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Sun,27 Jul 2003

He strayed from the path of ... 9. 油断

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 アケは叱らないのセッキョー話を披露してくれたが、2Bの全員が俺に対してそうだった。誰もなにも言わなかった。背後にゃ一見保護者がいたしな。俺と関わればいいことはない。あのクラスの全員が知っていた。去年の再現だ。
 正確に言えば、これはもっとガキの頃からだ。俺ァ女にゃモテましたけど? 典型的同性にキラわれるタイプ。ボクってお親しい野郎ダーレもいないのよ。知ってた?

 似た者同士がどうのと言っていたがな。そういう意味で、確かに似てるな斉と西園寺は。片や俺を相棒と呼び、片や俺がなにをゲロしても好いてくれて……人間なんか取り得があるってホントだね。
 西園寺は、俺がなにを喋らなくても惚れハレは見抜いていた。なにせ梅の字の資質を会話無し、ひとめで見抜いたんだからな。とっくの昔にバレバレよ、誤解じゃなくマジ本式で嫉妬していた。釈明も懺悔もされなかったことで確信を得ただろうな。……言えるワケァねェよ。
 極めた時の会話からしてこうだった。色っぽさの欠片もねェ上、話題の中心はお互いじゃなくって梅の字ちゃん。不安だらけのスタートさ。
 一晩経ったら両人のこの今更な行為がそれすら梅の字にメーワクが行ったと聞いて愕然とした。だから坂崎がさっさと極めろと言ったたんだ、梅の字がノーガードになる修学旅行前に。梅の字が掛けた魔法は解けかかっている、とこれまた今更気が付いた。
 次の日以降、両人はもう派手なプレイが出来なくなった。なにかすりゃ自分がねめまわすように見られる、ならまだしもというより毎度のことだが、梅の字に更にメーワク行くんじゃないかと脅えてな。
 さっきも言ったが修学旅行は斉は非介入の立場を取らざるを得なかった。あの色ボケノロケ野郎が自分からめっさ遠慮してさ。だったら俺達だってそういうことせにゃなんめえよ。
 と思っていたら、事態はそれだけじゃ済まなかった。あの騒動で俺と同立場の、しかも今年も同じクラスの女が部屋の全員とも揃って大々的にアタマを下げたと知った。愕然? そんなレベルじゃなかった。ワビを入れるべきはまず俺達両人だ。なのに現在に至るもナシ。確かに贖罪はしていた、ような気がするが実際はメーワク行きっ放し。これで楽しくおデートなんか出来るワケがねェ。両人共々ただ連れ歩いているだけで、修学旅行はお互い完全沈黙だった。そしてこの行為は、今から思えば完全に大間違いだったのさ。

 いずれ極めたしな、西園寺は梅の字に部活を辞めるなと言った。まじめにやっているんでしょう、ってな。確かにその通りなんだけどさ、生徒会室本部なんてアヤシゲな看板の密室に関係者以外がいたからな、元々なんだありゃと言われるシロモンだ。勿論俺と斉が悪いんだが、世間的悪者はいつもの通り梅の字よ。
 今から思えばここで取るべき正解の行動は、俺が梅の字に辞めろと言うことだった。そうすりゃ立場の弱い女二人に責任を負わさず、俺が世間の耳目を集められたんだが俺もこの当時そこまでアタマ回らなかった。なにせこれは俺にとって唯一の贖罪手段だったしな、奪われるワケにゃいかなかった。これで梅の字は、せっかくくっついた美男美女アタマヨロシイご両人の仲を邪魔している、と思われるようになっちまった。
 つまり俺は、またしてもひとり保身したのさ。

 フツーはさ、他人の目なんざそう気にし過ぎるもんじゃねェ。
 だが実際はいつもいつも梅の字に被害が行く。だから俺達ご両人は、極めた以降もひたすら他人の目を気にしなくちゃならなくなっていた。はい・あーんなんざ派手な行動にゃとても出られず、ひっそり静かなお付き合い、これしか出来ねェ。そう思っていたのさ。勿論これも、全部とにかく大間違いの行動だった。

 修学旅行後、梅の字はクラスの女共全員と仲良くなっていた。斉とお付き合いなんざ終生嫉妬喰らいのポジションだ。普段っから見せつけまくって恨みを買っていた、負わされていた梅の字が、誰の力も借りずまたしても自力独力で大勢の味方を手にしていた。さっきも言ったが修学旅行は斉は一切非介入。それでもか、って2Bの誰もが「すげェじゃん」と感心した。あの坂崎でさえも。
 坂崎ちゃんは斉にすら敬意を表するタチじゃねェが、梅の字に対しちゃ素直ストレートな賛辞を送っていた。

 じゃあ翻って俺達は?
 まず俺。ワビを入れた二年連続同じクラスの女にゃ生徒会役員選挙でこう言われた、
「ウメコさんの為に清き一票」
 ってな。去年の視線の再現がもう起こっていた。
 次に西園寺。自分トコのクラスでオトモダチ、去年から引き続きゼロ。味方も盾も持っちゃいなかった。両人のやることなすこと立場の弱い女への攻撃行為、にしかならなかった。

 すぐに夏休みになってくれたからな、ちょいと頭冷やすべって、久々に地元に留まった。西園寺はマジ部活が休み中にもあるから、地元にいたって仲良くるんるんおデートとは行かねェ。ひたすらおベンキョしていたさ、最高峰への挑戦、公的な贖罪よ。まーまーゼンゼンどこにも足らなくってさー。遊ぶもへったくれもねェ、真っ青になって机に齧り付いていたよ。
 西園寺に無理矢理時間をとらせて、イッペンだけ浜辺でデートした。ナイスバディに飯は美味い、優しくて気立てよくってさあ。この時朧気にさ、一緒になってもいいかなあ、って、思ったね。
 手は出せなくてもさ、ほっとした。平穏だった。静寂だった。

 俺がフクカイチョーなんざモン二年連続満票で、なんてのは全部斉のついでだった。記名式でなければサテ何票集まったかな、程度。俺が二年連続MVP次点だったのは一人身だったことと体力勝負なネタだったからさ。三年の時もあったら一位も二位もへったくれもねェだろうなァと祈りながら開票したよ。イチオ満票。ホっとした。
 合同の後に体育祭ってーとやっぱさ、規模ちっちぇえからなんだかな、と思わんでもないが、まァイベントだ。楽しんでやんべェよとは思った。そしたらええ格好しいの斉が個人種目、しかも梅の字とは別行動だと。あーコイツ、もうガキじゃなくなったなァと、安心したさ。自分を棚に上げてな。
 あとは俺達両人だ。さっきも言ったが派手メな行動は取れねェ、フツーにしようと思ったさ。
 西園寺はクラスから離れて俺んトコへ来ていた。なにせオトモダチ無しだからな。と言ったっておノロケかますでもねェ、単に応援していただけだ。
 だがまたしても俺はなにも考えちゃいなかった。西園寺にさ、ちゃんと自分トコのクラスの連中と一緒につるめとか言えば、この先半年同じ教室内にいるやつらと仲良くなれる機会もあっただろうにな、梅の字みてェにさ。単独行動を取らせたことによって二年連続孤立化させちまった。
 進路相談の時期になった。斉と梅の字の道がここで別たれるのは分かっていたし、そうなりゃまたしても梅の字は犠牲の子羊化、集中砲火な身になるのも分かっていたが当然斉も心得ていた。あの時点でもう今の要塞なマンションと何十人もの屈強な警備陣を整えていた、いつだってかっ攫えた。こんな他人を犠牲にするしか脳のねェ田舎なんぞにゃオサラバだった。
 でー。俺はもう、バカップルに対して気を回さなかった。その必要なかったさ、もう斉はガキじゃなかった。だからあの時期はおベンキョ、西園寺とのお付き合い。これしか頭になかった。

 だが両人は仲良く梅の字に対して重大な罪を背負っている。
 よって実に最悪なことに、ご両人の共通な話題のほとんどをコレが占めていた。そりゃ他にもあったけどよ、弓道とか。でもさ、結局は梅の字絡みの話になっちまう。俺はホレた女に二股ですとは言えねえし、西園寺は二股ですかとは訊けなかった。訊いて俺様がハイそうです、と言ったら独りに逆戻りだからな。しかも、ということは自分の親友を恨むハメになる、親友のせいじゃねェのにな。お互い抱え込んで大学受験に突入よ。そしたら梅の字が斉と別れちまった。
 油断していたんだ。俺も、斉も。

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