blog 101

Fri, 7 Apr 2006

1.全てを。

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 マークシートの答案用紙をテキトーに塗り潰したら数日後、合格通知が来た。それが三月。
 早速その学校へジャージで行った。入部させて下さい、お願いしまーす。早速言い付けられたお役目は、通り一辺倒の学校周辺ランニング。時間は部活終了まで、よくあることだ。
 時期はまだ春分の日前。とはいえ春休みだから、学校のある日のように、夜まで営業ってワケじゃねえ。サッカーボールが見えなくなる頃、おーい新人ランニング終了、と声を掛けられた。この号令に応じられた、俺と同期の桜はもう数名しか残っちゃいなかった。よくあることだ。
 こんなんの毎日で、月も改まって、真新しい詰め襟を纏う前日に、ようやっと入部届けを手渡された。書道五段の腕前で、これだけ書く。
 一年 江崎知治
 手渡すと、背後から声を掛けられ、振り向くとボールが飛んで来た。トラップし、返す。
 次にボールに触れたのは、入学式後の大量入部希望者が一桁にまで落ち着いた後だった。そうからは、着る服も、私服のでもなく一年のそれでもなく部のウェアになった。
 ボールには触れるではなくプレイになった。それが毎日。他の同期はグラウンドにいてもピッチに立つ奴はおらず、俺一人の分だけ先輩がグラウンドへ追いやられた。よくあることだ。
 夢は全国大会。の出場じゃなく、一回戦突破。中坊の時からン連続一回戦敗退、だ。ただの物見湯山へ行ってんじゃねえっつーのな。
 こんなふうにだけ思っていた入学式。屋根の下の運動場たる体育館、あんま用はねえ教室は確かに目新しかったがそんだけ。同級生とはそのうちテキトーに喋るだろうってそんだけ。校長先生や来賓の長いセッキョー、アタマいい奴のご挨拶なんてもんにゃ興味ねえ。ウツラウツラと寝コケていた。この学校は新入生を一人一人呼びつけることはなかった。アタマいい奴が全部その任を負ってくれたようで、いいことだ。だから俺が起きたのは、荘厳だったという式が終わってさっそく授業、というタイミング。何百人からの同級生みんなが起立した音で、だった。
 ああ終わったか。それが感想。前の奴について行って、これから毎日の休憩場所たる教室へ向かった。授業なんて睡眠タイムだ。ありがてえことに、席は後ろの方だしよ。
 最初の授業はロングホームルームだと。お決まりの自己紹介に、なんたら委員の決定とかだろう。押し付けられそうになったら部があるんでって免れよう。教室の廊下側、後ろから二番目が、これからひとまず俺の定位置。端っこだし、悪くねえ。
 センセが二人やって来て、自分達が担任だとか言っていた。そうかいそうかい。それからお決まりの自己紹介だ。これも学生のお勤めだ、お互いお疲れさん、だ。俺の番が来たんで、出身中学と名前を名乗ってすぐに座る。五十音順で、野郎が先だから、おわるまでが長い。同じ中学出身の奴はあと三人いたが、全員別なクラスだった、っつうのが分かっただけ。前後左も覚えやしなかった。必要ならそのうち覚えんだろ。委員の決定はクジだと。委員長が七で図書委員が十三を引いた奴で、とか、担任がテキトーに決めて行く。さくさくでいいことだ。俺が当たらなきゃいい。なんまんだぶ……全部外れた。ラッキー。
 今日は、この次が本格的授業の始まりで、担当の数学だった。そうかい。あとは昼、五限目、六限目だという。高校ったってなんら目新しいモンはナシ、こんなモンだろう。
 文系種目は苦手だから、数学ならまだいいか。そう思った三限目相当がおわる。なにもする気が起きず、ボケっと座ったままでいると、前から誰かが近寄って来る気配がした。通り過ぎるんじゃねえ、俺に用だ。そう思って顔を上げた。
 たったそれだけで、全てを想い出した。

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