九月二十一日 金曜日

 わたしはこの高揚感から抜け出すことは出来ないと思う。痺れる程のわずかな時間。日暮れになるのがたまらなく厭だった。もっとずっとここにいたいのに、日頃の行いが悪すぎて、さっさと帰らされてしまうわたし……。ぅぅ。
 ふたりは本当に相棒なんだ。
 昨日はもう、地に足が付いていないくらいの感覚だったけど。
 よく考えてみればわたし、せっかくあんなとんでもなく集中しているふたりの邪魔している。わたしがいなければあのふたりのこと、それはそれはとんでもなく凄いことをやってのけるに違いない。いない方がいい、きっと。

 帰宅して、部屋で着替えをしていると、成田くんから電話が掛かって来た。
「梅子。俺、明日からバイクで迎えに行くから。梅子の家の近所に公衆電話があるだろ。そこで朝九時に待っている」
「……」
「まさかあの狭い個室に野郎と二人で篭れなんて言うんじゃあるまいな梅子」
「……」
「俺は梅子の部活の邪魔しない。……俺がいるのは厭?」
「……そんなことない」
「俺のこと……嫌い?」
「好き」
「俺、待っているから。来て」
「……うん」
「月曜は厭々我慢する。けど明後日も来て」
「……うん」
「梅子。バイクのリアシートはスカート駄目だから。俺以外に絶対見せないで」
 ……そ、そうします。
 成田くんは本部と言ったけど。その本部に他の生徒会役員が来た試しがない。成田くんが本部とやらで生徒会長さんらしいことをずっとしていたのは選挙があった日にそれっぽい本を読んでいただけで。
 全然、部室が本部である必要、ない。
 けどわたしは仮な部員。正式部員さんには散々お世話になっているから文句も言えない。
 生徒会長さんには散々、躯で……。
 ……。

 秋になりましたので。
 文化祭シーズン、です。

九月二十五日 火曜日

 部活終了後。
 成田くんと並んで歩く。それぞれの下駄箱を経由して、自転車置き場とバイク置き場まで。
 その時、成田くんから言って来た。
「俺、文化祭まで生徒会の分室へ行っているから」
「そう……なの?」
「うん。俺、梅子のクラスに迷惑掛けただろ。だから文化祭、梅子のクラスへは行かない。俺、また理性無くなる。行けば梅子に抱きつくから、行かない。梅子のクラスのみんなによろしく言っておいて」
「……うん、分かった。お仕事、大変だね。わたし邪魔しないから。あ、あのね、わたしもその、いろいろクラスで手伝うこととかあると思うし」
「ああ。じゃあ梅子、その……土曜日に」
「……うん」

九月二十八日 金曜日 放課後

 西川へ電話するときは成田くんの許可が必要。けど成田くんは忙しい。ここは学校。だったら言いに行けばいい。部活を休むときは事後でもいいから言えばいい。休む前に言えばなお問題なし。ちゃんと言えることだもの。
 部室の扉を開けて開口一番こう言った。
「失礼します。西川、来週月曜日から文化祭まで部活を休ませて下さい」
「んあ? ほー。テメェ、クラスでなにかやるのか?」
「うん、手伝いを少々」
「そうか。ナニをやるんだ?」
「まだ決まっていないけど、多分裏方さんとかになると思う。えっと、飾り付けとか。全部これから決めるんだけど」
「あっそ。ま・どうせ俺の耳にも入るからな。せーぜーメーワク掛けんなよ」
「うん。勉強でも運動でもないし、大丈夫、だと思う」
「どーかねェ」
「うっ。うー……ほら部活!」
「おう」