12

 ピザを食べ切ると、忠弘は服を脱ぎ捨て、清子に着せた服をはぎ取り襲った。お返しだ。
「さぁや」
 欲望だけが映るガラス玉の瞳。
「前にも」
「ン」
 好きと言ってしまえればどれだけいいか、そう思ったあの日。もう分かっていたから、続きは舌とくちびるで。
『ン……ン!』
 激しく交錯する想いと唾液。立ち上がり辛いソファに身を押し付けられて、背に腕を回す。混じり合った唾液の絡み付いた舌が清子の白い喉を這う。強く吸われて刻まれる。
 次は美乳を。惚れた男に褒められ攻められ。
「はぁん……っ……んッ!」
 カっと火照って疼く、欲した秘処に空気が触れた。脚をあられもなく広げられ、欲情の中指がズブリと挿る。
「うゥぅ……ンンン!」
 掻き回され、すぐに溢れる一番の手料理。忠弘は、自分のでかい手を万遍なく濡らすそれを清子に見せた。
「ほら……さぁや……ハ、どれだけ濡れる?」
「やだ、バカ……ぁ」
 もう、言葉以上に欲しいモノがあるから。

 行こう。
 ン。

「あああァァァぁン……!! た・だひ……ろぉ……! あいして、あ……いし……て……あんっ……あんっ……ああんっ……はぁ……ッ、イくぅぅぅ! んぁっ、やめっ……! これ以上……めちゃくちゃにしないでえぇぇっ!!」
「滅茶苦茶がイイんだろ! この……狭い、締め過ぎだ……っく!!」
「ぁッ……ンンッ……んーっ! ダメっ、だめぇぇぇ……!」
「ナニが駄目だ、イイくせに!!」
「はぁ!!! うぅ……ぁン……もっとして…っぅ……ふっぁ、ぁ、ぁ、ぁあッ……! おかしく……なるぅ!! ひぁッ!!! あんっ!!! や・やめ……ッ……も・やめてぇ……」
「もう一度言ってみろ」
「やぁ!!! 止めないで、止めないで!! あふんっ んやっ あ・あ・あ・あぁぁあぁああああ!!!! も・い・く……っイくッ・イくッ、イくッ・イくっイくっイっちゃううう!!」
「抜くぞ」
「いやあアアアアア!! 抜かないで、止めないで、イかせてぇ!! お・ねがぁあ……い!! なんでもするから、言うこと全部聞くから!! ぁん……ぁん……イイ……もっとぉ……!!」
「俺のモノださぁや、一生俺の言うこと聞け!!」
「聞く!! 聞くからぁああああ!! ぁんぁンぁん!!! やぁぁあああああん!!」
「だったら飯も便所も生理もいいな?」
「そんなぁ!! それ、だけ……ァアアアアアアアッッッッ!!」
「イイと言え、さぁや!!」
「それ、だけ、ァあああアアアアア!! だめって、イ……ァッ、ァン、あン!! ゆるして、ねぇゆるしてええええ!!」
「イイとイったら許すぞ……さぁや?」
「だって……ヤだよぅ……」
「……泣くほどイヤか?」
「ひどい……ただひろ……」
「酷い? 愛してるだろ?」
「うん、愛して……愛してる、ただひろ……ぁっ……ぁあん! ぁぁんー……! やぁっ……っ……イイっ! ああんっ! やだっ……やぁっ……ッあぁ……ァ……はっ……あァ……はぁ……あ……あん……いゃ…んぅ……! ゃっ……アッ……ふぁ!」
「ほぉら……イイとイわなきゃ止めるぞ……さぁや?」
「……イイッッ!! イイから……もっと、もっとぉ!! 抜かないで、やだぁ、やだぁあああああ!!!」
「イったな……? イイぞさぁや……一生喘ぎ続けろ、啼き続けろ、俺を咥えて離すな……ッ……アツ……い、……狭……過ぎ……」
「ぅっぅんっ……ぁあああんっ……だめぇえええええ……イッちゃうぅぅ……ぁんっ……はぁんっ……ぁっぁ……!!」
 夜の七時に、いやと言っても抜かれた清子は、キッチンのシンクに手を付き尻を突き上げておねだりした。
「挿れ……てぇ? 抜かないでって……イったぁ……」
 二人とも真っ裸のまま。休日に、服を着ることがあるだろうか、この先。
「腹が減った。飯を作れ。料理中は致すなと言ったのはさぁやだぞ。残念だったな、挿れてはやらん」
「そんな……!!」
 後ろに立つ忠弘のでかい手は、清子の腰を抑えているというのに。致す体勢以外の、なにものでもないというのに。
「こんなになってるのに、……ひくひくイってるんだよ!?」
 もう清子のソコは、忠弘のソレの形通りに、なっている。なのに、
「シチューだったな、そのヤらしい恥毛に盛って食って犯る。早く作れ」
「そん……な!」
「だったら指くらい我慢しろ!!」
「ぁアアアア!!!」
 前から突き挿れられた二本の、もどかしい指を中に呑みこんで、清子は米を研ぎ、野菜を切るはめに。
「……っン、……っン……」
「手を切るなよ」
 切りそう、挿れられるより前に、触れられるだけでもう感じるのに。
 逢った時、何故俺を嫌いと言ったのか、そういう質問じゃなく、手料理を食べたいと言ったのは、他にも言いたいことが山ほどあってもなお、それが一番の、本心だったからだろう。
「……っん……だい……じょうぶ……たぶん」
 動きたい、突かれたい……でも作らなきゃ。
「さすがに……怪我しそうになったら抜く」
 なにをどうしたら、怪我しそうかなんて、それすら知らないだろうに。
「イイ……たぶん、だいじょうぶ……抱き締めて、忠弘……好き、だよぅ……」
 悠々抱き上げられる片腕でしっかり抱きとめられ、中でゆうるり動く指を感じながら。じゃがいも、にんじん、たまねぎ……
 肉を炒めて。
「凄いものだな。指を咥えながら料理とは。さすがさぁやだ」
 全く本当に、清子は自分を自画自賛した。
「ン……でも、こういう……のなら、なんとか……ちょっと凝ったもの作る時は、さすがに……だめ」
 本音を言えば、今もう駄目。抱きとめられた腕でおっぱいモミモミなんてされたら、もう。
「夜起きると肌がどうというのは本当か……それでも、俺は……」
 野菜を炒める。
「ン……イイ。あのね……セックスするとお肌ツルツルになるって、知ってた……?」
「そうなのか? そういうことは早く言え」
 女を知らないわけじゃないという男がこのセリフ。ただ跨がれただけと言っていた……
「ン……そうなんだって……だって、エステ上がりの時より、忠弘と電話でオナニーした翌朝の方がお肌ツルツルって……秘書にイわれたぁ……」
「……だったら……余計家の外には出せん。毎日毎晩生理の時でもセックスだ。それでイイんだよなさぁや」
「ン……でも、床よごれちゃう……」
 多分もう、愛液が床に滴っている。
「風呂で犯りゃいいだろ」
「おなか、いたいときは……」
 止めてくれると想う、そういう男だ、だから、
「……やはり、そうなのか。俺は野郎だ、所詮分からん。痛い時は言え、いくら俺でも止める……」
 鍋に水を入れて。
「忠弘……煮えるまで時間ある……欲しい、忠弘が欲しい……挿れてぇ……」
 結ばれたらもう、オーラルだけなんて我慢出来ない。いくらなんでも生殺し。よく耐えたと想う、我慢出来たと想う、もう一回やれと言われたってもう駄目。
 忠弘、あの時、こんなの我慢したの?
 ズル抜かれた。すぐ後ろで惚れた男が、手に巻き付いた手料理を堪能しているのがよく分かる。
 それはいいから、もう。
 お尻を突き上げて、脚を開いて待って、あてがわれて、
「ア! あ、ああー……ン、はぁ、あ、ぁンっっっっっ!」
 致されまくって、一回ごとにハァハァ息絶え絶え。よく分からなくなって、射精されるたび火花が散って、夢現。そのたびさぁや、さぁや、動いてと、言われたような気がした。
 飯と言われて気がつくと、鍋が煮立っていた。ちょっと待ってね、仕上げるから、と、フラフラの状態で言うと、忠弘は後ろから、この男にしては珍しく、両腕で優しく抱き締めてくれた。
 シチューが出来上がる。ソファに座って待っててと言うと忠弘は不満顔。惚れた女と休日に、少しでも離れるなど。そんな感じ。
 この家に連れ込まれた日、最初に使った、あの皿にシチューを盛って上げた。
 あの時、五皿は行けるなんて言っていたけれど、五回お代わりを盛っても足らなさそうだった。手料理を食べた記憶さえ喪った男が、五皿がどういうものか憶えている筈がない。とにかく量を、多く。そう言いたかったのだろう。ご飯だけが欲しかった?
 そうじゃないって、冷めるわけがないって、あの時から、もう。
 いただきますと二人、声を合わせた。
「いくら忠弘でも、食べてる時は出来ないでしょ?」
 清子はもう青息吐息。お腹は減ってもちょっとずつしか入らない。なのにあれだけ腰その他使いまくりな忠弘の食べっぷりは、連れ込まれた日からなんら変わらなかった。
「確かにその通りだ。待ってろさぁや、今食い尽くす」
「味わって食べて……」
 ご飯を作る人の、共通の思い。
「……うん」
 清子は一皿だけゆっくりと。後は忠弘が全て食べ尽くした。ご飯を丼大盛りで三杯付けても、である。
 ごちそうさまの後、すぐに性欲でギラついた目で迫る忠弘に。
「ね、これだけ答えて……?」
「なんだ。待ったはなしだ」
 待ったなんてする気はなかった、待たせたから。待たせ過ぎたから。
 おいでポーズで迎え入れる。
「忠弘が……私のせいでご飯も食べられなかった時、お腹空いたでしょう? ごめんなさい……」
「忘れた」
 詰ることのない即答に、むしろ言葉を失った。忠弘はすぐに清子に襲いかかり、美乳を弄び、乳首にむしゃぶりつく。
 惚れた男の髪に両手を絡ませた。
「さぁやとさぁやの手料理さえ食えりゃいい。でなきゃ胃に入れても意味はない」
 清子は息をするのも忘れた。
 待って、待って……さっきピザ……
 清子はここで、やっと母の心境に辿り着いた。腹を痛めた母親は、会って二日で気付いたのに。
“どれも味がしませんでした”
「さっき……ピザ、味……した?」
 呟きに近かった。
「さぁやがいつも食っていた、というものも食いたい」
「応えて」
「しなかった。さぁや、息をしろ」
 出来なかった。すぐにくちびるが来て、いつもなら吸われるそれで吹き込まれた。
「さぁや、他にもそういうものがあったら言ってくれ。どうしても食いたい、一緒に。
 さぁや……言って……」
 あやすように。それすら喪った男が、観音様の微笑みで。
「……ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい……」
 他に言葉が出なかった。なにをして来たのだろう、今まで。一体。
「泣くな。謝るなと言ったぞ。俺は過ぎたことをねちねち掘り返したくない、忘れたものは忘れた。さぁやももう忘れろ。過去には戻らない」
 戻れるものならやり直した。あの時、おはようと言われた時、
「泣くな」
 この埋め合わせを、と言われた時、
「さぁや」
 そこまで嫌われることをなにかしただろうか、と言われた時、
「愛してる……さぁや、言って……」
 そう言われた時、言えなかった、言って上げたかった、いつだって、だから。
「愛してる……忠弘……」
 いつもこうして言っていたのだ、この男は、泣きながら、本心から。
 忠弘は、やっと言って貰えたと嬉しくて、朝のキスをした。自分のくちびるに指で触れてから、清子に触れて。番いのタグにくちづける。
「さぁや……料理中もトイレ中も生理中もしない。……言ってみただけ、言わせてみただけだ……」
 穏やかに話を変える男。
「泣くな。もう脅さない。……約束だからな。今度は守る」
 この男は、惚れた女が泣きじゃくることなど望んでいない。
「……でも」
「でも?」
 甘えてイイ?
「指一本触れない、なんて言われて……さみしかった、よ」
 許してくれる?
「ハ、んなもん……」
 見るからに忠弘は、自分にあきれていた。
「なんで言ったか分からん。たださぁやのご機嫌を取りたくて……気が付いたら言っていた。……出来る訳がない」
 そりゃそうだ。さていつ触れて来るか……あの時お風呂で、のぼせるまでそう思っていた。番いのタグを眺めながら、この名字になるんだろう、きっと。そう思っていた。
「ン……抱き締められて嬉しかった……すごく。だから、振りほどかなかった、の。……それは分かっていたでしょう?」
「ああ、分かっていた」
 忠弘がおっぱいをゆうるりモミモミし出した。多少話がしたい、そういうことだろう。さていついきなり挿れて来るか。
「俺を好きなくせにいつまでも言わず……頑固過ぎるぞさぁや」
「だって……言ったら簡単に、捨てられるかなって……こわかった。捨てられたくなかった、そのくらい好きなんだもん……」
「二人ともそう想っていたってことか」
「……うん」
「有り得ない。そうだな」
「うん」
 両想いって分かっていて。なのに捨てられると思っていて。
 へんなの……
 ちゅうキスをして、さあ来るかな、と想ったら、忠弘は別な話題を口にした。
「さぁや。生理はいつだ。心の準備をしておく」
 なるほど、そういえば前にメールで訊かれたな。
 清子の(ゲームでよくいう)HPはレッドゾーンに近いので、話を続けようと正直思った。確かに快楽もいいけれど。
 この調子で一生だ。気合いと根性が必要だなあ、と再認識しながら清子は答えた。
「多分、一週間後くらい、かな……私、はっきりした周期がないの。来たら五・六日くらい掛かる」
「……六日間……地獄だ」
 モミモミしながらがっくりする忠弘。また地獄だなんて。どうもこの男、居続けが過ぎて、なにかっちゃすぐ落ちる模様。結婚したんだから、もうそうはさせないって決めたのに。
 でも、女なんだから来るものは来るのだ。しないって自分から言ったじゃないか。
「くち、とか……ぱ? とかは、するよ?」
「素股もさせろ」
「?」
 どこから体位の名称や、いかにもいかがわしそうな名称がすらすら出て来るのか。訊いてみたいような気がしたが止めた。
「よく分かんないけど……出来ることは、するよ? あ、なんか忠弘みたい」
「……なんだそれは」
「だって忠弘、私のお願いを聞くのは出来ることだけって」
「さぁやがいつも俺を地獄に落とすからだろ」
 それは全く否定出来ないので、これからはいつも天国だよ、と言って上げた。頼むからそうしてくれ、と忠弘はお願いした。
「引っ越しがどうと言ったな。俺が出掛けたら内側からは鍵を開けられないようにしてやる」
「ン、それでいいよ? 私、家を守るから」
 満足してくれるなら、それでいい。
 ただしそれだと食材すら買えないのだが、この時は二人ともそれには思い至らなかった。
「忠弘、会社でカッコよく仕事してね。私、仕事の出来る」
 清子の言葉を忠弘は遮った。またも禍々しいオーラ全開で。
「仕事の出来る男が好きとでも言いたいか。今何人男がいる」
 心臓のある方の乳房をぎゅう鷲掴みされたので、髪の毛を優しく梳いて上げた。
「いないってば。忠弘だけ。忠弘しか見えない。愛してるの。ずっとずっと前から。最初から。もし忠弘が、入社式の日に迫ってくれたら、意地張らずにすぐに挿れてって言っちゃったよ? きっと」
「……くそ。過去に戻りたい」
 本気で言ってる。堪らないから、笑顔が浮かんだ。
「もういいでしょう? 来・て。明日の朝まで眠らせないでね?」
 清子は根っから投げやりなので、そうなると明日は一緒に出社する気力どころか朝飯を作るHPまで0になるのだが、それでもいいやと投げやりに想った。
「無論。一生喘げ。ヨがり続けろ」
「うん!」
 何時間も激しく致した後、忠弘はそれでも清子を少し眠らせた。その間忠弘も休んだ。清子に挿れたまま抱き締めれば眠れた。こんなに安心を伴う熟睡など、二時間もあればもう充分。頭は冴え、体も完全に休養が取れた。
 幸せいっぱいで目を覚ます。惚れた女はすうすう眠っていた。
 それを見るのも幸せだが、やはり反応して欲しい。言ったら機嫌を損ねるだろうがあの、口の悪さで丸め込まれてみたい。やはりMの気を開発されたか、などと想いつつ、体位を変え、清子をうつ伏せにして尻を突き上げさせ、後ろからゆうるりゆうるり、蜜壷を攻めた。
「……ン」
「起きたか? さぁや……おはよう。愛してる」
「ぁン……おはよ忠弘……愛してる……」
 ゆうるり、ゆうるり。蜜壷が溢れて啼いている。
 ちゅぷ……ちゅぷ……ちゅぷ……
 二人で奏でる卑猥な水音、それを聞きながら。清子の喘ぎ声を聞きながら。
「さぁや……今五時だ……たっぷり致して……シャワー浴びて飯食って……早めに出よう。歩いて出社しないか……? よりたくさんに見せつけよう……な」
「ン……イイよ……なんでも……その通りにするから……」
「んなことイうと……飯と便所と生理、なんてイっちまうだろ……俺を試すな……」
「試してなんか……ね、破廉恥な下着で出迎えていいでしょう……? 慣れて、ね……?」
 忠弘はまたも鼻の奥がツーンとした。
「……思い出すだけで鼻血だ。似合い過ぎる。頼むからあんな格好で外に出るな」
「出るわけないでしょ!」
「ハ、それがいい。その口の悪……」
 今度は清子が忠弘の言葉を遮った。その前に、忠弘が自分で口を噤んだ。
「忠弘。今なんて言った?」
「空耳だ。気のせいだ」
 さすがに、卑猥な動きの腰も止まる。喘ぎ声もそりゃ止まる。
「ふーん、そう。私のこと、口の悪い女って思っていたんだ。そう」
「待て! ……怒るな。機嫌を直せ。……済まないと言っているだろう」
「他にどう思っているの? 言わなきゃ」
 清子は、よっこらせと枕から顔を上げた。抜いてやる、寝室から出てってやると言わんばかり。
「脅すな!」
 そうは行くかと忠弘は、清子の腰をもっと抑え付けた。
「約束守れ、俺が言ってもなんだが。あー……。言わなきゃ駄目か」
 忠弘の“あー……”って、なんか好きだなあ、と思いつつ。
「やっぱりあるんだ。そう。ふーん。抜いちゃおっかなー」
 あまりやらない腕立て伏せの要領で四つん這いになって、ちょっとだけお尻を振った。
「脅すな!!」
「ぁン!!」
 激しく奥まで突かれて、すぐに顔を枕に伏せる。どだい抜くなんて無理。
 忠弘は、ゆうるりとした律動を再び開始しながら、仕方なく白状した。
「……だから……頑固、だろ。意地っ張り。向こう見ず。……冷たい。……怖い」
 こういう時、忠弘の心境はまさに五歳児。さいごの、一番の本心など、囁きも呟きも通り越し、繋がっているのに言った本人にしか聞こえないほどの小声だった。
「ほんとに私のどこがいいの? そんな、特段これ、なんてとこないよ?」
 どうして分からないかと、忠弘は言った。
「さぁやがさぁやでいりゃいいんだ、さぁやでなきゃ勃たん。……そう怒るな。頼むから機嫌直せ、もう一生怒るな……」
「ン、もう怒んない。その必要もないし」
「……よかった」
 繋がったすぐ後ろで、心底ほっとした吐息が聞こえた。
 慰めて上げたいな。