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 今日もゴルフ談義に花が咲く。相手は誰でしょう。

「さぁやのご機嫌を取るのは得意だぞ? 生き甲斐だ」
「……お前な」
「さぁやは大抵機嫌が悪い。そこを鍛えた営業トークで丸め込む。愛の巣では丸め込まれてばかりなのでやりかえす。するとやっと勝てた気がする」
「……気がする、か。お前、自分の言っていることが分かっているのか?」
「俺は幸せだ」
 高麗芝は今日も瑞々しい。

本日のお題「頭が上がらない人物について男目線で語ろう。ただし当人のいない所で」

「土日祝日が待ち遠しい」
「人によっては、それが苦痛という奴もいるそうだが」
 グリーン手前に一本だけ悠々と茂る巨木を、通称“ひばり落とし”と言われる技で軽々とピッチング。風がないから羅綾も絶好調だ。
「お前は細君を子供の前で、お母さんだの呼ばない、と言ったな」
「それでも有とレイアはさぁやをお母さんと言うぞ。俺にもお父さんだしな。娘におとうさんって呼ばれてみろ。嬉しさのあまり滂沱で死ねるぞ」
 二人とも、ピンそばに付けた。
「……子供がいなけりゃとっくに離婚している、とでも思われているんじゃないのか」
 聞いちゃいない。
 ゴルフバッグを背負って野郎二人、ツーサムで芝の上を歩く。
「お前は頭を下げて小遣いを貰っているクチだな」
「それ以外あるか」
 二人とも、パターは昔ながらのLの字だ。
「給料日が実に楽しみだ。さぁやにご褒美って、頭を撫でられ褒められた上に金も貰えるんだぞ」
 聞いちゃいない。
「俺もお前も妻を愛称で呼んでいるが……」
 片やフックライン、片やスライスライン。どちらも弱く打てばボール一個分切れる。
「たまにはそうじゃないので呼ぶことは?」
「そりゃ、ある」
 遠い方が先に打つ。
「何故か清子と言うとより締まる。だが俺はさぁやと呼びたい」
 強めに打ったボールはいい音がしてカップに吸い込まれた。
「なので滅多に呼ばない。さぁやもあまり求めない。だが締まる」
 フックラインの相手も、いい音がした。共にバーディ。スコアを数える時、普通ならパー4なら四つと数える。腕の立つ者はパーを取ったらゼロだな、と思い、数えようとしない。パーはあくまで「当然」。ボギーだったら悔しくもプラス一。取り返してバーディーだったら嬉しいマイナス一。
「訊くということはそっちもか。だが聞かんぞ。余所の女のことなど、さぁやにバレたら捨てられる」
 次のホールはロングホール。野郎根性が疼く力技の場所だ。とはいえ、大抵の人間にとっては嫌いな場所だ。遠くまで飛ばないから、何回も打たなくてはならずカッコ悪い。
「余所とはなんだ。俺の聖域をつかまえて」
 聞かず最初にぶっ放した。真っ直ぐに、ライ角通りに上がる。
「んなもん知るか。こないだ勝ったんだからな、今日は俺のノロケだけ聞く約束だろ」
「減らず口もそこまでだ。次は俺の惚気だけ聞いて貰う」
「さぁや直伝の俺の減らず口を褒めるとはな。ヤキが回ったか」
「……お前とは会話が成立している気がしない」
 ゴルフをしようとして、スイートスポットにぴったり当たって、なんとかオーバードライブした。