十月二十日 土曜日 斉志 自宅

 先週、照れ屋の梅子が自分から俺にもたれ掛かって来た。あんなにはしゃいで……空元気。
 ほっとかないと言った梅子を一人にした俺。俺のいないところで泣いた梅子。
 それでも梅子は俺を許す。俺に謝れと梅子から言って来た。あの梅子が、それでいいと。
 なんで俺に、あんな奴をのさばらせてなにも出来ない俺に、そんな甘いキスをする? 俺、梅子をずっと一人にして……、泣かせて、それでどの面下げて。
 ゆっくりと。決して焦らず。梅子が厭がること二度としない。
 俺が脱がせた。腕時計があるだけ、お互い裸。梅子が俺を押し倒す。たどたどしくキス、……舌まで入れて来た。それから喉、鎖骨、……躯の真ん中を唇、舌が這う。腹、その下……梅子、そんなことするな、俺、もう……。
 梅子から、……咥えて来た。まだ……一回目。
 喉が鳴る。思わず梅子の頭を押さえ、奥に俺を押し込める。も……飲んで、欲し……。

梅子

 成田くんのうた、うんと上手くて……もう、聞き惚れていた。ほかの音がまるで耳に入らなくて、あんな瞳でわたしを見て、あんな近くでわたしを見て、あの場で抱き締めたかった。躯が痺れて、もう他になにも見えなくて、聞いていたくて……。
 逢いたかった、ずっとずっと一緒にいたくて、もう自分なんかどうにかなってもいいって思って、もう今……。成田くんがぐいって頭離さなければ、……のんでた。

斉志

 許されていい筈のない俺。忍耐でも我慢でも無く自制した。俺ではなく梅子が暴走している。うんと照れ屋の梅子が自分から。
 俺はバカだ。徹底的にバカだ。もう二度とあんな真似はしない。絶対離さん。
 俺……をあやうく飲み下しそうになった梅子を引き剥がし、キスで気付かせる。お返しだ、俺は梅子を全部貰う。

梅子

 斉志がわたしの口全部、そのまわりぜんぶを満たす……斉志ごとわたしを蹂躙する。もう唾液も舌も全部とけて、わたしも舌を絡め返す。ふたりで全部飲み下した。あとは押し倒されて、おんなじことされて、だからわたしもおんなじこと。わたしの濡れた……それごと舐め下す。

斉志

 その後いつもより長く眠った梅子。意識のない内風呂に入れた間も眠っていた。ベッドで自然に目を覚ました梅子はもう大分落ち着いていた。梅子はそういうところがある。眠ると安心するんだろう。言うと、嫌われはしないだろうが……赤ん坊みたいなところがある。
 それも可愛くて、……あんな格好は二度と見せん。俺の前でだけすればいい。
 遅めの昼飯をはい・あ~ん。時間も時間だ、押し倒しはせず厭々帰した。
 明日から中間試験の準備期間。これでまた余分に上げれば奴らの思う壷。予定通りの幅で上げる。一番は最後に取ればいい。
 俺が梅子に勉強を教えられればそれに越したことは無い。だがやはり教師共は下らぬことを考えていた。俺のお陰で梅子の成績が上がったなどと……そんなもん、当人の努力のみに決まっているのに。まあいい、理性も持たん、試験期間中は厭々我慢してやる。梅子は俺を避けたりなどしない。遼の、……おそらく最初からではなかろうが……本気を見て来た梅子。試験に集中してくれればいい。梅子はそれが出来る、俺は梅子を信じている。

梅子

 よく眠ったみたいで、気が付くともうお昼を過ぎていた。梅子、一緒に歯を磨こう、って。やさしい声で。あんな瞳で。……わたし、心配させちゃった。
 ふたりで歯磨き。ごしごし。こうして並んで立つと、成田くんの足の長ーいのがよく分かる。ぴっと、立ち居振る舞いというか、姿勢もきりっとしていて。
 どうしてこんなひとがわたしを、なんてもう思わない。
 隣にいるとほっとする。
 ……逢えてよかった。
 美味しいお昼をいただいて。そのあとソファで、成田くんの上にわたしが乗って。しばらくずっとそのまま。腕をまわして、時間までそのまま。
 少し、……わたしも料理しようかな。けどいまは試験に集中しよう。心配させちゃいけない……。