White day

 三月十三日、夫からこのような発言があった。
「さぁや。明日はホワイトデーだ。バレンタインでチョコをくれた女性に、主にチョコ以外の食べ物を贈る日、だそうだが」
「大体そうだね」
 答えながら、清子は思った。料理のりの字も知らない男がどんな食べ物を贈ろうと考えたか。
「俺は料理のりの字も知らないので」
「うん」
 ご家庭によっては地雷なこの手の会話が、ここではフツーにいつもある。
「多少調べた。なんでも、下着や、当日賞味期限の高級な生モノなどは、やると言われても女性はドン引きするそうだ」
 清子は、そうかな。と思った。確かにそんな生モノはいただけないが、下着なら。連れ込まれた日に貰ったものはとてもよかったし。
「さぁやは破廉恥な下着が好みなので」
 これには反論したくなった。しかし、初夜に「見たいだろ」といきなり言い出したのは自分。ぐっとこらえた。
「考えた末。これなんかどうかな」
 どこから取り出したか忠弘は、ぴらっぴらの下着を清子の目の前にかざした。
「……なにこれ」
 声のトーンが落ちる。
「見ての通りだ」
「……ふーん」
「リアクションが固いようだが」
「そりゃね……」
 イチゴ模様のパンティとあっては……

「って夢を見たの」
「あのな……」
 繋がりながら、忠弘は頭を抱えたい気分だった。体位上、無理だが。
「いくらなんでも……大の男になにを持たせる気だ。それじゃただの変態じゃないか」
「変態夫婦って言ったの忠弘だよ。だからあんな夢見たの」
 なんたる理不尽な物言いか。実家に帰れ。
 といった発想は微塵もない忠弘。
 しかし、確かにそういう夫婦とは言った。ここは反論せねばなるまい。機嫌を損ねないように。
「だからといって、俺をいくつだと……確かにろくに学校へ行っていないが、いまどきの思春期の少年にしたって、そんな下着に興味を持つだろうか」
「忠弘は?」
「俺?」
 ホワイトデーであるこの時既に、食い物を贈るがどうのこうの、を忘れている二人。
「そういうのを穿きそうな歳だった私の、そういう下着姿。見たくない?」
 即答出来なかった時点で忠弘の負け。