斉志

 まだ夜も明け切らぬ早朝から梅子を犯し続けた。血だらけの俺と梅子。後ろからも前からもヤった。跨がせて、鏡でも見せた。俺の顔も躯も梅子の血にまみれ、梅子の白い肌は俺の残した刻印、指と舌の、血の痕。それも全部見せた。躯中の鉄を嘗め取り、血まみれになってただ狂う。
「駄目、駄目、呑んじゃ駄目ぇえええ!!」
「厭だ……」
「駄目って、言ってる、のにぃ……!!」
「なにをしてもいいと言ったろ梅子……梅子は俺のだ、俺の思う通りよがれ。食えよ。呑む、跨げ」
「!!」
「血だらけだ梅子」
「──、──」
「ぬるぬるして……俺も、血まみれ」
「──、──」
「知らないだろ。梅子は、……美味いよ」
「──、──」
「食い尽くしたい。喰って、……俺の躯に埋めてしまいたい」
「──、──」
「そしたら梅子はもうどこへも行かない……」
「──、──」
「逃げない、離れない、俺と一緒だ……ずっと」
 血まみれの俺の顔、梅子に嘗めさせて、正面から。最初のように、した。
 風呂でもした。血は決して水と交じわらない。だから湯と汗と一緒に、淫らな音で洗い流す。
 イっちまった梅子の躯を洗って風呂を出る。ナプキンを着けた生理用ショーツを穿かせてパジャマの上だけ着せてベッドに横たえ、掛け布団を掛ける。俺は下だけ穿いて朝飯を。久々の感覚。俺はこれでいいんだが、職に就けば時間は減る。梅子生き甲斐って言ってくれた。梅子の役目はあまり取らんでおこう、心配されたくないからな。
 飯の支度をおえ、ベッドへ行く。もう梅子は目が覚めていてもいい頃だが、来ない。気付いていいにおいがしたら、梅子はその場に留まりはしない。まだ寝ているか? 熟睡しているようなら弁当にするが、その気配はない。とにかく寝室へ。
 梅子はやはり起きていた。半身を起こし、窓の外を見ていた。
 それでも気配は感じられなかった。俺を見ない、その横顔。
 哀しそうな表情、で……
 泣いてる。
「ごめん!!」
「──」
「ごめん、ごめん梅子!! ……お、俺のこと……」
「──」
「!」
 言ってくれない、言ってくれない、あの時しかなかったのに、俺、
「ご、ごめん、梅子、お、俺のこと……もう許さない……?」
「──」
「!! 言って、言って!!」
「──」
「梅子!!」
 なにも言ってくれない、瞳、ぎゅっと瞑って、涙ぼろぼろ零して、唇噛み締めて、俺のこと見てくれなくて、……み、見たくもないって言ってて、
「梅子、梅子、梅子!!」
 抱き締めても抱き締め返してくれない、躯堅くして、
「ごめん!! ごめん、もうしない、あんなことしない、も、もう生理のときしない、ちゃんと五日目まで待つ! 梅子、返事して! 俺のこと抱き締めて!!」
 なにも、なにもしてくれない、声も出さず、殺して泣いてる……
「梅子、梅子、俺どうしたらいい、もう許さない? あ、あ、あんな、こと、……厭? 俺が厭!? 梅子、応えて!!」
「──」
「……!!」
 全然、全然応えてくれない。
 無反応。
 ──歯が震えた。

梅子

 ……学校には行ってとだけ伝えて、ロフトへ向かった。なにも食べたくなかった。ずっと泣いていたのになにひとつ聞いてくれない。全部無視されてまた躯だけ。ふとんにくるまって、血が漏れても無視して眠った。空腹のまま。あのときのように。
 多分昼、やわらかい音が鳴り響く。出しに行って、疲れていたからまた眠った。

斉志

 出迎えもなく、寝室にもいない。トイレにもいない。
 うちへ帰って独り。
 狂う程見た昔の風景。
 俺。
 だけ。
「……梅子。いま帰った」
 声が響く。天井を高く設計した。あの時の空のように、そう思って。
「俺。要らないか」
 荷物を片付けた。何一つ手のつけられていない食事。
「俺が邪魔か」
 血の滴る床の上に服を脱ぎ置いて着替えた。照れる梅子が傍にいない。
「なんとか、だろ。俺、こんなだもんな。いつもそうで、……止まらないんだ」
 ソファに座って、独り言を呟く。必要ない行為だと思っていた。
 他人の行為と思っていた。
 広いな、このうち……。
「躯だけ抱いたんじゃないぞ。そんなこと、したことない。出来ない。一部分だけじゃない、躯目的でもない。俺は梅子を全部貰う。今までだってそうだ。……本当だ、本当に……これからも……ずっと。梅子を抱いている。それしかしたことない。それしか出来ない。俺は梅子に惚れる以外なにも出来ない」
 反響するだけの声。残滓のようなにおい。
 やわらかい光は、……本来俺に最も相応しくない。
「もし……。なんとかって、思っている、のなら……。それでも出さん。どこへも出さん。一生閉じ込める。梅子が何と言っても俺が厭だ。一生、俺のこと見てくれなくても、俺のこと、……それでも、それでも離さん。絶対逃がさん。ずっと一緒だ」
 なんの気配もしないうち。暗黒は、……すぐ甦った。俺に最も相応しい暗黒は、……いつもすぐそこにある。
 梅子が眩しくて、……コソコソ隠していただけだ。
「……放っとくな、放っとかないで……」
 俺が闇そのものだ。……暗黒は、俺だ。すぐそこにあるんじゃない、いつもあって、それだらけで、梅子がいるから……忘れたフリが出来るだけだ。
「来て……」
 梅子がいなければどうなるか……誰が一番知っている……。
「来て、来て、来て……。も、もう……もう生理のときしない、四日、ちゃんと我慢する、出来ないなんて言わない、食わなくてもいい、風呂も、……ベッドも別だ、隣でいい、けどこれ以上は、俺、俺……」
 反応、ない。
「こんなんじゃ駄目か? もっと我慢してか? どう我慢すればいいんだ? 教えて梅子、そ、……その通りにする。だから来て、来て梅子……」
 震えた──のは、左手薬指。
「……梅子!!」
 ロフト駆け寄って、下まで行って、けど登ってっていいか分からなくて、
「梅子、梅子、梅子!!」
 反応、なくて、……だから登った。
「梅子!!」
 半身を起こして、泣き腫らして、……それでも。
「……梅子……?」
 俺のこと見てる。
「……せいじ」
 呼んでくれた!
「梅子!!」
「……恥ずかしいから、あの……。あの、ね。まずその……生理用品とか、……ぱんつとか、替えの服とか持って来てくれると嬉しいな……」
「うん! うん、今持って来る! その……他には?」
「……おしぼりも、お願い」
「うん、今持って来る、待ってて」
 すぐロフト降りて、言われたの一式と、あと水も持って行った。
 俺を待っている梅子。
「あの、あの……」
 梅子照れてる、真っ赤になって、俺のこと見てる……。
「うん、なに? 梅子、俺なんでもする」
「あの、……恥ずかしいから、あの……」
 声、ちいさい。
「うん。なに?」
「あの、……ソファで待ってて……」
「うん、分かった。待ってる。俺待ってる梅子」
「……うん」
 すぐロフトを降りて、居間へ向かう。そのまま座らず、台所へ行って夕飯の支度をした。
 温かい、温かい、温かい、闇はもうどこかへ行った、もう温かい。
 今までで一番の、会心の出来。梅子が一番好きな飯の硬さ。ちょっと固め。よかったと思っていると、……音がする。
 とてとて、音がする……。
 近くなって、こっち来る、ソファじゃなくて、こっちに来る。
 頼む、頼む梅子、俺に……俺に抱き着いて。ぎゅって、俺のこと抱き締めて……。

梅子

 恥ーずかしい……なんてもんじゃなかった。こればっかりはおんなのことしてやってはいけないのだけど……おふとん、漏れて真っ赤っか。みっともなーい……。いっくら、ふて腐れたからとは言え……。ごそごそロフトの敷き布団とか掛け布団とか引き摺りおろして、それでダッシュボックスもどきへ無理矢理突っ込んで来ちゃった。真っ赤なぱんつも服も以下同文です。どうやって洗うのかなあれ……。多分廃棄処分だと思う。誰がどうやっているのか、なーんて考えないんだ……わたしばかだから、そういうの深く考えていいことない。
 シャワー、浴びまして。いろいろ流しまして。
 すぐ出て、顔なんて見ないで髪乾かして、適当に、というよりいい加減、に……。
 いいにおいがする。久々の感覚。だから、すぐ台所へ行った。
 斉志に後ろから抱き着いた。逞しい躯。バイクに乗ってた時、いつもしてた。あのときは最初、振り落とされないようにって思いっきりぎゅってして。でも、わたしじゃあるまいし、全然あぶない運転とかじゃなくて、うんと穏やかで、頼りがいのあるおっきな背中。逆三角形。筋肉引き締まってる。かっこいーい。
 それは全部で、いつもそうで、うんと逞しい。体温、におい、変わらない。安心する。
「せーいじ」
 反応ない、かあ……。しょうがないよね。されなくても当然だもんね。でも、こうしたいし、もしわたしがしたようなこと斉志にされても、それでもここにいる。もうこうなったらベッドの刑にしてくださいとか言おうかな。
「すき」
 思いっきりえいって抱き締めても、どうも斉志は痛くもかゆくもないみたいで、うんと穏やかに微笑むから、わたしって力ないなあとか思ったり。修業してるんだけどなあ。むかしなんか、腕立て伏せ一回しか出来なかったんだぞー。今なんか、なんと二十回もなのだ! えらい自分。
「あのね」
 いいんだ、いっくら無視されたって。そうされても仕方ないことしたから。どんなに怒られても、厭って言われても。
 いいや。言っちゃえ。
「せいじが厭って言っても、乗るもん。ずっと」
 なんかお料理の手を止めてるような気がするけど。それ言うと、わたしだってよくされてるもん。無視して言っちゃった。
「一緒に寝るもん。別なんてもう厭。どうして今まで避けて来たのかといいますと、あのー、独特のにおいといいますか、がわかられるから厭なわけで……。でももうわかられるがどうのじゃないと思うので、一緒に寝て」
 ぎゅーぎゅーきつく締めてるんだけど、なー。なんか、さすがにちょっと疲れて来たから一息ついて。
「あのね、でも夜中にごそごそ起きるから。そうすると大集中してる脇でもぞもぞちょこまか動かれるのイヤかなー、とか思ってたの。でも、気にしないで集中して下さい。わたし睡眠星人だから、大集中してるところで寝ちゃうかも」
「俺は仕事をうちに持ち込まんぞ」
「……そお?」
 わーい、反応あった。うれしい。
「梅子だってそうだっただろ」
「あ、そうだ」
 こえ。いつもの声。変わらない。うんと綺麗でよく徹る。低くて。いろっぽくっておとこっぽくって、聞くといつも腰砕け。耳元で囁かれるの。めろめろでーす。
「だが仕事に関連する事やそれ以外でもいろいろある。鬱憤晴らしで大集中は職に就いても変わらん」
「うん!」
 いつもなんでも格好いい、大集中の旦那様。安心する。
「……梅子」
「うん?」
 斉志、振り向いてくれた。いつもこんな瞳で見てくれる。
 だからうんと安心して。ずっと斉志に囚われる。
「……その。……俺、の。……こと」
「すき!」
「……」
 すきー。すきすきー。ぎゅーってして、それから。熱い眼差しを見上げて言った。
「わたしのこと」
「好きだ!!」
「うん! 斉志、好き!」
「……よかった」
「うん!」
 思いっきりぎゅー、です。ぎゅーぎゅーぎゅーぎゅー。ちゅーちゅー、すりすり。アイシテル。
「……梅子。その、……ほか、は?」
「うんっと」
「厭、……か?」
「ううん」
「……嘘だ」
「うそじゃない」
「じゃあ、なんで……おこった?」
「駄目っていうのは駄目。お願い聞いて。無視しないで」
「……うん。ごめん。ごめん梅子……」
 こえ、小さいの。
「反省、した?」
「した! ……うんとした。も、もうあんなことしない。梅子が厭がることしない。二度としないって誓ったのに俺……。ごめん、ごめん、梅子、ごめん……」
「斉志」
「……うん?」
「ロフトの調度品、一式まるごとよごしちゃった」
「そんなものはいい」
「そぉ?」
 いいのかな。まっかっかー、ですよ。われながら見事に染めてしまいました。ふくもよごしちゃったし。
「洗えばいいし買えばいい。けど、……俺梅子に、……。そうなったら俺もう……」
「斉志。わたし、ふてくされてごめんなさい」
「……梅子はわるくない。俺が、……狂ってた。ごめん」
「うん。せいじ、この件はこれで終了。いい?」
「……うん」
「せいじ。わたし、おなかすいた」
 なんかぐーぐー言っているような、わたしのおなか。なんて正直なんでしょう。
「うん、梅子座ってて、俺持って行くから、待ってて……な」
「うん!」

斉志

 許して貰った。梅子俺のこと好きって言ってくれた。
 ……よかった。温かい、温かい、……闇? なにそれ……。

 反省だ。猛省だ俺。だから隣にと思ったが、梅子は俺に乗ると言ってくれた。ずっと乗ると。だからうんと甘えて俺に乗せ、胸揉みながら梅子に箸を持たせて食った。
「せ、ぃじ、のぉ……」
「俺の?」
「すけべぇ……」
「うん」
「ひ、開き直ったで、しょ、ゥ……ん」
「うん、開き直った。梅子分かってるだろ、俺の辞書にうんとあるんだその言葉」
「ばかぁ……」
「うん。梅子いっぱい食べて。今日朝も昼も抜いただろ。ああ、俺が抜かせたか」
「た、……」
「食べられなくてなんとか、か。梅子、飯食ってる時は反省なしだ。大体今回も俺が全部悪いんだ。いいから食って」
「お、ぃしい……。せいじ、お料理も、……」
「? なに?」
「……おこんない?」
「俺が? なんで? 言って梅子」
「……お料理の才能もある……」
「……」
「……おこった?」
「なんでそれで俺が怒るって思う……」
「……だって」
「分かった。じゃあその話は飯のあとにしよう。俺、お茶煎れるから。……な」
「……、……」
「なに?」
「……ちゃん、と……食べさせてぇ……」
「うん、分かった」
 梅子のでかい胸両方きっちり揉んだ。いつもより多めに飯を盛ったから、食いおわる時間はいつもより少々掛かった。

梅子

 俺、梅子の歯も磨いてあげるとか言うのでそれは慎んで辞退しました。そこまで来ると甘えるがどうという問題ではないような気がしましたので、ええ……。
 先にソファへ座って。斉志がお茶を煎れてくれるのを待つ。斉志はこういうのもなにかしら免状を持っているらしくて。すごーい。もうただ感心します。わたしは母ちゃんのいい加減かつ適当流の免許皆伝ではあるけれど。斉志はわたしがお料理の修業中はお茶煎れなかった。なんだか腕前を盗みに行きたくてうずうずするけど、今日はここで待ちます。あとでお願い、してみようかな。
「……斉志、美味しい」
「うん、梅子。梅子飲み物どれが好き? 紅茶? 珈琲? お茶? 牛乳? 俺?」
「斉志。……は、飲み物じゃないけど……」
「飲ませてやらんもんな俺」
「ぅぅ……」
「分かっている。梅子が俺になにしてもいいと言ったって、俺が飲まさないのと同じだ。俺も梅子が生理中は呑まん」
「……うん」
「……その、な。……他、は?」
「うん?」
「……食いたくない?」
「食べたい! ……せいじおうちにいるとき、……あ、あの、玄関でしかとか、時間ないときは別だけど、そうじゃないときは、……斉志が厭って言っても食べる。うんと食べる」
「俺がなんとかなんざ言うわけないだろ。……よかった」
「あ、あの、あのでも……」
「うん、分かってる。……風呂は、我慢する。厭々じゃなくて、ちゃんと我慢する。けど一緒に寝てくれるんだよな梅子。ずっと」
「うん」
「じゃあロフト無しにしよう」
「うん。ふてくされてごめんなさい」
「それはいい。もう言うな」
「うん。でもあの、……あの」
「うん? なに? 言って梅子。我が儘うんと聞く。甘えて梅子」
「……ロフト、すきなの。高いところ好きというか、ばかとなんとかは高いところがどうとか、とととにかくその……」
「それで?」
「あの、……おひるねとか、ロフトでしちゃ駄目?」
「飯抜かないで」
「うん」
「じゃあいい。けど入り浸っちゃ駄目だからな梅子。俺がいる時は使用禁止。ずっとだ。お白州。いいな」
「うん!」
「じゃあロフトにも電話の子機を置く」
「うん」
「……その」
「うん?」
「……俺、反省した。うんとした。だから、……生理ちゃんとおわるまで俺我慢する。忍耐する。こ、こんなこと言う俺でも好き? しないなんて言う俺でも好き?」
「スキ」
「が、我慢する。俺、うんと忍耐する。俺の忍耐力はこの星一番だから、最近全然ご披露してないけど、実はそうだから、……だからご披露する」
「ハイ」
「だから……」
「?」
「……だから。あの、な。梅子」
「うん?」
「俺の……我が儘聞いて」
「うん」
「……いい?」
「うん」
「じゃあ、まず……俺がいいというまで、話、さいごまで聞いて」
「……うん」
 丁度お茶を飲みおわったので、湯呑みを置いた。斉志も。
 そしたら斉志、わたしのことぎゅっと抱き締めて、……震えて、た。

斉志

 分かっている。俺にこれを言う資格は無い。どの面下げて、だ。
 だが……これだけは、これだけは。
 そう思って、……甘えて、言った。
「とにかく俺が悪い。
 だがな。今回は、……梅子、きつい、ぞ。
 ……俺が、……心底厭だってこと、……全部しただろ。俺のこと好きって言ってくれなくて、俺のこと見てくれなくて、抱き締めてもくれなくて、俺のこと避けて無視して、ひとりにして、放って置いて、……俺から離れて逃げただろ。電話も出てくれなかった。……飯も余して、手、付けてなくて、出迎えも、してくれなくて……。
 俺、梅子がそうしたくなること二度としない。だから梅子も、もう……するな。
 俺は、……梅子に、本音しか言わない。……本性しか見せない。だから、……知っての通り俺は真っ暗闇だ、底無し沼の暗黒地獄だ。梅子は最初から知っている。何度も見た。だから、……本当は、梅子が俺のこと放って置く時は、……立場がどうとか、誰かになにか言われるとか、だけじゃなくて、……俺の本性が厭でこわいから、……なのも分かっている。
 だがこれからもそれを、梅子は見るだろう。梅子だけが見るだろう。
 俺は梅子だけに全てを晒し続ける。だから……逃げるな。
 俺に惚れて。全部……全部。
 頼む、梅子。
 ……いい、よ」
 そっと、腕を緩めた。
 梅子。俺を見る梅子。見つめるその瞳。
 真っ直ぐ俺を見る、ガラス玉のようなまっさらの瞳。
「斉志」
「……うん」
「ベッドの刑にして」
「……そうしようかと思ったが」
「しないの?」
「俺、梅子の作った飯食うの、生き甲斐だ。梅子がちゃんと掃除してくれたこのうちに帰りたい。梅子が洗濯してくれた服着て、梅子と散歩して、梅子とドライブして、……そうしたい。だから、ベッドの刑にはしない。
 俺の刑だ」
「うん!」
「……いい?」
「うん。……せいじ?」
「うん?」
「あの、わたし……謝るなって言われそうだけど、謝らせて。斉志」
「分かった。いいと言うまで、俺も聞く」
「……うん」
 もう一度、ぎゅっと抱き締めた。梅子、さっきより少し力強くして、……温かい。
「あの、わたしその、……大人げなくてごめんなさい。あの、その……引っ込みがつかなくなったといいますか、……意地になったと言いますか……。生理中はその……ちょっといらいらしていて……。だから、斉志全部分かってると思う……分かってる、けど、そういうとき、その、だからみっともないこと言ったりやったりするから、……そういうとこ見せたくないんだけど、そういうわたしのその、行いは斉志、厭でしょう。だからその……。み、見せようかな、と、思ったら……こうなって、しまいました。ごめんなさい……」
 俺なんかな、いつもだ梅子。んなもん日常。
「わ、わたしは日頃の行いうんと悪くて、それでその、斉志に迷惑掛けちゃって、……い、いうと怒られると思うけど、あのその、ふ、ふつうは、その、食材とか買う……お札なんてもう触らないけど、と、とにかくそういうのはぐーたらでも女房の役目だと思うけど、それすらさせたくないくらい、わたし、……へ、へんなことばっかりしまくってたから斉志、その……出さないっていうか、信用ないの分かってるけど、でもわたし、もう出たくないから、そ、それはお願いするというか、……そういうのは、わたししない」
 なにせ梅子は俺よりなにをしでかすかわからん。……なんぞ言うとなんとかと思われるかもしれんな。どの面下げてだ俺。
「せ、斉志が、うんとわたしのこと、考えてくれて、……考えて、すきって思ってるの分かってるの。だから甘えて……でも、甘えるのと、そうでないのの、……区別今回、……今回も、つきませんでした。……もう二十二歳にもなるのに……ごめんなさい。もうしない、あんなことしない、絶対しない、……い、いやって言われても、ぷ、ぷんってそっぽむかれても、もう、もう……わ、わたしが、せいじに、……せいじのこと追い掛ける」 
 その必要は無い。誰がするか。誰がさせるか。
「もうあんなことしない。斉志は、わたしが、なんでもしていいって言ったから、その通りにしただけなのに、……わたし甘える以外のことしてしまって……。本当は、斉志わるくないの。斉志がわるかったことなんて、……本当は、……ない。一度も」
 それは違うぞ梅子。俺がヘマしてばっかりだ。
「斉志はいっぱい、することあって、おうちの外でも、いっぱい、あって、……ストレスとか、あ、あると、思うの。た、たかが島国の中でー、とか、言ってる斉志に、こ、こんなこというと、し、信じてないのかー、って思うかもしれないけど、わ、わたしはいつも、本当はうんと信じてて、つまりその……斉志が、ひ、ひとりだと、それは絶対大丈夫だって思うの。けど、……わ、わたしのことだと、わ、……わたし足、ひ、……引っ張ってるの、かな、とか思ってたけど!
 でも、斉志は、……わたしがいるから、……だから、だからお仕事すると、思う……の。せいじはわたしがいるから、だから、……なの! そうでないと、……違くなるの! わたしがいるから、斉志安心して、行ってきますって、言うの……」
 そうだ。
「わたし。斉志のこと、すき。
 だから、ど、どの面下げてと思うけど、……。ほんとに、なにされてもいいの。なに言われてもいいの。どうされても、いいの。もう、あ、あんな酷いこと、しない。ほんとに、……ほんとになんでもして……。あ、でも、だ、駄目なのはあるから……。そ、そればっかりは、で、す。
 こ、こんなぐーたら女房ですが、あ、あの、……惚れて、斉志。
 ……えっと、以上、です」
 少し腕を緩めて向き合う。
「好きだ。梅子、惚れてる」
 見つめて言うだけで真っ赤な茹でダコの出来上がり、これも日常。
「そうやって照れるの、見るのも好きなんだ……」
 視線が泳いで、節目がちになって、それでも俺を見る。上目遣いで。
「可愛い」
 思わず本音が条件反射、耳元にすり寄って囁いた。が。
「梅子……」
「……ぅん?」
 声、甘い……。

 生理の五日目。これ幸いと言わんばかりに、梅子をベッドへかっ攫って性懲りも無く一晩中ヤりまくった。思わず本音が爆発的大集中、焦らす? 我慢? 忍耐? なにそれ。イかせまくって出しまくって獣のようにただ突きまくって狂って溺れてむしゃぶりついた。梅子俺のことうんと締めて、締めまくって、締め具合も感度も相性も全部よ過ぎで、何度もイかされかけたが気合いとこんじょうで同時にイった。一回ごとにぐったりする梅子をすぐに叩き起こして一睡もさせず、一晩でヤったにしては今までの最高記録。
 朝方、梅子を肩に担ぎ上げて風呂へ連れて行った。おひめさまだっこの時腕すら回せない程梅子の躯は悲鳴を上げていた。そんな状態の女房にナニをヤってるんだボンクラ亭主。そうは思うが梅子もすっぽんぽん、尻丸出し。温かくてなめらかで、思わず本音が条件反射、ちゅーして撫でまくって指入れた。とぷとぷの梅子が喘ぎ声。いかん勃ってきた……。
 思わず本音が条件反射、風呂場へ着く前に立ってその場でズドン一発、湯船でもヤって、完全に気を失っている梅子にパジャマを着せて、だっこでソファへ連れて行って座らせふとんにくるんで俺が気合いで料理した。
 明日は久々に月イチ以外で出掛けるの日、だ。知り合い共は全員俺のご趣味にあきれていたが、俺が一番あきれて欲しいのはお前達じゃない、梅子だ。まずぷんすかぷんすか怒るだろう、それが見たい。
 俺、梅子に怒られるのも生き甲斐だが……。あれはないよな。まあ梅子はもうせんだろう。引っ込みがつかなくなった、か。梅子頑固だからな。
 いいにおいがしても意識を取り戻せん梅子。ちゅーで起こした。こんじょうでさえ箸を持てん梅子。俺に乗せて、片手で箸持って片手で胸揉んで飯、俺もきっちり食わせた後、梅子の手と顔とでかい胸ごしごし拭いて、梅子の歯も磨いて、それからだっこでシステムバスルームへ連れて行き、照れてうんと厭がる梅子の下とショーツ一緒に剥いて便座に座らせた。俺はこんなんだが人格だけはまだ疑われたくない、厭々その場を一旦出て、無理矢理俺出させた後ボタン押させて再入室。真っ赤を通り越し、茹でダコになり切った梅子はそれでも必死にショーツと下を直していた。当然その場で剥いて俺もすっぽんぽん、お互い軽くシャワーを浴び、部屋着を上下、ショーツまで穿かせてベッドへ縛り付ける。今日は這ってでも寝室を出られん、揃いのでかい弁当箱に俺と同じ昼飯ぎっしり詰めて、ポットに茶を入れ揃いの夫婦湯呑みを置き、おしぼりをベッドサイドのテーブルに装備、行って来る梅子、ぐーたら寝てろ、ただし飯は絶対抜くなと言い渡し、行ってきますのちゅーを額に落としてうちを出た。

梅子

 いってらっしゃい斉志ぐーたら寝てますおトイレだけは勘弁をと言ったのにー。さいごまで聞いて出掛けてせいじーー。
 まるで足腰立ちません。今回は完璧にベッドの刑です。そうですか、これが爆発的大集中版ベッドの刑というものですか……。さ、さすがにこれは。あの、躯重いです。ちょっとつらいです。つらいを通り越してます。はっきり言って具合わるいです。……も、凄かっ、た。
 ベッドサイドには大きめのお弁当箱とお茶入りのポットと湯呑み。そうですか……。
 ゆったりとした空間で、斉志、……が出て行っても(……)斉志まみれなわたし。斉志のにおいで満たされる、このおうちの高い天井を見上げる、……こともなくあったかくてやわらかい、斉志のにおいのするおふとんにくるまって。ぬくぬく。
 だから、目を瞑って。うとうとして。
 そしたら、意識の片隅で白電話の音がした。
「……はい……なりた……です……」
「うん、梅子。よかった、ちゃんと寝てた」
「……うん……」
「梅子、声寝惚けてる」
「……うん……」
「梅子。いまお昼だから。ちゃんとお弁当食べて。食べたらすぐぐーたら寝て」
「……うん……」
「大丈夫? トイレとか行きたくない? 我慢しないで、忍耐も駄目、俺と梅子の辞書にそんなのないから、行きたくなったらボタン押して。一緒に出そうな梅子。俺、教授殴り倒してうち帰るから」
 ……斉志のばかと言って電話をきりました。きっと斉志、帰ったらひどい梅子とか言ってわたしは再びベッドの刑だと思うけど、それでいいから待ってるの。あ、でもちょっと、躯、が……。今されたら、……多分反応出来なくなって、……ま、またわたしは昏睡してしまうかもしれません。
 と、思っていたら電話が鳴った。
「ひどい梅子、勝手にきるなんて!!」
 ぅぅ……。
「そりゃ俺はばかだけどな、この星一番のばかだけどな、言っておくがこの会話を聞いているギャラリーは大勢いるぞ梅子! そうか、梅子の度胸はこの星一番だ! この俺にばかと言って電話をきるとはな! 全くその通りだが実にいい度胸だ、うちに帰ったらどうなるか、よく分かっているだろうな覚悟しろ!!」
 うーんとうーんとおっきな声で、電話を勝手にきり返しされてしまいました……。
 どーしてどーしてわたしの行いったらなんてうんとわるいんでしょう……。行いのわるさは間違いなくこの星一番だと思います……。

 おいしいお弁当をころっと平らげて、お茶をしっかり飲んで、でも半身さえ起こせない。
 おふとんをかぶっていればもうすぐやって来る現実に目を瞑れると思ったのでそうしました。斉志が帰って来たらなにされるか分かってるから、お風呂でしましょう、と言おうっと。ああ、わたしってなんっってすけべえなんでしょう……。

斉志

 出迎えのないうちへ帰って、我ながら大の大股でドカドカ寝室へ一直線、ぐーたら寝てる梅子を叩き起こし、ただいま梅子いい度胸だ分かっているだろうなヤりまくりだ覚悟しろとふとんを剥いたらおかえりなさい斉志お風呂でして、と言って来た。どういう誘い文句か分かっているのか実にいいお願いだその通りした。担ぎ上げて下諸共剥ぎ下ろして撫でもせず指二本突っ込んで弄り倒してぐっちゅぐちゅに掻き回す。喘ぎ声を聞きながら風呂場へ直行、全部剥いて俺もそうして、湯船に行くまでなど我慢出来ん、脱衣場で壁に手を付かせて後ろからズドン一発ただヤった。
 あとはいつものように湯船で俺跨がせて、腰が砕けるまで上下左右に振らせて、限度ギリギリ、湯当たりしても構わん、のぼせても構わん、そう思って、昇りつめるのギリギリまで引き延ばして、意識飛びそうなんてもんじゃない梅子の意識をかろうじて持たせて同時にイった。中に出し尽くし、梅子と一緒に湯船にしばらく沈んでいた。
 風呂から出て、まるで意識の無い梅子を籐の背もたれ付き椅子に座らせ躯を拭き、バスローブに身を包み髪を乾かす。梅子を座らせたまま俺も躯拭いて髪を乾かす。これでまた担ぎ上げれば指突っ込んで俺突っ込むな。そうなれば行き先は寝室、飯も忘れてヤりまくるのが日常だ。
 我慢も忍耐も無いが飯抜きは却下、そう思って厭々パジャマに着替えさせようとバスローブを脱がしたら、すこし開かれた脚から僅かに見える真っピンク、俺の刻印だらけの真っ白な躯。毎度万年眩しくて、俺を咥えるくちすこし開いてて、思わず本音が条件反射、むしゃぶりつこうと思ったが……梅子が目を覚ます。気付いたようだ。
 よくも勝手に電話をきりやがって。お白州だ。きる時は同時、イく時も同時、それ以外有り得ん。
 そう言い渡そうと思ったが……待てよ。梅子の気付くタイミングが早過ぎる。梅子はちゃんと寝ない場合、悶絶ちゅー起こしか梅子ぐちゅぐちゅにする時かズドン一発梅子貫く時気付くのが日常だ。
 なのに今起きる? 待てよ、俺がこれで足腰立たなくなるなど有り得んが、梅子は?
 梅子の動作は緩慢だった。完全にのぼせてぐったりして、真っ白な躯を震わせながら、右手を、決して外さぬ左手首の腕時計へ持って行き、俺の目の前でボタンを押す。
 ゆっくり俺を見上げるその瞳。
 視点……、定まってない。
「せいじ。ぐあい、わるい、です」
「!!」