七月十四日 土曜日 斉志宅

「そう、梅子。頑張るんだ」
 ……。
「そんなに俺を誘いたい?」
 ……。
「梅子のお願いじゃあ応えないわけにはいかないな。けど今梅子妊娠したら結納の着物大丈夫かな。ああ、俺が直せばいいか。俺着付け出来るから、安心していい。梅子」
 ……。
「大丈夫、校則変えるから。育児時間を設けよう、授業中に」
 そんな高校聞いたことありません……。
「俺も生でしたかったんだ。ちょうどいい、なにせ梅子のお願いだからな」
「あの……」
「金のことなら心配しなくていい、梅子。俺株とかやっているから。通帳の残高、見る?」
「その……」
「俺のことなら気にするな、きっちり東大へ入って公務員試験と司法試験を通るから。皆追い抜いて出世する。もうマンションの目処付けてあるから、なにも心配しなくていい」
「成田くん……」
「斉志。子供の名前はどうする? 梅子と俺の名前とる? 梅子なにかリクエストない?」
「……斉志……」
「ああ、時間が勿体無いな。さ、今直ぐ」

 ……なんとか勘弁して戴きました。
 躯で。
 ……。

「酷い梅子。俺に期待持たせて」
 ……。
「夏休み、模試までは厭々我慢する。けど二十二日は来て。八月の土日も来て」
 ……。
「安心していい。生でやらないのは結婚前だけだ。結婚したらもうリミッター無しだ。絶対どこへも出さない。ずっとベッドに縛り上げる」
 ……。
「梅子、パジャマもいいけどネグリジェとか着て。俺、見たい」
 ……。
「裸エプロンとか……したくない?」

 結局、夏休みは週末休む、というわたしの拙い計画はパァになりまして。ネグリジェとエプロンはどうも必須らしくて。
 ……。
 口は災いの元、という諺を厭というほど実感しました。躯で。
 ……。

七月十五日 日曜日 斉志宅

 お昼を作ろうというのです。それはいいです。ええ、昨日が昨日なので、とても朝早くは起きられません。だから今お昼なわけで。
 ……。
 成田くん……。そんな顔しないで下さい……いい男が……いい男が、そんな小っちゃいヒラヒラレースのエプロン嬉しそうに見せびらかさないで下さい! そーんなもの、そーんなものー。
 ……しました。ショーツ、返してくれません。それだけじゃなくて他の服一式も。
 ……。
「ネグリジェの上からエプロンはないよな梅子。さ、今直ぐ」
 ベッドの上でエプロンを着けて、一体どうやってお昼を……。

「ごめん、お昼まだだった。つい俺だけ先に梅子を食べて……今度こそ二人で一緒に食べよう?」
 こんなスケスケのネグリジェ着て、しかもベッドの上でお昼って……。
 ……。

七月十六日 振り替え休日 斉志宅

 今日は午後に来ました。
 もう無理です。夏休み、連続は駄目と言ったけど正解だった……毎日なんて言ったらもう……。
「ごめん、梅子……俺、俺つい浮かれて……俺のこと嫌い?」
「……好き……」
 けどこの台詞は前にも聞きました。
「俺厭々我慢する。夏休み、一日置きで我慢する。本当は毎日ここへ縛り付けるつもりだったけど……梅子、一緒に海へ行こう。二人だけで。もう水着買ってあるから。着て」
 いつの間に一日置きになったんでしょう成田くん。昨日に引き続き着せ替えショーです斉藤梅子さん(十五歳)。
 その間、ただ着替えたわけでは、なくて……。
 ……。

「ごめん、梅子……俺、俺つい浮かれて……」
 さっきも聞きました。
「このままだと二人だけで海なんて、俺海の中で梅子を襲うかもしれない」
 あり得ます。
「大丈夫だ梅子。プールにしよう。一日中借り切って、そこで思う存分しよう」
 ……無言で成田くんの家を出ました。

七月十六日 振り替え休日 夜

 電話の向こうのひとが泣いているのです。こんなことは前もありました。けど今回はわたしが遠慮しない。
「ごめん……梅子、ごめん」
「……」
「俺のこと嫌い? 俺、梅子と二人っきりになったら理性ない、服脱がせてそれからのことしか考えられない、それで梅子がまた倒れたりしたら俺もう、もう……」
「……」
「嫌い……?」
「……好き。あの、斉志」
「うん……?」
「泳ぎに行く時はみんなで行こうね」
「……」
「斉志と一緒じゃないと行かない。けど行く時はみんなで行こう」
「……」
「……いい?」
「絶対浮気しないで」
「うん、しない。絶対しない。わたしのこと信じて、斉志」
「信じる、梅子。だから俺のこと嫌いにならないで」
「ならない。絶対ならない。好き、斉志」
「……ほんとに?」
「うん、本当。だから、泳ぎに行く時は……あの、わたしの家の近所にいい場所があるの」
「……浮気現場?」
「斉志!!」
「……ごめん」
「そこだと家の近所だし、その、泳ぎおわっても……すぐ休めるかなと思って」
「……ならいい」
「……よかった」
 よかった、今日はうんと話が早く決まった。こういう場合はもう朝方まで、と思っていたのだけど。このあいだ成田くん、遅くまで起こしてごめんって言っていたし、ちゃんと話せば分かってくれる。
 ……これからお願いは電話で言おうかな……直接逢ってしかも二人っきりなんていうともう躯が……その。
「しょうがないから厭々我慢する。梅子の為に我慢する。けど日曜は来て。絶対来て。俺梅子の躯中にキスマーク付けるから。絶対誰とも浮気させないから」
 そればっかりは勘弁を、と言おうと思ったのに、長電話でまた遅くまでなんて駄目だから来て、って言われて先に電話を切られて。直接逢って言うしかなくて。
 躯が……ぅぅ……。