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Sat,27 Nov 2010

9.懐かしいよ。

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 ひとしきり泣いて、泣き通しても、発狂もせず抜け殻にもならなかった。そういう必要は、今はねえ。
 きっと俺はこれからも、こういうことをし続けるだろう。こういう想いをするだろう。この想いだけは、させちゃいけねえ。
 だから俺は泣いていいんだ。
 考え刻にアタマを戻した──哲也、想い出していねえ。
 ……想い出させねえ方が、いいかもしれねえ……。

 よりにもよってこの刻に、どうして生まれ変わったのかは分からねえ。俺も哲也も多大な後悔を遺しながら、ほんでもこの刻に、生まれ変わろうとだけは思わなかった。っつうか、昔に生まれ変わるとは間違っても思っちゃいなかった。もし、出来るとしても断っていた、望みもしなかった。
 この刻に生まれ、想い出したのなら。ひとつの命が消えた。
 井上秋文。俺の大事な大事な息子──
 ただ泣いて、泣き尽くしても、生み出してもやらない命は存在しねえ。全てはもう、俺と哲也の、想い出の中にだけ。
 津守緑はもう湘南にいる。ほんでももう、逢うことはねえ。
 夜明けまで泣いた。

 哲也はあの時、この一生の最期、ラスのあたりにゃもう狂っていた。木曜朝の電話がなけりゃ、もう。
 ……あんな想い、させるもんか。

 俺は想い出してから、ヤベえリアクションを取りまくっちまった。折檻後っつうのが間一髪、不幸中の幸いだった。搦め手系で伝わったら、俺はビビって泣いちまったとでも吹聴されんだろう。そりゃあいい。絶対あいつらにバレるワケにゃいかねえ。
 知らず、震えが起こっていた。ああ、生きているんだ、あのままに。バレたらヤベえ、根性も直ってねえのが二人。……蛇までも。
 相談役の佐々木を考えもした。住所も学校も知っている。ほんでも、何にしたって哲也だ。三生目の人間は全員生まれてもいねえだろうから、いずれ哲也が想い出すまで、俺一人で対抗せにゃならねえ。もう負けやしねえぜ、親父。
 今の哲也は以前の通り、宿屋のボンボン。京の宿がねえとは言え、二生目より力も修練もあるだろう。頼りにしてんぜ。

 ……それにしても、想い出した時期がなあ……。
 後悔しても始まらねえし、もうこの一生にゃ生まれ変わりたかねえが、ゼータク言うなら高校の入学式前に想い出したかった。したらもうちっと……あの事件も……。
 今はもう五月だ。哲也は俺を牽制し済み。世間にゃとても言えねえもう一つの事件すら済んじまっている。二つとも止められなかったなんて……せめて後悔したのは逆襲したかったのになあ……。
 だが、高一だ。まだ高三でなくて良かったと思うべきだろう。高三の哲也は余裕がなかった。そんな時に、想い出してくれなんて迫って、ほんで受験日となっても想い出せなかったら混乱させちまうだけだ。サイアク、アレだ、落ちる。人のことは言えねえが。
 哲也は想い出せさえすれば、楽勝で学校に受かる。苦労はちゃんとしているんだ、ズルでもなんでもねえ。想い出して貰いてえ。
 明日は、って今日か、は休むが。言うのは明日にするか。金曜だし。

 もしも、哲也が想い出してくんなかったらどうする?

 イロイロ考えていたら、さらに時間が経っていて、気が付いたら開店前、十時半になっていた。
 起き抜けの、パジャマ姿のまま居間へ行くと、俺を見たお袋が腰を抜かさんばかりに驚いた。何だ。どうかしたか。
 ……ああ。ツラか。
 さぞ真っ赤っかだろう。目の周りは当然のこと、徹夜したんだから充血な眸。殴られた痕なんて目立ちもしねえ程。
 こんなツラをしているのに、俺は微笑んでさえいたらしい。
 俺はそのツラのまま、すでにカウンター内に陣取る親父の元へ行った。齢百五十年を重ねた人間の、そういう表情に、両親は何かを感じ取ったという。
 俺は何も考えず、天然そのままに言った。
「イロイロ考えてて……みっともねえし、ナメられたかねえから、全部休んでいいか」
 親父は無言だった。表情も変えなかった。
「もう泣かねえからよ。……大事な人にでも死なれねえ限り」
 俺は哲也を指して言ったんだが、親父の反応、雰囲気からして、女々しい初恋の人を指しているのかと思われたようだった。
「何だよ。俺は振っ切ったっつったぞ。二言なんかねえ」
 っつうか、そういう意味じゃ眼中にもねえ。
「だからもう、大事な人を見つけたらその場で言う。見捨ても見殺しもしねえ。必ずその人より後に死ぬ」
 それを三回、いや永遠に繰り返す俺の、前からの決意を口にしただけだった。こんな言葉を、死んだことのねえ人間が聞かされたら、どう受け取るかも考えなかった。なにせ頭が熔け過ぎていた。
 学校休んで家にいるなんて初めてなんで、昼の支度をすることにした。俺にとっちゃ慣れた作業。ほんで、出来なかった親孝行。親より姉より早く逝った最初の一生。子供が決してしちゃあいけないことをしちまった、しかもあんな状態で。後でそうだったと聞かされた人の親、人の姉の気持ちを思うと、ずっとこうしてやりてえくらいだった。
 百年以上分の手慣れた手つきで飯をこさえて振舞って、片づけをし、さらに洗濯モンにまで手を出す俺のリアクションは、ヤベえなんたらもんじゃねえ。だが、俺にとっての頼りになる、心からの味方は親父お袋姉貴に哲也の四人だけ。この四人の前では偽りたくなかった。たとえ事情を知らなくとも、ペーラペラと吹聴する連中じゃあねえしな。
 家のことをひととおりおえた後。お袋に、疲れているんだろ昼寝しろっつった。ほんで、こういう機会は滅多にねえから夕飯も俺がこさえるっつった。ズル休みだから店に立てなくて済まねえな親父、とまで言う俺ってスッゲー天然。
 俺も昼寝をした。腫れた頬、治る傷、真っ赤な目の周りを何とかせにゃ。いくら折檻帰りっつったって、リアクションが過ぎる。明日までには何とかフツーに近く戻そう。

 よく寝て、夕方に起きた。シャワーを浴びて、居間へ戻る。
 するとトントントンと、俎板の音がした。
「俺がするっつったろ」
「槍が降って来そうだよ」
 そりゃねえだろ。
 たまにのことなんだ、頼むからさせてくれ、ズル休みのワビだっつって居間へ座らせた。
「電話、たくさん来ていたよ」
 自分の仕事たる家事をせず、ただボンヤリ居間にいる。そんなんしたコトねえ、落ち着かねえ風体のお袋は、何か喋って居づれえのを解消しようとしているらしかった。
「そうかい。誰からだった?」
 まず、部のやつらからだと。あーああ、せっかくマジメな一年坊していたのになあ。っつうか、部のウェアを破られた。こりゃしばらくランニング一辺倒だな。……トーゼンだ、俺の咎だ。
 次にFの連中から。ああ、会えるんだ、あんないいやつら全員と。泣けてくらあ。野郎は一人一人、女は集団で名前を名乗ってくれた。あんがとよ。
 こっちの市のやつらからもあった。風邪で休むっつーコトにしといたが、珍しいどうした鬼の霍乱かとか言って来やがったと。そろそろ学校引ける時間だから、来るやつとかいるんじゃねえのか、とはお袋のお達しだ。このツラを見せるワケにゃ行かねえなあ。心配しているトコロを何だが、寝ているっつって貰おうっと。
 そう言っている間に連中がやって来た。無口な親父の店へドカドカ来て、茶の注文をかましながらタクのムスコは元気すか、とか声がうするぜあんニャロどもめ。懐かし過ぎるがここは一旦二階へ避難、言い訳は親父に任せた。携帯を見たらあるわあるわの着信記録にメール。一番こええのは部のオドシ。丁稚へ逆戻りだ、はまだいい方で、退部届けを出しておけ、まであった。あーああ、一か月程度のマジメな態度なんたら誰も信じちゃくれねえよなあ、俺でもそうすら。明日は覚悟だぜ。
 俺も人生四度目だ。味方以外にそうそうバカなリアクションはしねえ。人の家に大量に来た連中をやり過ごし、メールも電話もやり過ごし、飯を振舞って片付けた後さっさと寝た。この傷と痕を何とかせにゃ。

 次の日。朝イチで起きて、居間へ行ったらお袋が驚いていた。なんだ、ツラは大分いいぞ。泣いたハレは引いたし、殴られた痕もかなり引いている。
「お弁当の準備までしたのかい?」
 ああ、そういう意味な。
 お袋の言う通り、俺は夕飯を片付け朝飯の支度をし、弁当の支度もしていた、いつものことだ。お袋は、槍じゃなくてB29が飛んで来そうだと言った。そうかいそうかい。ほんじゃついでに。
「朝飯と弁当の支度、これからする。朝、もちっと寝てていいぜお袋」
 そう言った。居間に座って新聞を読む親父から抗議の声は上がらなかった。っつうか、言うような親父じゃねえ。
 味方の二人とも、これは俺の罰だと、美大へ行かせてもらう為のものだと思ったようだった。……違うぜ。したかったんだ、親孝行。何も出来なかったからさ……。
 昨日サボったから、イロイロあるから今日は帰らねえけど明日からは朝にゃ戻る。そう言って、荷物をイロイロ整えて、いつもよりも早く家を出て、四番駅まで走って行った。

 始発電車に乗り込んで、ようようアタマが巡り出して来た。待てよ、朝にゃ戻るって朝帰りって意味じゃねえ? ヤベえリアクションにも程があら。っつうか、いっくら味方の前とは言え油断し過ぎなような……。

 一番駅へ降りる。今日だけ。一瞬だけ。すぐに視線を戻し、歩道を横断した。信号は青だった。
 一走りで辿り着く学校の正門を飛び越える。一番乗りは俺なんで、もう預かっていたクラブハウスの鍵を開ける。井上名義のロッカーは、まだ確保されていた。
 そこへいつもよりちっと重い荷物を置き、部屋を飛び出し、正門をもう一度飛び越えて。
 ただひたすら走った。

 ほんでいつもより早い時間に、正門前で部のやつに声を掛けられた。
「何しているんだお前!」
 おおこいつも生きているんだ。って、サボったんだぞ、開口一番にそりゃねえだろ。
「今日は合同の実地だろうが!」
 ああ、そういや。忘れてた。
 ただがむしゃらに走りたかったんで、学校の周りをグルグル走っていたバカな俺を心配してくれたらしい。有り難いことだ。って。
「あーーーーーっっ!! 遅れる!!」
「当たり前だ!!」
 ヤッベえ、そういやB高まで行かにゃならねえんじゃねえのか俺!? そういやまだバイクもねえし、今の俺はチンタラ電車で行くしかねえのに。アーララララ、真面目にお務めせにゃならねえっつーのに!
 注意してくれたやつはこっちの校舎で実地、さらには例の教官役をする。ほんだからいいが、俺は大遅刻一歩手前だ。大切な仕事とやらをせにゃ確かまた折檻だよな。冗談じゃねえ、俺は野郎とどうたら趣味は丸でねえんだ。
 なーんつっててもしょうがねえ。急いでクラブハウスへ戻って着替え、ダッシュで一番駅へすっ飛んだ。
「元気なやつ……あれだけ走って、まだああか」
 とは、サボリの罰をどう加えようかと吟味していた上級生様御一同全員の感想だったそうだが知ったこっちゃねえ。

 走りまくってギリギリで所定の場所へ、所定の時間に辿り着いた。だからよお。せっかく懐かしいんだからさあ。そうやってさあ。黄色い声とは名ばかりの、おちょくりてえっつー態度満々で、……おちょくらねえで、くんねえかなあ……。
 俺は一応真面目に、誰かさんや相談役のツラも姿も視界にゃ入れず、フツーにテキトーに講釈を垂れた。垂れているんだから聞けやあんたらよ。サッカー部君はねえだろクソッタレ。
 と思いながら、これでも一応親切に教えた。つもりだ。っつうか、なるべく前の台詞通りに言った。あの二人は絶対こっちを監視している。ヘタなリアクションは命取りだ。
 だーかーらー。
「顔面は避けろっつったんだが」
 生きているのに感動した。したはいいもののオンナの命って言うじゃねえか顔面は。あーああ、可哀相だぜ。見捨ててゴメンな……。
「ボールは足で蹴ってくれると嬉しいんだが」
 そういや入院するんだよな……止められるワケもねえし……っつうか、あんだけの大事件を立て続けに喰らって十五年間地獄の血水ったら、……入院して貰った方がいいんだよなあ……。
「ボールをキープするっつーのは、間違っても手に持ってうろたえる、って意味じゃねえんだが」
 あんな野郎に嫁いじまって……止めようかなあ……駄目かあ、塔のテッペンにゃ意味があって閉じ込められているんだ、そう出来る力のあるやつでねえと……三年弱なんか絶対阻止したる。ほんでも哲也が想い出してくんねえとなあ……。
 俺の態度は我ながら、アレな運動神経のクラスメイトをちっと心配している、というふうに見られただろう。そういう自信はあったつもりだ。
 ちなみに例の二人はこのシーンを観て、こう言っていたそうだ。
「斉。小突くのもいいけどな。休んだそうじゃねェか。お前のと同じ教室内だぞ、心配するんじゃねェ? あァらどォしましょサッカー部くゥん、休んじゃってあたし心配だわァ、とか」
 それはねえ、安心しろや。
「俺は単に感謝の言葉を丁寧に述べただけだ」
 そうかいそうかい。ものは言い様にも程があら。
「丁寧過ぎんじゃねェ?」
「ほう……心配か」
 要らねえよ。
「お前のにな。間違った嫉妬を廻り回ってお前のに、あろうことか暴力で向けるな犯罪者野郎」
 そうやって、自分の味方に良いことを言えるのなら。何でケリをつけられなかった?
「あんなモンはおちょくる程度にしおとけ。それとも、また誰ぞに足を引っ張られた挙げ句お前ので憂さを晴らすのか?」
 おうおう、もっと言えってんだ。
 結局この二人は、言うのも懐かしいがあの左隣のやつをもちっと折檻して転校させ、Fへクラス替えしようとか何とか言っていたらしいが残念だったな。あのクラスはもう旅館内。何があってもみんなもう、寛げているんだよ。
 俺にとっちゃどうでもいいイベントをやり過ごし、奴さん達とは違う体育館へと向かった。
 俺は白、哲也は赤。赤白黄色……という順番なんで、俺と哲也は同じ体育館内にいる。ほんで競技はバレー。
 哲也がいる。
 久々に、手を使うスポーツをした。スッゲー違和感。
 まあいいや、来年のタメに修練したろう。いっくらなんでも一年後くれえには想い出してくれるよなあ。あのカッコ良さっぷりもまた見てえし。
 教わった通りスパイクをぶちかましていたら、何か周りで黄色い声がまた上がっていたらしいんだが、知ったこっちゃなかった。

 スパイクとスパイクサーブを無心で繰り返して本日は終了。二週間後の本番に備える。
 っつったって、このチームは三回戦で負けちまった。知り合いはいねえし、あんま言いたかねえがはっきり言って弱え。よくぞ三回戦まで、ってカンジだった。俺もテキトー、やる気なかったしな。
 白のリレーはメンツがああ、事前練習もホケツの俺も必要ねえ。っつうか、そんなんがあるのも忘れて、前は行ってみようかなとも思ったB高をさっさと出た。

 五番駅構内で電車を待った。
 周りに気を配る。問題人物どもがいると周りでキャーキャー黄色い声が上がるから、お出ましが分かる。今んところはそれはなし。
 視界に、あの、一生目のまんまの哲也の姿が映る。
 同じ車両に乗ると、ダチな野郎共に声を掛けられた。……会話、聴いてっかもな。
 ……。
 はっはっは、どうたら趣味はねえぞ。ただのダチだぞ。
 懐かしくも生きている、若くて青い野郎共よりご質問。昨日休んだんだってな、だと。カゼ引いてさ、っつったら、部のやつらもわらわらと集まって来やがった。だーかーらー。
 野郎の巣窟は勘弁なんだが、デンワの返事もしていねえし、メールも打ってねえしってんで、そういう質問攻めはしょうがねえ。テキトーに誤摩化して、テキトーに立ち位置を変えた。嬉しそうだな、とか言われたんで、人間健康が一番だと答えてやった。

 一番駅へ降りて、こういう状況なもんで、走っては学校へ行かなかった。するってえとやっぱ信号は赤だった。なんとなく、俺に暗示しているような気がする。そう、止まったら終いなんだ。
 駅からはC高とかD高の野郎どもとおサラバするんで人が減った。代わりに、っつうのも何だがF組の連中が寄って来た。懐かし過ぎらあ……ミンナ若いぜこんチクショー、全員生きている……ホントにいいやつらなんだ、こいつらは……。
 感慨にふけりながら、男にも女にも軽く、なあに大したことねえただの風邪だっつったら、まだいた部のやつらから蹴りが入った。何するんだ病み上がりに、っつってやった。するとこう言われた。
「せっかくいいセン行っているのに。どうせなら、部活停止中に休むとかしたらどうだ?」
 そいつは俺がズル休み系のサボリだと思った上で親切にも言ってくれたようだが、俺の足はハタと止まった。
「……部活停止? 何で?」
 アホな会話だった。俺だけ。
「何でって。中間があるだろ、合同前に」
「……アレ?」
 ちゅーかん?
「アレって……おいおい、まさか忘れているとか」
 まさか。ただ単に、大昔のチンケな風習なんて想い出す以前だってそんだけだ。
「ちゅーかんって……試験か」
 間抜けを絵に描いたような応答だった。
「……まだ、休みが足りないか」
 ミンナに心配されちまった。だろうなあ、俺でもそう言わあ……。
 って……。
「試験……勉強……」
 せにゃ、ならねえ……。
 俺が、試験勉強なんてゼンゼンしていねえどうすんべ、っつう系の青いツラを浮かべたのを見て、周りのミンナはやっぱ休みが足りねえぞ、とか、授業マジメに聞けよとか、ありがてえ心配をしてくれた。あんがとよ、涙が出らあ……。
 落ち込んで、そのまま心配されたまま学校へ戻る。大体のやつと再会で来たから、感慨にふけるのはここまでにしといて、親切心で忠告された通り、授業に集中することにした。ヤベえっつの、これじゃ今の親父お袋にビシっと格好つけたのがキレイサッパリふっ飛んじまうじゃねえか。ベンキョせにゃ。
 泣いた分だけ、集中した。

 泣く泣く部活へ出た。ほんで散々怒鳴られた。落ち込まあ……。
 結果はやっぱ丁稚へ逆戻り。死ぬまで走ってろとのお達しだ。おう、そうすらあ。
 退部は免れたものの、破かれたウェアの新調をおねだり出来るワケもなく、ただひたすら走った。だから、哲也が小松と一緒に歩いて下校するのも、斉藤が日暮れ前に、ひとりチャリンコで脇目も振らず帰るのも見た。他にはあの二人とも、蛇とも時間別にスレ違っていたようだった。

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