十二月九日 日曜日

 今日も今日とてお邪魔しております成田くんち。
 ところが、明日は三者面談だからと、お昼に帰されました。驚きです。
 けど。
 ──分かっているだろうな梅子……。
 と。
 躯で言わされました。ええ言いましたとも、クラスはわたしの自由な意志で決めてよろしいです、と……。

十二月十日 月曜日

 本日から三日間は三者面談の日、である。
 そんななか、A高一年F組では朝もハヨから次のような会話があった。
「今回は最初から三十八名しっかり全員集まったな」
「立ち番しとく」
「頼ま」
「始めるべ」
「こうして朝もハヨからこそこそ集まってもらったのは他でもねえ。例の件だ」
 サッカー部くぅんの髪型は、さらに伸びたのでちょっと切った。これからは大体このくらいの髪型であるが、面倒なので以降もツンツン頭と称すことにする。
『ああ』
『クラス分けだ』
 あうんの呼吸は、すでに“ああ”だけではない。
『……』
「人生の別れ道だ」
『ああ』
「あたし文系」
「俺理系」
「ま、大体女が文系で男は理系なんだが……」
「え、え、え、あの、どうして私が三十七人の視線を一身に浴びなくちゃいけないの?」
 柊子ちゃんは周囲の視線にうろたえた。
「頑張れ小松」
「負けるな小松」
「どうして……あ、阿っちゃん!!」
「ひーえーそればっかりはご勘弁をーーー」
 今度は阿部の番のようだ。
「ず、ずるいー。私前に重責を担ったから、次は阿っちゃんでしょう!」
「ひーえー、どうして今度はあたしが三十七人全員の視線を一身に……」
「頑張って阿部さん」
「負けないで阿部さん」
「ささっと文系か理系かって訊くだけでいいから」
「だけって……もう、どういうふうにすれば……」
「阿部さんは文系? 理系?」
「文系だけど……」
「じゃあ、来年も同じクラスになれればいいね、あたし文系だけどウメコさんは? とか訊くのはどう?」
 柊子ちゃんがアドバイスする。
「そこまでさらさらセリフが出て来るんなら柊子ちゃんが……」
「前もやったから、次も私じゃわざとらし過ぎると思うんだ」
「くうぅ……し、しょうがない。こうなったら阿部時子、初っ端の責任取らせて戴きます!」
 阿部が拳をぐっと握った。
「よっ、姐さん!」
「大統領!」
「ああ、昨日極妻観たのが悪かった……」
「そういう問題か?」
「よし、じゃあ阿部、頼むな。結果は放課後、斉藤が教室を出たあたりで皆で訊こう、コソコソと」
 サッカー部くんがいつものごとく場を仕切る。
「その時大声上げたり真っ赤になったり真っ青になったりバレバレな反応しないようになー」
 坂崎が言うと、サッカー部くんは即反応した。
「全くだ」
「俺達も気をつけないとな」
「そ、そうだよね」
 自分達ならしそうだ、と周りの皆はそれぞれ思う。
「っつうか、まず阿部だ。悪いがそれにだけは気をつけてくれ」
「そ、そ、そうだね……し、仕方ない、こうなったら阿部時子、詰め腹切らせて戴きます!」
 阿部が握りこぶしを握ると、誰かが言った。
「いつからこのクラスはこんなノリに……」

十二月十日 月曜日

 本日から三日間は三者面談の日、である。
 そんななか、A高一年F組では斉藤梅子が部活へ出た後次のような会話があった。
「今回は参加最多人数だな」
 なにせ他の三十九名全員は単に席に着いたままである。
「立ち番しとく」
 いつもは立ち番は前扉にはりついているものだが、今日は後ろ扉へと向かった。臨機応変である。
「頼ま」
「始めるべ」
「こうして放課後こそこそ居残ってもらったのは他でもねえ。例の件だ」
『ああ』
「阿部。結果を発表してくれ」
 サッカー部くんの司会に、阿部の阿っちゃんは緊張した面持ちで結果を述べる。
「おっほん」
「その前にー」
 坂崎が横やりを入れた。
「なんだ?」
「聞いたら無言で即解散、三者面談のやつはテキトーに残る、明日からの営業も平常運転、ということで」
 言われた皆は顔を見合わせ、言われた意味を反芻する。
「……だな」
「そうだね」
「よし、そうしよう。皆、いいか、コソコソと散ってくれよ。じゃあ阿部、言ってくれ」
「えー、おっほん。発表します。例の件は……」
 その後、皆は無言で即解散した。なお翌日以降、授業態度は野郎が少々平常運転とはいかなかった。右隣のやつを除いて。