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Sun,27 Jul 2003

He strayed from the path of ... 8. 暴行

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 こんな身分の俺が、そんな経緯の女二人を並べて見比べる、なんざ出来るかよ。と思って、合同の打ち上げの時、ヨユーのない行動しか出来なかったら、当事者二人以外のほとんどに「なんだありゃ」と思われた。タラシ仲間なテっちゃんノリちゃんにゃバレバレだっただろう。んでもー。……この通りさ。なにも出来なかった。
 本当はもう放浪の旅をしなくても良かった。それでも出た。
 これで出なくてさ、かなりなおカラダって、制服の上からもよく分かる梅の字の水着姿を見ちまったら、俺だってなにをするか分からなかった。逃げたさ。その先にいたのは西園寺。
 俺は女に手が出せない。それでも告ったって良かった。幼馴染みはもう人生を確立させていたし、相棒も危機を乗り越えた。
 ところが俺ァつまんねェ意地を張っていてな。こんなボクちゃんだから? カッコ付けようと思ってさ、成績で。
 ホレ西園寺アタマいいからな。俺と西園寺の差は斉と西園寺程じゃなかった。だから追い抜いてやんべえ、ってよ。どう見ても俺に気があるのは分かっていたが、それで昔失敗しているからな。あーんな態度続行だったのはこういう理由だ。

 なんで斉を入部させなかったって? 斉が拒んで来た。自分が介入する前に、俺に梅の字へ告れと。そして振られろってな。梅の字の部活動は処分のひとつだった。帰宅部にゃ出来ねえ。かといって、他に行かせたらさ、あいつぁホレ、ひとのノーミソまでまっさらにしてホレさせるの特技じゃん。俺としてもそれは阻止したかった。だから斉は俺こそが部を辞めろ、これ以上二人っきりになるなと態度で語ったのさ。
 うっせーんだこの野郎、諦めたって知っているクセにと思って斉と梅の字にちょっかい掛けたら怒ってさ。そんで生徒会本部の出来上がりよ。

 文化祭でも実はひと悶着あってな。それで惚れていたの完全に思い出した。大したカッコをしていたが、そんなんじゃなくて、またしても実物ありのままに惚れちまった。
 我ながら、なんであんなどうでもいいツラと思わなかったのか後悔したよ。本来は興味ねえ外見と成績だったんだからさ。なのに本質を見ちまった。運悪く俺が生涯の道と思っていた分野に興味を持っていた。それで惚れ続行さ。

 とにかく斉は部室に来た。今更入部という形も取らず、俺か梅の字を辞めさせもせず。なんでかというと、俺がこの分野で贖罪をしていたからだ。梅の字相手なら斉でも、まあ斉は全部だが、とにかく手本を示すなんざ誰でも出来た。だが斉はそれを俺にさせ続けた。お互い公的に謝罪出来ない身、十八になればケッコンして見捨てたやつなんぞにゃ二度と関わらせねえからそれまで贖罪済ましとけ、ってな。
 俺は当然ただ従った。もうこれ以上惚れたかねえのによ。だから、文化祭以降二年になるまであんまり口利かなかった。冬休みも春休みも旅に出た。

 なんで同じクラスなんだよ。これが二年になった時の俺の感想。悪いがそういうワケでサッカー部君にゃ犠牲の子羊になって貰った。坂崎ちゃんはそれをさぞ嫌悪しただろう。前の件も含めて俺に逆襲した。俺がどんな立場であるかをサッカー部君の真ん前でペーラペラと喋って戴きました。なにも言い返せるワケがねえ。ところで女史。なんで相馬なのかしら?
「あの子は私の庇護下でもなければ制御下でもないわ……?」
 あっそ。でェー。俺ァまたしてもクラスに居辛くなった。前門の虎、後門の狼、隣にゃアレで近所にゃナニだ。素ン晴らしい監獄の出来上がり。

 日がな一日地獄だった。こんな心境でコイがどうの出来るワケねェ。学校生活? ナニそれ状態。俺ァ仮病で休もうかと思ったね。
 一番な斉。本当の影響力は斉のそれを遥かに凌駕する梅の字。状況を見抜き的確な案を出す佳い女。誰もが一目置くいい男。さっさと進学を決めた女史。幸せの首にナワが待っている名前負け君。実はモテモテのサッカー部君。……俺は? なにもねえよ。
 見たろ二度目の合同をよ。俺の立つ瀬はなーーーーーーーんにも無かった。なんであれで四位だったのかね。俺ァ投票しようと思ったもん、テっちゃんによ。その方が良かったんだ。
 もし坂崎が生徒会の選挙にリッコーホしたらさぞ見ものだっただろう。完全に票割れたな。斉との結果がどうなるかはあんたらですら解かるまい。……勿論俺は対象外だ。
 合同二度目の三日目は部室にいた。とってもとっても、西園寺ちゃんに極めるとかそういう身分じゃありませんでしたヨ。またしても居辛くて逃げていた。その間また嫌な目に遭っていた西園寺。俺のどこがいいのやら……
 一位を取ったらガバっとアタマ下げようと思ってましたケド? ……またも恥を掻きたくなかった。マヌケな二位がアタマ下げる、その方が行事の体裁も立つのにな。……嫌だったんだよ。そうやって事態を先延ばしにした。そんなことをすればどうなるか、鮮血の前例をこの目で見ていたというのにな。

 なーんて言っていてたら西園寺をかっ攫われそうになったんで今更極めた。その時ァ今までの、梅の字の惚れハレ抜きな、をペーラペラ喋った。そしたらさ、西園寺も梅の字の件でなにかやらかしたと。おーいおい、ただでさえややっこしいっていうのにそりゃねえべと思ったが、聞く役は俺様だ。聞いたさ、四月のおデンワの内容、騒動時の感想をな。
 ……騒動時の行動を訊くべきだったんだよ。懺悔だったから、いや、西園寺は坂崎に次いで速攻で動いた人物だからとワザと訊かずにいて……。
 それで中三時代がああだったことを知った。自分だけが楽園だった。梅の字と知り合え、親友になれたから噂なんざ消えたんだと思っていた。実際はあの通りだった。簡単に頭下げて済む問題じゃなかった、だから謝れなかったと。……俺と同じことを考えていた。なにも言えなかった。
 西園寺は雪の日のご乱行だけでは飽き足らず、中三の初日梅の字へ初めましてって大嘘ぶっこいた。この一言が人生変えた地獄の幕開けだった。その瞬間から、西園寺に向かっていた嫉妬の刃は全て梅の字にヒン曲がった。西園寺には直接攻撃もしくは暴行出来なかったやつらも梅の字となれば話は別だ。散々の直攻撃だったとよ。見ていない、知らない、調べ切れなかった、犯人を特定できなかったというだけで、……暴力行為は確かにあったようだ。当時なんの洒落っ気もない梅の字は、夏のクソ暑いさ中でも長い靴下を履いていた。卒業アルバムに残されたどの写真でもそうだ。
 知っての通り、あいつはそれが他人にとってマイナスの要素になると思えば一切口を噤み全てを抱える女だ。この中で、中三時代あいつがどう虐められていたか聞いたヤツいるか。
 いねえよな。これに関しては西園寺の友人、中野に少し事情を訊いたことがある。斉がお前に接触すりゃ、誤解がどうのこうのだから俺が出向いた、頼むから喋ってくれってな。梅の字がD高へ殴り込んだ際、マシンガントークかまして中野と親しくなった、が梅の字の言い分だそうだ。この情報源は斉。
 だが実際は中野曰く梅の字はあの時、やっぱり自分って邪魔者だったか、という感想で、斉についちゃまーーーーーったく知らなかったと。
 実際はどうかって?
 推察じゃなく実際に、五中の奴らを脅して訊いた。
 斉について、西園寺について、この二人の“関係”……言いまくった、がなり立てたとよ、梅の字に。毎日、毎日、延々と、嘘の塊を。ずっと。
 マンネリのように邪魔者と虐待され、凄惨な虐めに遭っていた梅の字は、なにもかも忘れたくて仕方がなかった。合格発表の日を誰より待ち望んだのは梅の字当人だ、斉でも俺でも誰でもない。
 入学が決まり、ようやっと重荷を下ろせたあいつは、その部分に関する記憶を全て捨てたのさ。
 虐めは自殺という名の目に見えるサインでも提示して貰わん限り表面化されることは無い。
 俺は修学旅行以降、2Bの誰とも会話出来なくなった。

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