六月十一日~十五日 部室

 背後から、集中して自分を見つめる。いや、モニターを見つめる。

 こいつは基本的に静かな女だ。集中すれば邪魔はせず、時間になって帰れと言えば素直にすぐ帰る。反論してきたのは、部活があって当然の日で、なのに放課後早々に帰らせたあの日くらいなものだ。
 部活と言っても、マシンに触らせてもいない。モニター横に並ぶ本はこの女にはまず読めまい。それでも一切構わず集中して俺の作業を見る。ネットに接続しているわけでもなければ家計簿だの絵だのゲームだのをしているわけでもない。難解なソースが並ぶだけのウィンドウを、この女はただ静かに見つめている。

六月十五日 金曜日 梅子帰宅後

 自転車で家へ帰り、部屋着に着替えて、母ちゃんの夕ご飯の支度をしていると電話が鳴った。携帯じゃない、黒電話の。
 高校になってからというもの、このくらいの時間の黒電話にはわたしが出ることになっていた。父ちゃんは電話に近い居間にいたけど、当然のように電話には出なかった。
 わたしが台所から居間へ出て来て、電話を取った。
「はい、斉藤、です」
「……あの、西園寺と申します……」
 環からだった。

 用件は、わたしと会いたいということだった。どうも学校では駄目らしい。でも、土曜はわたしが駄目なので、じゃあ日曜の午後に、環の家で、ということにした。
 最近は、わたしが電話口で誰と喋っても、父ちゃんも母ちゃんももう春先のように警戒したりしない。だからそれを利用して、掛かって来たのが環からだとは言わないで済んだ。
 あとはこれを成田くんに言って、いいと言ってもらえればいい。明日言おうっと。

六月十五日 金曜日 マコと環

 マコは森下和子の部屋で、和子の傍で電話を掛けていた。
「どうだった環」
「日曜、うちに来るって……」
 マコは当然、土曜を外した理由を知っているが環にそんなことは言わない。それだけで電話を切り、和子に、明後日は環の家に行くと告げた。