却下、工夫を凝らせ。そしたらイかせてヤる。俺が先にイってもすぐに叩き起こして一晩中ヤりまくって最高記録を塗り替えてヤる。絶対起き上がれんくらいヤりまくるから休講日もしくは仕事の休みの前日に誘うように。俺をベッドの刑にして、それを見ながらヘン、ボンクラ亭主め、と言ってうちを掃除する。服を洗濯する。目の前で電話入れてそれでもイかせる。でかい弁当箱とポットをベッドサイドのテーブルへ置いてはい・あ~んで食わして食ってヤる。それで再びイかせて午後は武道の手解きもして料理の研究もして、入念に風呂入って、俺を悶絶ちゅー起こしで無理矢理意識引き戻してトイレは大丈夫かと言って上げる。
 ……。