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Sun,27 Jul 2003

He strayed from the path of … 1. 都区内 前野宅にて

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 佐々木明美は地元をこよなく愛す。  とはいえ、一つ所にじっとしていられる性分でもない。たまにはこうして、都会へ出向き、盟友・前野和子宅に茶をしばきに来ていた。  明美はもう、成田夫妻の心配はしていなかった。二度目の花火大会には来なかったし、これから先もあの二人が揃って公の場に出る事はないだろう。あまりにもきゅうくつではないか。それくらいだ、心配しているのは。  前野勇の意見はというと、そうではなかった。明美はあの二人の話題など出す気もないのに対し、勇はなにかにつけあの二人、いやさ四人のことを口に出す。 「意外と世話焼きじゃないか、前野先輩って」 「そうなのよ……それ程までにおナワで縛られたいかしら……? いさむちゃん」 「あははははは……」  前野夫妻の日常が分かろうという会話と顔色だ。気にしない明美、 「緊縛プレイはあたしが帰ってからにしてくれ。前野先輩、あたしは遼と西園寺がいつまでも、過去を引き摺るほどアホだとは思っちゃいないぜ」 「うーん、まあ。そうなんだけどねえ」  前野勇という人物、単なる優男に見えて、それだけではない。伊達で和子とは結婚していない。 「なんだよ、まだなにか引っ掛かることでもあるのかよ」 「あの四人、もう誤解はないんだろう? だったらさ、四人仲良く普段から交流とか、そういうのあってもいいじゃない。なのに今でも、四人のうち誰か二人が会ったらもうそれでおしまい、みたいにピリピリした空気が漂うと思うんだよ。これっておかしいと思わない?」 「そりゃそうだろ。成田と西園寺を並び立てりゃ実際、お雛様みたいに見えるからな。ウメコはそれを見て大誤解かましたんだ。あたしとしてもその再現なんざさせたかない。成田はもう、そんなヘマしないだろうさ」 「そりゃあ西園寺さんじゃなくったって、およそ女性と名の付く者とはね。だからそれはいいんだ。つまり、成田の奥方殿と西園寺さん、成田の奥方殿と遼太郎、さらには成田と遼太郎。この三つの組み合わせでさえ、あの四人は避けている。大丈夫だからと信じて突き放してなどいないんだよ、不安だからその機会を持ちたがらない。親友、相棒、師弟の四人がだよ」 「対論は? ……いさむちゃん」 「四人が一同に会して話し合う」 「実現可能な案を出して欲しいぜ」 「そう、誰もがそう思っている。あの四人ですら。僕は後悔しているんだ、遼太郎が成田の奥方殿にぞっこん惚れていて誰にも言えなかったのを知ってたからね。いずれ自己解決するだろうと思っていた。二度目の合同の打ち上げの時、哲也のお誘いにホイホイ乗ったと聞いた時もなにもしなかった」 「それを言われりゃあたしだって同立場だぜ」 「そうなんだよね。遼太郎も、そしておそらく西園寺さんも、そうやって誰にも言えないことを今でも抱え込んでいるんじゃないだろうか。向かってはならない方向に、爆発したりしないだろうか」 「あの二人は立場をかなぐり捨てられない。だがやらなくちゃいけない、自力でな。そうでなきゃ、自分では立ち直れないぜ」 「そう、それ程までに遼太郎と西園寺さんは危ういんだ。僕は後悔していると言っただろう。この言葉を、また何年後かに言うなんてしたくない。状況を分かっていながらなにもせず、その後無意味な後悔なんてもうしたくない」 「そう言われりゃそうだけどさ……」 「あの二人は喧嘩も出来ない程腫れ物に触れ合うような間柄で、確実に過去を引き摺っている。現実可能な対論はというと、そうだね、王様の耳はロバの耳! と叫んでもいい人達の前で叫ぶ、くらいかな」 「つまり私達の前で……そういうことね? いさむちゃん」 「そう。哲也のお誘いの場も本来はそうだったんだけど、遼太郎は無言だったって言うでしょう。あんな風に、なにも言えない程複雑な複数を抱え込んでいるんだ。そういう機会を持とうよ明美さん。どうだい?」 「遼が応と言うかねえ……」 「無理矢理でも連れて来て欲しいな。成田の奥方殿を呼んだ時みたいに」 「そういや横島の野郎は実際どうなったんだ?」 「海外旅行に行ったんだって。でも気が付いたら、どこぞの危険地帯にいたって」 「アシの付かない無難な線だな」 「連れて来てね、ご両人を」 「参ったなぁ……」 「後悔するかもとは、明美さんだって思っている。そうだよね」 「そうだけどさあ……」

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