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 そろそろ食欲が性欲を上回った忠弘。とうに食欲を訴えている清子。合わせて新居引っ越しカレーの出来上がり。煩悩深き夫とそのブツをなんとかなだめすかした清子はよくぞと自分をおおいに褒めた。
「はい、忠弘。ダイニングのガラステーブル、このふきんで拭いて来て」
「うん」
 その間せっせとカレーを盛る清子。とりあえず特大盛り三つと、並盛り一つ。
 ふきんを持ってキッチンに戻って来た忠弘に、
「ありがと。じゃ、これをテーブルに持って行って。お茶汲みの要領だよ、こぼさないでね」
 でかいお盆に盛ったカレー四つを載せて忠弘に持って行かせる。
「なかなか難しい。さぁやにとっては重くないか。いつもこうしていたのか。箸より重い物を持つなと言ったぞ」
 こりゃ教えがいがありそうだ。
「それだと体がなまるだけだよ。適度に運動してないと、途端に風邪引くと思うな」
「それは困る。毎日風邪薬を飲め」
 効かない薬に悩んでいた筈なのに。これが過保護ってやつか。
「真っ裸でうろつく率は忠弘の方が高いんだけど。風邪引かない?」
「体が頑丈なのは自慢だ」
 忠弘は、でなけりゃもう死んでいる、とあやうく言いかけて飲み込んだ。

 二人、いただきますと声を合わせる。空腹過ぎてしみじみ度満点。
 カレーだから味は大丈夫と思うものの、基本が出来ていないから相手の反応が気になる。なにくわぬ顔をして食べつつ、忠弘の反応をうかがった。
 滂沱でガツガツ。幸せいっぱい、さぁやおいしいよ。叫びが聞こえてきそうだ。よしよし。
 自分で食べてみても、そう悪くない。たまねぎから刻んでみようか、それともこの路線でずっと行ってみようか。
「ね、そういえば、旧宅で、どうして眠る時脱いでたの? 上下とも。お風呂出た時パジャマ姿だったじゃない」
「無論、さぁやにいつ襲われてもいいように、真っ裸で常時臨戦態勢だった」
 バカ。
「それでどうやって熟睡したのかなー」
「俺も分からん」
 山本家の七不思議、これが残りの一つだと清子は思った。
「文字通り根性だった」
 そうですか。
「なにせ寝室には襲いたいさぁやが観音様状態でいたからな。抜きまくらなきゃ眠れなかった」
 不思議が解明されたじゃないですか。
「連れ込んだ日までは妄想で扱いたが、拝めて以降は実物で扱けた。さぁや、挿れたら抜かん、飯後押し倒す、最初にパイズリして」
「ご飯盛る練習、する?」
 忠弘は即答出来なかった。なかなか難しい問題を出せたと清子は満足した。
「三食ちゃんと摂ろうね。もう私のせいで、忠弘の体重落としたくないの」
「前のことはもうなしだ」
 優しいね。いい男つかまえたなあ……ちょーっとかなり激しく致してばっかだけど……。
 清子は向こう見ずで投げやりで、ときにひねくれ者だ。いいよと言われりゃしたくなる。なにより後悔している。
「じゃ、ご飯食べたら体重を量ろう? そういえば、制服がゆるいなって思ってたんだよね」
 忠弘はかたっぽの耳をぴくりとさせた。原因に自覚ありのようだ。案内役はさてどんな説教をしたか。
 鍋一杯のカレーをほとんど忠弘が食べ尽くし、片づけ・歯磨きを中断なしでおえた二人は計量すべく脱衣所へ向かった。忠弘は風呂に入ってからだろと男の夢・バスファックを希望するも清子に体重が増えてたらねと丸め込まれ、しぶしぶ服を脱いだ。この後すぐに致す為である。
「さぁや。いやな予感がするが教えてくれ。前に量った時は何キロだ」
「45kg。身長は155cm。忠弘は?」
「68kg、182cm」
 清子は体重計にトンと乗った。
「やったー、2kg減ってる!」
 忠弘は台所に立ち、やかんに水を入れていた。
「俺の手料理を死ぬほど食え、さぁや」
 さっきカレーを食べました。
「精液なら死ぬほど飲んだよ」
「それも飲め。だがな」
「カップラーメンなら処分したよ、とっくに」
「……いつの間に」
 連れ込まれ、アパートに一度だけ帰ったあの後、清子はさっさと処分した。次の彼女が出来るにしたって要らなかろうと思ったから。
「健康に悪いよ、分かっているくせに」
「……くそ。何故俺は料理が出来ん」
「あんなに仕事出来るのに。応用で、やってみたいと思わない? なんとか盛りしたいんでしょう、まずはそこから始めてみない?」
「……答えられない」
 忠弘は正直、確かに自分でも飯の一つは盛れるだろうと思っている。しかし、プロポーズは料理してくれ、だったのだ。出来ないから作ってくれと言って同情して貰ったのだ。もし仮に飯が作れてしまったら、
“そう、そちらさん料理出来るんですね。だったら私は要らないでしょう、さようなら”
 と言われて出て行かれる、確実に。そう思い込んでいた。
 忠弘は、夫婦となり、万年夫婦の営みを致しまくりながら、これだけは清子を信じていなかった。大嫌いはトラウマだ、未だ消せない、癒せない。どれだけプロポーズの言葉を囁いても通じなかった。それどころか、短気な清子のご機嫌をいつも伺っている状態なのだ。
 最低だった食生活、睡眠状況。興味のなかった性生活。全部清子にだけ助けて貰いたい。甘えたい。縋りたい。過保護に扱って貰いたい。
 出来ないと言えば甘えさせてくれるだろう。縋っていいだろう。
 しかし女体盛りが出来ないというのは……
 二律合反で答えられなかった。
「あんっ、、あ……んっ……おかし……く、なるぅ……っんくっ…ぁあああんっ……ん……もぉ……もだめ、だめ、イっちゃう、イっちゃう、イイッ、いいのぉっ!」
「イけよほら、イきまくれ!! ……っく、締めるなと何度……あぁ、イイ……もっと締めろ……」
「あっ! っ! っ あっ……っ!! だめ、……っはやっあぁあっ……!! 激しいよぅ!! ぁあああぁあんっ!!! いやぁっん……っ
もっとぁっ……やぁ……っやさしくしてぇ……っぁああぁぁあぁあんっ」
「俺が、……ッハ、優しく……ないとはさぁやが……よく知って……ぁ」
「あぁン、ぁあん!! 壊れる、壊れる、もぉ、もぉ……!!」
「さぁや……犯る度感度よくなって行くな……もっと楽しめ。……イイ……もっとそのチチを振れ、もっとだ……腰の振りが足りないぞ……俺以上に激しくヤらなきゃ抜いてやる……」
「いやァああああ!!」
「……抜けるか。名器ださぁや……潮は噴かないのか?」
「なに、それ……私……そんなにイイ?」
「イイぞ……言っとくが、比べているわけじゃない、だが……まあ俺はデカいらしい、なのに全部挿るし毎度キツい、犯れば犯るほど締まりがよくなる、熱くて全部包まれて、挿れるだけで死ぬ程感じて、ピストンすりゃもう……最高だ、天国だ……絶頂の時の顔見てみろ……だから頼む、その顔誰にも見せるな……」
「見せない……あの、うん、比べるわけじゃないけど忠弘の、ほんとにでっかいよ……見た時絶対挿らないって想ったもん……おっきいからキツいんだよ、締めると忠弘ほんとにえっちな顔するんだもん、だから締めるの……お願い、そんな顔誰にも見せないで……」
「家の中だけだ……お互い、そうしような……さぁや……
 君が好きだ」
「ぁうンッッッッッ!!」
「っく!! ……やはりな……君と寝たい」
「ぃやぁあああああん!!」
「……は……ぁっ! 君でなければ勃つものも勃たない」
「んん……っア!!」
「やはりな……さぁや、言葉攻めが好きだろう……」
「すきぃ!! すきすき、もっと言って、もっと攻めて!!」
「イってもいいが……」
「イってぇえええ!!!」
「……こっちがイかされそうだ……言葉だけで何故ここまで締まる……」
「言われたあの時もこうだったの!! どれだけ犯られたかったか分かってよ!!」
「よくそれで……イわなかったな……辛かったんじゃないのか」
「辛かった……意地張るのもういやだった……自分がキラいだった……」
「んなこと言うな……意地を張る君も好きだ」
「んっっっっっ!!」
「っ! ……もっと攻めてもいいが……辛そうだ……さぁや、君って言われるの好きか……」
「すきぃ……すきぃ……」
「さぁやって言われるのは、どうだ……」
「すきぃ……どっちもすきぃ……」
「どう、好きだ……」
「だって忠弘……私の他に君なんて、イわないでしょう……」
「言わない……君だけだ……」
「ぁあああああん……ぁあああん……」
「君だけだった……最初は、……これが恋愛とは想わなかった、ただ気の合う友達と最初に会った時のように、ああいいなと……だが気が付けばいつもさぁやを探して……俺の評判とやらが、社内に流れていたのは知っていた、自惚れでもなんでもいい、さぁやに届いてくれれば、そう思って我武者らに働いて……本当に惚れていた、でなければ大嫌いと言われてもあそこまで……謝るな、さぁや……結果は必ずこうなった、必ず結ばれた……なあ、さぁや……めろめろだろ? 俺に……」
「うん、めろめろ……忠弘しか見えない……」
「知ってる……おはようと言いに行った時そういう顔をしていた……」
「よく……瓶底眼鏡女なんて……好きになったね……」
「そのなんとか眼鏡で、誰より仕事に集中していただろう……気持ちよかった……怒るだろうが俺に言わせれば女など、外面だけで近づいて跨ぐことしか考えず、要求ばかりで……だがさぁやは俺になんの見返りも求めない、俺をただ愛してくれる……縋っていい、甘えていいと言ってくれる、心から……頼むさぁや、俺を捨てるな、もう二度と……」

 やはり料理の勉強をしようと清子は思った。
 書斎に来た二人。自分の椅子に座った忠弘の上に乗せて貰う。後ろからエロい美乳を揉まれ、耳に舌を挿れられながら、お尻に怒張を感じながら、忠弘のマシンでレシピをネット検索。
「ン……もう……ご飯作れないよぅ……」
「作って」
 甘い声。激しいのとコレの落差があり過ぎる。
「ね……実家の、お母さんに料理習いたい……」
「駄目だ」
 強い声。完全な否定だ。いきなり、どうして。
「……お母さんでも?」
「駄目だ。電話も駄目だ。携帯は没収だ。だが再就職したら携帯を握りしめていろ、夜中でも電話する。必ず出ろ。必ず見ろ。すぐに返事を出せ。必ずだ」
「ン……イイよ……もっと命令して……」
 この落差、たまんない。
「なんだ。隠語じゃなくても感じるのか」
「忠弘のイうこと、全部に感じる……忠弘のこと想うだけで……想ってない時、ないけど……」
「嬉しいが……辛いだろう……俺とて万年挿れていたいが、抜きたくないがそうも行かんぞ……」
 激しく揉まれて、愛情いっぱい撫でられて、舌と声が耳に直接。もう、
「分かんない……分かんない……ね、こんなに幸せでいいのかな……」
「俺も、だ……幸せなど知らなかった、さぁやがいてくれればもうそれで……」

 食後、清子は後ろの忠弘にしっかりと抱き締められながら、脱衣場の洗面ボウルで下着を洗っていた。
「30℃以下のぬるま湯を入れた桶で、中性洗剤を使用した素手による押し洗いがいい……ふんふん」
 なにせ繊細な総レース。間違っても破いちゃならないと思って、説明書きを読みながらいると。
「……さぁや」
「ん?」
「……俺のワイシャツはな」
「? うん」
「一度着たら捨てろと言われている」
「ええ!? ゼータク過ぎるよ!」
 これだから金持ちは。偉い奴も大嫌い、庶民が一番!
「俺もそう思わんでもないが……そこでだ」
「? うん」
「このまま行くと……」
 忠弘の大きな手は、性に濡れたまま清子の乳房へ、妖しく動く。
「……ということに、なる……」
 乳首を指で挟みながら揉みしだく。
「だから……ね? しないでって……イったぁ……」
「無理だと……想わんか……」
 なにせ二人は真っ裸のまま。清子の背中にはいつもの怒張。もう、洗濯の手など止まっている。
「さぁや……」
「な、に……」
「俺が処分する……どうせ無理だ……そうだと言え……」
 だって、ソコにソレをあてがわれては、もう……