7

 勇ちゃんのお仕事が始まった。本当に疲労困憊で帰って来た。まさか本当にこの担架を使うなんて。家の中にストレッチャーが常駐しているなんて、確かにここはサラリーマンの家庭じゃない。
 勇ちゃんは誰が見ても疲労困憊で玄関ドアをすり抜けるとすぐに倒れ掛かった。必死になって押し止めた。その重さ、半端じゃない。力の限り必死で担架に乗せるのでまず一仕事。もうゼイゼイ息が上がっていた。ぴくりとも動かない旦那さまを浴室へ運ぶ。ここからが大仕事。
 ここには勇ちゃん専用の長椅子がある。ポリカーボネードとかなんとかで出来た特殊な特注品の、勇ちゃんの体にぴったり合った曲線を描く椅子。ここへ、疲労が蓄積された重い体を横たえる。勇ちゃんは意識がほとんどない、手伝っては貰えない。
 風呂場の中まで担架を入れる。この家はこの為の特注品だ、台所なんか後回しもいいところだった。勇ちゃんの疲労を回復させる為だけにここはある。一晩中なんて、勇ちゃんは私と結ばれるまで考えてもいなかったというのも頷ける。
 勇ちゃんを長椅子に横たえ、服を脱ぐ。それから勇ちゃんの服をはぎ取る。文字どおりはぎ取る。それからシャワーを浴びせる。よく体を洗う。椅子とあたっている体の後ろもよく。それから髪を。一切さぼってはならない、翌朝すぐに分かってしまう。丁寧に丁寧に、洗うというよりマッサージの感覚でよく洗う。
 それから担架に乗せる。勇ちゃんの体を拭き、担架を一番低くして、長椅子から転がす。それから浴室の外、脱衣室へ。担架の上半身のところを上げて、髪を乾かす。
 寝室へ勇ちゃんを連れて行き、ベッドに転がす。勇ちゃんはもう深い深い眠りに入っていて、ゆり起こしても目が覚めない。そこを無理矢理食べさせる。私がおにぎりを口に含んで、二・三噛んでから勇ちゃんに口移し。勇ちゃんは私のキスを無意識に受け入れてくれるからよかった。これも熱い新婚生活のたまものよ。でも、なかなか飲み込んではくれなかった。何度も吐き出されて、何度も再チャレンジした。おにぎり一個を食べてもらえるまで一時間はかかった。
 ようやっと一連の大仕事をおえる。大汗をかいた私は風呂場へ行ってシャワーを浴びる。さっきしなかった片づけをこの時する。それから寝室へ戻り、すっぽんぽんになって勇ちゃんに絡まって寝た。
 翌朝八時に鳴る目覚ましを止める。頭上にあるので、起き上がって床にはおりず、おふとんに脚だけ残して止めに行く。
「どこへ行く?」
 脚をつかまれ割り裂かれ、おしりを突き上げられてクンニされる。空子は朝のあンあン。
「時計……をっ……あン」
 なんとか時計を止めると、後は勇児の舌をマンコで堪能した。

 勇児の仕事が始まったのはおととい。その日だけは朝ご飯を朝つくった。その方がおいしいんだもの。そう想って、でも早めに目覚ましで起こすなんて失礼だから、五時頃に起きて寝室をそっと抜け出し、ごはんをつくっていたら旦那さまに大層怒られた。
「空子!! どこだ空子!!」
 台所でおみそしるの味を見ていたら、突然背後から大きな怒声がした。なにごとかと振り向いたら、想わず震え上がってしまう形相の勇児がいた。ここで会ったが百年目といわんばかりの勢いで、おおまたでドカドカと近付いて来る。そのまま殴り倒されてしまうと思えるほどだった。迫り来る勢いでつくられた爆風をぶつけられ、震え上がって微動だに出来なかった。
 勇児は私の目の前で止まり、私を殴り倒す勢いで手に持つおたまを取り上げた。
「何をしていた」
 睨み殺されるかと思った。震え上がって返事出来なかった。
「朝、俺より早く起きるな。俺が起こす」
 私は顔面蒼白になったという。がちがち震えて、歯が噛み合わない音がした。
「……ごめん。怖がらす気はなかった。ただ、俺より早く起きないで。一人にしないで。……ごめん」
 勇児は私の手におたまを持たせたようとした。でも私は手が恐怖で動かなくて、それを握ることが出来なかった。

 結局、その日大事なお仕事があるというのに勇ちゃんは、私のご機嫌を取るのに必死で時間を取られてしまった。いっぱいキスをしたというのに私のふるえはおさまらなかった。最後の手段とばかりにおマンコにゆびを這われたけれど、むしろ恐くてその……強姦される、なんて思ってしまった。ついつい、恐怖の悲鳴を上げてしまって、勇ちゃんを大層困らせた。私ってちょっとそういう、恐がりな傾向があるのよね。
 それで私は昨日から、勇ちゃんの時間に合わせて起きるいる。こうすると、朝ご飯はゆうべのうちにつくっておかなくてはならない。つくりたてを食べてはもらえないのだけれどもしょうがないわ。勇ちゃんを怒らせたくないもの。
 だから朝のクンニはベッドで。舌までなの。火をつけられて、うんとうんと悶えちゃう。

「良かった。怖がられなかった」
 性欲をもてあます空子と一緒に、勇ちゃんも寝室を出る。一緒に顔を洗いに行くのだけれど、勇ちゃんは申し訳なさそうに空子の後をついて来た。
「あんなのもうないわ。へんにこわがってしまってごめんなさい」
 まだ気にしている、勇ちゃん。
 空子の格好は、勇ちゃんのパジャマを上だけ着ている。あとでたくし上げるブラに、濡れてびちょびちょになるパンティを穿いている。勇ちゃんは自分のパジャマを下だけ、ぱんつなしで。
「恐いんだよな、空子さんは、俺が。……最初から、それで避けて……絶対触れさせなかった」
 ひくい小声でぼそぼそ言うのよ。空子の弱点な筈のマンコを嬲ったのに悲鳴を上げられたのがよっぽどショックだったみたい。
「違うったら。勇ちゃん、もう大丈夫よ、あんなことないわ。さ、顔洗って。ごはんにしましょう」

 朝ご飯のしたくをおえて、ソファに座りしな、いつものとおりぬるぬるのパンティをずりおろして、おっぱいをはだけてブラをずり上げて、おしりをナマで、しげみがよく見えるように勇ちゃんの隣に座る。
「いただきます。勇ちゃん、おマンコいじって」
 でも勇ちゃんはまだいじけている。お仕事の翌日で、とっても疲れているのに。
「空子さん。俺が恐い?」
 いじってくれない。もう火がついちゃっているのに。
 お仕事の翌日は、勇ちゃんがトレーニングへ行くのはお昼過ぎ。勇ちゃんは体が資本のお仕事をしているから、空子のように一食抜くとかしちゃいけない。必ず食事をとる。朝ご飯を食べて、空子を食べて、一緒にうたた寝して、一緒に起きてお昼をとって、空子に火をつけてから出掛けるって言ったのに。
「すきよ。こわくなんかないわ」
「最初は恐かっただろ」
「そんなことない。かわいくてかっこいいコドモだったもの」
「……子ども」
 ごはんを食べた。われながらいいお出汁よ。漬け物もいいあんばいよ。魚の焼き加減だってばっちりよ。でも旦那さまは、それどころじゃないみたい。
「空子さんにとって、俺は今でも子ども? ずっとガキ?」
 もう、まだすねている。
 勇ちゃんが私より歳下なのをずっと気に掛けているのは分かっているけど。結婚してから、もうそういうのはなくなったと想っていたのに。だめよねへんに怖がっちゃ。勇ちゃんを困らせてしまうわ。
「勇ちゃんにドキっとしたの、意識したのは勇ちゃんが声変わりした時だったわ」
 お箸を置いてお話することにした。ちょっとした告白だもの。
「背もすぐに追い抜かれたでしょう。はじめからハンサムさんで、きゃあかっこいいって想っていたけれど。あの時、ああ男のひとなんだなあって想ったわ」
 元からかっこいいのよね、勇ちゃん。背もこんなに大きくなって、がっしりしていて引き締まってとても好き。こんなおかめさんの旦那さまなんて、もったいないわよとっても。
「空子はあの頃、勇ちゃんにはもっといい人をって思っていたから避けてたみたいになっただけ。今はもういやぁよ。こんなおかめさんを好きだなんて言っちゃったのが運の尽きよ。諦めてちょうだい」
 どきどき告白をおえたので、照れ隠しにごはんを再開。ごはんにおみそしるに漬け物に焼き魚と、順々にちょっとづつ食べる。
「亀がどうした。空子さんはすごく可愛い。見る目のない周りの奴らに感謝している。空子さんと出逢えたのが一番の幸運だ。啖呵切られたから絶対に諦めない」
 本当に諦めず、それで奇跡を起こしたそうよ。さぞそうと言いたいでしょうに、私はこの通り、何を何度言っても理解しない。本当はさぞ辟易しているでしょうに、決してそうは言わなかった。
「そう? ありがとう」
 私は、それがどんなにひどい言葉かわからず食事を続けた。

 一緒にごちそうさまでした。食器を片付けに行く。ちょっとパンティが引っかかって歩きづらい。
「どこへ行く」
「洗いによ」
「ソファを立つのは」
「ぁあン!!」
 マンコにゆびを這われた。手の食器をテーブルに置かれて、ソファに再び座らされる。べちょって音がした。
「俺に犯られてからだ」
 目の前に勇ちゃんのおチンポを突き付けられた。むしゃぶりつく。よく扱いてうんと吸う。空子のおマンコはびちょびちょ噴いた。上のお口に射精される寸前ずるっと抜かれていやと叫んだ。脚をM字に開けてマンコを広げていつものみだらな誘い文句を。なんとか体位で犯された。そのまま寝室へ連れられて、マンコを高々と上げて奥まで散々突き犯された。あとはお昼まで繋がって眠った。

 目が覚めたのはバックで犯されていたから。うんとおっぱいをもみしだかれていて、もう空子の奥はえっちなことでいっぱい。
「空子おっぱいデカい、誰かにこうされなかったか」
「勇ちゃんだけよぅ!! もっとしてえ、乳首いじってえ!!」
 空子はもう勇児でいっぱい。勇児のために生きたい。
 勇児のチンポと空子のマンコがぶつかってぱんぱんイっている。この音が好き。めちょめちょ言う空子の蜜の音も好き。なにより、空子の膣内で暴発する勇ちゃんが好き。空子をめちゃくちゃにする勇ちゃんが好き。みんなみーんな、口に出して言っちゃった。

 お昼は店屋物。空子ごはんつくれない。
 朝、あのままにされたテーブルの上の食器は勇児が片付けている。いわく、空子に一人にされるくらいなら自分がやったほうがまし、ですって。いつも逃げちゃったもんね、そう想われてもしょうがないわよね……
 空子はえっちな格好で、旦那さまがせっせと後片付けするところと、店屋物が運ばれて来るのをぼけっと見ていた。なにか間違っているわよね、これ。
「いい。空子さんのご機嫌を損ねるよりずっとマシだ」
「そんなこともうないわよぅ」
 まだ気にしている。もう。
「空子は勇ちゃんでいっぱい。好き。それしかないの。そりゃあ、昔ひどいことばかりしたから信用ないけど。もう空子、勇ちゃんとえっちでいっぱいなの!」
 さっきからずっとずっと、想ったこと言ってばっかりだった。
「ひどいことなんてされていない、信じているよ。俺でいっぱいならそれでいい」
 お昼ごはんを一緒にいただきます。おいしいのよねここのお食事。店屋物なんて言ってはいるけれど、あなどれないどころか相当なものよ。だてで高いんじゃないようね……

 勇児は空子に、夕飯も店屋物、睡眠を取るべしと言い付けて、空子をベッドに寝かしつけてお出かけした。空子は勇児の言うことなんでもするからその通りにした。ちょっと間違っていると想わないでもない。
 夜に勇ちゃんがお帰り。空子は言いつけを守って、夕方にとろとろ起きても無理矢理寝た。だから、おかえりなさいは寝室で言った。
「ただいま空子。よく寝てた? おしりもおっぱいもマンコも出してない?」
「いっぱい寝たわ。丸出しはしていないと想うの」
「ん。じゃあ風呂へ入ろう」
「はぁい」
 勇ちゃんにお姫さまだっこでお風呂へ連れて行ってもらう。一緒に体を洗いっこするの。
 意識のある勇ちゃんが、空子に全部任せることなんてない。勇ちゃんは空子のからだを念入りに洗うの。つま先から足のてっぺんまで全部。
「あたまのてっぺんって言わない? 空子さん。洗い足らないところは」
「ないわ」
 勇ちゃんにシャンプーされているの。気持ちがいい。
「髪、伸ばす? 空子さん、ここには美容院もあるから、後で一緒に行こう」
「うん」
 そういうところもあるらしいの。なんでもありね。
 一緒にお風呂へ入るときは、あの特殊な長椅子は浴室の外に出されてある。代わって座る椅子といえば、空子のはマンコがすーすーする以外はふつうの形の椅子。勇ちゃんのはすーすーしないふつうの椅子。
「これだと空子の割れ目をよく洗えるだろ。効率だよ効率」
 だそうよ。納得よね。
 勇ちゃんに空子のマンコをくにゅくにゅ洗ってもらう。もう火がついちゃうの。微妙な手つきなのよね、もう。
 そんな空子が、今度は勇児を洗ってあげる。ちゃんと動く勇児はやりやすいわ。どう見てもハゲなさそうな髪を洗って、それからおっきな体を洗うの。
「今なにか言った?」
 脚にはいくつかきずがあった。痛そうだった。ぐっすん。
 空子は、勇ちゃんの脚を揉むとかそういうことは決してしちゃいけない。そういうのは専門家でないとだめ。勇児はそういうことにとっても気を使う。
 洗いっこのシメは勇児のおチンポをあむってしちゃうこと。よく洗うの、お口で。
「したの口でも洗ってあげたい」
 すけべな空子がそう言うと、
「マンコは洗うって言わない、セックスって言うんだ。ヤり直し」
 ヤり直して言い直したわ。もうされたくってしょうがない。

 あとはセックスするしかないのに、勇児はお風呂ではしないですって。
「どうしてぇ?」
「こうしたいから」
 空子と勇児はお湯のなか。空子は勇児に後ろから抱き締められて、おっぱいをもみもみされている。とっても気持ちいい。おしりに勇児のおチンポがあたる。これがどうなるかと想うとゾクゾクする。
「のぼせるだろ空子さん」
「あぁら……そうね……」
 勇児、空子がえっちなこと言わなくても乳首ぐちゅぐちゅしてくれる……いいわ……
「イく?」
 勇児は空子の首筋にちゅっちゅってしてくれる。痣だらけよ空子は。気持ちいいの。
「うん……」
「いいよイって……」
「だって、だって……」
 挿ってないもん……
「こんなんじゃイけない?」
「そうよ……」
 おっぱいもみもみ、首筋にキスマークは好きだけど、それだけじゃ足りないの。
「じゃ……イって。俺は長湯する」
 待ちわびたモノが来た。勇児のつよいゆびが、空子のマンコをぐちゅぐちゅに犯す。こわいことなんて全然ない。
「ぁああああああん!!!」
 お風呂だからか、ゆびで簡単にイった。勇児はそんな空子を抱き締めながら、体の調子をみてゆっくり湯船につかっていた。
 店屋物の夕ご飯のあと、めしごのセックス。勇児は本当にこれがすき。空子も好きよ、とても好き。
 明日は仕事の前の日だから、今日はやりだめの日。空子は、もう心地よくなってしまった全身倦怠感で入院する。これが腰を鍛えられるってことなのね。よく分かったわ。

 そんな毎日の空子に、ある日勇児はぽろっと言った。
「よくそれで買い物に行けているよな。どこか丸出ししていないか」
 まあ失礼な。よそさまがいる所でそんなことしないわよ。
「病院の人から、勇ちゃんもっとセックスしてって寝言は止めた方がいいって言われたよ」
 そんなのどうしようもないじゃない。いつも言っていることだし。
「寝相もね。俺がいないのにご開張ポーズ取ってどうする? 脚を縛ってやろうか?」
 お願いしたわ。やっぱりしていたのねM字のご開張。だって夢でも勇ちゃんにセックスされているんだもの。そんな寝言も言おうってものよね。
「寝言はどうすれば止められるの?」
 訊いたら、勇ちゃんでも答えられなかった。

 こんな毎日がずっとだった。勇児の仕事日以外は毎日毎日しちゃっていた。そうしたら、空子がどんなふうになろうか分かろうってものよね。特に、結婚前の空子を知っている人には。

 空子はもう、あたまのなかがとろけていた。お家のこと、お掃除料理お洗濯。病院、デパート、美容院。お風呂。おトイレ。なにより勇児。それしかない。
 勇児、勇児、勇児。えっちな格好もえっちな寝言も全部無意識、ううん、それが空子の意識。寝ている時以外は濡れていたようなものだった。からだに火がついて、勇児に犯されることだけを考えた。空子の顔はいつもとろんで、こんな建物の中でなければとても歩けはしなかった。
 そんなある日。ふっと、本当にふっとある番号を思い付いた。
「あ……」
 何となく、それを書き留める。勇児にあとで言おうっと。
 でも、書いた途端に忘れてしまった。だってそれは勇児のことじゃなかったから。今日は勇児、夕ご飯に帰る。めしごのセックスだから、朝ご飯のお支度ちゃんとしていなくっちゃ。
 勇児が帰って来た。今日はお仕事のない日。空子は勇児の好き放題、し放題に乱れるの。

 翌朝。クンニをされて、悶えたままで一緒に寝室を出る。だっこで洗面所まで行って、一緒に顔を洗う。それから空子は台所へ、勇児は居間へ。朝ご飯をフンフン、なんて言ってあっためていたら、背後でドカスカと足音がした。すぐに硬直した。この音、怒っている。
 空子は昔から恐いのがいやだった。それは勇児も分かっている。なのに怒っていた、隠しもしないで、あの日みたいにおそろしい爆風をまとって空子を質す。
「これは何だ」
 勇児は手に紙切れを持ち、空子のあたまをぐいっとして、うんと低い声で訊いた。体勢がキスなだけ。恐喝だった。恫喝だった。空子は全く動けない。
「いつからだ」
 意味も分からなかった。
「俺とそいつとどっちがいい」
 勇児は空子に全く分からない質問を次から次へと浴びせて来る。
「こんなこと」
「ひッッ!!」
 濡れてもいないおマンコにゆびが突き刺さる。ぎちぎちいっている、痛い、裂ける。
「俺以外の誰とした!!」
「痛い! 勇児、止めてえええええ!!」
 空子は泣いて、いっぱい泣いて、泣き叫んだ。そしたら勇児は険しい顔から、ようやっと元のお顔に戻ってくれた。

 空子はえんえんわんわん泣いた。勇児はやっと心配してくれて、空子をなだめてくれた。よしよし、なんて言っていた。
「ひどい、誤解よ、空子が、空子が勇児以外、あああーん……」
「分かった、分かった。ごめん、ごめん」
 勇ちゃんは空子の言い分を聞いてくれた。そのお電話番号は、空子が唯一お知り合いと言える女の人のものだって、ちゃんと分かったって言ってくれた。
「分かったから空子、そいつはどういう男? いまから殺しに行って来る」
「分かってなーーーーい!!」

 勇児はお時間ないから、紙切れを持ってお出掛けした。それだけじゃなくて、電話機の一切も持って出て行った。いままでの電話記録をかたっぱしから調べ上げてやる、ですって。そこまですることないじゃない。空子は結婚してからお電話なんてしたことないわよ。
 潔白は当日中に判明した。当然よ、ふんだ。
「ごめん空子さん。誤解だった。空子さんがそいつと不倫電話していないということは見事判明した」
 夕方にお帰りの旦那さまは、玄関口で帰りしなこう言った。空子はおかえりなさいのキスをした。うーんといやらしくってえっちなの。
「このくらいのこと、空子の奥にして」
 空子は普段からこういうことしかイってないのに。なによその、ふりんなんて。
「手紙だろ。今時古いが恋文か。そいつの住所は? 教えて、今から殺しに行って来る」
 住所なんか知らないわ。訊いてないの。女の人よ。
「その人はあかぎよりこさん、っていうの! 女の人よ、仕事でちょっとしたお知り合いで、ちょっと切羽詰まって携帯電話の番号を交換したことがあったのよ!」
 そりゃあ、ちょっとした理由で夜遅くなって、帰れなくて切羽詰まって頼子のお家に無理矢理泊まってお礼にお料理を振舞ったことはあるけれど一度だけよ。同い年なのよ、女の人なのよ、美人さんなのよ!!
「ひとつベッドで食べられた、か。よく分かった。空子、忘れろ。そいつの命はもうない」
「なにを聞いているのよーーーーーーー!!!」

 夕食の後はめしごのセックス。クンニされてベッドに連れられて、期待しまくったらベッドに乱暴にどさりと落とされた。ちょっと勇児、らんぼうよ。
 勇児はたくましい体を見せつけるように服を脱ぐと、携帯電話を取り出した。
「いまから不倫野郎に掛けてやる」
 まだこんなこと言うのよ。夕ご飯のえっちなゆびもらんぼうだった。もう、怒りっぽいんだから。そこもいいけど。
「出たら俺と空子のセックスの音を聴かせてやる、これが本物だってな」
 もう。空子の言うこと全然通じない。まるで聞いてくれないの。
「言っておくけど。本当に男が出たら、もうどうなるか分からないからな」
 番号が替わって別人になっていたりしませんように。なんまいだぶ。
 心の中でアーメンとお祈りした。でもお顔は平気っぽくしておいた。だってこれで心配そうにしたら、お電話のさきはほんとに男の人っぽいじゃない?
 勇児はつまらなさそうにボタンを押した。つるるるる、という発信音は途切れなかった。
「出ないな。怖じ気づいたか」
 そういう問題だったかしら。
「まあいい」
 勇児はつまらなさそうに電話を切って、お電話をぽいっとじゅうたんにぶん投げた。いいのかしら。
「どんな体位で犯られた」
「勇児だけ。ゆうちゃんスキ」
 腰をもじもじ、くねくねして欲しい欲しいのポーズをとる。これがいつもなのに。
「空子はフェラチオも無茶苦茶上手い。何人に教わった」
「勇児だけ。ゆうちゃんスキ」
「何人に犯られた」
「勇児だけ。ゆうちゃんスキ」
 もう耐えられないから、いつものM字で勇児に迫った。
「これ以上、ひどいことゆうなら空子もう泣いちゃうから」
「……言わない。で。誰に処女やった」
 泣いちゃった。大泣き。わんわん泣いて、かけぶとんを持ってソファへ逃げた。

 おふとんごとベッドに連れ戻されて、うんとうんとひどくされた。ゆうちゃんスキ。
 でもあんな質問の山には閉口した。空子はむすっと朝ご飯の支度をした。こんな空子に勇児も勇児。一晩経ったというのに、まだひどいことを言って来る。
「そんなすけべな格好、教わったから出来たんだろ」
「勇児に教わったの!!」
 もう。返事をしないと認めたって思っちゃうみたいで。疲れるわ。
「はいごはん。食べて。お時間あったら空子も食べて」
 空子も怒ってお食事をだした。こんなふうにしても美味しくないわ。もう。いやになっちゃう。
「時間はない。不倫したからお預けの生殺しだ」
 まだそんなことを言うの。もう。
 もりもり食べた。我ながらいい出来のお出汁だというのに。いい炊きあがりのごはんだというのに。
「電話は置いて行く。すればいい、不倫」
 むかー……。
 でも、なんで置いて行くのかしら。