五月三十日 木曜日

 今日はいよいよ第二回合同祭、お祭りの始まりです!
 A高第一校庭、ひな壇に上がるは我が親友、佐々木明美。 両脇に成田くん、和子を従えて、開始の合図を叫ぶ。
「おっ始めるぜ!!」
 わたしの体調? もう万全、絶好調! 生理でもなし、ばっちりオッケー! 今年は去年出来なかった、髪の毛をポニーテールに、もあすみの協力で出来たし! 今年はやるぞ!!
 わたしは要綱を持っていない。全部成田くんが覚えているから。そして、成田くんから教わったから。
“俺、バスケやるだろ? 仕組んだんだ……バスケとミニサッカーの時間が重ならないように……試合がない時は第一体育館へ来て? 梅子”
 だそうです。仕組んだって……成田くんらしい。
 なーんて言ったらどうなるか分からないわたしは、人・人・人、何百人もギッシリ埋まっているであろう、鈴なりの第一体育館の一等席に座っております。
 そう、出場選手が座るイスへ!
 本来、ここには控えの選手も座るのだけど、控えといえば鳴海くん。けど本人はバスケには全く興味がないらしく、名前だけバスケの控えに登録しているだけ。そんな席に、わたしはちょこんと座っている。
 こんなすごい特等席、いいのかな、なんてもう思わない!
 試合が開始される。メンバーがスタートラインに並ぶため、席を立つ。
 お祭り男ズくんはわたしに、よっ! と声を掛けて。慶ちゃんはわたしの頭をくしゃっとして。西川はわたしの頭に大きな手をぽんと置いて。
 そして成田くんは、わたしのほっぺに手を添えて。
「飛べなくなっても見ていてくれ」
「……うん!」
 そして試合は開始する。これがお祭りの──始まり!

 試合結果は百対零。ものすごい結果です。勝ったのはもちろん白二年Aチーム。わたしは、勝って来たひと達五人をハイタッチで出迎えた。
 成田くんの格好よさったら、もう!
 なーんであんなひとがわたしの婚約者さんなんだろう、ううん、わたしなんて関係ないや、というくらい飛んで飛んで飛びまくった成田くん。わたしはよく分からないから成田くんの解説をちょっと戴いて説明すると、パスを貰って即ダンク、だそうです。そういうことばっかりしていたそうです、西川と競いつつ。
「さァって次はテメェの番だなァ」
 こう言う西川も、成田くんも慶ちゃんも木村くんも竹宮くんも試合終了後、第一体育館には留まりません。わたしの競技のある第一校庭へと靴を履き替えて向かいます。
 わたしはその途中、成田くんにお姫さまだっこで連れて行かれるのだけは勘弁して貰いました……えらい自分。
 さて次はわたしの出番です。明美やタカコ、あすみ、朝子さん、お千代、とわたしの友達がゴロっと揃う白二年Bチーム。これがわたしの、お祭りの始まり!

 ……結果? 訊くのですかこのわたしに?
 ええ勝ちましたとも。明美の奮闘で。わたし? ええ足を引っ張りましたとも。間違えて敵さんに二点も献上してあげましたとも……。
 これを観てあきれなかったのは成田くんだけ。コロコロも出来ないわたしを観てなにが楽しいというの……。あとはチームメイトさん達も、脇で観戦するマコも西川もあきれていた。
「テメェ、逃げ足は速ェだろうが……。特技と成績のとことん結びつかんやっちゃなあ」
 うう……。すみません西川師匠……。
「度胸は管内一だぜウメコ、それは認める」
 うう……。ごめんなさい明美さま……。
「もしこの姿見ていたら、あたしウメコに付いて学校に戻らなかったかも」
 うう……。そんなこと言わないでよマコさーん……。
「頼むから顔面だけは勘弁してくれ……」
 うう、余計なお世話、だ。

 その後は成田くんのうんと格好いいプレイっぷりを堪能してお昼です。なんと言ってもスポーツは観るに限ります。いいプレイを観た後はお昼……。
 去年、ぶっ倒れてしまったわたし。ましてこんな足引っぱりをしていて立場が弱い悪い。いつもこうなわたし。
 だから本来、わたしには関係ない、運営テント下なんかに座っていて。成田くんの上に。
 ……。
 その体勢で、はい・あ~ん。
 ……。
 ええ、しました自分から……。
「梅子……、そんなに俺のこと誘いたい?」
 いやそうではなくて!
「ああああの、そのこの体勢は、その、た、たたた……」
「二人っきりじゃないだろ……? だから、いい」
 日本語おかしいです……。
「濡れたら言って?」
 無理です。
「梅子、……チューも駄目……?」
「だっだっだっ駄目ぇーーー!」
「俺、もう我慢出来ない……」
 ひッえーーーーーーーーー……

五月三十日 木曜日

 運営テント下には、なにも梅子と斉志だけがいるのではない。明美も、この三日間の全指揮権を持つ和子もいた。
 この二人が、その場で互いに呟いた。
「あの二人……なぜ、ああなのかしらね」
 余人には、なぜこうも人前で暑苦しくいちゃつくのか、くらいにしか聞こえない。
「しょうがないだろ……」
 余人には、もはや誰にも止められない、くらいにしか聞こえない。
「もう……見えているのね」
「ああ。最初っからな」
「どうしようも……ない?」
 和子に最も似合わぬ台詞だった。
「手ェ出せないだろ?」
「そう……ね」
「そういう和子はどうなのさ」
「そういう……明美は?」
「あたしは管内一の佳い女ァ! こんなガキどもじゃ相手にならないって! で?」
「ちゃん付け……このあいだ、出来たわ」
「はっは~ん、あんた十八歳になったんだもんな、それにしても四月に教習所へ通うってどうよ。来年どうするんだ。あんたも東京だろ?」
「首に……縄を付けて引っ張るわ? 公務員ですもの……役所はどこにだって、あるわ」
「あっそぉ! まァ頑張れや、あんたらしくて涙が出るよ!」