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Sun,27 Jul 2003

He strayed from the path of ... 10. 気分は爽快!

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 高三どころか四月三日になったばっかに弟子から突然お電話、部を辞めるとよ。表立っては梅の字が身を引いた、だが実情はまさかまさかの第三者介入。俺も斉もアケも全く盲点だった。この人物にそれを言われりゃオシマイだったということを全く考慮に入れていなかった。二年間という動かし難い事実を突きつけられ、無言で手を引くしかなかった。なんの手助けも出来なかった。
 更に話はこれだけじゃなかった。単にガンコ親父の介入ならまだマシだったが、一番の当事者、梅の字が自分の意志だけで斉から身を引いた。親父さんの介入なんか関係なくな。そしてこれは、あの中三時代の壮絶さを物語るものだった。
 梅の字だって、斉がそれなりの手を打っていたとは知っていただろうさ、ちゃんと自分の身を守ってくれんだろうってな。あんなことがあってもアイシテルなんざ言うんだ、ソートーどころじゃねえ、梅の字こそ斉にダップリ惚れていただろうによ……それでも身を引いた。
 あれはな、いかに中三時代、どんな盾があったとしても翳で凄惨な虐めに遭い続けていたかの動かし難い証拠だ。
 あいつが斉から逃げたがっていた、離れたがっていたのを一番知っていたのはこの俺だ。梅の字は宣言後、つまらねェ成り行きで自分から別れ話を切り出したことがある。俺と斉で止めたがな。その後も散々あったが、あいつはあれ以降、そういう兆候を示さなかった。
 斉に、人前であんな宣言をされたら最後、どういう経緯であれ別れれば、立場が無くなるのは梅の字だけだ。やっぱりな、と散々陰口どころか表立って誹謗中傷されるだろう。中三時代=地獄の再現だ。
 そうなりゃ今度は一年間どころか、管内という地に留まる限り永久に喰らい続ける。俺達は梅の字が、それにどれだけ脅えていたかを知っていた。だからこそこの策を採った。タカを括っていたんだ。
 地獄に逆戻りしたくなければ隷従しろ。
 口には出さずそう言い続けた。態度で梅の字を追い詰め続けた。
 婚姻届を握っていたこともあった。舅の嫉妬ったって撥ね退けられる。あんなチンチクリンな娘を娶るスキモノがこんな大した男だ有り難く思えと尊大な態度続行で、逃げ場も退路も全部絶ったつもりで……。
 俺達は梅の字が、こういう状況、すなわち生き地獄、をたった独りで潜り抜けた女だということをすっかり忘れていた。自力単独で地獄を這い上がった女だということも。そうしようとひとたび思えば、テメェの身に風穴開けてでも、どんな強大な敵を向こうに回しても鮮やかに起死回生の行動に出る女だということ全てをな。
一番男に組み敷かれりゃ、どんな目に遭わせようが隷属する。
 そう俺達が自惚れ、自分を見下していると、あいつは最初から分かっていただろう。
 これは言い換えられるんだよ。
一番女が微笑めば、どんな目に遭わせようと隷属する。
 そう西園寺が自惚れ、見下している、とな。どうだ、そう思うだろ?

 正に似た者同士だった。それに気付かず、見てみぬフリをし続けた。俺達が西園寺に接触すれば梅の字が大泣きする、そんな下らん理由を付けて、その先にしかない根本的事態解決を延ばしに延ばして……。
 今度こそ俺達が、地獄行きの片道切符を握らされたのさ。
 あいつは身を引いたんじゃない。地獄行きをチラつかせるだけの俺達に裁きを下したんだ。だから高校受験の比じゃねェ人生の関門たる大学受験・就職時期に離れた。二度とあんな目にゃ遭いたかねェってな……さぞ気分爽快だっただろう……。

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