秋 サッカー部くん

 俺があの代金を払い終わったのは半年後。夏休みなんて丸潰れ。仕送りよか多く稼いでなおこの日数が必要だった。毎日毎晩早朝バイト。何種類やったか憶えてねえ。遊ぶ? なんだそりゃ。講義すっぽかし多々。もう代返もききゃしねえ。
 テツの野郎のことは調べるつもりなんかなくてもヨコミミで色々入って、それで知った。京大の名物男とお近づきになれりゃいいことあるとかないとか。大学内じゃテツと知り合いだなんて言えやしねえ、逆に縋り付かれそうだ。
 あのさあ、あんたらそんなにヒマかよ勉強しろや……。
 そんな時テツから電話が入った。丁度借金を払い終わった直後だった。切ろうと思ったが止めた。後が怖い、じゃなくて無い。そういうやつだ。
「トーモ」
「で? どこに居るんだ」
「トモの家」
「言っとくが俺はもう二度とバイト漬けなんかしねえぞ。たまには休ませてくれ。テツはいいかも知れねえがな、俺はこっちの講師に睨まれまくってんだ、世渡りヘタクソなんだよ」
「そ」
「まさかメシに一服盛ってさあまたいわしたるとか言うんじゃねえだろうな」
「なんで分かんの」
「あのさあ。なんでそんなに俺の人生を滑降させてえんだ? 俺はテツの頭脳に追いつく気もねえんだよ」
「ま、とにかく帰って来たら?」
「……なんだよ」
「いいからいいから」
「出張サーヴィスとか勘弁だからな」
「なんで分んの」
 電話をドンガリ切ってやった。鍵と携帯の番号を変えた。その翌週俺の家でまた寛いでいやがった……。
 その後、俺は実感として知る、いや、直に分からされる。バイトしまくって返せる借金の額なんかまだいい方だとか。実印を作らされたとか。保証人たって連帯が付くと付かないとじゃ大違いだとか。テツはそもそも自分で汗水たらして借金返済なんかしちゃいねえとか。全部女その他に払わせているとか。テツだって講義にさっぱ出てねえが、なのに成績は実力で極上だとか。峠で競ったら毎度同着だとか。それでも一所懸命こさえたフツーの女と付き合っている時は家宅侵入な野郎はいねえとか。振られると翌週誰かさんが部屋で勝手に寛いで冷蔵庫が空になっているとか。ほんで気が付くと請求書が束で回って来やがるとか。毎度その額は半分コだとか。その日中に俺がアスファルト焼けになっているとか。
 ……ひょっとして一番ヒマなのテツじゃねえ?
 っつってやったら、そ。の一文字だけが返って来た。
 なんで毎回こうなんだ? いつもどっかで道間違えてら。そういやガキの頃、お前はイバラ道を自分で行くタイプだとか言われたことがあるような、ないような……。
 考えんのは止めだ、いいことねえ。なにせ借金は七ケタになってやがる。こんなん親に言えっかよ。あーあ今日も額に汗して稼いだこの金、毎度な借金取りのおっさんにふんだくられんだろうなあ……。なにやってんだかなあ一体……。