十月七日 2B

 今の時期、ホームルームは体育祭の話になる。わたしは、成田くんに事前に、今度の体育祭はA高生だけでメンツが揃わないので、バスケではなく個人競技に出ると教えてもらっていた。
「体育祭は合同と違ってクラス単位で行動するから。俺、梅子に見て欲しいけど。クラスメイトの方針を優先して」
 と。
 クラス委員のリーダー君と祥子ちゃんが壇上に立って話を進めた。まずはリーダー君。
「えー、野郎ドモは人数多いので、テキトーに決めようと思うんだけど」
『異議なーし』
 男の子の声って、揃うとほんとにダミ声だなあ。
「競技の種類は、っと。さすがに合同よか数少ないな。バレーバスケサッカーテニス野球卓球柔道剣道、ってとこ。バレー希望の人ー」
『うーす』
「えーと、坂崎、井知、俺。バスケはー?」
 バレーは六人必要なところ、三人しかいないみたい。リーダー君が、人数はともかく次の競技の希望者をつのる。
「ハーイ!」
 手を挙げたのは西川だけだった。
「ってアレ? 俺だけ? 斉、お前出ねェのかよ」
 西川の問いに、成田くんがよく徹る低い声で答える。
「個人優勝を狙っている。剣道だ」
「ッカー、また自分だけ目立とうと思いやがってーー!!」
 バスケ希望が西川しかいないようなので、リーダー君が西川に、
「じゃ悪いけど遼太郎、団体競技に一人は無理だから他をあたってくれ。ああ、バレーなんてどうだ? こっち三人しかいないんだ」
「来れば? 遼太」
 隣の人こと坂崎君が、前を向いたまま、大歓迎とはほど遠い口調で言う。
「……なーんか引っ掛かるが。ま、そうするか」
 西川ってバレーも出来るのかな。出来るか、わたしよりは確実に……。
「サッカーは?」
 リーダー君が次々と競技ごとに出るひとに挙手させる。
「ひーふーみー……結構多いな。十三、か。野球ー。っと、八。卓球ー。ス○イルにペ○の二人。柔道ー。無し? 対戦相手野郎だもんなー。テニスは? なに、半ズボンは勘弁? 誰も見ないって。剣道、は成田な」
 ところかわってこちらは女子。祥子ちゃんが話をすすめる。
「女子は十二人しかいないから、競技は出られても二つだと思う。あ、個人戦に出る人いる?」
 誰も、はーいやります! と言うひとはいなかった。
「競技ってさ、団体一つだけ、でもいいんでしょ?」
 女子の声に、祥子ちゃんが答える。
「うん、そうだね」
「競技に出ないでどっか応援行こうって気だな?」
 もう一方の女子が鋭くツッコミ。
「それもあるけど楽したいっていうか」
「折角なんだから目立つとかさ」
 わたしは、
「ウメコは見ている係?」
 と訊かれた。
「その方が……いいと……」
『そうだね』
「……全員声を合わせなくても……。あ、でもちゃんと応援はするから」
 すると、女子の一角からこんな声。
「あ、やっぱあたしもそうする。合同と違ってさ、なんかクラスのみんなでなんかやるってのもいいじゃん」
「だよね」
 結局、女子は個人戦に出るひとはいなかった。男子はというと、
「じゃあ人数調整だ。サッカーは決まりだけど多い。野球はあと一人、バレーあと二人」
「じゃ俺野球行くわ」
「んじゃ俺も」
 とかなんとか言って、一応話はついたみたい。
 女子はバスケ一種目しか出ないことに早々と決まったので、ホームルームの時間が余った。だからかな、わたしは女子からちょっとした質問を受けた。
「ね、ウメコ。会長さんの応援に行かなくていいの?」
「うん」
 わたしの返事に、みんな驚いたようだった。
「え? うん、って……。いいよ、出ない人ウメコだけじゃないし。遠慮しないで行って来ていいよ。ねえみんな」
「そうそう」
「こっちは気にしなくていいからさ」
 けど、わたしは成田くんに事前に言われていたから、その通り伝える。
「ううん、ちゃんと応援する。あのね、大丈夫。みんなによろしくって言っていたから」
「……いいの?」
「うん。クラスの行事だもん、みんなと楽しみたい」
 すると、みんなすんなり分かってくれた。
「とは言っても実際の競技は全然協力出来ないんだけど……」
『そのへんはまるで気にしなくていいからね!』
 声を揃えて言わなくても~~。
「お、お任せしますっ」