さいごの夏休み

 来年から、斉志はもう社会人。いつもガキ、とか、たかが学生、とか言っていたけどもうそうじゃない。長い休みはこれでもうおしまい。新婚と言ってももうそろそろおしまい。こんな気持ちに、前もなったことある。合同はずっと一緒、クラスは二年の時だけ一緒。そう言われたあのときからもう、三年になったら離れようと思ってた。
 でももうそんなこと、ない。
 斉志は上っ面がどうの、そういつも言うけど。そんなのわたしがどうこう言える筈ない。こんなお顔なんですよわたし……。それが、うーーーんと格好いいひとに一体なにを偉そうに言えるというの……。成績だってそう。斉志と環がいなければ、張り出される成績一覧なんて絶対見なかった。目に毒だもの。運動神経に至っては口に出したくもありません!
 そう思って言わなかった、言えるわけなかっただけなのに。評価しない、なんて。そんなことない。
 わたしは根本的に徹底的にばかだけど。だから、というか、最近へんな喧嘩ばっかりして、ようやーーーっと分かったこと、ある。
 わたし、斉志を褒めたこと、無い。
 格好いいとか、似合うとか。それは言ったけど。
 一番を取る斉志にわたしはなにをしたでしょう。──ひたすら逃げました!! 取れば取る程逃げました。固まったし。もう離れようと思った。何度も何度も、それが全部積み重なって本当に斉志から逃げた。一番だってこと、あと耳にも入れなかった。だから。
 一番取ったの? 偉いね、凄いね。頑張ったもんね。
 と、いうのを全っっっ然、言ったことありません。
 ……。
 わたしは? 頑張ったら褒められたい。そんなの、わたしでさえ思う。けど斉志はそういうの取って当然。だから別に……。
 なんて……。
 酷いこと考えてた。
 そんなことしたら不安になるって、そんなのわたしが誰よりよく知ってるのに。斉志は凄いことして当然、当たり前。そんなふうに思ってた。
 ……。
 斉志、どうしてこんなわたしと顔付き合わせてるんだろう。愛想、とかはもう辞書にないみたいだけど。これはもう最初っから謎だった。雪の日のこと理由もちゃんと聞いたけど、そもそも斉志が逃げる、なんてそれこそ理解出来ない行動。あの時点で、もう斉志はとんでもなく凄いひとだったのに。そりゃ、わたし全っっっ然、斉志のことあの時知らなかったけど、耳に毒でしょうあんな凄い成績聞いたって……。
 成績のこと言うと。じゃあ一番以外取っちゃ駄目なのか。そういうふうに聞こえるかなと思って言わなかった。だから、その……学生さんの時は、言わない。やっぱり言う方が、その……プライドへし折る事になるかなと思うし。
 でも職に就いたらちゃんと言おう。追い抜いて出世って、どういうことか実は分からないけど。ネットで調べるなんて言い出すだけで斉志厭がるし、斉志に聞けば詮索になるしプレッシャー掛ける事になるし。外に出て本を買いたい、なんて……思ってもいけません、ええ。
 斉志は、わたしにちゃんと言ってくれるから。出世した、とか。そう言われたら、その時はちゃんと言うの。おめでとうって。
 わたしはいつも逃げていた。逃げて逃げて、そうして楽してた。だって逃げてひとりになれば気が楽だもの。誰にも迷惑掛けなくていい、心配させなくていい。そう思ってたあの日まで。斉志が、自転車置き場に来てくれたあの時まで。
 あれは師匠がそうしてた、って言ってたけど、そうして貰わなきゃわたし告白、なんて一生誰にもされなかった。でもあの後逃げたけど(……)。
 わたしが逃げれば斉志が傷つく。わたし、傷つくなにものもない。前はあったけど、ちゃんと斉志は言ってくれた。五年も経ってなお言えるなんて凄いこと。傷つける勇気、そう言ってた。わたしはそんなの全然、ない。わたしが傷つきたくなくて逃げたんだもの。
 だからもう、絶ーーーーー対、このおうちにいるの。わたしそういうの得意というか、それがいつもだったんだけどな。十四年ちょっと、ずっとそうだった。だから、ひとつのおうちにずっといる、というのは実に楽なの。楽ちん。ずっとやっていたからそれでいいんだけど……。
 でもですよ。
 斉志のいい方まねすれば、わたしヘマ言いました。ええ、斉志が来なくて平穏無事だった日、殴り込みとか校舎ぐるっと回ってないから外の空気吸ってみたくて屋上行ったら師匠に会ったって。逃げ足速いです、斉志撒いたの自慢ですって。
 これはとーーーんでもないヘマちっくな言い方なのでは……。
 ……。
 言葉の一区切りごとにヘマです。ええ。斉志が来なくて平穏無事? なにそれ。殴り込みも校舎ぐるりも斉志は自分のせいだと今でも後悔しています。それがないから外の空気を吸う? 今言ったら、ううん、今もこんなこと言っている。師匠に会って話をしましたけど、それは斉志よりも前。りょうでも例外無しとかあの時からもう言ってた。撒いたに至っては、もう、もう……。
 ……。
 斉志、結婚してからもわたしが逃げたり放って置いたりするかも知れないって、ずっとずーーーっと警戒してた。疑ってた。
 それって、ととととーぜん、なのでは……。
 斉志の言い方まねすれば、一緒にいた二年の楽園生活でさえわたしの頭は逃げることばーっかり考えて。離れたときはそれこそ離れます宣言。地獄の三年弱なんてもう、ああです。結婚してからはずっといたけど、へ、へまばーっかり、です。何度愛想尽かされて当然、なんでしょう。
 どうしてこれで斉志、わたしのことなんて相手してくれるのかな。斉志そんなこと言ってたけど、それはわたしが言いたいくらいだった。あのときはそういう話じゃなかったから言えなかっただけ。最初から、わたしの名前を呼ばれたときからそうだった。よく分からなかった。こんなお顔のわたし。太ってたし。ひとめ惚れする対象じゃ、間違っても、絶っっっ対、ない。なんで斉志、わたしのこと自信家、なんて言ったんだろう。全然理解出来ない。
 斉志は夏休みに入っておうちにいる。もう気合いも凄い、爆発的大集中。うち中が爆風に巻き込まれている、そんな感じ。とても書斎に近付けない。よくわたし、一緒の部室になんて居たなあ。あれは短時間だったし、目の前に師匠がいたからだと思う。
 修業の制限時間はもう取れた。わたしの思う通りに、って斉志。だから、斉志が集中を解いたあとは、その……。で。そうじゃない、今みたいなときは。心地よいを遥かに通り越して、もう、その場に立ち尽くして。呆然と、ただ呑み込まれる、存在すら吹き飛ばされそうな暴風のまっただ中でも。
 わたしが出来ることをする。それだけ。
 もう逃げない。誰よりわたしが斉志の全部を受け止める。

斉志

 俺は来年となれば、こんなふうにうちには居てやれない。それまでに、どんなへんな喧嘩であろうと吐き出し尽くす。それが梅子の為にもなる。誰より自信が無く、いつも不安な梅子。
 いいにおいで目が覚める。それが日常。温かい、それが日常。俺は毎度飯時途中で押し倒したが、あれは俺が作った飯だったからだ。梅子が作った食事を食いかけのまま途中で放って置く? なにそれ。忍耐でもなく食べおえる。温かくて、とても途中で止める事など出来はしない。俺が作ったら間違いなく押し倒すがな。一緒に片付け、ようとしたが、俺が集中して勉強しているから梅子は自分でやる、そう言った。なら歯磨きを先にして、それは一緒にやろう、そう言った。梅子は納得。気合いを入れず歯を磨く梅子。ぎこちない、それを見るのもいい。
 後片付けの音を聞きながら鬱憤晴らし。なんていい。
 梅子はもう俺のだ。心の底からそう思える、全部俺のだ。逃げる? なにそれ。
 梅子は自分でやれることはやりたいと、そうでなければ心の負担に思う性分。社会人として先輩だ、今から可能な限りやれることを、そう思っている。だから、させようと思う。こんなふうに、俺を温かく包む梅子。
 いいにおいがして、昼だと思える。地獄の三年弱で腕時計が無くとも時刻は分単位で分かっていた。だが、いいにおいで昼と、そう思える。なんていい。これが日常。
 鬱憤晴らしを切り上げ、居間へ。食事が並べられている。なんていい。エプロンをぎこちなく外す梅子。なんていい。
 梅子を俺に乗せて戴きます。梅子が俺に食わせる。俺が集中しているから、だろう。最近俺に箸を持たせてくれんがそれもいい。
 梅子は知ることないと思うけどな、美味いんだぞ……梅子の食事。俺の為だけに作る、梅子の愛情のこもった食事。俺を全部貰う梅子。梅子を全部貰う俺。ゆっくり食った。梅子の、たどたどしい箸使いで。口の中は一緒の味。それから一緒に歯を磨く、片付けの音を聞きながら鬱憤晴らし。
 俺が鬱憤晴らししている間、梅子は掃除に洗濯。前野は奥方殿、そう呼んだ。そうだ、奥の方へ押し込め出さない、だから奥方。まさに奥さんな梅子。たどたどしく、真剣に。このうちにへんなことをしたくない、いい衣料だから丁寧に、そう思いながら、ちゃんと梅子は花嫁修業。そうして俺の為に入念に風呂へ入る。
 今の俺はまだまだガキ、風呂を覗いてやった。結果? 俺、水浸し。……そうか、そういう態度に出るか梅子。
 そんなわけで俺と梅子は湯で戯れた。梅子は最初こそ怒ったが、だんだん笑顔になって、お互い声を上げて笑いながら戯れた。ヤってもよかったが湯当たりは却下。あんまり楽しそうで、その時間を止めたくて、梅子を悶絶させてさっさか躯を洗い、髪を乾かしてから気付かせた。
「もう、もう! すけべ、斉志のすけべ!!」
「そうだと何度言った? 風呂、俺いつでも覗くからな。水なんざ却下だ」
「ど、ど、どーしてそういう発想出てくるの!」
「大丈夫だ、安心していい梅子。いくら俺でもトイレは覗かん」
「そ、そんなの当然だもん!!」
「俺の入浴シーンはいつ覗いてもいいぞ梅子」
「……」
「さて、俺は爆発的大集中で鬱憤晴らし続行だ。夕飯出来たら呼んで、梅子」
「うん。……もう」
「そういう、もう、は要らん。お白州」
「ぅぅ……」
 俺は間違い無く笑顔を浮かべているだろう。このうちを一歩でも出ればそんなことは無い、それが勝負の場だ。むしろ心地よく酔う程に、俺が動く。誰よりこの俺が動く。片手間など有り得ない、本当の勝負の場へ。
 梅子は十七から、いやわずか十四の時ですら、人脈、金、学歴、後ろ楯。一切無い、どん底の不安の中で勝負の場を知り覚悟した。俺は高揚さえしている。やっとガキの身分から解放される。
 だが一刻も速くなどとは思わん。一刻も無駄にはせず、全てが大切な時間。それを俺は梅子から学んだ。
「斉志……? ご飯だよー……」
 やわらかい声。とてとてと音がして、うんと遠慮して書斎の扉を静かに開ける梅子。この声を。
 こんなふうに、こんなふうに。ずっと聞いていたい、そう思った。そうなるまで、出逢ってから全ての出来事が必要だった。片手間に、真っ白にもならないで、梅子の両親ともどもこのマンションへ連れてエリート校に入っていたらどうなった? 決してこんな事は有り得なかった。
「うん、今行く」
 梅子に頭の切り替えをしろと言っておいて俺がしないわけが無い。すぐに書斎を出て、一緒にソファへ座った。今度は俺が箸を持つ番。はい・あ~ん……毎度梅子は照れる照れる。どうして慣れんのか理解出来ん、梅子、見てない所なんてないぞ俺。
 歯磨きを一緒に。あとは梅子が片付ける。俺? 当然寝室で待つ。
 梅子は書斎から俺の集中を感じられない場合、俺がどこにいるのかよく知っている。来いよ、梅子。
 思った通り、一番にここへ来た。梅子が入って来ても、灯りは穏やかなまま。
「脱ぎながら来いよ梅子。ゆっくり、一枚ずつ」
「……うん」
 背後に、寝室より明るい灯りを背負いながら、抜群のシチュエーションで一枚ずつゆっくり、照れながら脱ぐ梅子。出逢ってから、一度だけ落としちまったがきっちり戻した胸は本当に形がいい。ぶりぶり、だ。小股は切れ上がり、毎度そそられる鎖骨、骨太でない腕、これまた形のいい脚。速い話が、うんといい躯だ。前野の野郎はああ言ったが、やつが会った時より梅子はうんと可愛くなっているんだ、誰が会わすか。そんな外見に中身はこうだ。これを知っている俺になんの遊興咬ましても無駄だ。よく高校生だ社会人ださせてたな俺。
 梅子が一枚一枚脱ぎながら、ベッドサイドの俺の元へ辿り着く。素っ裸、梅子流に言えばすっぽんぽんだ。白くやわらかい肌はキスマークだらけ、だから会わせるわけにはいかないんだ、梅子照れるだろ。
 照れる梅子に言った。
「俺の服、脱がせろ。梅子」
「……うん」
 全くたどたどしく、うんと照れながら梅子が俺の服に手を掛ける。部屋着、脱ぐ為にある服。ボタンに手を掛け、背伸びして上から、ひとつづつ。俺を駆り立てる手つきで上から脱がす。上着は全部ボタン、だからもう、俺の上半身は素っ裸だ。あとは下。
「……」
「……」
 もう、言わなくていい……これが日常。

梅子

 斉志、は……立ったまま。下、脱がすの大変だよ斉志……。一度、上にうんと持ち上げなくちゃいけない。それ、苦労するんだから……。ぐいって、下におろすの。食べて、ううん、
 食え……
 そう、言ってる、言葉、なんて言わなくて、イイ……。
 膝、ついて食べた……。斉志、わたしの頭、抑えて。のどの奥まで斉志。わたしの口、蹂躙する、の……どくどく、言ってて、……最初見たとき、うって、思って、けど、えいって食べると、斉志、
「……む」
 その声聞きたくて、……だから食べてた。だって、月イチって言われたし、自分からする、なんて、すけべーって言われるかな、って。でも、お風呂もそうだけど何度も、自分から言っちゃった。自分から、なんて全部、斉志にだけだからね……。
「ぅン……」
「ン、ン……」
「あむ……」
「も、……っと、梅子……」
「ぅ、ン……」
「も、……飲む?」
「ゥン、ゥン……」
「俺も、飲ませ、たい、よ……」
「ぁン……」
「……そればっかりは、だ……梅子」
「……」
「なんで? ……聞くなよ」
「……」
「ぅん、分かってる……梅子のそこ、……今ぐっちゃぐちゃにしてやる、から……」
『ぅン、ぅン……』
 飲みたいんだけどな……。お願いしちゃおうかな、って思ったけど、わたし斉志の思う通りするもん……斉志の言うこと全部聞くもん……だから聞かない……。
 だから、……白濁したそれ、顔全部で受け止める。全部、全部。
 びしゃーって、……全部。

斉志

 俺を出す、梅子の顔に。……顔射。べっとり俺をくっつけて、俺だらけの梅子。恍惚の表情で俺を全部受け止める。我ながら、……征服欲、そそる……。
 固まると顔、痛いからな。そう思ってタオルで梅子の顔を拭う。梅子は最近、これを厭がる。俺を取りたくない、そう言った。それでもいいけどな、顔痛くなるから駄目だ梅子。そればっかりは、だ。そう言うと従順に頷く。……征服欲。
「……どう?」
「疼いて、るぅ……」
「どうして、欲しい……?」
「ぐちゃ、ぐちゃに、してぇ……!!」
「どれで……?」
「斉志、のぉ……指、と、舌、と、……さっき食べたのでぇ……」
「欲張りだな梅子……俺頬張って、下の口でも俺食うのかよ……」
「そう、だもん……」
「スケベだな梅子……」
「そうだもん……」
「腰、もじもじしてる、ぞ……? そんなに欲しいか……?」
「欲しい、もん!! も、お願い、お願い、焦らさないでぇ……!! 欲しい、よう……」
「なら、尻向けろよ……振れ、俺の顔の真ん前でな」
「うん……」
「……」
「ヤ……」
「……止めるか?」
「違う!! ど、してなぞるだけ、なのぉ……」
「そうやって、……梅子が俺に狂うところ見たいからだよ……」
「もうとっくの昔に狂ってるもん!! して、してぇ、はやく……!!」
「まだ、だ……もっと言わす……」
「……う、うん……」
「ここは、……」
「!!?」
「厭、か。……安心していい……ここはヤらん。……それ以外は全部ヤる」
「……うん」
「……そういう、器具あるけどな……」
「……!!」
「安心しろと言っただろ……俺以外一切入れん……梅子タンポン、使わないのなんでだ?」
「……ゆび、入れる必要あるの……中二のとき、やってみたけど厭だった……」
「……」
「嫉妬、した……?」
「したぞ……よくも……」
「だから、……入れないで、って……言った、の……」
「……タオルが、厭、じゃ、……」
「違う……。異物、そこに、……もう厭……」
「……分かった。入れてやるよ俺、……声、押さえるなよ」
「そんなこと、……したことない……」
「学校で、……あったな、一度、だけ……」
「ぅン……」
「……どう、だった……?」
「わたしも、欲情、した……」
 体位を代えた。正面から。欲情しまくりの俺と梅子。口元俺だらけ、俺も口元梅子だらけ。脚、おっ広げる。そこ、薄い、お互い、……飲んでる、何本も。
「凄い、よう……斉志……」
「……当然、だろ……。梅子、入れて欲しいとこ、自分で広げろ……」
「う、ん……」
 たどたどしく、しゃぶり尽くしても足りないその指で、決して外れぬ指輪、外さぬ腕時計の左手、右手、両方で梅子のそこ、……をおっ広げる。
「どうして、やろうかな……」
「突いて、奥まで、はや、くぅ……。そんな、……先っぽでなぞらないで……!!」
「先っぽとはなんだ……」
「だ、ってぇ……!!」
「梅子結婚、してから多くなったな、だって、って言うの……」
「斉志が、……いつも焦らすからだもん!!」
「焦らせって言ったの梅子が先だぞ……」
「だって、だってあのときは……」
「なんであの時許した……」
「……?」
「俺、……しまくっただろ……俺が悪いって、知っててなんで許せなんて言った……言えよ、無言は許さん」
「ずっと欲情してたからだもん、……わたしが……そのくらい、焦らして欲しくないの!!」
「……」
「怒られて、もう嫌いだ、お前となんか別れてやるって、言われると思ってた!! なのに、してくれたでしょう……ずっと、……だから、甘えたの……」
「なんで俺の喜ぶことばかり言う……」
「だってそうでしょう……! わたし、い、いつ、だって嫌う要素ばっかりでしょう!!」
「まだそんなこと言ってるのか!? そんなに不安か、そんなの俺の方こそだ!!」
「違う!! もう来て、お願い、来て……」
「駄目だ、そんなの躯だけだろ。言えよ、俺のどこがいい!!」
「全部!! そんなのわたしが聞きたい、どうして頭悪くて顔こんなで、運動神経ないのに性格も分からないで惚れたの!?」
「……この分からず屋!!」
 願い通り突きまくって中に出した。梅子は一回で悶絶した。捨て置いて、書斎で、忘れたくて集中した。
 翌朝、梅子は顔を泣き腫らせていた。お互い無言。梅子が朝食をテーブルに並べる。エプロンは外すが、……ソファへは座らない。立ちすくむ。……あの時の、俺のように。近寄る資格は無い、そう思ったあの時の、俺のように。命令しても梅子は座ってくれないだろう。
 だから俺が梅子の腕を引っ張ってソファへ座らせ、押し倒してキスをした。離してなどやらん。飯がある、脱がしはしない、それでもキスを。覆い被さり、体重を掛け、でかい胸がつぶれても構わん、そう思って、長く、長く貪った。息が切れてもなお。
 長く、長く貪った。梅子は泣いていた。
「き」「好きだ」
 すぐに躯を起こし、梅子を俺に乗せ想いの丈を込めて抱き締めた。
「梅子、好きだ。……なんで今更、……頭か、そんなもんはな、俺が下らんやつより上ならいい。顔か。整形して欲しいのか。運動……そんなに俺から逃げたいか。性格、……。性格、そんなに酷けりゃ……あれだけ友達出来るかよ!!」
「──斉志、わ、わたしの、──性格どう思う?」
「……」
「斉志の、意見が聞きたい、な──」
「温かい」
「──?」
「温かい。逢って、眩しいと思った時からそれを感じた」
「──それ、性格?」
「性格だ。梅子はな、温かいよ。こんなふうに。体温だけじゃない。温かいんだ」
 互いに顔が見える程度に、少し腕を解いた。視線を合わせて。涙を嘗め取りながら言った。
「勿論他にもあるが、梅子俺から散々逃げたからな。把握するのに時間掛かった、それは認める」
「──」
「俺のこと振っただろ梅子。それな、……言うの俺にだけだと思った。なんでも梅子、自分で抱え込むだろ……。俺にも見せてくれよ、そう思った」
「……」
「俺、追い掛けたかった。なにせ初っ端逃げたからな。だから追い掛けたかった。梅子の性格はな、温かい。照れ屋、俺から逃げる、だ」
「……性格、かなあ」
「性格だ。梅子いつも俺から逃げてただろ」
「あ、……そうだ」
「なにがあ、そうだ、だ。なんでこんな事で喧嘩しなけりゃならん。最近多いぞ」
「斉志が焦らすから、です!!」
「梅子ヤるの俺より上手いだろ。俺はいつイかされるのかと不安なんだ」
「……嘘ばっかり」
「本当だ。梅子、俺は本音を言ったぞ。次は梅子の番。俺のどこがいい。全部は却下だ」
「……斉志披露宴のときそう言ったくせに……」
「一部分だけ言うと梅子泣くだろ! 俺はいい。なんだ、梅子俺の思う通りだろ」
「ぅぅ……そうです」
「じゃあ言う」
「えっとね。……そう言われると難しいな」
「それでも言う」
「ぅぅ……。斉志、あのね、上っ面ーとかいつも言うけど、自分のことそういうふうに卑下して言わないで」
「……分かった」
「斉志は。……とにかく完璧、です!! 非の打ち所ありません!! 格好いい!! なにしてもさまになる!! 頭もいいです!! とんでもない、です!! うーんとうーんと、凄い努力をして来ました!! もう、もう、……何て言えばいいの?」
「俺に聞くな。……性格、は? 第一印象は却下だぞ」
「えー、いまそれ言おうと思ったのに……」
「プライド自惚れ命令トークも却下だ。さあ言え」
「えーー!?」
「……他はないのか」
「やさしい!」
「……」
「あ、照れてる」
「……」
「えっと。しおらしい、とか。遠慮する、とか。震えたり、いいの? とか許可を得て来たり。沈んでいたり、とか。観念、とかもだけど、そういうの似合わないひと!」
「……」
「どうだー!」
「……そんな泣き腫らした顔で言う台詞じゃないぞ」
「だってそうだもーん。一晩中泣いたのなんてあれ以来。久々だったな。ちょっと気持ちよかった」
「……ご」「もう終了しましたー!」
「……言いたい。言わせて梅子」
「? うん、いいよ?」
「その、……い、……どう、……その、どういうふうに、……過ごしていた? あの、日……」
「そういうふうに遠慮するの斉志じゃない!」
「……するだろこれは」
「えっと。明美のうちではさみ将棋をしました」
「……本当に梅子は俺の想像を遥かに超えることを言うわやるわ……ああ、これも梅子の性格だな……梅子はな、びっくり箱だ!! 事前に予測なんざ出来ん、性格? 温かい、スケベでヤらしくて誘いまくりのくせに自称照れ屋、俺に狂って溺れまくりのくせに毎度万年逃げまくる、他にもあるだろうがまだまだ箱の中だ、梅子は俺に見せてくれん!」
「……開き直ったでしょう斉志」
「ああ。で、それから」
「うーんと泣いて寝てた。しかも上半身素っ裸。痣、母ちゃん見てたと思う。次の日確か……とにかく学校へ行った。そうしたら、……」
「隣のやつが何か言ったな? なんで知ってるかって? 俺にわざわざ伝えに来てくれたんだよ、梅子が真っ青だ、とな。いい、言って。この件にお白州は無関係だ」
「……うん。あのねえ、確か。おい。あんた帰れ。すげえ顔色だ。だったかな。隣の人がわたしに話し掛けて来たのあれが初めてだった。色々助けて貰ったけどもう話すことないと思うな。隣の人、基本的に無口だし、無愛想だし」
 無口。無愛想。坂崎には似合わん言葉だ。色々助けて? そんなレベルじゃない。心の底から、最も信頼した男だ。そうだろう、梅子。
 俺より遥かに……
「……それで?」
「副担が来て、もう帰れって。そうそう、わたしにうーんと頭下げて謝ってくれた。後ろに熊谷先生がいてね、メって、そんな感じで。それから下駄箱すぐまで来たタクシーに乗って帰った。ちょっと気分よかった。だから次の日、まる一日学校へ出られたの」
 熊谷は俺を心底軽蔑していた。自慢じゃないが俺を知ってそんな態度に出た教師はこいつただ一人だ。
「……あの、な」
「?」
「……その、日。……俺に、……俺が舞い上がることばかり言っただろ……。いくらなんでも、あれは特に俺が全部悪いんだ。なんで、……振らなかった」
「好き!」
 何故そんなことが言える?
「嫌われたくなかった。絶ーーーーっ対、お別れなんて厭だった!! そういうこと言ったから、お前となんて別れてやるって、言われると思った」
「わけないだろ。俺だってな、そういう事言われるかと思って、それでも、……待っていたんだぞ。……人生終わりだと思って、……待っていたんだぞ……」
「あの時はわたし、逃げなかったでしょう!?」
「……ああ」
「わたしはいつも、本当はいつもそうなの!! 自信、ないから逃げてるの!! 今だって自信ないからこんな喧嘩してるんだもん。……ほんとに嫌わない?」
「無理だ。いいかこの分からず屋。どこから俺が梅子を、……そんなふうに考えるという発想が出てくるんだ。これを根本的に解決せにゃならんな、思えば逢った最初からこの話題を避けていた、そうだろ梅子」
「……斉志も、だもん」
「ああその通りだ。で、なんでその……そういう発想なんだ。面だ頭だ運動神経だは却下、いくら俺でももう聞きたくない。その考えはいますぐ捨てろ。俺に失礼だ」
「……うん。……ごめんなさい……」
「……で?」
「わたし、食器片付けたことない」
「……は?」
「シーツ、洗ったことないし。お家にいつもお邪魔してたのにお掃除もしない」
「……全く理解出来ん。それは俺がやるんだ、誰が梅子にさせるか」
「わたしだってやらなくちゃいけないでしょう。とっとと帰ったこと何度もあったし」
「そりゃ俺が悪い。……大体な、あれは俺の家だったろ。今は違うけどな、……じゃあ梅子、俺があの時梅子の実家、家行ったら、俺に何かさせたか?」
「……斉志、家でお手伝いをさせられていたでしょう」
「あれは俺が梅子に黙って勝手に行って自分からやると言ったんだ。もし最初から見てたら俺のこと止めただろ梅子。なにもさせないだろ?」
「……あ、そうだ」
「なにがあ、そうだ、だ。……他は」
「いっぱいあるけど……。わたし、斉志を褒めたこと、無い。一番取っても逃げるだけで……一番取ったんだ、偉いね、凄いね、とか。そういうの言ったことない。斉志、うーんと頑張ったのに、と、……当然だとか思ってたから、だから嫌われちゃうかな、と。美味しいお食事、いつも戴いてばっかりいて、お手伝いとか全然してないし。あと、その、全然いろいろ慣れてないし。斉志そうじゃないし。だからその、へん、その程度かー、とか思われるかな、と」
「学校の一番なんざ当然だ、褒められるなにものでも無い。そう思っていたとは知らなかったが、その手で褒めるのはよくて職に就いてからにしてくれ。食事か、家に来た時だの弁当だの以外でも全部俺が食わせたかったよ。手伝いか、それだって俺が全部やるに決まっている。慣れていないか、確かにそうだがそれを見るのがいいんだよ。ぎこちなかったりたどたどしいのを見るのがいいんだ。大体な、俺はプライドが高いんだ。俺より慣れていられたら俺、立場ないだろ。梅子、俺いつもガキの学生って言うだろ。梅子社会人の先輩だからな、俺より慣れているだろ。プライドへし折られているんだよ」
「……何て言えばいいの」
「俺より慣れてるのなんざ無くていい。慣れるな。なんでもするな。出来るな」
「……なんて言えばいいの」
「慣れていないだので俺がそう思うわけないだろ。あのな梅子、そんっっなに俺にその、……そう言って欲しいのか? 違うだろ」
「……うん」
「よし。俺と梅子の辞書にその、……なんとかは無しだ。緑色の届け出用紙も無いぞ。他にもあるけどな、口に出したくもない。それでいいな!」
「うん!」
「よし。……飯冷めただろうが。大体梅子が悪いんだ、俺を疑うな」
「わ、悪かった、なー……」
「ああ梅子が悪い。俺は梅子が好きだ、惚れてる。俺を信じろ、俺に狂って溺れろ、俺だけを見ろ、俺のことだけ考えろ、俺に甘えて楽をしろ。死んでも離さん。絶対逃がさん。墓に入っても閉じ込める。ヤりまくる。分かったな、これの逆はもう二度と考えるな」
「……うん!」
「よし、飯だ」
 実にへんな喧嘩だった。梅子が泣き腫らすなんざもう無いと思っていたが、まあいい。もう本音全開だ、実にへんな話だが、……マジ喧嘩すると意思の疎通が出来るな、俺と梅子。当然どこかの師弟なんざレベルが違う。
「梅子」
「?」
「少し話をしよう。喧嘩じゃなくな。俺は鬱憤晴らし、梅子は修業。ヤりまくる時はお互いぁンだの喘ぎ声だ。会話が少ないから突発的な喧嘩になる。しかもヤってる時にだ。いい雰囲気の時お預けなんざ梅子も厭だろ。俺の忍耐力はこの星一番だからな……なんだその目は。会話したくても俺はいつもヤる気満々、勉強に集中しているから邪魔出来ない? 悪かったな。だから今言う」
「……わたしの台詞取らないで下さい……」
「やっぱりそう思っていたか。まあいい。あのな梅子。本音だからな、言うぞ。梅子、成績で俺から逃げただろ。最初の親友からも成績で逃げたな。つまり梅子は成績がいい相手からは逃げる性分だ。じゃあなんで師匠と隣のやつからは逃げなかった」
「……???」
 何故いまあの二人の男の名が出るのか、全く分からない梅子。だがな、俺は前々から訊きたかったんだ。
「今更だがまた喧嘩となると厭だから言うぞ。あのな、梅子は俺の成績をなんで知った? 俺、言わないからな。遼が一度だけ言ったのは知っているが、他はなんで知った? そうだ、教室に結果一覧が張り出されるもんな。おそらく梅子はそれで一位と二位を見ていた。その度逃げる決意を新たにしたと思うが……そのすぐ下の三位と四位、見たことあるか」
「……? ない」
「いつも坂崎か遼だった」
 梅子はゆっくり目を瞑り、その場に崩れ落ちる。当然俺が受け止めたが。
「固まったか。遅いんだよ」
 梅子が自然に目を覚ましたあと、遼が俺と同じ大学へ行っている事も、坂崎の大学名も言った。再び固まった。しょうがないから俺が昼飯を作った。起きた梅子に、ぐーたら女房め、そう言ったら怒っていた。梅子怒るとその後元気出るもんな。やり過ぎはいかんが文句は言えまい。
 これからどんな事が起きても、梅子は決して俺から逃げん。ならばいろいろさせるのもいい。それが逆に梅子を逃がさない事になる。俺より慣れたら……自信になるならそれもいい、放っとかれはせんが。
 イかされるのもいいかも知れん。見下されるのだけは却下だがな。
 花火大会はどうする、そう梅子に聞いた。行かないと梅子は応えた。相も変わらず遠慮全開の梅子。梅子は俺に試験勉強をして欲しがっている。俺とてこれで梅子に気を遣わせたくないから日曜は遠慮したんだ。せいぜい週に一度だけ、試験だなんだで自重など今から思えば当時の俺を理解出来ん。まあ梅子体力無かったからな。
 梅子の現状を知りたがっている佳い女へは電話で知らせた。すると、
「今年は管外へ出た初代の連中ほとんどそうだぜ。就職活動さっぱ上手く行ってねえでやんの。あたしら高卒者の心境がやっと分かったようだぜ。ざまァ見ろ」
 だそうだ。確かに、初代でなくとも俺と同年代の半数はまだ先が決まっていない。つまり、俺なら来れるだろうと言う意味にも取れるがなにせ俺の女房はあの梅子。佳い女は梅子が俺を外へ連れ回す性分ではないと分かっている、あっそじゃあなとさっさと電話を切っていた。
 俺が職へ就けば祭りの時期に休みはない。だから連れて行ってやってもいいが、梅子はこのうちにいたいと言った。
 結婚してから一年半。もう、このうちは俺のにおいだけじゃない。
 一緒のにおいで満たされる。俺と──梅子。

ぐーたら女房二十二歳の誕生日

 当然白い花束、リボンの梅子。ヤってヤってヤりまくった。焦らしは無し、梅子の誕生日だからな。
「……どうして、どうしてわたし躯中にクリーム塗られなくちゃいけないの……」
「俺が舐めて食うからだ。躯中とはなんだ、前だけだ。背中は厭々遠慮してやる。……塗って欲しい?」
「べっとべとになります!!」
「そうだ。梅子うつぶせ出来ないからな、厭々我慢だ」
「ぅぅ。あのね斉志。そんなに、わたしの胸、好き?」
「何て応えて欲しいんだ。俺は喧嘩なんざ厭だぞ」
「褒めて」
「……???」
「褒めるひとと言ったら斉志しか……」
「当然だ。……褒められたいと思っていたとは知らなかったぞ」
「褒・め・て」
「……でかい、形がいい。弾力があって揉みがいがある。白くて谷間、……そそる。顔、いつも埋めたい。やわらかくてなめらかで、甘い。ちゅーも、……ずっとしたい。真っピンクな乳首弄ると梅子いつも、……言ってるだけで勃ちそうだ」
「そうかぁ。うん、ちょっと自信になった」
「他、言って欲しいか?」
「……舐めながら言って」
「全く梅子はスケベだよ。ああ負けた、ヤらしいのも完敗だ。だが俺は梅子にほっとかれないからな、絶対梅子よりスケベでヤらしくなってやる」
「……うん!」
「いい度胸だ……あのな、梅子は可愛い」
「……」
「照れるな。うんと綺麗になったよ……誰にも会わさん。首元、……吸血鬼の心境が分かるな、いつも吸い付きたい。鎖骨、……入院させちまっただろ俺。ちゅーしに行ったら梅子無防備に晒してるんだもんな……よくあの時押し倒さなかった俺、偉い。何、自分で自分を褒めるな? 俺は自惚れが過ぎるんだ。腕、……全く突然スラっとして来やがって。何、太っていた頃は、じゃあ褒める所無かったのか? 今更言うな。大体な、再逢した時梅子痩せてただろ、雪の日より。俺の数連発大ヘマかましで更に痩せてついには入院だ、俺が躯も綺麗にしたんだ。梅子痩せたあと戻りたくないって言ってたたろ、太るの厭って思ってるだろ。なんだその目は。入院前? むっちりしててあれで良かったんだよ。入院後ヤったの学校でが最初だったが、……ガリガリに見えたぞ。梅子は痩せて良かったなんて思っているだろうがな、俺、最低でも一週間は飯食わせ続けようかと思ったぞ。危ないだろあれだけ一気に痩せたら。まあいい、今の梅子を褒めるの続行。……何、今でないと褒められない? あのな梅子、梅子だって努力しただろ、綺麗になろうって。俺はそれを褒めてるんだ。疑うなと言ったろ。……またへんな喧嘩になってるぞ。いいから聞け。ここ……」
「ぁン!!」
「いつも濡れてて俺誘いまくり。なか、無茶苦茶熱ィ。出しがいがある。指も舌も俺も毎度先にイっちまいたくなる程締められる。感度よ過ぎで具合過ぎで相性最高。これは痩せるがどうのじゃない。自慢していいぞ梅子。返事は?」
「うん!」
「そうだ、もうは無しだ、思わず言いたくなったろうが梅子俺の思う通りだからな、言うなよ」
「う、ん……」
「脚、……いつもおっ広げてるからな、太もも、俺のヘマかましに関係なく痩せていったよ」
「ぅぅ……」
「尻、……これまた形いいんだよな……いつも撫でて掴んでいたい。よく俺、あんな連中に梅子の水着姿なんて見せたよ。女共が梅子に嫉妬したのも、まあ分からんでもない」
「……それは、その……」
「そうだ、二親のお陰だ。だが梅子はスケベだからな、そそる躯付きに、もうなっていたんだ。あの時、……くっくっく」
「……??」
「野郎共に至っちゃ全員静かだっただろ……」
「……そう、だったかな?」
「まあ慶だ隣の人だは論外だがな。くっくっく……全員、梅子の躯付きだけ見て、興奮していたんだよ!!」
「……え?」
「どうだ。酷いだろ、野郎なんざそんなもんだ。だから二度と関わるな。男嫌いになれ梅子」
「……なる」
「よし。俺は……」
「斉志は全っっっっ然、違う!! 同じになんかしないで!!」
「当然だ。ほら、脚。もっと開け。塗るからな、ここにも」
「……っせ、いじぃ……は、甘いの好き?」
「梅子が好きだ」
「甘い食べ物、好き?」
「梅子が好きだ」
「……ちゃんと答えて」
「甘いと言ったら梅子しか思い付かん」
「じゃあなんでクリームとか、チョコとか……」
「んなもんついでだ」
「じゃあ……」
「なんだ。俺の愉しみ奪うのか。梅子そんなことしていいと思っているのか」
「……思ってない!」
「当然だ。さて食うぞ。食って食って喰いまくる。安心しろ、今日ばっかりは焦らさんでヤる」
「いつもそうして……」
「厭だ。俺の愉しみを奪うなと言ったろ。いいから俺の思う通りによがっていろ」
「……斉志の……」
「うん?」
「……斉志のばかーーーーーーーーーっっっっ!!!!」
「! っは、はーっはっは! やっと言ったな梅子、それが一番の本音だ! そうだ、俺はばかだ、やっと分かったか梅子!!」
「ばか、ばか、ばかばかばかーーーーーっっ!!」
「もっと言え、っはっはっはっは!!」
「ふんだ、わたしのばかには敵わないもん!! こればっかりは、放っとくからね!!」
「なにを言う!! 俺は梅子に放っとかれる覚えはない!!」
「イヤ、だーーーーっっ!!」
「俺の思う通りだろ梅子!! 俺の言うこと聞け!!」
「聞くもん!! もう、もう、……お墓に入っても好きにして!!」
「するに決まってる!! 脚、閉じるな!!」
「すけべ!!」
「それは梅子に負けん!!」
「もう、もう、もう!!」
「ああ、もうなんでも好きだ!!」