一月六日 月曜日

 わたしは朝、起きると成田くんに電話した。
「生理、おわりました」
 もう何度目だか分からない報告を短くする。
「……そんなに怒るな」
 鮮やかに蘇る去年の仕打ち。忘れていませんよ成田くん……。
「今日、俺今から梅子の家に行くけど。明日からは毎日来て」
 もうすぐわたし達もなる、今の高校三年生と言ったら入試でそれどころではないというのに。成田くんはひとり余裕なのです。
 勿論、それだけ普段から努力しているってことだけど……
 大学受験しないわたしだって、センター試験の当日学校で全国模試がある。その勉強をしなくちゃいけない。毎日なんて無理です。
「大丈夫だ梅子、安心していい。冬休みがおわって一週間はいつもの通り試験勉強に充てる」
 確かに冬休みがおわって一週間後に模試ですが……
 ですが……
「毎日来て、梅子。冬休みは夏休みと違って短い」
 ……
「来て、梅子」
 ただ、ハイと言いました。
 けど。
「じゃあ、その代わりに」
「なに? 梅子。この間みたいに裸になりそうな野球拳なぞ駄目だ。だが、ものにもよるが梅子のお願いは聞く。なに?」
 わたしは、うんと甘えてお願いしました。
「毎日、腕枕、して」
 この言葉に、成田くんはことのほか喜んだという……。

一月十三日 月曜日 夕方

 一週間後にセンター試験をひかえ、緊張が包む校舎を後にした斉志は、梅子と自転車置き場で別れてから一路、自宅へと向かった。
 家に着くと、鞄を置き、着替えを済ませ、三軒隣の西川宅へと足を向けた。学校では話せない内容だ。つまり──奴の話。
 斉志は、田上の進路先を校長室で訊き、その通りを遼太郎へ報告した。結果は、
「そうか。奴も自分の人生を優先させたか」
 田上の三年のクラスは国立文系。梅子とは別、斉志と同じ教室である。
「監視も出来る。好都合だ」
 斉志は思った。おそらく奴は一人先に座っているであろう、窓際の一番後ろへ。僅か数ヶ月後の未来まで見えるようだ。勿論斉志は逃げはしない。そうなったらそうなったで、じき前へ座ってやる気である。
「ま、俺様も受験戦争に突入だ。おベンキョに邁進する所存よ。斉、部活は夏休み前までやるが、それ以降は店仕舞いだ。それでいいな」
「ああ」
「おーし。もォぜーんぶ勝手にやってろ」
 遼太郎は全てを斉志に任せた。去年の今頃なら考えられないことで、遼太郎も斉志の成長を感じ取っている。勉強に余裕のない自分。環のこともあった。梅子と斉志のようには進展していない二人の仲。遼太郎は、もう自分以外ではなく自分自身を見つめなくてはいけない時期だった。
 斉志としては、将来の義父に多少いちゃもんを付けられたものの、肝心の梅子の態度に満足していた。梅子がさぼる筈もない試験勉強期間はともかく、冬休みも毎日来てくれたし、梅子について不安に思うことはなかった。問題は奴だったが、それも梅子と教室は別。年も改まった、十八歳になればすぐ。斉志はそれだけを考えていた。