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Sun,27 Jul 2003

He strayed from the path of ... 11. 魔法使い

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 かっ攫うなんざいつでも出来た。だがそっから先どうすればいい? 俺達は梅の字にこう言われたらお終いだった。
よくも強姦しやがって、あんたなんか嫌いだ
 とな。
 カラダは攫えるがココロは壊す事しか出来ない。そうなったらもう取り返しがつかん。あいつは地獄に突き落とされたその時から、よく生き、よく壊れずにいてくれた女だった。あれ以上やれば、すぐ、……簡単に……。
 何の手出しも出来なかった。しちゃいけなかった。それどころか、
 ……こう思っていたのさ。
 さっさとカラダを壊してくれ。そしたらあのガンコ親父に責任を転嫁出来る。罪を暴かれずにココロも掻っ攫えると……だから非介入だった。
 なんせ体力ナシっての知ってたから、さ。……あいつはこの星一番のガンコ女だ、親譲りで……俺達が傷つかずに済む解決方法は絶対に採らん。

 梅の字に去られて、初めて自分が地獄にいると実感した。あいつがいるからこその楽園だったんだ。そりゃそうだ、あいつは俺達が負うべき業の全てを背負っていたんだからな。
 梅の字という魔法使いのベールが無くなって、初めて現実という地獄に直面した。
 一番のガッコを目指した俺達三人の心境は生き地獄、それだけだった。人の目よりも何よりも、梅の字の凄まじい逆襲にただ脅えた。
どうだ、あんたらと縁を切れたらここまで清々出来るんだぞ。自分はこんなにも独りで生きていける。態度で脅すとはこうやるんだ。
 あいつの地獄が中三時代なら、俺達はさしずめ高三時代だ。二度と戻りたくない。それに戻れと脅していた俺達……ハ、……因果応報だ。

 それに気付いた俺達の心境は、愕然? 呆然? ……そんなモンじゃねェ。噂を聞いていながら事態を軽視した俺、大元の加害者でありながら事態を軽視し続け、自分に向かうべき嫉妬のツケを回していた西園寺。
 そんな両人が出来ることはひたすらおベンキョして絶対無理と言われる最高峰に受かること、それしかなかった。甘いおデート? ンな余裕はどこにもねェ。する気もなかった、しちゃいけないとさえ思っていた。
 あの時は誰もがそうだった、だから誰もが喉から手が出る程捌け口を欲しがった、その格好の対象物、それが梅の字、ああこれがあいつの中三時代だったんだと思って……。だから俺はむしろ、梅の字が自分の意志で自ら身を引いてくれたことに拍手した。恨まずに済む、とな。なんぼベンキョしてもあんだけ希望偏差値と絶望的に差があった、そんな時目の前でケッコンだ、同じ大学にヨユーで一番合格だ言われりゃあ、事情を全て知り、受験を贖罪としていたこの俺でさえ妬いただろう。高二の時こういう心境になると分かっていりゃあよかったんだが、高三時代というものを、甘く見過ぎていたのよ。
 それを誰より弁えていた梅の字の行動は正解だった。この時だけじゃねェ、毎回な。だから斉も、いつだってかっ攫えたのに出来なかった、してはいけなかった、いや、するなとさえ思っていた。

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