blog 92

Sun,27 Jul 2003

He strayed from the path of ... 14. いいでしょうか

more...

 それでー……後は自分に目を向けた。三年になって学部名も変わって、とんでもねェ忙しさだったが、時間の作りようはおベンキョしたからな。西園寺とちゃんとおデートするお時間も取りましたがー……。豪華ゲロ大会ですっきり出来なかった唯一の人物だ。疑念はむしろ深まった。
「震えていたと言ったな遼。それを自覚出来たのは西園寺もかい?」
 なにせありゃァ俺よかドタマいいからな。といっても、実を言うと俺達は、学業ですら坂崎の遥か下だった。
「……そうなのか? あんたらは同成績って、西園寺が二位で……」
 向こうはこっちと並び称される大学だ。坂崎はその最難関の学部の上から五番目で通ったそうだ。つまり、斉に本来関われるやつらから見れば、斉と成績も対等に渡り合える男。そう認めらていたのさ。
 これを知ったのは就職先が決まったつい最近だ。周囲に目を配れるようになって初めてその話を人伝てに聞いた。
 もう愕然なんてもんじゃなかった。
 本番直前の模試ではやっぱ俺と坂崎は同点だった、な筈だと、あの時ァ全く自分しかアタマになかった、ホケツでもなんでもと……知らなかった、恐怖した、人間以下と軽蔑し切っている西園寺を抜けず、器の全く無い俺と意味無し競争をしていた筈の男が、実は実力を抑えに抑えて最後の大本番だけ本領発揮、なんざ……まるで斉が考えていたことじゃねえか!!
 そして……周囲の評価もそうなった。いや、むしろこうだった。
“ようやっとか”
 ……そうだよな。ガキな詰め襟の時、手の内を見せる必要は全くねェ。初対面で酒盛りした程度で、実はボクあんたの相棒程度の頭脳がありましてェー、なんて言うワケが無ェ。それによ、仮にあの、九九を憶えたての、が本当だとしたら、……あれから斉並のアタマに持って行った程、努力したってことさ。
 やっていたつもりだったよ、俺も、西園寺も。それこそ、四六時中そればっか考えていた……。それを、ンなもん屑、みてェに、超えていたのさ。
 当然だ、さすが男坂崎だ。……そう思われていたと、だからこそ連中は世間の評価が地の底なドンケツ男やツラだけ女なんざ見向きもせず、坂崎にだけは、そう、成績も“やっぱり”自分達と対等な男に挨拶しに行ったのかと……。
 俺と西園寺はもうすぐやつと近所住まいになるが、縁切るもなにも関係ねェ、挨拶すら出来ねェよ。相も変わらず隠れてコソコソ黙って同市内に引っ越しだ。会わなきゃいいんだろって開き直って行きますよボク達。これが俺の得意技だからな。

 豪華ゲロ大会の後、斉はその礼のつもりか、とっくの昔に消滅した肩書きを持っていた男に助け舟を出した。それが花火大会。西園寺だけがほっとする解決方法だった。なにせ雪の日の実情ったらああだからな。五月の切っ掛けは騒動、騒動の直接の切っ掛けが雪の日。斉はどうしても梅の字へ誤解の大権化たるあの日を言わなくちゃならなかった筈だ。どう言っわれたか知れたものじゃなかった。いや、事実をそのまま言われていたら……そう西園寺は怯えていて、だから疑惑が深まっても、やっぱ俺にゃ詮索出来なかった。
 斉が俺にゲロさせたコトは、本来西園寺が訊く、俺と西園寺でハラ割りあうもんだろ? だが斉はどうせお前達話し合ってねえべと言って、安心しろや俺様が全部悪いコトにしといたからよ、後顧の憂いは絶ってやった、後は俺が全部やれと、解決は自分でしろと、そう斉は態度で語ったのさ。以降俺達四人の接触機会は無い。

 俺のハラを鎮められるのはこの世にただ一人だ。
 さて皆さん。僕ちゃんはこれを梅の字君に言っちゃってもいいんでしょうか。

...next

Powered by Movable Type