Tadahiro

 浮気される夢を見てしまった。
 ……。

 最初に考えたこと。有り得ない。
 次に考えたこと。有り得る。
 そう、さぁやなら有り得る。なにせ美人だ。俺だけの美人だが、最近は周囲も己が節穴を修正し始めたらしい。んなもん直さんでいい。
 そう、最近とみに。
 ……なに? 俺に惚れたから奇麗になったと自惚れているな、だと?
 どこを見てそんな台詞が出る。万年地獄だなんとかしろ。なんともないかのように一見スルーして来たが、惚れた女に「鳥肌立ちます」と言われてみろ。それ以外もそうだが、一言一句が地獄行きだ。一言一言谷底だ。二十年居続けの俺だからこそ生きているが、他の野郎だったらとっくの昔にくたばっている。どうだ、これが自惚れというものだ分かったか。
 夢ではさぁやが、複数の野郎に次から次へと跨がっていた。
 ……。
 何があっても辞めさせてやる。家に閉じ込め一歩も出さず、あーんなことやこーーんなことばかり致してヤる。
 その前に。なにやら今、後に「一杯のお茶事件」と呼ばれる事態が進行中らしいがんなもん知ったことか。逢ったら抱く。
 さぁやが浮気? 有り得ん。いや、有り得るだろうがさせん。

 世には「心が貰えないのならカラダだけでも」という言葉がある。人ごとだと思っていた。
 ……そう、現在の、まさに今の俺の状況だ。
 言っては貰えないのだろうか。性の快楽で言わせることになるだけなのだろうか。あのさぁやに自惚れなど通じない。なにも通じない。
 言っては貰えないのだろうか。だからあんなナマナマしい水音付きの夢を見たのだろうか。疑ったのだろうか。
 だから言っては貰えないのだろうか。
 喪えと、そういうことなのだろうか。

 そうなったら、もう……