Horny CAT

 三毛猫がいた。でぶ。丸々と肥えてふてぶてしい。
「……さぁや、か」
 猫は、忠弘が呼びかけても、うんともすんともニャーとも鳴かなかった。
 忠弘は猫に近寄る。どう見てもノラなのに、他人が近寄っても逃げず隠れず怯まず、道のド真ん中で堂々と鎮座している。
 忠弘はひとまず手を伸ばし、頭を撫でた。
 ふん。それがどうした。
 といわんばかりの堂々たる撫でられっぷり。
 次に忠弘は首のわきをゆるゆる撫でた。首といったってくびれておらず、ただ頭と胴体を繋いでいる部分ってだけだ。
 すると猫は、少しだけ気持ちよさそうにした。
 気をよくした忠弘、でっぱったハラを触ろうとしたら、ニャー!! と抗議を受けた。爪がシャキーンと飛び出て、猫パンチな前足が寸での所で忠弘の手の甲をかすめる。
「済まない、つい」
 動物のお腹は急所だ。それを他人に触らせるなんて、相当親しくなければ駄目だ。だから、
「さわり……たい」
 また手を伸ばす。爪を出して警戒する猫。
「さぁや……」

「って夢を見たんだけど。どうして私の猫姿はおデブでフテブテしいノラだって思ったの?」
「逆夢だ」
 いくら万年繋がっているからといって、一心同体の夫婦だからといって、自分が見たわけでもない不確定な夢にまで責任を取れとは。
 と言ったら機嫌を損ねる。さてどうご機嫌取りしよう。
 そう思っていたら。
「じゃ、夢じゃない忠弘は、私の猫姿ってどうなると思う?」
 忠弘はバカだった。
「血統書付きじゃないな……」

 バカは新たに傷を作った。顔に複数の引っ掻き傷。よかったね忠弘、それぞ男の勲章だ。
「ど。動物が腹を見せるのは、……服従の証、というの、で……」
 服従するどころかさせたい、あまつ調教したい。と想っていたのにこの体たらく。
 などもう言えず。真っ裸な忠弘は、ベッドの下で仰向けになり、手を猫の前足のように縮こまらせて、
「……ニャー、と鳴けばいいだろうか」
 だがこの猫モドキの実態は大の男。その腹は、もふもふではなくゴツゴツと割れている。
「そのポーズ、よく見てるから。他の」
「……」
 忠弘はないた。