Happy birthday, my darling

 ケーキをゴミ箱に捨てて、家を出た。君の元へ。

 待っているだけだから、君は来てくれない。そう気付けたから電車に乗った。
 都内に住んでいてなんだが、満員電車に乗ったことがない。営業としてはけしからん。客と話が合わない。まさか通勤は楽だ、などとは言えず。嘘を言って話を合わせている。
 君の家までは遠い。確実に、毎朝満員電車だろう。
 ……俺の家からだと、近いんだが……

 君のアパートにたどり着く。二階の角部屋。
 どきどきしながら、呼び鈴に指を這わせる。どきどき……
 君は出なかった。
 がっかりした。……すぐに想い直す、この辺は営業根性で。そう、今君は俺の家に来てくれているのだ。すれ違っているのだ、と。
 君の電話に掛けても通じなかった。登録している番号以外は着信拒否、独身女性なら常識。登録して欲しい。
 駅へ向かう。いつもこのルートで出社しているんだろう……一緒に出社したい。

 マンションに帰る。郵便受けには、いかにもなブツが突っ込まれてあった。複数。
 期待した。やはり君が来てくれたのか。
 いかにも女性の手のものとおぼしき、紙袋を開ける。手紙が入ってあった。
“山本君へ”
 君は俺をそう呼んでくれるのか……
 と想ったのも束の間。文末の署名は君じゃなかった。
 がっかり……次の紙袋も、その次も。
 結局、全部そうだった。
 ここはマンション、だから君のアパートのように、玄関先までは来られない。
 だがそれだけだ。随分な人数に知られていた。君だけでいいのに。

 家に入って、中で待つ。
 午前零時を過ぎ、十五日となっても、いやいや休みは月曜の朝までだと頭の中で言い訳して……

 九時前に出社すると、君がいた。
 視界に入ってくれるのは久々だ。そりゃもう……後に“嬉々満面”と言われる表情に、自然なる。……今年はこれでよしとしよう。

 まさか一年後、あれだけのプレゼントに囲まれるとは、いくら俺でも想わなかった。

 さらに一年後。
「ね、今年はなにがいい?」
 さぁや。
「もう。毎日贈ってるってば」
 無論。
「ね、私と、それ以外では?」
 さぁや。
「だからもう……なにか、物で」
 君は俺のモノだ。
「そうだけど、他の」
 だったら……正常位で啼く君。
「それはいつもでしょう……じゃあ、なに? 次はバックで啼くさぁや?」
 うん。それから〆込み千鳥がいい。さぁや、俺の上で激しく腰を振って。
「……だから。四十八手以外で」
 さすがさぁやだ。九十六手を一晩でとはな。かなり忙しいぞ?
「体位は変えればいいってもんじゃないっていつも言ってるでしょ! もう、イきそうになる時狙っていつも変えて……」
 それからも致しまくった。そうしたら、手編みのマフラーを贈って上げる、と言われた。
 それはもう……天にも昇る気持ちで、毎日それを巻きながら出社した。

「ねえ……」
 どうした?
「今、夏なの! 夏真っ盛り!! マフラーする季節じゃないの!!」
 季節がどうした。
「もう、バカ!!」
 そうだ。
「もう、……じゃあ」

 毛糸のパンツを贈られた。手編みの。
 ……。
 そりゃ、君の手作りならなんでもとは言ったが……俺は二児の父親だぞ……体面が……沽券が……
「穿いてね? いつも」
 ……
 ……
 ……
「……うん」
「いつも脱がせて上げるから」
 啼かされてばかりの俺。
 君には一生、頭が上がらない。